2020.09.18 Fri
招待状
「終わりませんよ。これはヴィーナスアークに所属するすべてのアイドルのお仕事なんですから。」
ワインレッドのショートヘアを靡かせて芦田有莉はエルザ・フォルテに頼まれた仕事を静かにこなしていた。
「おい……」
背後では如月ツバサがお気に入り、そして不機嫌な猫のぬいぐるみを強く抱きしめている。強く抱きしめすぎて綿が一部に偏っていてバランスが崩れてしまっている。
この姿を見てもクールに仕事をこなす、そんな姿が気に入らないのか、現状、恋人である如月ツバサが普段のクールな顔からは信じられないとでもファンが言うかもしれないほどに子供っぽく頬を膨らませて背後から作業をさせる気力を失わせるほどに腕に力を入れて抱きしめる。
「どうしました?ツバサさん。」
「いや……」
如月ツバサは生真面目に仕事をする有莉が気に入らないようだ。
目の前に自分がいるというのに、ヴィーナスアークで行われるイベントへの招待状を描きながら自分の存在を無視するというのは何事か。ヴィーナスアークに所属してから、いつも、こういうスタイルなのが気に入らない。
どこか有莉が自分を試しているかのようで、不快感に近い感情が湧き上がる。
「どうして無視をする?」
「今は、お仕事中……ですよ……」
「そうか。お前が、そうやって私の存在を気にしないのならば、私も、好きなようにさせてもらう。」
ツバサが、舌先を有莉の首筋に這わせて抱きしめた両腕は柔らかな乳房を愛撫して執拗なまでに乳輪を撫で回す。
「欲求不満ですか?夜空先輩とかに……」
「今は、夜空は関係ないだろう……」
ムッとするような声色に怯えることなく甘えてくるツバサを優しく抱きしめた。
それは、すでに、この人のことを良くわかっているとでも言うかのような熟年の女の顔だった。
既に、この世界では女教師として再就職先は見つけたものの、どうにも生徒達からの情熱的な視線は自分が凌辱されているような気分になり、それが……
(たまらなくなってる……性欲を煽られる、あの感覚……いっぱい、セックスしたい……)
この感情はどうにもならない。
会えなければ会えないほど、どうしようもないほどの性欲が肉体を束縛して仕事に支障を与えてしまう。生徒の誘惑に乗ってしまいそうなほどの、あの甘い匂いの漂う柔らかく若い女体と言うのは亜美をどうしても狂わせる。
それも言葉を使って誘ってくるのだからたちが悪い。
そんな場所から帰ってくれば食事も忘れて飽くことのない性欲に翻弄されてしまうというのだから、この世界は……
考えるよりも、いや、この世界の成り立ちと言うのは、まるで、何かを求めているかのように。そのエネルギーを求めているかのように。
「亜美ちゃん……来てよぉ……」
思考を遮って彼女は来る。
甘ったるい、思考を砂糖水にでも変えてしまうかのような声色。
「んっ……」
水野亜美はどうしようもないくらい肉体の発情が抑えきることが出来なかった。マグマのように湧き上がる高熱の淫蜜が吐息と一緒に溢れ出る。失禁したような解放感と同時に身体が歓喜を上げるようにビクッビクッと跳ねあがる。
それは同棲している恋人の木野まことも同じ。
何度も混ざり合っても、再度、気持ちよくなりたい欲望が収まることも無く、どうしようもない性欲が肉体に襲い掛かる。
思考力が麻痺するほどに、いや、ざっくりと思考力を餌にする化け物がいるかのように、化け物の吐き出したものは色欲の空気に変えていく。
思考力を食えば食うほど、その化け物は部屋の空気を淫らな空気一色に変換するほどに。
この世界におけるセックスと言うのは異常だすら思えてくるが、気持ちが良すぎるものは、どうしてもやめる気になれない。誰も否定して無い、誰も自分達の邪魔をしない。そんな中で、永遠ともいえる快楽を二人で貪ることが出来る。
テレビを付ければアイドル達は平然と観客の前でキスをして舌を搦め合い、ファンたちを欲情させる。
心臓が早鐘のように響き、興奮する最高の空間。誰が、どういう意志で、この世界に呼び出したのだろうか。
今は、そんなことよりも……
「まこちゃん……しよ?」
「うん……亜美ちゃん……・」
はしたないとは思う。
淫らになったと思う。
しかし、突き動かされる快楽は、どうにもならない。
身体も、心も、精神は重力に逆らえずに淫欲の間に沈んでいく。
これで、何度目のセックスになるのか。
外に雨が降ろうとも、互いの身体を貪りあい唇を混ぜ合わせるようにでたらめなキス、唾液を卑猥な音を響かせながら吸い合い、淫部を重ね合わせて我武者羅に腰を振るう。
そうして何度目かの絶頂の後、力が尽きるように雑魚寝をする。
うさぎ、レイ、美奈子、スターライツ、カルテット……様々なメンバーの心配以上に、まことと重ねて発散すること、交わりを覚えている自分、この幸福に比べれば、この世界にいないメンバーのことなど矮小なものに過ぎなくなっている自分がいる。
全身に電流を走らせて、まことはモデル並みに大きな身体がエビぞりになり絶頂と共にベッドが軋む音を響かせて亜美に絶頂の証を浴びせた。
「あ、あぁぁぁ……」
「まこちゃんの、凄い美味しい……」
今日、一番の絶頂のはずだ。
ただ、これだけでは……
ぐっちょりとした感触がどうにも抜けそうにないどころか、もっと浸かりたがっている……
意識が戻り目覚めれば、どうにもならないほどの性欲が再度、二人の身体を包み込む。
ここで、この世界に住む、はるかと、みちるから、この異様な性欲は何か解るかもしれない。
もっとも、この性欲に取り込まれている可能性もあるだろうが。だが、この高鳴りは……どうしようもないほどに思考を狂わせる。
「ねぇ、まこちゃん……」
「何?亜美ちゃん……」
亜美はポストの中に入っていた招待状を見せた。
手紙から香る淫靡な臭いが再度、肉体にエンジンをかけたように熱を与えた。
この世界の性快楽に満たされた世界。どんな場所であろうとも、女同士……招待状には「ヴィーナスアーク」と書かれたクルーズ船で行われるパーティの招待状……書かれている内容を思えばメスの色香を纏ったそれは……本能的にどういうことか理解する。
「行ってみる?」
思考を一点に集中させた。
| 適度なSS(黒歴史置場?) | 00:00 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑
点と線
ツバサ先輩が有莉先輩に向ける笑顔…キャプ絵を見て、こんな時代もあったなあとしみじみしました。
オンパレ本編でも疎遠気味だった?(印象が薄い)2人、せめてSSでは濃厚な関係でいて欲しいものです。
後半はまさかのまこ亜美。パーティーの内容は言わずもがなだけど、まあ、行かない選択肢はないですよね。
先行した百合界のカリスマからこの世界の手ほどきを受けるまであると思います。
| kwai | 2020/09/18 22:51 | URL |