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神無月の巫女 対 レガリア The Three Sacred Stars 序章「それは夢」

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実は、これ、没にする予定だったけど勿体ないから、こっちに持ってきた(つ=ω=)つブログ用ですね。


 「ママたち、暖かい……」
 ふわりとした人の温もりを感じ取った時には既に夢の世界にいた。エナストリアに襲い掛かった破壊神の消滅を見届けてから、すぐ後のこと、疲労からベッドの上でぐっすりと眠るレナの両手には懐かしい感触はぐっすりとした夢の世界へと送られる。
 ユイじゃない。誰だろうと探ろうとした時、忘れかけていた二人の記憶が中に入りこむ。ずっと、忘れていた。もう二千年近く、途方もない時間の間に触れていない柔らかな感触に、ぐっすりと安らかな寝息を立てた音がしたとき、意識は手を引かれるように一つの宇宙空間にレナの意識は漂っていた。
 はっきりと、今、肉体と離れたということが解るほどには肉体的な重力的な重さを感じずに、月があり、地球があり、そして、この宇宙に自分がいる。
 「レナ。」
 「姫子ママ……?」
 「久しぶりね。」
 「千歌音ママ……?」
 忘れたことのない二人の登場だ。
 二千年近く、自分という存在。
 色々と言いたいことはある。
 だが、あり過ぎて、あり過ぎて、何から言えばいいのか解らずに言葉を詰まらせて思考を整理する。
 ただ、それでも、二千年近くという、余りにも膨大な時はレナの中で、簡単に纏められるものではなかった。申し訳なさそうにする顔も、その姿も、少なくとも自分の知っている二人の母親の中の映像と変わってはいない。そもそも、何故、記憶が封じられていたのかすら解らないし、そんなの意味がない。ただただ、何が聞きたいとか、二転三転する思考を絞り出すように言葉を紡ぐ。
 「ママたちって、何者なの?」
 最初に出てきた言葉が、最初に気になる言葉がそれだった。普通の人間の姿をしていながら、普通の人間ではない。月からの降臨、オロチ、その全てが理解できない。二人の間に対となるイヤリングを一つずつ付けていて、姫子は赤い袴の巫女服を纏い、千歌音は青い袴の巫女服を待とう。変わらない二人の母親。
 「そうね……まずは、私達の記憶の断片を見せてあげる。」
 「記憶の断片……」
 「大方はユイちゃん達も教えてあげるつもりだから。」
 「これは……?」
 「そうね。私達の出身地である、この惑星、私達が生きた時代、地球と呼ばれていた惑星の遥か昔の姿……」
 姫子がそう口にすると、最初に見せられたのは学生服を身に纏う二人の母親の姿と、巨大なリボルバーのようなもの。それは遥か古に創られた八重螺旋並行世界、別名オロチシステム。
 「これが、どう関係あるの?」
 「ルクス・エクスマキナとオロチ、そして、オロチと私達の関係ってところかしら。」
 長く生きて輪廻を巡る内に過去の自分たちが、そして戦っているうちに知った、自分達の幸福を阻むもの。その中核を破壊し、全てのオロチによって委ねられる世界を破壊して人は次の未来へと足を進む。最後の片方の巫女が命を落とすと、世界の弾の入ったリボルバーが回転して次の世界が装填されて各オロチが望んだ世界に近い世界になる。
 だが、時期が来ればオロチと巫女の戦いが繰り返される。
 人の変わりたいという気持ちを利用して延々と繰り返される殺し合いを作り出してしまった人の哀しみを利用した神々の玩具箱とも言える下衆なシステムの慣れの果て。全てはオロチの作り出した玩具箱の中の玩具であり、結ばれたことによる別れも何もかも、神と呼ばれる存在に運命を玩ばれていると、それこそ、この世界の人は神の玩具そのものであった。
 負の思念体が集まれば、神は、その人の感情を利用して気に入ら無くなれば今度は自分達の欲求を満たすためだけに世界の人間を殺して、新世界とは名ばかりの人にとっては腐った現実を新たに創造する。人のストレスと負の情念で苦しむことに快楽を感じてならない闇を司る邪神は聖書に出てくるか実を、より邪悪にしたような自分達の愛を玩ぶ二人の巫女にとっては許すことの出来ない存在だった。
 新たな世界が生まれても、そこで恋愛をして結ばれても、同じ結末が待っていることへの呪い。
 巫女が生き残れば殺さなければならない永遠の世界が紡がれてきた世界。だが、巫女もゲームを盛り上げるための神の生み出した要素でしかない。オロチが勝っても負けても動き出すオロチシステムそのものを破壊しなければ、このシステムがある二人の巫女が幸せになる事も幸せな家庭を築くことも永遠に無い。
 仮初の王者を作り上げて、結局は神が好き勝手に蠢く不快な世界。
 少なくともレナが生まれる遥か古の時代よりも少し前の時代は、そうなるように支配されていたはずだった。だが、二人の巫女も、それだけで終わらせるつもりは全くなかった。自分達の運命を玩ばれることをよしとしない二人の巫女は気が長くなるような、ただ、自分達の愛を引き裂く存在を砕くことが出来ればよいと何度も何度も繰り返す。
 その時に、現れたのが巫女の宿命というものを知らずに生まれてきた来栖川姫子という一人の少女であり、巫女の宿命を知った姫宮千歌音の二人である。何人もの巫女たちが生まれてはオロチシステムによって愛する人を殺さなければならない結末、何故、自分達が、そのようなことをしなければならない。
 その運命に抗い続けながら、巫女たちは動き、暗躍し、次の世代に悲劇が繋がらないように細工するために世界を少しずつ欺きシステムの破壊の為に動き出す。
 次の自分達に向けての細工を何度も何度も繰り返しす。
 それが姫子と千歌音よりも前の神無月の巫女と呼ばれていた、ある種の同一人物と呼ばれる存在でもあった。
 「通常は生まれた時に、ある程度の巫女の運命を知っているの。すべてが上手く道を辿るように。人生ゲームってあるでしょ?私たち巫女と、あの破壊神には本来、乗っているはずのオロチ衆はね。すべてが神の掌の中で踊り続けるゲームの駒だったのよ。」
 「ゲームの……駒……」
 だが、巫女の運命を知らない一人の巫女が誕生することで何か、逆転のきっかけが起これば。この世界の理を変えてくれれば。自分たちの運命を玩ぶオロチシステムをどうにかできれば。二人で社に入ることによって二人だけにしか干渉できない、その世界の中で次世代に全てを託して、巫女たちは過酷な宿命を涙を流して受け入れ、そして消えていく。姫子と千歌音が、そうなるように世界を少しずつ変えたことを知ったのは社の中であり、そこには自分たちの代わりに次世代が幸せになってほしいという呪詛に近い願いが多く刻まれている場所があった。
 「思えば、私がオロチになることも巫女たちの計算通りだったのかもしれない。」
 思い出すように、あの時のことを、姫子への愛ゆえに一度、地球を世界を破壊した記憶が蘇る。いっそのこと、すべて姫子に憎まれてしまえばいい。だが、そんな姫子も千歌音を受け入れて愛してくれた。いっそのこと、結ばれないのであれば、この世界を支配する側に回るオロチになることも一つの手段だということだったのかもしれないし、そうすることで姫子と歪ながらも結ばれる形を選ぶ。
 千歌音の中に蘇った過去の巫女だった自分の記憶は、その選択肢を与えただけで強制をしたわけではない。そして巫女の宿命を知らずに人の生を巡り歩いてきた姫子は、のちにオロチの宿命に蝕まれる一人の少年と出会うことによって一つ一つのシステムを破壊するための手段が開かれていく。
 「少年って……」
 「そうね。あの七体の破壊神の青いやつに乗ってた人……と、でも言うべきかしら。」
 今となっては懐かしい思い出だ。懐かしむように千歌音がケイを撫でながら言う。
 苦くもあり、ある意味、最も青春という言葉を謳歌していた時代なのだから。どうしようもない賭けの中で始まった三人の物語は危険ではありながらも、その道を開いた。オロチの力を持ってオロチシステムを破壊する。
 一人の巫女こと月の巫女が愛する陽の巫女に殺されることを望み、その陽の巫女は愛してくれた月の巫女に哀しい思いをさせまいと、生きることを望んだ瞬間に、アメノムラクモによる再生も始まった。その前に、陽の巫女の強い願いから一度、輪廻を巡ることによって暫くの時間と猶予が与えられて毒を以て毒を制すかの如く裏切りのオロチ衆の一人は姫子への愛に殉じて、その思いを知りながらも、なお世界を破壊するシステムと、それの所有者と戦うために二人の巫女に力を貸して、オロチを破壊し、その隙に現れた世界を変える為のオロチシステムを二人の巫女が破壊はしたものの既にアメノムラクモによる世界の再生は始まっており、最後の輪廻転生を終えて必ず出会う約束は果たされ結ばれ、システムも破壊された状態から、オロチとの戦いは終えた筈だった。
 永遠の愛を誓い合った二人の神無月の巫女。
 だが、破壊された世界の再生のために生き残った二人の巫女は生贄となることで再生される。生贄となった千歌音が再生された後の世界で産まれたのはアメノムラクモの慈悲だったのか、それは解らない。だが、システムの破壊によって未来への光をつかむことができた姫子と千歌音は再生された世界で確かに再会した。
 ただ、その後に永遠の幸福が二人に許されたわけではなかった。
 「じゃぁ、この世界は……」
 「そう。今から、遥か昔の世界から、私たちが再生させた世界。」
 だが記憶を失いながらも、想いだけは失わず、好かれていた人からの告白も断り千歌音は再生された世界で再会し、恋人として結ばれ愛し合えるはずだった。だが、存在しているだけで幸せになることができない理由が分かった時は最初は必ず再会する約束を。そして、次の世界でのオロチとの戦いでは共に生きてオロチと戦う道を選ばざるをえなかった二人の巫女。
 そのシステムの残骸でもある限り、オロチは何度も復活して修復、もしくは新たなオロチシステムの制作を試みるために、今度は修復、創造を邪魔するであろう巫女を殺そうと動き出す。邪神とはいえ神の最大の玩具を壊してしまったのだ。そうして生まれたのがオロチの残留思念を取り込んだような悪鬼の登場である。そのために、この世界ではなく別世界でオロチは暗躍をし始める。
 「これからが、神無月の巫女の第二章とでもいうべきかしらね。」
 人の負の感情がある限り、オロチは何度でも蘇る。
 そして暗躍して再びシステム修復か創造のために動き出す。それを止められるのは巫女の力を持った自分たちだけだからこそ再生された世界で人としての幸せを謳歌して、二人で生を全うし、姫子と千歌音は寿命で去る筈だったが、その直後にオロチの復活を感じ取り、アメノムラクモに呼び出されて死んでも一緒に消えることは無く、かおん、ひみこ、千華音、媛子、様々な名前を変えて別世界を救うために転生するたびに記憶を失いながらも大切な人を見つけて愛し合ってきた。
 ひみこと名乗っていた時代には、もう一つの並行世界の願いを叶えることが出来ずに、闇に囚われて、その世界の月の巫女を殺した、もう一人の姫子と出会う。
 「今にしては、すべてが懐かしいわ。あのころに比べたら、今ははるかに楽だもの。」
 だが別世界でオロチと戦う場合は、システムの残骸の影響から記憶がリセットされて、本人でありながら本人ではない妙な感覚とともに生きることになる。転生することでオロチと戦うためにアメノムラクモの力を見に宿し戦うことは出来るものの、別世界でのオロチとの激闘を終えた後は、すぐさま別世界で暗躍するオロチと戦うために何度も何度も転生を続けた。
 だが、これではイタチごっこであり、さらに愛し合った記憶をリセットされるのは苦痛に近い。自分たちの愛が何もかもが否定されてしまったかのようだったからだ。オロチシステムがある限り、二人は永遠に幸せになることができない。
 また姫子を愛したのに。
 また千歌音と出会えたのに。
 巫女の力がある限り、二人は死という名の魂の救済を受けることなくオロチが蘇る限り、二人の巫女は生きて戦い続けて無限の生き地獄と呼んでも良い、オロチシステムの根幹を肌で感じた瞬間でもあった。
 再生された世界での二人の約束された時間は、ただの休憩時間であるかのように些細で短い時間だったのだ。二人の巫女は輪廻の運命を越えても二人はなお、戦い続けなければならない運命が待っていた。
 最終的に世界が導かれると同時に記憶は取り戻されるとはいえ、記憶がないことは危険だった。
 転生する前に互いのことを強く思いながらも、記憶のリセットというのは転生すれば赤の他人として生きることも同じ。オロチシステムの呪縛に囚われて、オロチと戦う宿命、これでは、いつまで経っても姫子と千歌音は幸せになれるはずが無い。繰り返せば心が壊れてしまうほどに辛い経験だ。
 転生した記憶の中では凌辱魔に捕まろうとも愛に殉じて生きるために愛する人への愛の為に凌辱される前に躊躇いもなく殺して殺人者の汚名を着て生きた姫子もいれば、凌辱魔の手を逃れたとしても精神的に追い詰められそうになれば自ら命を絶とうとする千歌音もいる。
 そのたびに、何度も何度も試練を乗り越えつつも、何度も経験すれば互いの心は辛くなる。自分でありながら、何人もの自分が生まれる感覚というのは、いつか自分の心が風船のように満帆になって破裂して壊れてしまいそうだ。
 記憶をリセットされるリスクはどちらかがリセットした状態で出会えば、どちらかが既に闇に落ちているということも十分にあり得る。そして一歩間違えれば、また自分達が殺し合う世界があるのも事実。姫子と千歌音は、それをよくわかっていた。
 「たぶん、あの時の、ひみこと名乗っていた時に出会った、もう一人の私は、そういう存在なんだと思う。このまま、続けていれば、自分がオロチそのものになる危険性がある。媛子と名乗って、千歌音ちゃんを殺していたら、私は、たぶん、私でいられなかった。」
 「私も、そうかもね。自分が二人いる世界があるなんて、思いもしなかったもの。千華音と名乗っていた時も……」
並行世界には自分たちのもう一つの可能性となる人物がいる。
 数多の並行世界だからこそ、そういうことがあってもおかしくはない。
 ただ、その中の並行世界のもう一人が絶対に言えることは必ず姫子と千歌音を愛しているという根本的なことは何一つ変わってはいなかった。そうならないために姫子と千歌音は並行世界を巡る旅に何か別の方法はない物かと探り出したのは、この頃からだ。一つの世界での出来事を終わらせるたびにアメノムラクモの中で眠りにつかされる。何かを隠すかのようにだった。
 「だからこそ、かもしれないね。そんな宿命に負けたくないって、何度も思った。だから何度も。」
 「私たちは報われなかった彼女たちの分まで幸せにならなきゃいけないんだって、勝手に思ったの。」
 並行世界を巡るにあたり、二人も、ただ、そこでオロチを封印しているだけではなかった。時に考古学者になり、時に大富豪として転生しながら過去の記憶を得るための策を刻みつつも、オロチの成り立ちや、様々な知識を取り込むことによって一つ一つの知識を結び付けていく。それは果てに人の身体を捨てて、進化した存在へとなる為の術式まで描かれている。そうしてオロチとアメノムラクモの関係まで探りを入れた。最初に出てきたオロチの破壊神の集合体と、アメノムラクモがよく似ている外見を含めて、何から何まで一つずつ調べては記憶を共有しあう。
 点と点が結ばれて戦になる瞬間、一つ何かに向けて進んでいくような気がした。この並行世界を巡る旅の中で姫子と千歌音は神に運命を翻弄される宿命を塗り替えることを、オロチ討伐と同時に重要な使命として諦めることは絶対にしなかった。この戦いは下手をすれば自分達の関係が砂の城のように大きな力で崩れてしまう危険性も十分にあることを理解して。
 オロチの引き起こす出来事が終えた瞬間に蘇る本来の記憶と、その世界で得た知識を混ぜることによって刹那の瞬間を掴むように一つの出来事に対して「諦めない」その心情を持って、幾つかのオロチが引き起こす並行世界、宇宙の獣と呼ばれる存在が暴れる世界と光の巨人が戦う世界での出来事だった。邪悪なる暗黒破壊神の力を目つけようとしたが、既に、それは伝説の巨人に片付けられており、オロチは、そのデータを利用して、再度、宇宙の獣を暴走させようとして力を得る事件を出説の巨人と共に解決した時だった。また役目を終えて元の世界に戻り眠りにつこうとした瞬間だった。
 この世界から消えようとした、次の並行世界へと巡る旅までの眠りにつくための準備、本来の世界に帰還する途中で現れたのが、聖書で正義と認められた人の名前を持った銀色の巨人であり胸に赤い弓のような巨大なエネルギーコアを持ち、背中には大いなる世界を駆け巡る翼を持つ大いなる存在が世界から消える前の姫子と千歌音のに一つの力を授けた。その過程で二人は様々な文献を漁ることでオロチとは、アメノムラクモとは、世界を知る。
 「ノアの言葉を受けて?」
 「そうね。後は、レナの中にある疑問と同じよ。」
 「私と?」
 「レナも思ったんじゃない?夢の世界で見た白い巨人と紫の巨人が何故、似ているのか。」
 「うん。」
 既に不死に近い状態にアメノムラクモにされて、外界の銀色の巨人から永劫の戦いに身を投じる姿を確認されて力を授けられ、人の身体を持ちながら、既に内部は人ではないものに書き換えられていく。様々な並行世界での戦いに身を投じることで調べている中で知ってしまったこと、知らなければよかったと言うこともある。
 だが、それ以上に、あの時、初めて自分達がオロチと戦った時から、それ以上の記憶と知識しか知らない。システムによって記憶はリセットされて転生し、最後は次の時まで封印される。
 アメノムラクモとオロチ、それを知りたいと思っていた。進まない時間の中で巨人から託された力と言うのは、そういうアメノムラクモのシステムを超越した存在であり、あらゆる制約を越えて先の世界に向かうことが出来る。その答えを知るための存在としての探求者としての側面を持ち、生き続けることになった。
 「ガイさんのと似てる……」
 「そうね。彼も、あの名前を持つ存在だから。」
 その巨人は「諦めない」ことを信条にた別世界の神に等しい存在で、自分たちには対になる一つの宝具を差し出すことによってオロチシステムの根幹に囚われない世界を巡ることが出来るようになった。
 「ノアと言ったかしら。あの巨人の名前。」
 「あ、そのイヤリングは……」
 「そうね。これが巨人から授かったもの。」
 銀色の巨人が授けた輪廻転生の必要もない道具。
 諦めないと誓った心の中で現れた、オロチシステムの残骸に囚われずに並行世界を渡ることのできるアイテムであった。銀色の巨人は姫子と千歌音に、己の力である次元を超えるシステムを授けてくれたその存在が授けてくれた力は記憶のリセットもなく、愛した記憶を己の中に溜めることによって二人は、今まで以上に愛する記憶を持って生きることができた。空の彼方へと向かうための希望の力、まさに光る星のような存在。ただ、ノアの巨人が助言した…… 
 (アメノムラクモを苦しみから救え。)
 「アメノムラクモって……」
 それは自分と一緒に戦ってきた神の名前であり、自分達の乗機であり、明確な意思を持ってオロチと戦う存在。それに気を付けろと言うのは。そして、そのころからだ。転生せずに肉体は全盛期のまま、年を取らない肉体、人を超越した人になったことを実感した瞬間は。巨人の力を得ることによって、それに同等、ある意味、近い存在になったのだと明確な変化はないが、その力を得た瞬間、理解した。
 自分達の記憶を永遠にすることで報われなかった自分たちへの愛の化身となることを、ありえるかもしれない運命を受け入れることで道を恐れず怯まず進むことができた。
 転生して、さらに転生、そうして消えては蘇り、蘇っては消える記憶。
 二人の強い思いが最終的に結ばれて愛し合った記憶を呼び覚ます強い願いを通したことで繋ぐことができた二人の力を留まらせる為の力。この無限の生き地獄を打破する最高の道具を得ることによってオロチは巫女の心を付け入る作戦が取れなくなった。
 そうしてリセットされることなく燃え上がる二人の愛情は封じられてきた分、さらに力を増してきた。それはオロチが暗躍する前に先回りして相手を叩くこともできる力。オロチは邪神であると同時に人の心に巣食う絶対悪に近い感情である。何れ、生まれるかもしれない闇に染まった巫女の力を則り、世界を滅ぼすかもしれない。だが、その可能性を潰すことが出来たのは遥かに大きな戦果であるとも言えよう。巨人のいる世界を利用としたオロチの失策である。
 「あの巨人は何だったの?」
 「さぁ?私も正直、解らないわ。」
 憎悪に捕えられた人間が求められればシステムの修復のために何度も何度も動き出す。ノアという巨人が与えてくれた力を使い、次のオロチが復活する前に記憶を持ったまま潰すことは出来るが、それが激闘であることは変わりない。なりふり構わずに迫る手負いの獣は常に防衛壁と言う名の集団を引き連れている。
 「そこで必要だったのが、私達を助けてくれる仲間だった。」
 「仲間……」 
 「そうだね。」
 他の世界に行けばオロチを倒すために手を貸してくれる存在はいるものの、どれも力的には不安定だ。
 記憶も消されず、別れの言葉を告げることも出来ずに一方的に関係は断ち切られていた。だが、ノアから授けられた力を使えば自在に並行世界に行くことも連れていくことが出来る。
 二人だけではあまりにも幻海が多かったが、その一つの力でかなりの制約をクリアすることが出来た。そうすることで出来るのは対オロチの部隊を作り上げることだった。幾重の世界を渡り、様々な者たちが人としての死を迎えた時に、その魂を蘇生させることで誘いをかける。断れば、そのまま望むまま、魂の浄化を。受け入れてくれればオロチと戦う代償として再度、愛しい人との再会を約束して転生させる。
 転生した世界の先で戦うためにアメノムラクモから力を授かったことで得られた力の一つとしての転生術を利用し、時には、Vウイルスという病原体に侵された最愛の人の体を武器に変えて戦う少女たちの魂を浄化して、夜という絶対的な存在の力を取り込み生きた半妖の少女だった存在、愛する友人のために世界の絶対神になった存在と巡り会うことによって一つ一つ、可能性が与えられていく。
 「これは、私と千歌音ちゃんが仕えていた神の真相に気付き反旗を翻したシーン。」
 「神?」
 不可視に途切れ途切れになるのは、そういう風に演出しているのだろうか。もしかしたら、母の中にある思い出したくない本能が、レナに、どこか途切れ途切れに映像を見せているのかもしれない。
 「月の社……」
 月に社があり、姫子と千歌音がいる。周りに母たちに率いられた女たちが白くレガリアに良く似た巨人の前で語りかけていた。彼女達は母が作り上げた対オロチ専用の軍団の一員だった。
 「あの人……」
 「レナも良く知っている人がいる。って?」
 「うん。」
 ただ、何故、あそこにいる巨大な剣は、先ほど襲ってきた破壊神と外見が少し似ているのだろう。それに、やはり、あの夢で見たとおり、その顔が良く似ている。
 「夢の中で、ママたちが、あれに乗ってるのを見たの。でも、さっき、戦った奴の中に、あれと似た装飾が……」
 所々ある。
 『貴女達……』
 宇宙と言う黒いスクリーンに現れた映像は立体映画を見ているような気分だ。巨大な剣は人の形を成して巨大ロボット、いや、レガリアのように姿を変えた。
 「あれ、お母さんたちが乗っていたものに似てるけど……少し、形が違う。うぅん、前に夢の中の映画館で見たものだ。」「そうね。あれは、オリジナル。私達が仕えていた神そのものの姿。」
 「でも、これ、断片的過ぎる。凄いことはあったんだろうって思うけど、規模が大きすぎて訳わかんないよ。」
 「仕方ないわ。全てを語れば、貴女は一年以上は眠りについてもらうことになる。だから、ダイジェストという形になるのも仕方ないの。」
 成る程と納得しながら、レナは仕方なく、この光景をただ眺めていた。
 『私がいなければ……オロチは……』
 「いいえ。私達も人の枠を超えた身。貴方がいなくても私達はオロチに勝利できる力を手に入れることが出来ました。」
 「外世界の神が協力することが、こうなるなどと……」
 「ならば、何故、私達を止めなかったのです?」
 「真実を知ってほしかったから……では?」
 千歌音と姫子の言うことも最もだ。ある程度の世界へと巡ることを終えた時、二人は過去の世界へと時間を超越した。そこで見たのは一人の巫女が姉妹同士であり少女同士と言う恋愛から人間の起こす迫害から黒い心に抱く憎悪に取りつかれて破壊の使徒になり、もう一人は、その巫女を止めるために自らの肉体を犠牲にして破壊の使徒になる恋人を止めるための姿へと変わり果てた異界の人間だった。
 そもそもが恋人を浄化するための愛憎が世界の命運をかけるというのも傍迷惑な話だ。二人が十七になった時、それが二人の巫女を大人にすることも結ばれる事も許されず迫害を受けて最初の巫女は力を暴走させて、当時の人間が抱いた二人の自分達の幸せを望む心の光から永遠に破壊されて負の情念の邪神になった。
 黒い心を憎んだ人間が、もっと黒い憎悪と言う感情に取りつかれて人外に堕ちるというのは何とも皮肉な展開であると同時に、それはまた自分達のあり得た可能性でもあると姫子と千歌音は戦慄したとレナに語る。それから、どれほどの時が流れたというのだろう。いや、それから延々と時間は無駄に流れて終わることのないアメノムラクモとオロチの戦いは始まり、自分達の遺伝子の種を振り撒き子孫を使い、そして生贄に捧げるための戦いが始まった。
 「ノアの巨人は……」
 苦虫を潰すような声を上げているのがわかる。どこか、そこには人間的な感情が見え隠れしているようにも思えた。神とは程遠い、人間的な極普通の人間的な感情がレナにも読み取ることが出来た。
 「いずれ、真相は暴かれることだったでしょう。でも、それを、貴方は防ぐことは出来たのでは?」
 あくまでも、全て憶測だ。ただ、それに対して何もいわないというのは、それに近い単なる愚にもつかない考察。
 「それでも、貴方は真相を解明することを望んでいるように思えました。」
 明らかに白銀の剣は焦りを交えた声を出していた。飼い犬に手を噛まれたような驚きであると同時に来るべき時が来たことを悟っているような声でもあったし、その声は罪悪感を帯びているような声色でもあった。
 世界を巡る度に輪廻転生を繰り返すうちに真相に迫り、そして異界の神から授かった力で輪廻転生をして世界を回る必要はなくなったのだ。そこで出会ってきた者達の能力を学び作り出し、さらに自分達が新たにオロチシステムの干渉を受けることのない出会ってきた者達を仲間にして姫子と千歌音は一つの軍団を作り上げた。さらに、かつて地球を救ってきた者達の力を参考にして生み出した真剣神天群雲剣を生み出して、オリジナルの剣神をオロチ、そしてオロチシステムと共に破壊することに成功した。真剣神天群雲剣が剣神天群雲剣に似てるのは、そのオロチシステムの根幹の一つに気付くことのなかった、いや、止めることが出来なかった哀れなシステムの一環に向けた同情であったとも言える。
 「いつから……」
 「いつからでしょう。忘れてしまいました。気付いた時には、貴女に勝利しなければならないし、殺されるかもしれないと考えて眠れませんでしたし、それ以上にオロチの討滅の方が重要でしたから。でも、貴女は何もしなかった。」
 「オロチを封じると、数刻の余韻の後に眠りに尽きますから。」
 まるで映画が上映される前の予告集を見ているかのような気分だ。だが、そこはかとなく母たちの軌跡と言うのは解ってくる。しかし、何度も手早く読みがせる理由はどこにあるのだろうとも考える。オロチと言う不快な破壊衝動に満たされた邪神の化身と、その破壊衝動によって傷ついた地球を巫女を捧げることで再生すると言うが。
 「愛と存在意義の為ですか?それとも永遠にオロチを封じることの出来ない情からくる贖罪。過去に巫女を生贄に捧げることによって、巫女の持つ愛の思いを生贄に捧げることでオロチの怒りと邪心を鎮めようとした……?」
 システムの存在意義や極めて人間的な感情に支配されたアメノムラクモは勝手なことをして巫女の犠牲を無に帰すかのようにオロチを復活させる役割を持つ。通常、人の負の思念体の塊であるオロチはアメノムラクモが手を貸さずとも長い長い時を得て復活するはずだが、極短いスパンの中で並行世界の中で復活しているのはアメノムラクモの手解きでもあるのだろうと。
 その過去はノアから授かった力で遥か昔に遡ることで理解はした。あの時の、千歌音を含む生贄の存在意義がオロチを正常に戻すために何度も蘇らせて、アメノムラクモは終わることのない浄化を何度も何度も巫女達に繰り返させる。どちらかがいるからではなく、古の巫女の世界では二人は愛し合っていた巫女同士であったからこその。
 「倒されることで浄化を狙っていましたか?貴女とオロチは、かつての恋人同士……そして、ある意味、私達は、貴女方の子供である。だから、千歌音ちゃんはオロチにもなれたし、私もオロチになれたり、貴女を操ることが出来る。貴女の中に入ると伝わるオロチへの火傷しそうなほどの情念の思い。」
 ノアの力を得てから調べ上げた事であり、様々なことが繋がれていく。
 「そして、私と千歌音ちゃんと言う結果があるからこそ、貴女は……」
 何度もオロチを倒すことで浄化させようと計画をしていたのだろうが、あの貪欲な破壊衝動は既に憎悪に満ちていて、それすらも無意味だと思えてくる。仮にオロチが勝利すれば、オロチもアメノムラクモを蘇らせるということは無く、そのまま、あの貪欲さは取り込むことにもなるかもしれないだろう。それでもアメノムラクモからすれば、その結果は幸せだったことだろう。
 だが、それでも、その二人の、ある意味、バカげた夫婦喧嘩に子供達が尻拭いさせられていたというわけだ。光と闇、両方を存続させるために取った手段、神ではなく人としての情がいつのまにか長く続く、終わることのない浄化。巡り巡る二つのシステムが螺旋ように描かれてはぶつかり消えていく終わることのない二人の関係。
 「アメノムラクモシステムはオロチの尻拭いをするためのシステムであると同時に、貴女の前世の恋人でもあったのでしょう?」
 「貴女とオロチは一番最初の神無月の巫女。」
 そして地球再生という大義名分は
 「巫女へと嫉妬と言うところかしら。最後まで思いを遂げた。」
 「それは……」
 純粋な巫女の愛を生贄に捧げることによって、オロチを戻すことが出来れば。そんなバカげたことを考えて何人もの巫女たちを生贄に捧げた。そうして行くうちに、それが当たり前になっていく。だが、それを越えるほどの巳子達の強い愛への情念を受け継いだ姫子と千歌音が新たに生まれたことによって、二人は歴代の巫女の加護を何度でも二人の愛を受け継ぐことが出来た。記憶のリセットも、自分達が出来なかったことを平然とこなしているように見えることに対する嫉妬から来る、いうなればレベルの低い意地悪のようなものだ。そうすることで、もしかしたら自分のようになればと言う負の嫉妬と言う心と、この二人がいればもしかしたらオロチを正常の姿に戻すと言う期待の生の心。
 だが、それは既に人の肉体を捨て憎悪と悪意に身を歪ませ、あのような醜い姿の邪神になった時点で戻すことなど不可能。その思いは解らないでもないが、だが、それ以上に自分達の運命を玩んだことに対する怒りと言うのは許せないものがある。
 「解らないでもないですよ。私も、そうなる可能性の自分を見てきました。でも、それでも今の私には千歌音ちゃんがいる。それに仲間達がいる。」
 「私達は、貴女のような孤独な存在ではないわ。」
 アメノムラクモと今の姫子と千歌音の違いは絶対的な仲間がいることだろう。ノアの力を得ることで、はじめて、この世界の神の力を背いた二人の巫女。
 「しかし、破壊された世界は……」
 「それは世界の運命です。崩壊すれば何万年もかけて新たな地球が、あそこで産まれます。それに人は地球の痛みと一緒に乗り越え、地球を癒す力もあるのです。」
 「このシステムに頼り、誰かの幸せを犠牲することなど、あってはならないことです。」
 戻そうと思ったというのに、いつの間にか世界を揺るがす光と闇の戦いへとシフトし、本来、求めるオロチシステムは二人が幸せになる為だったというのに、オロチすらも愛に生きる巫女への嫉妬に飢えて”巫女を殺す”ことへと何もかもが時間が経過するたびに何もかもが変わっていってしまったというのは大きな皮肉を込めた愚かしい世界。
 だがアメノムラクモは、それを覚えていたが、いつしか方法は過激な物へと変わっていったのは、アメノムラクモのオロチだった巫女に対する愛憎への心そのものだ。オロチの生み出す機械仕掛けの破壊神は全てにおいてオロチシステムとアメノムラクモシステムは同一の存在。
 オロチシステムと言うのも、そう考えるのであればオロチが己のことをゼロからやり直すために作ったものがいつの間にか妄執と憎悪に取りつかれて、あの醜い姿を生み出したのだと思えば創った理由に筋が通る。それがただの邪神の玩具になってしまったのは悲しい皮肉とでも言うべきなのだろうか。いや、世界をやり直しても自分は自分でしかないということに対する怒りが、今の暴走を産んだのだろうか。
 光と闇、互いがあるからこそ、互いが共存できる。だが、それゆえに螺旋のように交わる。オロチがいるからこそ、アメノムラクモも存在する意味があり、アメノムラクモがいるからこそオロチは生きる。
 そんな関係でありながらも、最初は肉を持った人の形を持っていた二人の巫女の存在。同じ存在、それは人間の心の諸さを表しているようにも思える。
 「だからと言うわけではないけれど。」
 剣神とて全くの無自覚ではないし、こうなることを望んでいたと言う部分があったからこそ姫子と千歌音の二人には好きにさせていた部分もあってのことであった。
 「そうして従順に、貴女に従いながらも徐々に力を身に着け、私達は愛し合った。」
 ならば、せめて自分達が、その無限に活きるであろうオロチを倒すために。オロチに抱いた恋心が自分への白銀の巨人へと変わった存在意義であり、剣神はオロチシステムと繋がった存在である。オロチの復活の予想以上の速さは存在意義の消滅を恐れ、いや浄化を求めるアメノムラクモの感情の暴走。オロチと言うのは自分に近い絶望を抱いた世界と人に絶望した人が何もかもを憎悪に任せて邪神になったもの。だからこそ絶望した人を味方にするという行為は自分の駒としか見ていないからこそ平然と切り捨てることもできる。人を人と思わぬ鬼畜の所業を平然と行うことが出来るのだと考える事も出来る。
 「それじゃぁ、オロチやアメノムラクモって?」
 「過去、一番最初に神無月の巫女と呼ばれた存在の慣れの果て。私達の、あり得たかもしれない可能性の一つ。」 
 異世界では巫女だった二人。
 だが、それは、この世界の人として姫子と千歌音の間には何も関係の無いことだったが、あり得るかもしれないもう一つの世界の自分を見てしまえば、この結末はあり得たことかもしれないと思考して新たに自分を強く持つ。その二人の過去、ああいう禍々しく悍ましいものになるくらいのものなのだから、相当な苦痛だったことだろうとは思う。
 だが、姫子と千歌音は根本から、この二人は許せない存在でもあり、敬意を払う存在でもある。なんであれ、多少の哀れみを持とうとも自分達の間を引き裂いた根幹的なきっかけを作ったことには変わりがないからだ。
 「では、まいります。」
 そうして姫子と千歌音は今までの自分達を繋いでいた存在を切り裂き、光へと変えた。
 だが、それを好機とみていたかのように、とうとう、並行世界でのエネルギーを取り込んだオロチが復活し、切り裂いたアメノムラクモを取り込んでオロチシステムの修復と再起動のために動き出す。
 だが、アメノムラクモを取り込んだところで、それはどうなるというのか。アメノムラクモならば、大喜びをしているところかもしれないが、それはもう姫子と千歌音には解らない。愛するパートナーと死して、こうして一緒に幸福に生を全うして統合出来るというのは幸せだろう。平然と邪へと落ちることで一緒に幸せになる。
 願っても無いことだろうが、その取り込んだ力は多くの仲間達を呼んでも、それはアメノムラクモを取り込んだ分、とてつもなく強大な力だった。
 そこで二人の巫女が願い召喚されたのは、王、伝説、神に正義と認められた人の名前を持つ、外部の世界の神の召喚である。ノアの巨人から託された力を最大出力まで使う事であり、オロチシステムとアメノムラクモシステムに囚われた世界以外の神を召喚することによって、オロチとの戦いを、この世界で終わらせ並行世界に逃がすことを許さず。
 王の巨人と伝説の巨人、そしてノアの巨人は最後にオロチが他の世界に逃走しないように宇宙全体にバリアを張ることによって、巫女たちの戦いを限定的な場所でのものにする。さらに、三体の巨人の光の力を受けた真剣神天群雲剣は残存していたオロチシステムの残骸を跡形もなく消滅させた。
 「これが……ママたちの歴史……」
 「そう。私達の大まかな流れよ。」
 「話を聞いてるだけでも頭がくらくらしそう。」
 そうして最後にオロチが復活したのはいつのことだっただろうか。世界をオロチシステムからの呪縛を解放され、人と世界が当たり前のように生きて、当たり前のように崩壊する世界。この世界は何度も外界のシステムではなく自然の摂理で崩壊しては再生して姫子と千歌音が望んだような世界へと変化した。
 オロチはアメノムラクモと言う早期に復活させるシステムを失い、様々な形で名前や容姿を与えて使徒を使い登場しては地球を狙う。その理由が、どこにあるのかすらもわかってはいないのだろうが、それは本能的なものなのだろう。
 ある時は、宇宙皇帝を名乗り、ある時は宝は貪欲な宇宙海賊を名乗ったり、混沌と破壊を司る絶対悪、世界を狙う巨大な悪、宇宙の誕生とともに生まれた不老不死に近い存在と多くの姿と形を変えて侵略しては世界は自浄作用を生み出しては対立を生み出し宇宙は試練を乗り越える。
 「そんな中で、私達はオロチの本体が蘇ることを感じたの。」
 「敵……」
 復活したオロチがオロチシステムの復活の為に生み出したのが、オロチがシステムを復活させるように仕組んだシステムの一つルクス・エクスマキナである。最初は、そのシステムの危険上、姫子と千歌音は仲間と一緒に暗躍しつつ破棄、または建造中のものを破壊していた筈だった。何万年、この地球が生きて死んで再生を繰り返すうちに溜まった負の感情が蘇り、頭を潰しても潰しても蛇のように死ぬわけではなくしつこくオロチが復活する。人の負の情念と言う餌がある限り、何度でも。
 「ルクス……エクス……マキナ……」
 ユイの人生を狂わせるほどの危機を抱いた、あの忌まわしい反吐が出るほどの怒りが出てくる思い出すだけでも禍々しい人としての感情が暴走してしまいそうなほどに怒りを呼ぶシステム。
 既に人類はルクスの力に手を出していて、その力によって航空力学や戦車といった従来の兵器を超越した人型兵器の開発に着手していた。それが、レガリアと呼ばれることになる兵器である。しかし、その力があろうとも開発されたばかりの人型兵器では怪獣の前では圧倒され、これで終わりかと人々が思われた時に、姫子と千歌音、そして二人が作り上げた武装集団が舞い降りてオロチに心を支配された怪獣軍団、別にオロチ怪獣を圧倒し、さらにオロチそのものを封印して一度は、この世界に再度、平和を取り戻した。
 しかし、オロチが完全に封印されたと思えず姫子と千歌音は自分達の故郷があった地球に暫く留まることにした。
 久しぶりに故郷である地球は前述の活躍もあってか比較的受け入れられて、生活も今までに比べれば遥かに楽なった方だと、今にして口にする。そして、ここでルクスの力の応用を知ることで様々な技術を作り上げた。そのうちの一つが女同士で子を為すことである。
 「貴女たちの時代がやってきたのよ。」
 ノアの巨人たちから力を受けた二人は、ある種の神に近い存在へと変貌しながら、この世界の自浄作用として、ある程度のことを可能にした。子を宿すことが出来たのは遥かに大きい。人を超越した存在でありながら、人の持てる当たり前の幸せをこうして掴むことが出来るからだ。
 「でも、ここからだったわ。いえ、これを狙っていたのかもしれない。」
 「これを?」
 「私達の幸せかな。」
 人としての生活を久しぶりに送る二人の平穏の人生の中で生まれた最初の娘が姫宮レナ。レナ・アステリアと名付けられた少女である。
 「この子は、レナ。」
 「王を意味するレジーナや、平和を意味するサリナの愛称ね。ヘブライ語では「喜び」を意味する名前。」
 「この子は幸せになるの。」
 (これが私の生まれた日……)
 自分で自分が生まれた瞬間と言うのは神秘的と言う言葉以外、言葉が身体を血液のように身体に流れなかった。男と言う生物を用いずに女同士と言う夫婦の中で真剣神天群雲剣の金色の空間の中で二人が交わり産まれた姫宮千歌音と姫宮姫子の第一子。まさに生命の神秘と言う言葉を諸に、その心の中で受けていた。
 ソレと、同じ時期のことである。オロチの使徒が地球で死したのちに、その因子を吸収したのかの如く、様々な要因が重なり生まれた、所謂、怪獣と呼ばれる巨大生物の目覚めである。オロチに本能や何もかもを支配された存在。怪獣と言う存在の本能に見事なまでに優秀な指揮者に演奏される演奏者のように、その全ては背後にいる存在に奏でられるように生命の尊厳を束縛されて、逆らえば果実を潰されるように命と言う名の果実を何もなかったかのように潰されるオロチ怪獣は、再度、地球に魔の手とも言うべきオロチの手が伸ばして、オロチ怪獣はレナが生まれたタイミングで。
 復活した
 「こいつら……」
 「純粋に破壊衝動を突き動かされた怪獣だ……」
 超古代怪獣と超古代竜と超古代鎧獣、青い悪魔と赤い悪魔のような怪獣が都市を蹂躙しながら巫女を殺せと引き寄せられるように真剣神天群雲剣を暗示をかけられたかのようにつけ狙う。
 姫子と千歌音の真剣神天群雲剣は地球を守る為に出撃し、怪獣から一つの都市を護り英雄として扱われることになる。そして、これからレナの生まれた世界で暗躍したオロチに本能を支配された怪獣に両親を殺された4人の少女、ケイ、サラ、ティア、ノアを養子にした。
「 この頃から、オロチが……」
 「そうね。奴は、何かしらの暗躍を常にしていたわ。」
 再度の復活に姫子と千歌音もそうだが、守る為の戦いを強いられたのは単純な破壊と違い、難しい。
 戦略を覚えて攻め込んでくる。オロチの支配に囚われた怪獣軍団は様々な世界を破壊して、人の絶望の感情を取り入れて己の復活の糧として取り込んでいた。
 「デュァッ!!」
 「らぁっ!!」
 だが、その存在を良しとしないかのようにミッションと称して戦士の頂と言う場所から命じられて来訪した蹂躙する操られた怪獣への恐怖に対して救いの祈りを求める人々の声を聞いて来訪した銀河の風来坊と、単独行動をしていた凄腕の傭兵の二人。
 青い悪魔と赤い悪魔を一撃で破壊し、それは、初めて出会うノア、伝説、王の巨人以外の力を持った、まだ生まれたばかりの大いなる可能性を持つ存在として君臨した極めて危険な光と極めて危険な闇を持った二人の男だった。
 「あ……」
 レナは、その二人に見覚えがあった。
 銀河の風来坊と傭兵の二人には幼少期に遊んでもらったりと、色々とケイ達を含めて世話になった思い出がある。
 片方は心の傷がズタボロになる前、もう一人は心の闇の問題に立ち向かう前での、強くはあるが未熟な戦士。
 どこか、過去の自分達と被る二人の男の存在は、この世界の地球を守る為にどうなるか、それをレナは知らない。
 ただ、レナを含めて、ケイ達は、彼らと遊んでもらったことを覚えている。そうしているうちに二人の男も抱いていた心の問題が払拭されるように、一時期は蟠りや隔てを忘れていがみ合いを忘れていた。レナ達の持つ幼さが、それを為していたのだろうと、これ以降の二人の男の軌跡を知っている姫子と千歌音は思考する。
 「さて、そろそろね。レナの知りたい真実が流れるのわ。」
 何もないと思っていた日に、試練なんてのは頼んでもいないのに訪れることがある。心臓に異変とか、そういう漫画にありそうな超能力チックなことなんて一切なくて、ただただ、いつもの日常と平和を謳歌していた分、すぐそばの隣人が持つ危険性というものに何一つ気付いていなかった。
 その日は何もないと思っていたし、いつものように日常が終わり、自分は友人たちと過ごして家族と一緒に寝て、いつも通りに終わるはずだった。でも、その日、学校から二人の母親の仲間で、レナともよく遊んでくれた仲間である地面まで付きそうな長い金色の髪と褐色の肌を持つ仏頂面の姉のような存在とツインテールで赤い髪で童顔な姉のような存在が傭兵の男と一緒に二人が姫宮レナとケイ、サラ、ティア、ノアを迎えに来た時、いつも通り今日が終わって、いつも通り、また明日が来ると思っていたし、それが当たり前だと思ってもいた。
 だが、そんな当たり前は怪獣がいる時点で、ありえないのだ。その日、空は夕方の朱色ではなく黒い鋼と地を焼き払う悪しき翼と宇宙悪魔が地球の空を黒く染めていた。
 設計段階で破棄されたはずのルクス・エクスマキナをオロチは己の空間の中でオロチに魅入られた人間を誘い作り出し、そして蘇り、多くの空を埋め尽くさんとする機械仕掛けの破壊神や空を駆ける不気味な巨大蟲や怪鳥を伴って、それは現れる。不気味に蠢く黒い空を前に、その不気味な軍団の中に、さらに不気味な存在が空から落ちてきた。
 それに……読めなかったこと……
 「私達が、この連中をどうにかします!貴女はレナ達をっ……!」
 傭兵は重傷を負ったレナ達を姫子と千歌音の元へと近くにあった車を盗み運び出していた。
 この状況、読めなかったと言えば、実質、その通りだ。
 言い訳しようのない状態に己の迂闊さがある。
 最初のオロチの登場から、数年、オロチが来ることは無かった。その中で久々の地球での暮らしは忘れていたものを思い起こさせたのだ。それは人としての幸福を二人のありのままで受け止めることが出来たからかもしれない。
 ただただ、何千年も生きているうちに欲しくなった自分の子供。
 ただ、何年も戦っているうちに人を超越した存在になって、こうして数えきれないほどの年月を愛し合いながらもオロチと戦うことに時を費やしてきた分、人として得られる幸福を忘れていたところがある。
 娘たちと一緒にいたことに気を取られていたと言えば、間抜けだが、事実、それをもって得られる幸福は二人に予想以上の安息を与えてくれたことへの気の緩みが生まれた悲劇は取り返しのつかないことへと繋がった。
 何分、オロチとの戦闘以上に難しい子育てから与えられる幸福は予想以上に姫子と千歌音を充実の時を与えてしまったのは何万年も生きて人を超越した存在となっても人としての幸福を互いを愛すること以外、忘れていた部分が続いた時代が続いたこともあるのだろう。だから、子を為すという幸せが何よりも幸福だったのだ。
 アメノムラクモで一度再生された世界では、そのような技術は、まだ無く、死ぬ前にできることは無かった。アメノムラクモを倒し、自分達が世界の自浄作用の切り札となって人ではなくなってどれくらいの気が遠くなる月日が流れた事か。忘れていた人として得られる幸福の中で生まれる隙を突かれ、それがレナ達への悲劇にも繋がっていく。
 「私達がアレを封印する。万が一の時のためにエリヌースのレガリアは作ったけど……出来るだけ、私達以外の誰かを契約させずに起動させたいわね。」
 完成した対オロチ用のレガリア、エリヌースシリーズは姫子と千歌音の乗る機体のコピーとして作られたものであり、それは姫子と千歌音の仲間である戦士達が乗り込み、最大限まで利用するのと同時に、万が一、この時代の人間が契約した時の為の機能もあり、第二のオロチシステムの封印機能と生命の持続機能を取り付けた兵器でもある。「おい!」完成したばかりの、そのレガリアを見て、思わず安堵のため息をついていた時だ。
 「!?」
 突如、全身にビリビリとした電流を直で浴びたような強い鳥肌が全身に走り、雇っていた傭兵が血まみれの愛娘レナとケイ達を抱きしめてきたのは母親としては実に精神を抉られるほどの経験だったと姫子と千歌音は隣にいる愛娘を見つめながら思い出す。そして、傭兵から告げられた、”ノアは既にルクス・エクスマキナの中に取り込まれていた”と言う言葉。
 この時の出来事が傭兵の男、ジャグラス・ジャグラーにとっての一つのトラウマになったとも言われている。力があるのに自分には無力さに悲観的になる。
 幸せなこと程、外部の力には弱くて脆くて壊れやすい。
 なにかが終わりを告げるとき、オロチの新たな肉体でもあるルクス・エクスマキナを伴って甦る。
 幸福に溺れていた未熟さを呪い、その幸せの絶頂にいたところで娘たちが重傷を負う母たちの顔は、今、こうして夢の世界の回想の中でも不快そのものであり、吐き気を催す邪悪を憎む表情が脳裏に焼き付く。
 一時の油断は何が起きるか解らない。
 それが杞憂になることもあれば、取り返しのつかない事態を招くこともある。明らかな後者を招いてしまった結果に目の背けたくなる真実の回想にスクリーンから今まであったような凛々しい顔つきから徐々に不気味な映像を見たかのように潜在的な恐怖や不快の感情に心抉られるような不快感を表に出した顔を浮かべている。
 (あれは……)
 当時、姫子と千歌音を助けていた銀河の風来坊を名乗っていた光の巨人がいたが、彼では明らかに力不足であり、苦戦も必至。レナを己の持つ力で治癒しようとすれば、全滅の可能性もある。
 「……レガリアと契約させよう。千歌音ちゃん。」
 破壊されて行く世界を目の当たりにして自分達の甘さが気の緩みが娘たちにもとばっちりを受けたことに後悔をした。長年、永久の戦いに身を委ねたせいで忘れていた人としての幸福。だが、その人としての幸福を手に入れて、束の間のデートで楽しんで作り上げた砂の城に波が覆い被さったかのように人としての幸福は忘却の海に流されてしまったのは、この世界の自浄作用である二人の巫女からすれば幸福が招いた大いなる不幸に他ならない。
 それが娘たちから恨まれるであろうという覚悟、自分の幸福に溺れていた感情の反省。
 今、この場所で治癒することも可能だが、光の巨人の力を受けたところで、それは大きな時間を有することになる。もし、娘達を治したとしても、その間に世界は終わるか、新たにオロチの良いように再生されるかだろう。
 三体の女神の名を冠したレガリアに契約させれば負った怪我は完全に瞬時に治癒されるだろうが、それ以上に人として生きられなくなる。
 「おい……だが、こいつに乗せたら、どうなるか解るだろ?!」
 「解っているけど……」
 姫子も、それが解らなかったわけではない。人としての成長が終わり、永遠に少女の姿で路頭に迷うことになるだろう。成長が止まった身体のままで、そして、オロチを封印するために無茶をすること、それに今すぐにでも出撃しなければレナの治療どころではなくなることも傭兵は解っていた。
 しかし、レガリアと契約させることは肉体の時間を止める代わりに、魂を永遠に解けることのない氷の牢獄に置き去りにするようなものだ。人としての意思はあっても、死ぬことのない肉体を、この無邪気な少女たちが得てしまう。
 だが、このまま通常通りに治癒すれば既に覚醒したオロチと、その軍団に世界は食われて崩壊を迎えるだろう。
 「姫子さんっ!千歌音さんっ!俺だけじゃぁっ!」
 光の巨人に変身した銀河の風来坊が助けを求めて、雄叫びに近い絶望の声をあげる。
 「でも、死ぬよりはマシだよ。」
 人の幸せの高調の時に、それを絶望させて崩壊させて、そうやって絶望を寄生虫のように産みつける。あの、レナ達と一緒にいた幸福な時間が、その時間そのものがオロチがこうして全ての世界を食らうための前兆だったと、何故、気付けなかったのか。
 それがノアの魂をルクス・エクスマキナの人質に取られることに繋がり、レナ達の重傷へと不幸の連鎖が生まれた時に、幸福が弛ませてしまてしまった、己の甘さを恥じた。奴は既に目覚めていた。だが、虎視眈々と巫女の絶望を狙っていたのだ。
 獲物を捕らえて踊らせ、隙を見せた意地の汚い獣そのもの様に、奴は、なにかが終わりを告げる時の鐘を告げることは無く。いや、崩壊の鐘は鳴っていた。ただ、この幸福が忘れさせていた。自らの未熟さと愚かさを呪い、狡猾な狩人は、その牙を研いで待っていた。
 「千歌音ちゃん……」
 姫子の決心は固い。
 今すぐにでも行かなければならない状況は解ってはいるが、レガリアに契約させる以外の方法で治癒をすれば時間はかかる。今、空の茜色を漆黒に埋め尽くすほどの悪魔の群れを前に、ゆっくり治療させていたら、いつ、奴らは襲撃するか解らない。巫女の血縁者をも根絶やしにするであろう奴らにとっては、格好の餌となるだろうし、しかし、このまま放っておけば出血多量で死ぬ。
 治療させている裏で守るように戦うにしても、それが絶対的な防衛力になるとは限らない。
 月の社に戻り回復させることも考えたが、その隙に連中が地球を蹂躙し終わり、この大地を不毛そのものにすることだってあり得る。それに、もしかしたら、この戦いの前に銀河の風来坊が倒されてしまう危険性もあることを考えてしまうと迂闊に、地球を離れる訳にもいかない。千歌音の中で動揺が走る。
 「私はね、千歌音ちゃんとの間に生まれたこの子が、千歌音ちゃん達と一緒に育てた、この子達が死ぬよりは遥かに良い。」
 時間があれば、最もベストな選択肢を選ぶことが出来ただろうとは思う。
 だが、狡猾な狩人の術中にハマった時には喉元に刃物を突き詰められた時と変わらなかった。
 姫子の強い意志が、母親としての強い意志が、助けたいという意思がレナ達の重傷を見て、そこにはめったに見せない怒りの感情があった。元よりケイとサラとティアの両親を殺したという、その人が出した残酷性がぶり返された部分もある。それ以上に、初めての自分と愛する子供の怒りに対して晒された痛みに対して、絶対に許さないという意思が見られた。
 (あの時の優しい顔を浮かべても、本当は……)
 その結果が、ルクス・エクスマキナとオロチの封印と共に一万年前の世界の崩壊を招いたが、最悪の事態は防ぐことになった。
 「レナ……ケイ、サラ、ティア、ごめんなさい。貴女達を牢獄に……」
 「どうして、謝ってるの……?ママたち、何も悪くないよ?」
 最後に、その二人の母は頭を撫でた。レナの頭を優しく。とても怖い状況に陥っているのに、レナは、その状況を理解しないまま、レガリアに乗せられていた。
 レナはアレクト、ケイはメガエラ、サラとティアはテイシスに。いつの間にか契約をさせられて不死の存在へとなっていた。周りは廃墟、そしてぱっくりと抉られた地面が幼いレナの目に映る。怖い状況になっているけど、不思議と怖くは無かったのは、両親と光の巨神がいたからだと、今にして思う。太古の文明が滅びにかかっている時、余りにも自分達は無知であり過ぎたことを、こうして第三者の視点で見ていると思う。
 幼い自分が最後に両親に抱きしめられながら、レガリアの中で眠りにつく。これが、あの世界において最後のレナが見た両親の姿だった。袴を着て、出来るだけ作った下手な元気づけるための笑顔を見せていた。
 大きな巨人の中で見る世界、最後に白い刀のような巨神が光の巨神と共に世界を直すために力を使い始めていく。
 大きな怪獣を、そこで見た。それは鉄を飲み込み、大地を吸収すると大きくなる巨大で異質な怪獣を見た。目の前で、それを見ていた時、レナ達は、ただ、レガリアのコクピットの中で見ていることしか出来なかったし、そして突然現れた巨大で大きな光が大地を飲み込んでいくことに気付いた時、初めて言いようのない恐怖に覚えた。
 それが、両親に二度と会えなくなることだと気づいたから。
 背中に走る悪寒、血の気の引く肉体、乾いていく喉、全身から血が抜けていくように意識を失ってしまいそうになる。強大な長く人の負の感情を吸い取った分、オロチは強く、姫子と千歌音と、その仲間たちは多いに苦戦することになる。
 (そうだ。ここで……)
 思い出したのは、あの時、レナ達はオロチの大攻勢によって重傷を負わされていた。護衛の二人が付いていたというのに、それでも光の巨人の力を受けたところで完璧ではないということを改めて知る。天災は突然、来訪するように、予想だにしないタイミングと巫女の使命を解っていながらも、子供を育てることに対する幸福に包まれていた事が生んだ隙。
 そして、母たちはオロチとルクス・エクスマキナの封印の為に全ての力を使い、ルクス・エクスマキナは三体のレガリアのキーで封印されたが、その余剰で産まれたオロチの抵抗によって強大な爆発、後にリムガルドフォールを呼ばれるほどの大きな爆発を起こし、街を強大な光が飲み込んでいく。本来、部外者である銀河の風来坊と傭兵は巻き込まれる前に姫子と千歌音によって別世界に飛ばされる。
 大地を揺るがすほどの目の前に広がる巨大な光の渦は、オロチの攻撃が直撃して三体のレガリアは衝撃波に巻き込まれて、その後は、コマ送りの映画を見ているかのようだった。
 爆発の中心地にいた姫子と千歌音はオロチの身体であるルクス・エクスマキナを三体のレガリアの中に封印したが、そこで力を使い果たし、二人や周りにいた二人の巫女の仲間は活動限界を迎えたかのように光となって光の粒子になって消えていく。
 「私、ここで、初めて……」
 両親を失う実感に気付いて慌てて手を伸ばし、二人の母親の乗っていた機体も手を伸ばしたが光に包まれた母たちの機体は粒子となって消えていく。なにかがあったと理解した時には、既にレナは一人、アレクトのコクピットの中で泣きじゃくっていた。
 突如の怪獣、いや、あれは、あの怪獣のような姿をした巨大な化け物はオロチだったのだろう。
 封印される前の鼬の最後っ屁にのような暴れる攻撃によって吹き飛ばされて、そこにはもう何もなくて、大地が海に沈み、アレクトたちは沈んでいく。それから、どれくらい経った後か、沈んだ大陸、海の中で永遠に近い年月を過ごしたときには、絶望に近いほど世界は変貌を遂げていた。
 世界は一度、やり直されていたのだ。
 自分の知らない歴史や、自分の知らない世界が広がっていて、サラとティアもケイもいない。そうして、どれくらいかの世界をレナが歩いたことか。誰もいない。両親がいないし、幸せだった世界が、全部、空の彼方に飛んで行ってしまった。
 気付けば身体は子供なのに精神だけが大人のように達観していく世界の中でレナは両親を憎んだ事を覚えている。既に両親は死んだと植え付けられた記憶。
 八つ当たりをしようにも、何もできずにただただ叫ぶことしかできなかった自分と言う存在をレナは両親と一緒に見つめていた。
 心に、そうした両親を憎まなければ、この誰もいない世界で絶望を生きる糧にしなければ生きることは出来なかったと、今にして思う。
 「薄れて言ったけど、でも、私は……」
 その絶望が生んだ心の不安定がレガリア、アレクトの暴走を引き起こし、リムガルドフォールを起こし、折角見つけた仲間と言う名の姉妹はヨハンの人体実験にされて。さらには最愛の人であるユイの運命を狂わせてしまった。
 「謝ることしかできないわ。」
 「なんで、記憶を封じたの……?」
 「記憶を封じたんじゃないわ。」
 「え……?」
 「自分からレナは記憶を封じたの。」
 「ママ……?」
 「嘘……」
 気付けば世界は静かになっていて、子守歌のような海の水が陸を撫でる音と一緒にレナは目覚めていた。レガリアのコクピットの中でじりじりと皮膚を焼くような不快な匂いが鼻を刺して口の中が渇き、余りの不快感に嘔吐してしまいそうなほどに、口の中にゴキブリが蠢いているかのような心地悪さがレナを襲い、「うぇ……」と、嘔吐物は出さなかったが、身体の中に溜まったなにかを吐き出すように、自分の中から何かが消えたのを、じわじわと鳥肌が立ちそうなほどの気持ち悪さを滲み出る汗と一緒に口の中から、何か、心地の悪いものを吐き出すようにドロッとした触れたくないものを出したとき、母たちは幻のようになって消えていて、嘔吐を終えた後に、頭の中で消えていく何かと同時に、瞳の世界の中に入ったのは今までのことは夢だと思わせるほどの眩しい程に憎らしい青空だった。
 レナのことを、まるでピエロだというように嘲笑しているかのようだ。今までのこと、何もかもが夢であるかのように何度も何度も考えても、自分の中の姫子と千歌音の記憶は、名前のないただの母親に消えていく。
 アレクトから受け継がれた記憶は、その扱い方と、このレガリアに対する呪いだけ。
 誰かが護ってくれていたような気がした。必死になって、誰かが。何もかもが、姫子と千歌音の中の記憶が泡沫のように消えていく。
 恐らく、母親は自分を守る為に死んだのかもしれない。何のために、レガリアの不死の呪いをかけたのだろうか。自分は両親から愛されていなかったのではなかろうか。そんな両親なら自分は愛されていんかったのかもしれないと、そうして、自分の母親は、そうして死んでしまったという新しい記憶を植え付けて、二人の母親を憎むことを覚えて本当の記憶は消えていく。姫宮レナは、ただのレナになっていった。
 「これが私達の歴史。」
 「貴女が知りたがっていた、私達正体よ。」
 出来の悪いアニメの総集編映画のようなものを見せられた後の感想に、どうすればいいのだろうか。宇宙と言う映画館の中で見た自分の姿は……


 「夢?私は……」
 泡沫のように夢の内容は消えていく。
 しかし、目覚めた時、そこには……
 今まで見ていた夢の記憶は何だったのだろうか。
 そして、これが、これから始まる新しい戦いの……

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