2022.03.05 Sat
甘い二人の
「女同士なんて……」
「そうは言いながら、逢も、さ。」
煮え切らない、それとも、自分達の関係は秘密にしたいのか。
ただ、
「説得力はないで。」
「わ、わかってはいるけど……」
水上リリは、そんな様子を見ながら、ぼーっと教室から指を搦めながら教室を出ていく二人の友人をショートの金髪を揺らしながら、金色の瞳で眩しい二人を追った。それを追いかけるように、谷川景もうきうきした感情を身に纏って出ていく。
かく言う、自分は、それに対して何かを言う気にはなれないし、何も言う気にはなれなかった。
「ねぇ、本当にするの?今日も……」
「今更やん。」
「それは、そうだけど……」
煮え切らない。
この堅物の瞳が泳ぐのを見逃さなかった。
あぁ、やっぱり、可愛い女だと、そういうことを考えてしまう。
目の前にいる女は、どこまでも可愛い女なのだと思ってしまう。
「な、何よ。変な表情で見て。」
「なんでもない。嫉妬しとんのかな?って。」
「し、嫉妬って、誰に……」
「小路と江利花に。」
目で追った後に、ふっと瞼を閉じたら目の前にいるのは龍守逢が、ポニーテールを揺らしながら、こちらを見ている少女が愛らしい。彼女の中にある、自分と言うものを知らないというわけではないし彼女が自分に対してどういう想いを抱いているのか知らないわけでもない。それを解っているからこそ、彼女は「女同士なんて」と言う言葉を使いながらも実際は自分達よりも進んだ関係にいる小路と江利花に少し嫉妬している。
負けず嫌いだからなのかどうなのか、、それでも、可愛らしい。
テスト終了後、今日も赤点回避のために彼女に勉強の面倒を見てもらうのが当たり前の日々。
おかげで、成績も伸びて危機的な状況も脱することが出来たのは良いことであるといえるだろう。
「感謝、してるで?」
逢に感謝の言葉を伝えると、それが当然の帰結のように、表情が紅くなる。
赤面する少女の横で、リリが微笑む。
江利花と小路は、いつから付き合っているのだろう。
自分と同じときだろうか。
あの日から、初めて、彼女とキスをした時から脳内の記憶回路をトレースし始めた。
ファーストキスはレモンの味とは言うが、実際に、そうなのだろうか。
それは、まだ、彼女も自分も他者に汚されていない自分の味が肉体の中で、熟成しているからこそ、それがうまみになっているのかもしれない。
それを最初に独占できるからこそ……初めての補修、やる気が出来ない彼女に、もし、合格点から20点以上、差を付けたらキスをしてほしいなんて、興味本位でそんなお願いを要求した。
そして、それは当然の如く要求を満たし、冗談のつもりだったが……彼女は「約束だから」と言う如何にもな堅物的な理由で受け入れて、今に至る。
ある種、彼女からすればリリに発破をかけるためだし、リリも最初は寸前まで近づけて「嘘」と言うつもりだったが、余りにも目の前の少女は……
(こんなに綺麗だったんだ……)
「は、早くしてよ……」
ピンクの口がぷるぷると震えて、緊張しているのが解ってしまう。
ただ、そんな姿すらも、どこか愛しく見えてしまうようで、この少女の姿は、いつもそうだ。真面目な顔して、他人に威圧的な空気を出して、人間関係の構築がへたくそなくせして、こういう隙を見せる表情は誰よりもあざといのだ。
明日小路と違って。
「え、あ、ごめん。見惚れてた。」
「嘘、言わないで……」
「嘘は……言ってへん……」
小路は可愛いが、それでも、この目の前で自分のベッドの上で身体を震わせている女は、それは、どこか庇護欲を感じさせる。
彼女と唇を重ねたいと思わせてしまうような、そういう人間的な弱さを持った女。
(やば。こんなに、可愛かったっけ?)
水上リリは、思わず方言で喋ることを忘れるほど、目の前で瞳を潤ませて子猫のように身体を震わせる少女に思わず息を呑んでしまった。普段、肉体に鎧を纏ったような表情を浮かべているような女の心の内側と言うのは、思った以上に繊細なのは良くあることだ。
恐らく、そういう内側を見せたくないのだろうと思うから、弱さを見せるのは、どこか恥辱的に思う人もいるのかもしれない。彼女は、そういうタイプなのだろうか、もっと、心の内側をリリは探りたくなった。逢の表情は、口の動きは、瞼は、鼻は……そして、唇はどうなっているのか。
薄桃色の唇の端から緊張で少し漏れている唾液が愛しく輝き、一つ呼吸するたびに蠢く口の動きがどこか淫らに見えた。誘っているようで。
「は、早くしてよ……」
「んッ……」
自分は、そういう気があるのだろうかとすら思えてしまうほどには、ここまで可憐だったかどうか、ここまでくると触れることすら罪と感じてしまうような少女の愛らしさに思わず心臓が鷲掴みにされてしまいそうになるほどに肉体を稲妻が貫くほどの衝動が襲い掛かる。
抱き始めた、欲望は、思春期と言う、まだ精神が未熟な少女からは今、生まれたばかりの鮮烈的な好奇心から逃げられそうにもない。欲望が心が支配すれば、その支配した心の感情が、今度は肉体を支配する。それは意図も簡単に。もっと、彼女を見ていたい。もっと、彼女を独占していたい。
その緊張で震えた顔も、何もかも。
当たり前に、当たり前の独占欲、思春期の少女の思い。
覆いかぶさりながら……
「逢……」
「え?!」
不意打ちに名前を呼んだ瞬間に、リリは唇を重ねた。
ゆっくり、絡みつくように手を回して逢が逃げないように……
驚きながら、逢も瞼を閉じて……
((キスって……こんなに甘いんだ……))
| 適度なSS(黒歴史置場?) | 00:00 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑
好奇心
水泳回から察するに、江利花は当たり前に「え、付き合ってるけど?」位は言いそうな気がしてきました。
小路も小路で「えぇ~照れるぅ~///」みたいな満更でもないリアクションで…
谷川さんはこのまま行くと百合カップル写真家になりそうです。ルミナス=ブルーのたるたる路線ですね。
リリ逢の2人も、あの話から仲が発展したらこんな展開がありそう、いや是非なって頂きたいと思いました。
お互い引くに引けなくなってる、そして衝動が抑えられない感がたまらない。
OPの体育館壇上で全員並んで座っているカットがカップル同士になってる説を裏付ける一例でもあります。
| kwai | 2022/03/06 03:33 | URL |