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マクロスLily Episode.6「ANGEL VOICE」

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はてさて、10月1日だから、神無月の巫女になるから、神無月のSSなのでは?と、まぁ、思わねーだろうけど、そう思う人も、このブログに来る人は思う人もいるだろうけど、どのみち、今後、やるかどうかわからないけどマクロスLilyの続きをやるなら園命の娘の長女と次女の名前は「姫子」と「千歌音」と、言う名前にする予定だったので、敢えて、ここで。
とりあえず、一応、これで最終回だけど、まだエピローグがあります。
姫千歌


 「凪沙?」
 その日、ランカスターの太陽は燦々と輝いていた。松村沙友理を襲名した一条流歌は、休業という形でランカスターに暫くはいたが、命の心を知るために再び芸能活動へと戻る。
 その様子は、まさに一条家のこじれた女に似てる。と、智恵理は評するほどで元気が無い。一条家の女はこじれると、そういう風になる。ただ、裏を返せば、それほど大切な人を心配していると言うことだ。
 ランカスターでは、そういう状況は変わらないと言うのに、凪沙は晴れやかな笑顔で外を見つめていた。年を取ったと言うのに、互いに若い肉体のままでランカスターで余生を過ごしている。これがセンターノヴァになった人間の人外的な力なのだろうが、そういう部分があるからこそ、どこか、超常現象的な力を持っている。
 そして娘である、園命が、この世界から消えたという報告を受けた。しかし、二人は生きていると完全に導かれた訳ではないと言うことを口にし、こうして帰りを待っている。
 「どうしたの?外に、何かある?」
 「あぁ、智恵理……」
 言われて、初めて気付いた。そういうような表情を浮かべて、「ひゃぅっ!?」智恵理は凪沙の尻を抓った。驚きながら、すぐさま智恵理は後ろから凪沙を抱きしめた。
 「もうすぐ、帰ってくるよ。あの子……」
 「え……どうして……」
 「お腹を痛めて産んだ子だからかな。」
 ふふっと、笑いながら、智恵理を見つめて凪沙は空を眺めていた。何かを掴み取ったかのような、キララを通して全てを理解する。母親としての、それこそ、本当に理屈の無い母親としての感が、そう訴えているのだろうか。ただただ、智恵理に感じることの出来なかったことが、凪沙には感じることが出来て、一緒に窓の外にある青い空を眺めていた。
 「ねぇ、私、命を助ける夢を見たの。」
 「智恵理も?私もだよ。」


 『お疲れ。命。』
 目の前にいれば、頭を撫でられている自分がいるだろうと、ミレーヌ・ジーナスの声が入ってきたのは、二人が戦う前夜になってからのことである。そろそろ寝る時間であり、流石に眠気がピークに達している己の身体は、これ以上ミレーヌの声が聞来とれそうにもなかった。
 最後に「お休み」と、言う声を聞きながら眠りにつき、キララの淡い光が自分を照らした時、ふと、眠りにつきそうな合間に、この1週間のことを考えていた。
 「だったら、私が二人の戦いを止めるほど凄い曲を作るから!1週間待って!!」
 この言葉から始まった曲制作はバサラを巻き込み、そして、Fire Bomberまで巻き込んで行った。しかし、この時代、良く頑張った物だと自分で言い聞かせたい。限界と感じたとき、もう少し先に行けると言う話を、乃木坂のオリジナルのメンバーから聞いたことを思い出して、限界を超えてから確かなものを作り上げたと言う感慨深さのような物は、この心に刻み込まれている。
 「疲れた……まさか、1週間で出来るとは思って無かった……」
 出来あがった曲を聞いて、思わず、そう口にしてしまうほど横にぐったりと倒れ込んで、思わず眠りについてしまった。決戦が始まる時間まで、後、数時間、暫く眠りにつきたくもなる。この1週間、バサラを含めて、さらにFire Bomberのメンバーに通信して協力してもらって完成した曲だ。
 1週間で、だいぶ無茶をしたとは思う。
 今までの拾い上げた歌の材料をおしみなく使い、そして、完成したものと言うものは、最終的に自分の力だけで解決する歌ではない物の、恐らく壮大になるだろうと、そういうことを思いつつ、あの二人のことを考える。
 切っ掛けをくれた二人の言葉が染み込み、気づかせてくれて、シビルが銀河に連れて行った瞬間に共有された三人の心。キララとプロトデビルンの力が共鳴し、そこで見せた3人の心の内と言うのは醜い下心もありながらも、それ以上の純粋な感情とでも言うべきか。ただ、それ以上に、そうでなければ、この今の情念を抱くことは出来なかっただろう。
 出会いがあり、そして、ヒントを貰い、あの世界の中で見た者が、確かじゃないにしても、自分なりの答えを創らせてくれた。未完成であろうとも、それは、とても尊いものだと自分の中で思う。自分で満足する答えを出せると言うのは、そういうことなのかもしれないと、そういうことを知って、一つ、大人になったような気がした。ここで、培った物を。この世界に来てからのことを思い出すと、それは輝かしい思い出と呼べるものでもある。
 そして純粋なほどに狂おしい愛情と言う物は一つの狂気になると言うことも知る。しかし、それを輝かしいものと感じたのは、あの二人が、そこまで外見的に美しいからだろうか。そうは思いながらも、ただ、向けられる愛情と言うのは嬉しいものだ。アイドルをしていた時の、研究生時代のことを思い出す。
 自分として見てくれたファン達がいたいうことを思い出して、なんだか嬉しくなった。ただ、二人が自分に抱いていた下心的な物は、当時のファンと呼べる存在は抱いていたのだろうと思うと、それはそれで嫌悪感的な物は出てきてしまう部分もある。
 ただ、それでも、陽美と美月の二人が、何故、自分に構ってくれたのか。何故、自分を……そこにある純粋な愛情。性格を知るだけでは解らないこともあるとは言うが、純粋な愛情と言うのは、一方的な心配であることを解っていながらも、ただただ、嬉しくなってしまうのはどうしてなのだろう。あそこまで愛情と言うのは浴びていて心地の良い物なのだろうか。
 「それが、好きってことなのかな?」
 だとしたら、自分の思いとて届いたはず。それでも、自分を巡って戦いをやめようとしないのは、そこまで人の抱く感情と言うのは愚かなのだろうかとも考えてしまう。
 かつて、プロトデビルンや、ゼントランと解りあえても、こういう状況は続くわけで。それは、また自分の世界でも。未だに人と人の間に蟠りがある。世界の歴史を見た瞬間、そういう部分をも垣間見て来た。ただ、それを繋ぐのが、この世界で言う歌と言うものであれば、それは、それで素敵な物なのだろうと、乙女チックなファンタジーに身を酔わせながら、意識を夢の世界に落とし込んで行く。
 「話がずれた。」
 そういう物を意識したことは、正直、無かったかもしれない。あの世界の中で、3人の意識が共有された時、その自分に向けられている愛情に、どうしても答えたくなったのは……
 「ミレーヌさん、これを人を好きになる最初の一歩って言ってたなー……」
 ふと、この1週間、この曲に対して綴った思いと言うのをミレーヌ・ジーナスに聞いてもらった時、彼女は、そう評した。そう言われてみればと言われれば、おかしいけど、あの体験をして二人を知ってから、妙に疼くモノが肉体に宿った。嬉しくて、言葉にすると少し恥ずかしいような、そういう淡い感情。
 少女が知った、その時、思えば母達も、この年齢で互いに意識し合ったと、そういう話をしていたのを思い出す。そして、そんな風に、今、淡い思いを抱かせた二人が戦うのは心苦しいと思ってしまうのも無理もないことなのだろう。世間的な物を言えば、そういうのはビッチだなんだと呼ぶのかもしれないが、人として、そういう風に好きになってしまったのは仕方の無いことだろうと自分に言い訳しながら、思えば、全ての出会いは全てが繋がっていたのだろう。
 二人が露骨に好意を前に出していたのに、それに応えようとしなかったのは……考えるだけで自分は子供なのだと、そういうことを肌で感じる。一定の距離でいることが大切だと思っていたし、いつの間にか、自分からそうしていた時、それは他人を不快な思いにさせていたのではないのだろうかと考えてしまう。
 いままで、気づくことも無かった、この感情と言う物を理解し、いつしか、全てのイベントを能面でも被ったかのように全てをこなしていた、あの日々と言うのはどちらにしても不快そのものだったかもしれない。それが負の連鎖となって、誰よりも、そうなることを求められたと言うのなら、それは、また因果応報的な何かだったのかもしれない。
 ただ、この恋愛と言う物を、まだ解っていないこ娘と言う立場を十重に承知しつつも、やはり、あの二人が争うと言うのは嫌だった。そこで、二人の喧嘩を止めるために思いついたことが、バサラを通して己の力と言う物をフルに発揮できると感じた、歌だった。
 「歌で、喧嘩を止める……まだ、私には、争いを止めることは難しいかもしれないけど……でも、二人に私の感情を伝えたい。」
 それでも、自分の真心的な物をちゃんと、捉えたい。
 「お前の熱いハートをサウンドにして届ければ良いんだ。そうすれば大丈夫さ。」
 寝言が聞こえていたのかバサラが命の頭を撫でた。
 「熱いハートか……」
 三人だけになった時、シビルとキララの力によって3人の心が通った。そして、命は歌った。自分で唄っていて泳いでいるような心地良さがあったこと。それが、高揚感なって身震いしてしまうのは熱気に包まれたような、これが恋であると思えてしまう。
 今まで、似たようなことはあったのかもしれないが、恐らく、この恋と感じた物は錯覚だと言われても自分を高みへ昇らせるための物。そうして抱いた恋心のような感情は、もっと二人のことを想いたくなるし、知りたくなってくる。だからこそ、その思いが頭の中でいっぱいになっている時の歌詞は、いつも以上に楽しく早くかけてしまった。
 これは、義務感ではなく、自分の抱く本当の心。
 しかし、今度はちゃんと出来るだろうか。また、通じずに二人が最悪の結果になってしまったらと思うと恐怖で身震いして自然と明日など来なければいいのにと思ってしまう。それでも、目の前の時計は刻一刻と進んで行く。こうしていると、器であることを強要される辛さを受け入れる前の明日が来ることへの憂鬱な、あの感情を思い出してしまう。
 正直、歌を作っている、この時期は楽しかったし、自然と、そのまま溢れ出る思いをストレートに歌詞に載せた。自分の中では、一番、良く出来た方かもしれないと口にしながら、まだ、義務感や、そういう物に囚われた殻に閉じこもってしまわないだろうか。
 そのことを考えると呼吸が乱れて不安に駆られてしまう。唄い方を忘れたカナリアである自分に戻ってしまいそうになった時だった。バサラがゆっくりとギターを優しく掻き鳴らしていた。その音を聞くだけで不安は取り除かれるような気がして、より、深い眠りにつきそうになる。
 何かを考えなければと言う思考は眠りに誘われ、意識は夜の闇と一緒に瞼を閉じて共に溶けていく。意識を眠りに委ねると、ここ最近の疲れがどっと出て来たよう気がして、そのまま、ゆっくりと眠りについてしまっていた。夢の中で、久しぶりに母達に出会い、姉達に優しくされる夢を見た。思えば、この旅は、いつ終わるのだろうか。
 意識が消える前に、そんなことを考えていたら、これまでのことが走馬灯のように頭を過ぎった。様々な世界をバサラと一緒に見た。皆、懐かしい思い出ばかり。Fire Bomberの人達にギターを教えてもらったり、別惑星ではプロトカルチャーが神と呼び慕われた光の巨人を模した巨神像を祀ったと言う遺跡を見学したり、そういう場所に辿りついた。これまでの時間は無駄ではないとは思うし、これから、それが試される。
 「今まで回ってきた人たちは、今……」
 過ぎるように出てくる、その旅の思い出の中……何をしているのだろうと、思い出を追体験して、優しさに抱かれたような気がして、そのまま眠りについた。意識を眠りにゆだねてから、どれくらいの思い出を巡ったのだろう。何かが語りかけてくるような声で、瞼を開いた先の世界は、真っ白な太陽の光に包みこまれていた。
 「あさ……眩しい……ウルトラマンが始まる……」
 この世界で見た巨大特撮ヒーローの再放送の時間を思い出し、バルキリーのコクピットに燦々と受ける太陽の光が完全に少女の体を叩き起こす。
 「もう、こんな時間……早い……」
 光が溶け込み体が優しさに包まれたかのような感傷と呼べるような物に完全に意識が覚醒した。惑星ARIAで受けた陽の光が、この太陽の光は、この世界に初めて来て一番心地よかった。
 これから、これから始まるのだと心地良い光を浴びて気持ちをリラックスさせて、周りを見渡せば自然や野生動物たちの優しい歌声が響く。地球と言う惑星の4分の1のサイズらしい、この惑星の朝の来訪を祝福しているかのようだ。
 惑星ARIAに住んでいる動物たちは、自分達の世界で見せた猫を素体としたかのような生物達が多い。並行世界と考えている、この世界と言うのは恐らく根本と言うのは変わらないが人類の出生など、そういうのは変わらないのだろう。人間と言うのが生まれるのは変わらない世界。あの銀河を巡る旅行の中で見た世界の旅と言うのは気が狂いそうになるとでも言うべきか、そのよく解らない感情、ただ、何処か、その後の経験は自分を新たに一歩自分を前に進めるための出来事である。
 両手を握ったり、開いたりして、今、自分が此処にいると言うことを確かめた。足を動かし、そして首を回し、その瞳で世界を見る。
 やれる。
 大丈夫だ。
 そう自分に言い聞かせたときだ。
 「も、もう、始まろうとしてる!?」
 爆発音がした瞬間、流石に焦り、バサラとシビルを叩き起こし、急ぎ支度をし終えて少女はバルキリーに乗り込み戦場に向かう。あまりにも深い眠りだった。ここは惑星ARIAの裏側。マクロス・リリィと反対側の場所にある場所。そこに、もう一つの決断を抱いて動きだす。
 歌は楽しむこと。
 忘れていた感情を取り戻し、胸に刻みながら。


 1人の少女が光に包まれ、宇宙と共鳴した時、そこにいたのは殻に閉じこもっていた少女ではなく少女は人ではなく翼を持った人になった。光の人、自分が守りたいと思った、本に影響された姫様そのもの。そこにあったのは彼女を見た瞬間と言うのは恋人として結ばれた時のキス以上の快楽だったと陽美は自覚していた。そして、その少女を欲しいと思った。誰よりも独占したいと。
 「うぅん、贅沢。」
 恋人と言う名の新型可変戦闘機の資料に目を通しながら、目の前の純白のボディに黒のラインが入ったVF-30MIKOTO(陽美名称)……正式ペットネームはスメオオミカミのデータを見つめながら、本当に先行量産型の文字が怪しくなるほどの性能に感嘆していたのと同時に、こういうマシンを回されたことを嬉しく思う。
 何度か完熟飛行をしたものの、すぐに、この体に染みついたと感じた瞬間、心地よかった。自分の思い通りに自分らしく飛べるマシンというのはありがたいものだ。VF-25、27+でも得ることのできなかったエクスタシーのようなものを全身で感じたと樹里に伝えた気は「変態」と言われたことを思い出した。
 「顔も良い。」
 VF-31が正式採用量産型なら、VF-30は先行量産型である。VF-31は、これよりもコストを抑えてつくられるのだと言う。その分、7機しか製造されていないVF-30は贅沢に贅沢を駆使したマシンであると言っても良いだろう。モデルは、かつて地球上に存在したという無人戦闘偵察機FRX-99がモデルになっているという。 コクピットは非透過選択式の装甲キャノピーを採用しており、バトロイド形態と同様に外部カメラの映像をコクピット内壁に投影する方式。
 それゆえに、特別性もあり、全7機の、このマシンは1機1機にペットネームがあるのも特徴である。既に生産ラインには入っているのだろうが、ここでの30型のデータを取得して正式採用としての量産型としてVF-31ジークフリードのポテンシャルを完全な物にするのだろう。試験管の中で知識を埋めこまれるベビーのようだと口にした。
 武装は新型重量子MDEビームガンポッド、頭部の左右に2門ずつある12.7ミリ対空ビーム砲、日本刀・百合華(陽美専用)、ガンポッド・ブレード2丁、外翼エンジンポッド・ビフォーズMBL-02 マイクロミサイルランチャー、外翼エンジンポッド・MDEビームランチャー、マルチパーパス・コンテナユニット、小型無人攻撃機・言霊が装備されている。
 「ISC(慣性蓄積コンバーター)」や「EX-ギア・システム」は標準装備、「フォールドクォーツ」関連の装備も当然の如く標準装備されている。SMSに所属する7人のパイロットが選ばれ、この先行量産型であるVF-30は7機が製造され、そのうちの1機が陽美に回されたと言うのは、それほどパイロットの腕は性格等はある程度考慮されて信用されていると言うことでもある。
 「あ、一人はイサム・ダイソン中佐らしいわよ。後、あんたの爺さんと婆さん。あとは、わかんないけど。ママって可能性もあるんじゃない?」
 「ママか。ありえそう。パパの場合もあり得そうだけど。」
 「そですか。」
 VF-19と同様の前進翼と、VF-27と同様の4発式エンジンが特徴的であり、左右の脚部と外翼に各1基ずつ、計4基のステージII熱核反応タービンエンジンが搭載されている。さらにフォールドウェーブシステムも得てMDE関連の武装も安定を図ろうとしたものの、そう簡単に希少価値の大きい1000カラット級の超高純度フォールド・クォーツが7機分も手に入るわけが無く、純度が下がるし、サイズも違うフォールドクォーツを使用することとなった。
 開発主任はとうとう、VF-30でYF-29、30を越える性能のマシンを作れることは出来なかった。と、嘆いていたらしい。
 こればっかりはどうしようもないことだが、フォールドクォーツと言う部分を抜いた面に対しての性能は最新鋭機らしく、YF-29、YF-0を凌駕している。
 純度の落ちるフォールドクォーツの欠片を利用して、なんとかMDEビーム兵器を利用してもエネルギー切れと言うわけには行かないが、回復よりも消費のほうが上回るというのが現状ともいうべきか。ただ、それでも、29の特徴であるスーパーパックが標準装備になっているマシンであり、さらに専用の従来のスーパーパックとアーマードパックを統合したオプションパックであるブレイヴパックまであると言うのだから、これで、高純度のフォールドクォーツまで求めるというのは、本当に贅沢だろう。
 ただ、ここまで高価な物になるのなら、正規の量産機として採用されずにデチューンバージョンと評しても良いVF-31が正式な量産機として認められるのも無理はない。高すぎるのだ。そして、陽美的には、このVF-30というのは。
 「VF-31って、顔が不細工なのよ。でも、このVF-30はVF-19みたいで、この子は良い。」
 「顔が不細工ね……面だけで扱うかどうかを決められちゃ、こいつも不安なんじゃない?」
 「そうかな?美人面のバルキリーは長持ちするのよ。VF-1や、VF-17、VF-19だって、そうでしょ?」
 「あー、はいはい。あんたの面食い好きは女好きじゃなくて、バルキリーにも出てたわね。」
 「頭の左右に対空ビーム方が付いてる子で良かった。エクスカリバーもそうだけど、やっぱ、こういうタイプが一番良いのよね。」 
 「そうですか。」
 ペットネームは生産されたVF-30の1機1機に日本神話の神々の名前をつけられており、それほどまでに高価なマシンと言うことが名前からも感じることが出来る。
 「……何で、また?」
 「作者の趣味じゃない?」
 YF-30の思想も取り入れられており、マルチパーパス・コンテナユニットは、その代表格と言っても良い。ただ、VF-30はYF-30に比べて、上方に展開・可動するだけではなく、期待的な見栄えも考慮されて両腰にコンテナが展開されるように装備されており、そこから、片方18門のマイクロミサイルポッド、合計全36門のマイクロミサイルポッドと、36門MDEビーム砲にも換装が可能と言うYF-30の長所も受け継がれている。
 全てのバルキリーを総括し、次世代へつなぐためにヤン・ノイマン主任の元に主軸で造られた新次世代全領域可変戦闘機と、でも言ったところか。この機体とYF-30を元にして、これから、VF-31は生まれていく。VF-30は、それに比べて個々の癖の強すぎるエースパイロットではVF-31では満足できないだろうと言う配慮から生まれた、ある種の、スーパーエースパイロット専用のバルキリーと言っても良いだろう。
 まさに、最新鋭、YF-29とYF-30やら、様々なマシンの良いところを乗せた分、当然の如く高性能になり、その高性能を突き詰めた結果、 すぐにヒステリーを起こす人間の如く扱いが難しいマシンは操縦する人間を選ぶ。しかも、普通のエースパイロットではなく、スーパーエースパイロットと呼ばれるほどまでの腕を持っていなければ宝の持ち腐れその物だ。
 普通の人間が操るのであれば、それこそ、真に改造人間にならなければダメだろう。噂ではとある事件に置いて、イサム・ダイソンが搭乗したYF-29や、試乗してみたYF-30の評判に嫉妬したヤン・ノイマンの意地とヤン・ノイマンの設計した19シリーズの信者の暴走と言う噂もあるが、それは定かではない。それでも7機揃えば戦局が面白いほどに覆りそうな超高性能マシンを作り上げたのは流石とも言えるだろう。
 武装面に置いての特徴は銃剣スタイルになっているアサルトナイフとガンポッドの特徴を併せ持ったガンポッド・ブレード。これに関しては言うまでも無いし、大型の日本刀に関しても言う必要もないだろう。新型重量子DMEビームガンポッドは、YF-30のものよりも出力が高く、用途は全てYF-30と同じだが、エネルギーを多く食いすぎるために専用のエネルギーパックが必要であり、ポッド本体に5つ、場とロイド変形時の腰部後方のアーマー左右に各5発ずつのエネルギーパックがある。本来のフォールドクォーツ搭載型であれば本体に接続すれば、無尽蔵に撃てるのではあるが、そうそう上手くいくことはない。
 また、活動時間は、そういう攻撃力のある武器を多めに搭載したこともあって、VF-25よりも少なく、短期決戦型とも言えるだろう。そして、このマシンの特徴の一つは言霊と呼ばれる小型の無人攻撃機を随伴させることもできることもある。RVF-25のゴーストよりもさらに小型で、3門のレーザー砲門を持ち、本体から離れた標的を攻撃することが可能になっている。VF-31の周囲に展開し同時に攻撃したり、VF-30本体がドッグ・ファイトで後ろを取られた場合に、本体を援護するなどの用途がある。
 VF-31本体1機につき、最大5基の言霊を同時に随伴させている例が確認されている。そして、ここまでの物を自在に扱うのだ。ある程度の自立型人工知能を搭載し、さらに細かい命令を実行するために簡易的なBDIシステムも搭載されている。しかし、ここまでの物を使用すると言うのは非常に高価であり、コストが非常に悪く、そういう面でも課題が残るマシンである。
 先行量産型であるが故に試験的な装備も追加された。と、言う部分もあるのだが。正式量産型であるVF-31は、これのデチューン版としてマルチドローンプレートなるものを採用するらしい。
 そして、これが後のVF-2SSのスクアイアーとして採用されるのだが、それはまた別の話だ。
 「昔、ガンダムってアニメでファンネルって武器を使ってる奴がいたけど、これは、そういう感じかな?」
 「まぁ、そうね。ついでに、これ1機の生産コスト。」
 「……こいつは、勿体ないから、あまり使用しない方が良いかもね……」
 「そう、ね。一機でゴーストが5機が買えるらしいし……」
 「マジで……?」
 「えぇ……ホント、好き勝手やり過ぎ。こんだけ、贅沢を詰め込んじゃ使いこなせないっての。あ、でも、あんたは出来るか。」
 「ん?」
 さらに、試験的に関節駆動部にゼントラーディ系のパワード・スーツの技術が使われており、変形時における構造上の脆弱さを克服しており、変形時間も短縮されている。まさに、至れり尽くせり、先行量産型と言うのをいいことに好き勝手詰め込みすぎたマシンであると言えよう。
 また、余談だが、VF-27δ+のデータも流用されているため、無理なく武装としての日本刀を使用する時にかかる負荷を大幅に軽減している。もっとも、ここ最近の整備で知ることの出来たことではあるが。最近、地方で起きているヴァール現象なるものに苦しむ者たちの浄化のために結成が準備されているアイドル、それらを警備する小隊にフォールドクォーツ搭載のVF-31が制作されていると言う噂もあるが、その真相は不明。そんな辺境でのことよりも、此方のことが重要と言えば、それまでだが。
 「それで、あいつのバルキリーのデータは?」
 「あぁ、生産ラインは完全に、30とは違う独立したものね。どこぞのマクロスで開発した30のデータを盗んだものか、どうか。それとも、データを互いに交換しあって作り上げた。ってところだけど、試作段階で打ち切られたトレッドシリーズの試作機のブレイバーまで装備してるし、相当弄ってるんだろうけど。あんたの話が本当だと、こいつ、いきなり最終決戦仕様で出なきゃいけないんだけど。」
 「ってか、見ただけで、そこまで?」
 「そこまで……。伊達に戦闘機マニアをやってんじゃないのよ。あのクァドランで、死者を出さなかったとはいえリリィに所属してる新統合軍の連中、どれだけ血祭りにあげられたと思ってるの?」
 「……結構、ヤバい?」
 「プライド、ズッタズタ。新統合政府なんて、何回も地球に打診してるけど、明確な答えは出てこないし、艦長なんてもう大変よ。嫁のところに帰れない、下手に色々と出来ないーって。」
 「あぁ、そう。」
 「興味ない感じね。」
 「そこまではね。」
 「後、あんたと戦うバルキリー。試作段階で10機製造されて、そのままSMSじゃ打ち切りになったAFC-01レギオスの血まで入ってるんだから。こいつ。とはいえ、独立犯罪国家と化したマクロス・ロベリアじゃ、こいつが主力だったようだけど。」
 「マクロス・ロベリアって……」
 流石に驚いた顔を見せる。良くない噂は聞いていたし、何か悪いことでもするのではないか?と飛び交っていたものの、直前に滅びてしまったいわくつきの船団。まさか、それを潰したのが連中だったとは陽美も流石に驚かずにはいられなかった。
 「そう。あんたと戦う海賊がぶっ潰した奴。メカ事情通からすれば、レギオスを使用してるマクロス船団なんて、そこしか思いつかないし、そこから奪ったんじゃないかな。」
 「それを見ただけで判断できるの、あんただけだと思う。」
 基本性能はメサイアを追い抜いていたし、カタログスペックだけ見ると27すらも凌駕していた。レギオスと言うペットネームが付けられた、そのマシンは追加兵装のアドバンスドパックだけでなく、指揮官用可変戦闘支援機AB-00ブレイバーと一般兵用可変戦闘支援機AB-01トレッドと言う今までのアーマードパックやストライカーパック、スーパーパック等のオプション兵装を一纏めにした支援爆撃機まで開発され、1セットとしての運用を目的とされた物の、その分、コストはVF-25の5倍はかかるようになってしまった。
 だが、レギオスシリーズとブレイバーシリーズが一つになったアタッキング・フォーメーションから生まれる絶大的な火力は脅威そのものと言っても良いが操作性は悪く、使いづらい期待だったと言う話しがある。特に、レギオス最大の特徴であるアタッキング・フォーメーション時は機動性の低下を招かないように各部ブースターを装備して従来の機動性を保ってはいたが、結局、その制御の難しさによりアタッキング・フォーメーション時の操作性は劣悪。
 また、活動時間の少なさと言う部分を見て競争相手であるVF-25メサイアの汎用性の方が高いと言うことで、コスト関係も含めてVF-25メイサアが採用されたが新星インダストリーが、このレギオスの性能に危機的状況を感じて賄賂を送ったと言う話だ。どの道、レギオスを採用していた時点でコストが莫大だし、統合軍の兵には扱いづらい兵器になっていたとことを思うとメサイアの採用は正しかったのかもしれない。
 そのYF-XXシリーズと曰くつきだが慣れればルシファーをも凌駕する強力なAFCの混血児を相手にするのだから、面倒と言う樹理の言うことは解る。
 「さらに、バルキリーを脳波で遠隔操作か……」
 「まさに、贅沢だらけのバルキリー対決ね。しかも、それが18にも満たない1人の少女を巡って……聞いてるだけであほらしい。これよりも、私は私の乗るVF-31のことが気になるけど。」
 樹理が溜息を吐きながら、こんなことのために、この高価なバルキリーを使うと言うことに対して、前にもとあるファイルで見た事件を思い出す。最新鋭のバルキリーを使って派手な喧嘩をする。それをやらかしたのもイサム・ダイソンと、その親友だったと、とある人の話を聞いて思い出す。
 「……ああいう艦隊がギャラクシー艦隊みたいに宣戦布告しなくて良かったわよ。」
 考えてみればばかばかしくなって、その話題をすぐに樹理は切り替える。表情の変化に気づくことも無く、陽美は単純に返事を返した。
 「解る。」
 下手すれば、あの艦隊の戦力はゼントラーディ軍第118基幹艦隊レベルの戦力だろう。
 「悪い奴では無くて良かったけどね。」
 樹理が能天気なことを言いながら、VF-30の調整に入る。
 「噂じゃ、新統合軍か、ブリタイ直営の、そういう機関だ。って噂もあるし。」
 「それは……気のせいでしょ。」
 「まぁ、かもしれないけどね。」
 「あと、あいつ、悪い奴だと思うよ。無理やり、人の女を自分の女にするんだから。」
 「あんたも同じだよ。ただ、嫌いなだけでしょ?」
 「そう?」
 自覚は無いのだろう。天才という物は。
 「あんたさ。あの子の心のこと、考えたことある?勝手に盛り上がってるけど。」
 「んー、でも、それは、ちゃんと落としたし。」
 「どんな手を使ったのやら……」
 「樹理には解らないこと?」
 「そうね。解る気にもなれないわ。」
 淡々と続けながら、命を自分のものにした瞬間、どういうことをしようかという妄想を繰り広げる。ただ、考えていた時、ふと忘れていたことが脳裏によぎる。
 「そう言えば、隊長は?」
 「まぁ、今回のことについて色々と根回し。今頃は艦長とベッドの上で、交渉し終わって仲良くやってるんじゃない?」
 「あー、そうなんだ。」
 そう言えば、あの時もあの時も出撃していたと言いつつ、すっかり忘れてた。
 「あんた、酷い女ね。とりあえずは、この戦いにリリィ側が勝利すれば惑星ARIAから手を引くとか、そういう条件だった筈。まぁ、良くは覚えてないけど。」
 往々にして、勝者の条件や、そういう物は忘れやすいものがある。だが、陽美はこれからの勝負に比べれば、上の勝手に決めたことなど興味はなかった。あるのは、命を、この手にする権利を得るということ。


 「勝つわよ。」
 両手で頬を叩き、その人は目の前にいる。
 目の前のバルキリーを見て口にする。追加武装の性質故に、一般的なバルキリーよりも大型のVF-XXゼントラーディアン・バルキリー、愛する人の名前をもじって「MIKOTO」と名付けた、この兵器、相手側の……
 「VF-30と渡り合えるほどか。」
 「カタログスペック上では。さらに、レギオスの血まで混ぜたので、それ以上だと思います。」
 そうして、口では言うものの、声は普通に重みのあるような言い方だったが、あえて触れずに美月は話を進めた。美月の中にある、その先にある命との甘い生活だけを思い浮かべる。
 とはいえ死んでしまえば、それで終わり。あの女は、今回のことで、余計に自分を殺しに来るだろう。そう考えると背筋に快楽に近い電流が流れてくる。何せ、こういう感じの物は久しぶりだ。命のやり取りと言うのは、何故、こうもと思いながらも、その表情を察したのか……
 「本当は、こういうバカなことはやめていただきたかったんですが。」
 釘を刺すように先ほどまで説明していた技師が、この艦隊に所属するメンバー全員の気持ちを代弁して、そう口にした。
 「ごめん。」
 本来、このような死ぬかもしれないバカなことをしてしまえば、自分達は路頭に迷うと言うのを平然と口にする。
 「ホントは、こんな星はぶっ壊してでも連れていくべきだったんだけどさー。でも、あの娘、泣いちゃうでしょ?」
 「まぁ、そうではありますが。」
 それでも夢中にさせた女は、反省しつつも、反省したそぶりの見せない台詞を吐きながら、コクピットに移動した。これで、暫くはバカなことは出来ないだろうと思いつつも、勝利を願う女たちの希望を背に受けて出撃する。既に独立国家としても動くことのできる、この艦隊に、これ以上、何かを得るものなど女以外はありはしない。
 世界征服なんて大いなる欲よりも、人間としての性的欲求と愛を先に求める。とりあえずは、陽美に殺されようが、陽美を殺そうが新統合軍のアグレッサーという形で処理された、この海賊集団は、これで負ければ正式なアグレッサーとして新統合軍に所属されてしまうことになる。それでも、自分達の人権と言う物は、今までの功績を湛えて帳消しになるらしい。
 勝てば今迄通り略奪しほうだい、負ければ政府から支援を受けられるアグレッサー艦隊、それもそれで悪くはないだろうし、また、どれだけ下手に扱えば、自分たちがどうするかというのをわかっている。別に、受けても受けなくてもいいが、こういう形で一人の女をかけて戦う勝負というのも悪くはない。だからこそ、彼女は動く。ある意味では、自分が死んだときのための、ここにいる女たちの保険とでも言うべきか。
 問題は自分の命に二度と触れることが出来ずに、ここで消えるかもしれないと言うことか。あの女の癖というのは、確実に自分を殺すというのが、それがよくわかる。自分と同じように、自分だけで独占しないと気が済まない。ここ数日の会話や、邂逅でよくわかる。だから、同じような存在を見ているようで殺したくなる。
 「決闘か。この時代に、古いかもね。」
 決闘がしやすいようにレクリエーションとして、最新鋭をぶつけ合い、殺しあう。
 実にシンプルだ。
 そして、戦い合う理由も全てシンプルだ。
 この時代、物事、全てがシンプルであるのは良い。
 物事が全て単純だからこそ、悩まずに済む。
 あの出会いからだ。
 出会ってから、籠の中にいる歌い方を忘れたカナリアを自分の中にいる静かなバケモノと称する、もう一人の自分をどうにかするために我武者羅に動く命を愛してしまったのだから、それはしょうがないことなのだと自分に、すべての物事は正当化されるのだと、恋は人を変える。
 独占したい。愛したい。この身で調教してみたいとすら思う。周りからは、やたらワイルドになったと言われるようになったが、恐らく、愛する女を求めている態度が露骨になっているのだろう。
 常に欲しい。
 得る物は常に得られるほどの力はあった。
 裏を使い、暴力を使い、何もかもを。だが、今回に限って、あの少女の気を引きたいがためか、正攻法に出るなど、かっこつける。捉えて調教すれば、自分好みにも出来るだろうに、彼女を捉えた瞬間、それをしようとは思わなかった。あの出会いから、彼女の歌を聴くようになった。
 そして、彼女を知るようになった。愛していたのだ。
 アイドルとファンが、こうなることとてあるだろう。
 だが、それに自分がなり、こうも一人の女に執着して凶暴になれるのかとコクピットの中で自分は笑う。ゼントラーディアンバルキリーと言う名の存在だった、この魔改造のマシンは充分に、ここに来るまでの戦いで実戦慣れしている。
 自分のコンディションも最高だ。
 「さて、あいつか。」
 最初は自分の獲物に近付いてくるのは許せなかったが、ああして接してみると、どうして中々、余計に殺したい存在だと、また一人笑う。だが、これから、好きな女のことで合法的に殺しあうというのなら、喜んで、それができる。あの一度の心の邂逅で命の中に二人がいたと言うこと。
 自分と、そして、陽美と言う女……好きになったきっかけと言うのは些細なことだ。些細なことだが、立派な理由でもある。そして、共通した、その思いは溶け込んで、体にしみこみ、角が凶暴になった今の自分そのものになった。
 「レギオスアーマーパックとブレイバーの様子は良いようだ。」
 追加装甲として開発されたレギオスアーマーと、さらに、トレッドタイプのサポートメカであるブレイバー、これを全て外せばゼントラーディアンバルキリーとしての素体が現れる。
 勝てるだろうか。
 あの女に。
 少し不安な感情が芽生えたが、捕えることが出来れば、あの女を殺すのも良いだろう。
 「私、今、そういう風になれば良いのに。って思ってる。」
 再び自分の変化に気づく。
 その感情に物騒さ、そして、これが恋愛と言うことかと気づく。だが、それでも、彼女自身からすれば気に入らない女は殺してきたし、やはり、そう来ると、一番許せない存在と命が一緒に好きになっているとでも言うのかと思うと変な笑いがこみあげてきた。


 気づけば露店など、そういうのが出てきていた。どうやら、本当にレクリエーションとして扱われているらしい。ただ、目の前にいる女を……VF-30のカメラで、外を見まわした時、そういう物が出ていることに陽美は1人、笑っていた。
 この状況、ここまで遊ばれている。ただ、そうでもしないと、こういう決闘というものは成り立たないのだろう。
 「そろそろか。」
 あくまでも、明るいものに、地味泥的なものは感じさせない。しかし、ここで、誰かが死ねばどうなるのか。
 「さぁ、ギャラリーはいっぱいだ。やりあおうか?」
 ふと、人深呼吸をした時、コクピットのモニターが突如、別空間を映す。赤色の髪を揺らし、下はバスローブ、先ほどまでセックスしていたなと、平然と思わせるほどに、性の色香を出し、たわわに実った巨大な果実を揺らしながら、その人はVF-30の回線を開けて登場した。SMSマクロス・リリィ支社の社長兼隊長のサツキ・ウェインライト……
 「今まで、聞いてました?」
 「えぇ。此処から、思い切り。」
 「盗聴はダメですよ?」
 「あら、それは隊長の特権。」
 「セクハラです。」
 乗機は好みとあってか魔改造を施したSDP-25スタンピード・メサイアバルキリーを専用機として使用する。所謂、ここは、そういう魔改造好きな連中もいれば、正規品好きの連中もいる。皆、この人に影響された。そう言っても良い。
 「今まで、どこに。全く顔を見せなかったじゃないですか。」
 「まぁ、色々と事後承諾。」
 「そうですか。」
 よく考えごとが解った物だと言うような満足な顔を浮かべて、それでこそ自分の選んだ女だと、口にする。
 「あら、こっちは建前を作り上げるために苦労したんだけど?」
 腕よりも先に交渉する、一種のネゴシエーター的な役職についており、主に好みの女性となればベッドの上での交渉がモットーと言われており、その過程で昔、世話をした艦長であるレイカと肉体関係に発展したと言う。そして、いつしか、夫婦関係になり、気づけば子宝に恵まれているというのにベッドの上でのネゴシエーターは変わらないがゆえに、彼女の経歴や顔を見るたびに陽美としては、レズサキュバスの名前は彼女の方がふさわしいのではなかろうか。そう考えたくなる。
 「艦長とお昼寝の邪魔をしました?」
 背後にゆっくりと蠢く女体を確認して、その髪の色や肌の色など、確認しなくてもすぐに分る。あの艦長と一緒に寝ていたと、誰もが理解している。このマクロス・リリィ支社のSMSには、レズビアンしかいない。それが、社長兼隊長の趣味であり、方針でもある。 「いいえ。彼女、寝ちゃったから、何となく回線ジャックしてたら、こういう感じ。貴女の会話が聞こえてきただけ。」
 「隊長……」
 この人も、そう変わりはしないか。思えば、連中や、美月と。どうも、考えてみれば、異様に仲良くなれたように感じられたのは此処の雰囲気と似ていたのだろう。いや、美月に関しては仲良く放っていない。ただ、気が合っただけかと考えを改める。
 ふと、あの宣言から、数日経って思ったことは危険性。早々に排除してしまった方が、こちらの恋時は楽に開ける。それは、それで楽になれることではあるのだろう。
 「そういう感情を理解してんでしょ?」
 「さぁ、どうかしら。」
 捕えてしまえば、そのまま。
 「独占欲……」
 「そうね。そういうのもあるわ。好きな人に対しては。」
 確たる信念がありつつも、一度、互いの心を見せ合った仲だからなのか。それとも、やはり、独占欲のような物なのだろうと一人思う。多分、殺すことになれば命は、こちらに振り向いてもくれないだろうし、勝手に怒るだろうが邪魔な存在は邪魔。嫌われてしまうこともあるだろうが、それは、それで、こっちが好きに出来るチャンスでもある。
 そう行くと命の思いに応えるのであれば殺さないことが重要だが、戦場では、それほどの技術を持つこと自体は難しい。さらに、相手は、恐らく同じ技量。いっそのこと、この手っ取り早い戦いをやめれば良いのではあるが、どうも、恋する獣の性としては、それを許してはくれないらしい。それに、一応は戦場。何があるかどうかは解らない。
 この戦いによって、誰が命の一番になるかを決める、いわば、交尾でもあると同時に求愛にも等しいものであると捉えているのだろう。互いに死ぬことくらいは覚悟していることだ。そうなれば、独占できるし、それがベストだと命のことも考えずに二人は考えている。恐らく、既に命に自分たちの思いは、あの段階で伝わっているはず。
 その覚悟を理解して互いに今回の決闘に挑むことにした。
 楽しみなのは、この後に、命と送る楽しい薔薇色の人生とでも言ったところか。脳内が蕩けるほどに甘い妄想が駆け抜けて、肉体が熱く火照り始めた。パイロットスーツを身に纏っても解るほどに大きな乳房が、さらに目立つ程の胸の先端にある蕾が大きく実り始めていた。
 股間が熱く濡れて、このまま、思いに果ててしまいそうにもなった。鼓動の高鳴りも激しい。こうまで夢中にさせる。この戦いは主導権を争う戦いでもあるのだと、そう自分に言い聞かせながら、甘い生活へと一番に辿りつくのは自分。そうまでして、好きになりたいと思える子、守りたいと思える子、支配してでも独り占めしたいと思える女。あの本の中のお姫様のような存在が現れた。そうして欲しいとまで思わせる少女が出てくると言うのは幸福なことだ。
 愛したいと思える少女が、こうして、今、自分の物になろうとしている。手を伸ばせば、もう届きそうな人。鏡になったモニターの瞳を見て、自分の表情は、とても自信に満ちているのが良く解る。色気づきながらも、想像しただけで感じ取ることの出来る暖かい感触を思い出し、彼女との思い出を振り返る。
 あの唇の感触や、何もかも。そして、あの心に触れた瞬間の何もかもだ。妄想を脳内で切り捨てて貪欲に求めることを、今は考える。心に触れてから、何もかもが愛しいし、ますます、自分が守りたいと考え、そして、愛を受けたい。
 「よし。頑張ろうか。」
 外で呑気に焼きそばを食いながら見つめている観客達を見ながら、VF-30はファイターモードで表に出た。
 「さて、そろそろ来るかな。」
 レーダーに反応する一機の影を、この目に見た。それはあいつであると理解する。自然溢れて恵まれた、この年の湖に浮かぶ巨大なかつての伝説の性能と名前を受け継いだマクロスと言う戦艦。先住民はいない、自然の惑星。そして、目の前には。
 「VF-XX……」
 名前を呟き、その白い姿が視界に入った瞬間にマイクロミサイルを12発ほど撃ち放つのを見て、思わず、舌打ちして、その大型のアーマーを身に纏わせた純白のバルキリーが舞い降りる。あのとき、見たやつだ。
 ゼントラーディアンバルキリーという名の未知の新型マシン。
 この小さな惑星の都市の中で好き勝手に動き回る姿を見て、挨拶代わりに撃ってきたミサイルを後退しながら2丁のガンポッドを即座に構えた。
 ミサイルと言うのは意外と単調だ。
 自分に対して、ある種、バカ正直に直進に向かってくる。
 それを挨拶だと理解したのは、あの女が馬鹿正直にバルキリーのミサイルを真正面の自分に撃ち放ってきたからだ。全弾撃ち落とし、さらに、自分は瞬時に新型重量子MDEビームガンポッドを構えようとしたが、相手が何で来るのか、ミサイルが爆発した瞬間に理解し、それはベストな判断では無いと脳が訴え、その言うことを聞いた。
 ミサイルの中にある爆煙がボワッと産まれ、視界が黒色に染まると同時に一瞬だけ閃光が惑星に走った。あれは、ただの挨拶では無かった。と、言うのを理解した時には、流石に陽美は舌打ちをせざるを得なかった。
 「っ!?」
 さらにファイターのまま自機の上空を突っ切り、そのすぐさま背後で瞬時にバトロイドに変形し、姿勢制御を取りながら、その重い装備を持ったバルキリーは腰にマウントされている掌いっぱいに持てる筒のような物を暗闇の中で取り出した。
 「煙幕でも兼ねてる訳ね……」
 なるほど。
 決闘とはいえ戦争だ。
 己の中にある脳をフル稼働させて、奴の戦術を分析する。
 「接近戦で来る……」
 最も確実な方法だ。
 此処で、静かに仕留めると言うのであれば。戦いに卑怯もクソも無いと言うことか。開幕からいきなり入り込む、そのスタイル、やはり、嫌いになれない。目の前に登場した二つの最新鋭バルキリーが邂逅する。どちらも本当の最新式。決闘と言えども、二人だけの戦争。そこに、先制攻撃など無いと勘違いしていた自分が腹立たしい。
 流石に、街に堕ちるのは不味いと思考、あのミサイルとて、それを理解して隙を作る上での行動と、今、理解する。ミサイルの衝撃がコクピットの中に強い波を受けた時のような衝動が走る。このわずか、数秒の間に感情を吐露し、相手の持った武器を理解しつつ、己も腰にあるコーティングブレードを本能で取り出していた。
 場所なら、すぐに解るとは思ったが、どうやらデコイがばら撒かれているようで、何処にいるのか解らない。周りには数百を超えるゼントラーディアンバルキリーの反応がある。しかし、美月は、己のバルキリーの光を発する物を切り、コクピットのモニターを自分の目で確かめられるようにセッティングし近づいてきた。
 「その事後処理をしてくれると思っていた……だから、初弾のミサイルには爆散するとチャフを仕込んでおいた。」
 SMSの兵隊である陽美が、このようにミサイルを放っておくわけではない。コクピットの中で吼えながら美月は言葉とは裏腹に冷静な処理を行いつつ手に持っている筒を起動させた。
 レーザーブレード
 バルキリーの上半身程あるだろう青白い光の刀身が展開されて、迫りくる。さらに、それは敵も解っていることだろう。
 「後ろから来ることくら……!?」
 陽美は察していたつもりだった。だが、それは、装甲を纏ったゼントラーディアンバルキリーでは無かった。コーティングブレードに当たった形状は、これではない。バルキリーの感触ではないと理解した瞬間、すぐさま、危機を煽るようなアラームが鳴り響く。後ろにあるのは支援兵器であるブレイバー、そして、前にいるのが
 「お前か!!」
 ブレイバーを蹴りつけ、レーザーブレードを突き刺そうと襲い来る美月・バルキリーの攻撃を防いだ。コーティングブレードは相手のレーザーブレードの刃を受け流した。
 「流石……」
 バルキリーと言う兵器の性質上、ブレードのような兵器を使うパイロットは少ない。主に真に近接戦になった場合は、その拳で殴りつけるかアサルトナイフの使用がデフォルトである。それを読み取り、ブレードで仕掛けようとしたのだが、向こうも同じことを考えていたとは思えず、その次に来る行動を考え、一度、距離を取ろうとした。所謂、二人の技量と言うのはナイフよりもブレードの方が扱いやすい。
 「鋭い蛇を相手にしているような感覚だった。」
 額には汗がべっとりと付いていることに陽美が気づいた。わずか、十数秒の間の出来事だ。
 「相手は機転が良い。」
 美月は、その気もちだった。心臓がバクバク行っている。馬鹿正直にブレイバーに先行させていたら、殺気に勘付いて殺されていたことだろう。
 「「でも、まだ……」」
 炎と煙が舞う中で、初手の挨拶は終わった。
 装甲を霞めた程度ではあるが、あれで、ある種の手のうちに近い物は理解したような気が互いにした。
 「白い奴……じゃない……」
 あの黒い装甲を取っ払えば、この前の白い奴が出てくるのだろう。それが、本来の姿。あの時、見たものだ。ガンポッドの薬莢が地面に落ち、轟音を立てながら外れた弾は地面を抉る。音に隠れながら、ブレイバーと一つになって変形したゼントラーディアン・バルキリーは全ての武装を一斉に発射した。
 「当たれば良い。」
 これだけの物を避けるだけでも、かなりの神経を使うだろう。撃った瞬間に分離をし、美月は己のバルキリーを急降下させて湖の中に潜り込んだ。
 「あいつ、いない!?」
 このミサイルパーティとも呼びたくなるミサイルの雨をよけることで必死になっていた。
 ミサイルパーティに紛れ込みつつ、さらにはブレイバーの三連装レーザーボンブランチャーやら、何やらまで放ってくる。相手の攻撃を回避する度に、動かす度に襲いかかる強烈なGを諸共しないほどに脳内麻薬は分泌されており、脳の揺さ振りと言うのは些細なことではあるが、時折、途切れる瞬間に隙は生まれやすい。
 その瞬間を如何にカバーするのかと同時に、この現状を楽しんでいる自分がいる。ブレイバーの一斉射攻撃を潜り抜けつつ、ビットでも出そうかと考えているが出した瞬間に落とされるのが目に見えている。こういうことなら、先にビットを出しておくか、電子兵器でも搭載してくれるように頼むべきだったと、後悔する。
 内蔵ミサイル最大48発。腕に三連装レーザーカノンを装備して、適格に命令に忠実な兵士のように動く、その様は脅威そのものだ。目先の物に気を使いつつも、視界からいなくなった奴の行動も気になっていた時だった。
 「バカみたいにミサイルとレーザーのプレゼントを与えるなら……」
 思考に少しのラグがある。
 それは、このブレイバーでも変わりないことを理解はしているが、こうも馬鹿撃ちされると流石に困る。だが、機械の愚かさを持つ者への一瞬の隙は、確かに存在する。その隙を見せた瞬間だった。
 「貴女が、それを利用することは解ってた。」
 その弱点を利用すること。
 しかし、そこに僅かな隙が生まれれば。
 「私の勝ち。ただの獣のような野生的な戦法だけじゃどうにもならない時もある。怖いけどさぁ。」
 一応は、これでも多量の海賊たちを束ね、組織戦なんてものもやってきたつもりだ。新型の重量子ビームガンポッドをスナイパーモードにし、銃身を展開して狙いを付ける。一瞬でも隙を見せた瞬間が負け。水と言う壁がありながらも、これは、軽く突破するほどの高威力がある。しかし、美月は水上に微かな銃身の顔を出して即座に狙いを付けて光を放つ。
 「見事に使いこなしてぇぇぇぇ!」
 嫌な嫌な嫌な嫌な奴。
 微かに掠っただけではあるものの、確かなバランスを崩すだけなら、それでいい。
 「見事……」
 クァドランでくればまだやれると思いたくもなる。翼の生えた人間の戦いと言うのは、こういう物なのだろうと想起させるほどの3次元の戦いと言う物に人は見入ってしまっている。
 「終わり……」
 美月のバルキリーが第二射目を放とうとした刹那の瞬間だった。
 「!?」
 ブレイバーの隙を突いたことは無駄ではない。ブレイバーを盾にして近づいてくる。ビームの発射した場所は良く解る。なおかつ、この湖と平野しか無い、まだ未開の土地だからこそ、やりようと言う物は出てくるのだ。バトロイド形態で湖の中にいる美月・バルキリーに向かってVF-30のブーストをフル稼働して無理やり、押して突っ込んでくる。
 小回りの効かないブレイバーだからこそ、ここまで密着してしまえば、何も出来ずに本来、いる場所へ近づける。構えていたところを、これからのアクションが出来ずに自分が成せばならなければならないも出来ず、他のアクションを求められると、それは、どのエースパイロットであろうともベテランパイロットであろうとも困る時もある。
 「さすがにやるわ……」
 ましてや、止めの時になると、まさにだ。
 「わからいでか。」
 「流石は私と同じ女を愛した女だこと!!」
 「ありがとっ!!」
 そうか。
 こういう風に自分を見てくれるからこそ、敵として誰よりも嫌いになるほど殺したいが、こいつは、どんな相手でも接する時は1人の人間として扱うことへの心地良さがある。今日、初めて口にした。そして、今、思った。嫌な女だと思ったが接して初めて嫌いだが、嫌いになり切ることが出来ない思ったその理由。
 互いにファイターになり、今度はドッグファイトを仕掛けた。どちらが、後ろ、又は上になるか、そういう物で勝負が決まる、この勝負に、双方の癖を本能的に理解したのかすぐさまの、それは見せようとしなかった。ブレイバーを遠隔操作にし、美月はツーマンセルで波状攻撃に追い込む戦法に翻弄されつつも、その重量があるからか、ブレイバーは遅い。
 YF-XXに比べて遥かに遅いことを見抜き、最初に、バーニアを破壊して、もうアタッカーフォーメーションを組まれる前に向こうにする。こうなれば、ただの二足歩行しかできない木偶だ。
 「ただじゃ、終わらないか……!」
 ブレイバーは、鈍重である分、ブースターを使わなければしかし、同時に稼働時間も消費するブースターの分だけ限られてくる。最初に、それを樹理から聞いておいて正解だったと理解する。ならば、このレギオスアーマーに搭載したすべてのミサイルを撃ち放った後にレギオスアーマーをパージして、本来を姿を見せて絡みあうように2機のバルキリーはドッグファイトを繰り広げた。
 「執った。」
 そう思えば、執られて、それの繰り返しだ。長すぎる狩猟を繰り返し、ニ機は互いの背面を取りながらロケットのように上昇する。食ったら食い合う。光の軌跡を描きつつ何かを全力で食い合うスタイルだ。
 互いの武器を駆使した光のサーカスには、あまりにも派手すぎる。閃光が霞める度に失禁しそうになる。光の兵器と言うのは未だに、それほどの恐怖を醸し出すには十分な存在だ。常々、戦場に出れば恐怖は感じ取る。光学兵器はショックは来ないし、ある程度のコーディングはされている物の、直撃を受ければ、やはり恐れてしまう物がある。そして、さらにオーバードライブをまで駆使して互いを追いかけ逃げ回り、猟奇的な存在として後ろを奪ろうとする、その姿はまるで光の翼そのものだ。
 冷やりとした汗が二人。
 「っ!?」
 一瞬、機体に衝動が走り、チッチッチッと言う音が耳を痛く掠め、恐らく、機体の何処かが焼けたのだろうと悟る。膨大な光がコクピットを照らし、確かな殺意の光を感じ取った瞬間、確かに自分は失禁したと陽美は感じ取った。マシン全体を揺らしたが、そのショックの大半はアブソーバが吸収してくれるが、
 「微かに天国に導くモノなんじゃないか。って思うと、これほど怖い物はない……」
 双方に与えるショックは怖い。
 「でも、なんとかなるはず……」
 そう自分に言い聞かせた美月は惑星ARIAの上空をジグザグに走り、バトロイドに変形し、弾幕としてのミサイルをばら撒きながら新型重量子ビームガンポッドを構えた。美月の対応の早さ、あそこまで多機能すぎて人では扱いきれないほどの武器を搭載している。おそらく、BDIシステムを利用し、脳と肉体、精神、すべてを統一させて全ての機能をフル活用している。こいつはのさばらせておけば危険すぎる。倒さなければならない、いや、殺さなければならない敵だと認識して動き出す。
 「っ!!!」
 陽美はすぐさま野生的な本能で感じ取る。
 此処で逃げつつ、こちらも牽制用にビームガンポッドを連射モードにし、さらにガウォーク形態に変形しつつ撃ち放ち、此方に照準を付けにくいように這うように動く。
 「さすがに、そうさせちゃくれないか……」
 いつの間に、上昇をかけても上手くはさせてくれない。野生的、本能的な感情で動きを読み取る姿は脅威だ。だが、こっちに気を取られているだけで、それでいい。ブレイバーは、完全に死んだわけではない。完ぺきに破壊しなかったことは後悔するべきだ。そう思わせるほどには、この一撃を確実にするために牽制、当たれば最高。その思考を得てブレイバーは相手に向かってミサイルを撃ち放つ。それに気付いた陽美はマシンを躍らせるように避けようとしつつも、それに対応するように、展開されたマルチパーパスコンテナユニットからは迎撃用にミサイルを撃ち放った。食いあうようにくっつき、爆発する。
 このまま、バカなパイロットであれば、安心するだろうが、安心した瞬間に食い殺される瞬間と言うのは避けたい。上空から奴はミサイル等を放ちながら、鷹のように獲物を狙っている。
 解っているかのようにブレイバーのミサイルは美月のバルキリーが開幕同時に撒いたチャフには引っ掛かってくれはしなかった。既に、効果でも切れたのか、相手のミサイルを無効化し、こちらのミサイルはコードを売っておけば思いのまま使用可能と言う環境に優しいチャフと言う触れ込みで商人から購入したが、既に、この惑星の大気に消えたのかもしれない。無害物質に変換されて消えたのかもしれない。
 「糞みたいなものを買わせやがってっ!」
 「来るっ!」
 その言葉の通りに相手を食らう蛇が素早く、こっちに走ってきた。変形を駆使して、それを避けつつ、恐らく、これはブラフ。先ほどと似た手を使うに違いはあるまい。誤作動を起こしながら、反応しつつ、此方の迎撃のミサイルは美月の放った弾丸に食われたりするが、それ以上に、その条件は美月も同じこと。
 此方も、それを持っていればと思うモノの、そうは……避けた瞬間、僅かな空気の圧迫を感じた。奴は、この上にいる。
 「この戦闘、飛び道具は意味を為さない。」
 全ての武装を使いきって、このまま近接戦闘に持って行く流れにしたい。このまま、何処かに辺り、そのままダメージを蓄積させて行けばいいのだが、互いの技量、バルキリーに乗れば互角であること。
 「それは、美月も解ってるし、私も解ってる。」
 コーティングブレードを再び、手に持ち、レーザーブレードを手に持ったバルキリーと刃が重なり、スパークが走った。激昂等することは無い。これが、兵士の役割であると互いの肉体と魂に危機が迫る戦場では、常にこうして来たのだから。


 「おいおい……最新鋭機の戦いが白兵戦かよ……ドッグファイト見せろ。ドッグファイト。マジンガーじゃないんだからさ。」
 呆れたように樹理は、二人の戦闘を見て口にする。SMSの巨大モニターで、その様子を見つめつつ呆れるように中指を立てて呟いた。
 「撃った瞬間には既に変形して近づく。ビームが弾丸であり、あのバルキリーも弾丸である。VF-XXの特性を知ってなければ出来ない芸当ね。」
 「隊長、あのマシン、知ってたんですか。」
 「もちろん。これでも、SMSの隊長だし。」
 「VF-XXはゼントランの技術を混ぜ合わせた、まさに、バルキリーと地球人の真のハイブリットバルキリー。」

 
 ビームが湖に落ちて水蒸気の煙が上がる。
 やはり、確実に殺すことを主としているような生命的な危険反応を感じた。
 戦場で出てしまう殺しの癖というのは、そう簡単に止まるべきものではなく、変わることもない。同じ位置の次元で戦っているはずだというのに、この距離感というのは、戦場というのはすでに二人の緊張感は、この時点でフェスティバルや、パフォーマンスの領域を超えた殺気に捉えられていた。
 重火器、その延長線上にあるバルキリーという人類の作った最高なまでに美しい戦闘兵器越しに感じる感覚は精神と肉体と思考力と殺気の融合によって確実に、この場所を人殺しの空間へと変貌させていた。全てにおいての最初の準備、ほらいなら組織を使って卑怯と言われても確実に殺す存在でもあるのだろう。そして、殺すためにこちらに来ている。急所、バルキリーにおける脊髄の切断はすでに自立を不可能とする。それをどうにかするための強度も、どうにかなっているはずだというのに、あのレーザーブレードから伝わる狂気というのは紛れも無く殺される前の殺気を実感させた。
 この、何も無いからこそ、ある程度の攻撃は想定可能であるからこそ、装備による作戦が重要とはなるが、まさか、こうなるとは。野生の勘を常にフル稼働させていたのが自分の戦闘スタイルであったが、向こうも、それと同時に策をめぐらせる、その姿勢にぴりぴりとした殺気を覚えた。青く白い剣の軌道を見た瞬間、確実に殺すのだと陽美は感じ取った。
 剣を抜いたとき、そこにあるのは確かな殺意。
 戦場において抜けられない癖というのは、実弾が走る感覚というのは、その弾丸の軌道、ビームの軌道、そこにある確かなさっきと言うものが、改めて戦場に入り、そこから兵士としての本能だけが汲み取られたかのように殺気に満ちた攻撃をし続けた。あの時あった感情というのは、所詮は絵空事であるかのように、すぐに、そこにいるバルキリーを危険なものだと思い込んだ。この兵器の拡張機能を使い、策を張り巡らせた装備を使った攻撃をしても、まともな攻撃など受けることは無いだろうというのが美月の抱いた静かな殺気を纏ったレーザーブレードの攻撃というのを、あの状況で防いだこと、そして、その状況になって初めて、調教すべき女ではなく殺すべき兵士だという長年、殺しの場において培った根底にある意識的なものが肉体と精神を支配する。
 侍と呼べる種族がかつて、その種族が刀という近接武器を使うときに生まれた隙は刀を抜き攻撃する瞬間と、刀を納めるときという認識が自分の中にはあった。その点、レーザーブレードというのは実体の刀を使うときに生まれる隙を、さらに限りなく0に近い状態で振り下ろした。ゼントランとして生まれた戦闘民族としての遺伝子は、さらに、それに特化しているはずだと思っていたのだが・・・・・・
 食い合う本能が蘇る。ゾクゾクとした、あの戦場独特の臭いが感覚。目の前にいる的と動く上の獲物を食らい、生き伸びる、それが兵士……
 「ただの女兵士であれば、どれだけよかったか……」
 「メルトラン……」
 今になって、ガードを無視するほどの轟音が耳の中に入り込んできた。鼓膜が破れると言うことはないが、やはり、それが脳を揺らしているような気持ち悪さは、慣れる物ではない。
 踊るように、テリトリーを争いをするかのように攻撃をし合う二匹の獣たち。基本、空中と言う重力の井戸に引っ張られる、この空と言う戦場の中で、泳ぐように自在に戦う。肉迫も出来なければ蹂躙も出来ない。同じ技量をもっているとは、そういうことだ。肉を斬らせて骨を断ったとしても、それ以上に自分と言う物は、斬られる。斬られる覚悟で斬りに行けば、斬られてしまうのだ。
 「どうなっているのか、嫌でも解る……」
 どちらも、この、ただ、軌道を修正つつ撃ち合っているだけでは、もう、埒が明かないことくらいは理解している。ミサイルや火球が湖に落ちて爆発の花を咲かせながらも、それは、ただ、観客達を喜ばすだけ。互いの癖が、どうしてだか解ってしまう、この感触に、流石に苦笑しつつ、どうにか飛び道具を使い、こちらに有利な状況を与えた隙にどうにか出来ないかという欲求もある。
 だからこそ、陽美は、そういう風に動こうとしないものの、それに気付いている美月は、そういう風に仕掛けようとする。あくまでも自分に有利な手段で。考えている瞬間に、美月・バルキリーがガクッと揺れた。
 ビームで、何処かが焼けたのだと解った瞬間、その空気の層の向こうに陽美のバルキリーがいるのを知った。このまま、どういう手段で来る。互いに殺気を発しながら、馬鹿正直にファイター形態で突っ込んでくるようなこともしないだろう。
 人型が突っ込んで来るよりも、ある種の恐怖ではあるが。接近してくる形態をモニターが拡大し、バトロイド形態だと解った瞬間にニヤッと笑った。
 「私の場合は、デコイやデコイ、煙幕があるからこそ、それを駆使して、その戦法が出来る。でも、あなたの場合は……」
 此処で踏んだか。美月は確かな勝利の確信を予測した。それこそ、手を伸ばせば掴めるほどの距離だ。真上から来る。しかし、非情だ。そこに、ビームガンポッドを単射形態で構えて心の中で勝利のカウントダウンを始めようとした瞬間だ。一瞬、意識がクラッとなった。
 そして、その一瞬が己の危機を生んだ。
 戦いの興奮で忘れていた。
 どれだけ、愚かなことをしたのか。
 つい、対等の人間と一緒にいると言うだけで戦闘と言う物は楽しく思えてしまう。その興奮が産んでしまった大切なこと。地の利……いや、この場合、空の利とでも言うべきか。全て、此方が用意したこと、全てにおいて己が制空権を支配出来るとタカを括っていた。だが、忘れていた。
 この私が認めた女であると言うことをすっかりと忘れ、そのバトルフィールドであるという驕りが、この初歩的なミスを生んだのだ。その背には太陽がある。うっかりにもほどがある。対等に闘いあえることの悦びと言うのは、ここまで強いものか。愉悦感が身を包み、さらに、己の戦法を利用される。
 互いに、あのドッグファイトで弾薬は尽きかけていることだろう。向こうは無駄にミサイルを撃たなければならない状況に追い込んだが、こちらは祭りのようにミサイルをばら撒いた。この状況を作り上げるために。ガンポッドなどを駆使して、さらに近接戦や、様々な状況を作り上げたが、全て思うように行かなかった。
 それが、闘争心を強くしたのだと理解する。
 一瞬の眩しさがチャンスを壊す。だから、このまま、両腕にピンポイントバリアを拳に纏わせ、コーティングブレードをぶっ叩き折る。ついでに、このまま奴のマシンを叩き潰す。だが、このままでは勝てないだろう。決闘と言う部分から外れ、二人の兵士としての本能が呼び覚まされる。
 「「殺す……」」
 恐らく、この邂逅での一撃で、この戦いは終わるだろう。


 「最新鋭機同士の戦いの、良いデータが取れてるけどやることがアホすぎかよ……」
 樹理は流石に呆れ、このまま、そそくさと戻ろうとした時だった。
 「いや、あの子は間に合ったよ。」
 「隊長?」


 そうして、サツキの視界に太陽よりも真紅に燃える存在が瞳の中に入り込んだ。それは2機のバルキリーの拳と拳が混ざり合いそうな瞬間……
 「勝手に二人で盛り上がって!勝手に私をかけて戦って!私は、二人の言葉のお陰で、今があるの!そんな二人のどっちかが死んだら、どうなるか解らないの!?」
 叫びながら、そんな二人の間にファイヤーバルキリーが横切った。YF-29改が割って入ったことによって、二人は必然的に距離を取らざるを得なくなった。
 「今の声……」
 「命?!」
 その声に、思わず、二人は対峙したまま、呆気に取られそうになった。
 「貴女に限っても、今回で正攻法だなんて!それで、誰かが死んだら、私は、貴女達を見捨てます!バサラと一緒に、この世界から、2度と会わないようにします!」
 母親に説教されているようだった。
 胸がズキッとした。
 だが、主導権を握るための戦いは止めるわけにはいかない。意味のある戦い、意味の無い戦い、それがあることくらいは解っているが、それでも、こうして自分を賭けて戦うと言うのは、景品に等しい自分からすれば、これほど迷惑なことも無い。
 「こんな子供の喧嘩のようなことして、誰が喜ぶと思ってるの!?」
 命自身、キララを通して二人の中にある闘争心が邪な部分で囚われている、確かな殺意が、そこにある事が解っている。己の歌で、その殺意を取り除くようなことまでする。何処まで、それが出来るのか。自分に、それが出来るのだろうかと1人呟く。しかし、それでも……優劣はつけたいと思うのは人間的な根源的な争いの要因となる物
 (でも、二人とも……よかった……まだ、生きてた……)
 それは、本音に近い思いだ。
 「本来の目的が来たか……」
 「見せつけるには……」
 命の思いと裏腹に兵士として人としての危険な存在として感じ取った二人の女は、その意思を汲み取らずに戦いをやめようとはしなかった。そこで、戦いをやめても、そこに存在する女の危険性と言うのは、何れ、殺される気がする。好きな女を巡ってと言う、人によっては小さくとも、本人達にとってはとても大きな理由によって。
 先ほどのビームガンポッドを手に取りながら、連射モードで確実に仕留める。動きは止めようも無く、マクロスの影に隠れている。「ちっ!!」ブレイバーとのエネルギーチューブを合わせて、さらに高威力のビームガンポッドを向けて、確実にだ。
 「ダメ、だから……」
 「たぶん、今は……」
 両者とも、この技量と言う物、確実に殺さなければならないと言う思いの元に抱いた戦いは、確実な殺意を持って繰り出される。まだ、重火器で殺せるほどの弾薬や、エネルギーとて存在している。命の声でも、それだけは聞けない。
 やはり、戦いあう者同士、どちらかが優劣を決めなければならないと言う本能に掻き立てられる。二人のパイロットはビームを放ち、そして、命の歌は戦場に響く。
 「でも、二人が傷つくのは嫌!命を落とすなんて、もってのほかだよ!!」
 もう迷っている暇はない。それは、まだ、二人がビームガンポッドから、高出力のビームを発する前だった。互いの生の感情がぶつかり合う、命からすれば、痛ましい信念のぶつかり合い。
 解っていながらも、言葉で止められないのなら、自分は自分の力を行使しなければなるまい。だからこそ、その歌を響かせなければならない。二人の中にある殺気は消えることが無い。何かが、そこにある。生の人の生の感情と言うのは、そう簡単に取り除ける訳ではないと、これまでの旅で、Fire Bomberや、様々な人間達の会話で理解はしている。
 それを為すことの難しさと言うのも自分では理解しているつもりだ。まず、どうする。
 解っていることだ。
 唄う、この合間合間にも自分の心が不安で押し潰されそうになる。不安というものが、明確な形を持って修羅となり、少女に襲い掛かる。
 あの二人のために、今は。
 そうして、脳内で二人のことを考える。あの二人、切っ掛けを与えてくれた二人の女性、自分と言う存在を的確に表現し、教えてくれたことであり、自分に確かな成長を促させるきっかけ考えるきっかけを与えてくれた。
 そして、シビルが宇宙を見せ、そして、自分と言う存在を、二つのヒントを合わせて全てを理解し、今日までの全ての答えを見つけ出し、そして、それを全て歌に載せた。
 生まれてから、そして、此処に来た出会い、二人に関して、もっと……純粋に届けたい。今、それが出来るかどうかを試されているのだと、その場にいる。一瞬、自分の視界が真っ暗になっているのが解る。その間に夥しいほどの思考が流れては堕ちるのだと実感はする。
 もう、何かを、アクションを起こさなければ解決することはないのだと、大丈夫だろうか。不安が前に進ませるのを止める。このまま、前に進むことを恐れようとしたときだ。
 「大丈夫だよ。」
 「これまで、頑張ってきたんでしょ?」
 「ママ……」
 二人の言葉が光となって放出される。忘れていたといえば、それまでだが、この二人が自分の中にいる。
 「でも……」
 「怖くないよ。」
 「自分と貴女を思う人たちを信じて。」
 光となった二人の母親の言葉が尊を前に進める翼となって導こうとした。すでに、兵士としての本能にとらわれて、殺すことを確実としている二人の女が、そこにいる。そして、その二人は自分が……目を開けた瞬間、既に二人が巨大なビーム砲を持って退治して確実に殺すということを証明しているシーンだった。
 もう、迷っている暇は無い。
 そう確信した少女は口を開き師匠である熱気バサラのように叫んだ。
 「園命の歌を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
 その言葉を待っていたかのように熱気バサラは命の作った楽曲のメロディをギターで掻き鳴らした。
 「光在れば陰ほど……移ろう幻」
 最初のフレーズが命の口から走り、二人の放ったビームをYF-29改のサウンドブースターから発せられたサウンドビームが翼のように広がり、それを防いだ。サウンドビームとキララの光が共鳴して命の求めた形へと変貌したのだ。さらに、翼は大きく伸びて命の二人への思いが形となって二人のバルキリーを包みこむ。
 自分にとって、大切なことを気づかせてくれた二人であるからこそ、大切であり、傷つけあってほしくない。正直、この思いが恋愛なのかどうなのか、まだ、その経験が今回、初めてだからこそ、未だに解らない部分がある。
 「でも……」
 それでも、何度も思ったことを命は歌に乗せて叫ぶ。最初の命の叫び声が銀河中に響かせた。命の思いによって分裂したキララの4台のうち3台は巨大なモニターに変化し、予め解っていたかのようにマクロス7船団と繋がり、そしてFire Bomberの面々がモニターに映る。
 繋がったと理解した瞬間に、バサラを初めとするFire Bomberのメンバーが銀河に向けて演奏を響かせた。
 この銀河ジャックはレイ・ラブロックを通して全てのマクロス船団に流されており、そして園命の存在が、ここで認知されている。命自身は、そこまで頼んでは無かったが、レイとミレーヌ自身が興味を持って勝手に行っているのだろう。そして、もう一つの分裂したキララは小型の移動型浮遊ステージことフライングプレートに変化し、命は、その上に乗りバサラのギターに合わせて唄い始めた。
 最初の歌詞から言葉を繋いできた歌は、自分で創って自分で唄っておきながら燃えるほどの熱が肉体を襲う。そして、それが歌うことに対する快楽へと肉体と精神は変貌していくことを、心臓の鼓動の速さで感じ取る。一瞬、バサラの顔を見た瞬間、優しく師は微笑んだ。唄う前のことを思い出す。
 「一緒に唄わないの?」
 「お前の歌だろ?お前が、二人を止めるための歌なんだ。俺たちは助けるだけさ。」
 そう促されて、バサラは、今回、二人のために唄う曲に関してはサポートに徹すると言っていた。
 恐らく、これはバサラが命の歌を信じているが故のことだろう。だからこそ、命も己と己を支えてくれる全ての人を信じて全ての想いを歌を命に委ねた。バサラを含むFire Bomberと園命のセッションに合わせて魂が響くほどに強烈なサウンドとでも言うべきか。
 2機の撃ち放ったビーム兵器が消えていく。
 完全に消失したビームの光に戸惑い、今度は顔面を砕き、そしてコクピットを潰して狙うためにブーストを使用して、コクピットを狙った互いのピンポイントバリアパンチはギリギリ、命の歌で回避されたと言うことになるのだろうか。いつの間にか、コクピットの二人は、その予想だにしない行動に操縦桿のミスをし、最悪の事態を避けることは出来た。
 いや、止めたのだ。
 途端に、何か邪気の様なものが取り除かれたような気がして、歌が心を浄化する。確かに、己の身体が、何処か、歌によって生まれた翼が、それを可能にした。
 (あぁ、良かった……)
 真剣に二人の戦いを止めるために行っていても、ただ、この状況の今、心から、唄えて楽しいと思える瞬間がある。唄っていて楽しいと思えている。その思いが、キララと一緒にバサラの機体を輝かせた。だからこそ、フルに己の作った歌を力強く、そして繊細に歌い上げていた。
 船団を超えた超時空セッションは銀河を震わせた。確かな、邪気という名の殺気を歌が確かに取り除いた瞬間をフライングプレートに乗り、二人の様子を見に行く。コクピットの中で命を見つめる二人の女性は戦をすることを止め、コクピットを解放し、唄う命の姿を見つめていた。まさに、命の洗濯をする歌と言うわけか。
 戦いは終わった。
 確かに、一人の少女の歌によって。
 「濁った水しか無かった沼が何かによって、綺麗な泉に変わってしまったかのようだった。」
 後に美月と陽美が、そう口にする。命を選択する歌は、そのまま響き渡り、誰もが安らかな笑顔を浮かべた。その日、マクロス・リリィから一人のアイドルがデビューした。
 これほど、アイドルとして鮮烈と呼べるほどに派手なデモンストレーションは無いだろう。パフォーマンスとしての2体のバルキリーのデモンストレーションと、それを止めるほどの力を持つ園命の歌……いや、銀河を震撼させた歌なのだから、そのようなデモンストレーションをせずとも……しかし、このデモンストレーションは命にとって大事な試練であったと言える。
 クリスタルが爆発して弾けたように光が舞ったように、一つの試練を乗り越えて覚醒した園命は確かなアイドルとして、この世界に幅いた瞬間を見た気がする。歌エネルギーとキララの光は命に光の翼を与えた。それは、元の世界に戻れる力を得たことでもあったが、それ以上に、少女は一つの歌を楽しんだ。
 広がる光と歌の奇跡が生むファンタジーの世界が惑星ARIAを包みこむ。
 「暖かい歌……」
 「そうね……取り戻したのよ。カナリヤが歌を。私たちは、彼女に負けたのね。」
 二人のバルキリーが地上に降り立ち、気づけば手を繋いで二人は地上に降りて、その歌を聞いていた。
 「あんま、傷ついてないんだ。」
 「そりゃ、互いにギリギリのところを避けたりして攻撃してたし。」
 だから、あそこで近接戦に運ぼうとしたのだが、その直前で命の歌が二人の闘争心を消したと言うことだ。そこまでやられてしまえば、兵士は負けなのだと二人は悟り、思わず笑いあった。
 そうして、出撃前の精神が戻ってきた。
 また、角の取れた、あの頃の自分達が。浄化されていく闘争本能が、何もかもが薄れて自分の肉体の中に響く歌が確かな形となって、自分の背中をゾクゾクと響かせて、まさに戦争なんかくだらない、それ以上に素敵なことが、この肉体に刻まれた。
 命自身も、その確かな二人の中にある殺意を消したことを感じ取っていた。
 ふわっとした優しさが二人の精神を包んでいくのを感じ取って、今まで以上に最高の笑顔を浮かべていることに気付かず、そして、精神は何よりも今、自分の中でアイドルをやってきてよかった。と、そういう高揚感に包み込まれて、もっと力強く歌を銀河に響かせた。満たされていく心地よさ、この全身が震える感覚を何なのだろうと響きあう歓声の中で一つの答えを見つけるのは難しいことではなかった。
 これは感動の共有……
 この状況、すべて、この言葉に集束された。
 「「園命!!!!」」
 二人が、その名前を叫んだとき、命の顔は、かつてアキバスターの暴動を止めた時の母、凪沙の顔を浮かべていた。
 それを知るのは二人がアキバスターで、そのアルバムを見た時だった。
 安らかな顔つきと笑顔に再び頬を染めて初恋をした少女のような感覚となって、園命の、その姿が、この身に刻まれた。
 「さて、この勝負、私の負けであり陽美の負けとして見て良いのかしら。」
 美月の艦隊はアグレッサーだったとマクロス・リリィ政府は公表し、ことなきを得ると同時に、世間の認める、まさに水戸黄門的な存在だったと述べ、かつてのマクロス7船団に襲いかかったクロエの艦隊のような存在のように、ゼントランの治安部隊として扱われることとなった。
 そうすることで、怠慢を貪ってる地球の政府は簡単に受け入れてしまう。
 本国に面倒事を持ち込みたくない彼等の精神が、ある種、彼女たちを助けたと言うことにもなる。
 SMS・リーリヤ支社として、生まれ変わることになった。ただ、これより、アグレッサーとしての事例を受け取る。命の光によって、ある種、心を蹂躙され、すっかり、毒の抜けた海賊集団に対して、何を思うかと言えば、彼女たち自身、美月に愛されていれば、それで良いので、毒が抜けようとどうしようと、もとより、略奪をする必要もない位には資源も揃えているし。
 これよりは、そういう風に生まれ変わっても良いのだろう。
 蛹が蝶に変化して、最初に浴びた風が、とても心地良いままに飛び去っていくように、少女の歌は色とりどりの音と波が共鳴し、そして、自分の歌声と合わせてダンスして銀河を響かせて震わせる。
 最初のライブで己の殻、檻、そして鎖から解き放たれた少女の歌が……銀河に響き、そして、歌い終わった瞬間、全ての歌を聴いていた人の歓声が響きとなって己の肉体にフィードバックするように共鳴して……全身が身震いした。そして、銀河の震え、それを銀河が自分に合わせて歌っているのだと思った。
 「銀河が、お前と歌っているぜ……命……」
 命の輝きを見て熱気バサラは満足した顔を浮かべながら、ギターを掻き鳴らしていた。
 そして理解したのだ。
 「私……今、だいじに思っている人に熱いハートを叩きつけてる……これが私の歌だ!!」
 最高の歌による快楽を身に着けた時、初めてバサラの言うことを理解し、更なる自分の未来を見た。


 「ありがとうございました!!!!」
 かつては驚異だった海賊集団の長を引き連れて凱旋した、命の姿は、幼き女王の異名を取る。
 光の衣を身に纏い、少女は、この世界で一つ進化したアイドルへと変化し、戦場で得られる以上のゾクゾクとした高揚感を自分の愛する少女が唄う歌を、その身に染み込ませた。
 その後の唐突なデビューとなった、このライブ、園命のコンサートはマクロス7船団と繋いだ、Fire Bomberの楽曲を共に歌い、惑星を初めとして銀河全体に響き、人々の歓声と共に全ての人に認知された。
 ライブが終わり、そして数日、経った後、バサラは既に、ここから出る準備を始めていた。ある種、熱気バサラとしては満足のいくものであったのだろう。バサラの問い掛けに、どうするべきか。しかし、その思いは、もう決まっているような覚悟を持った顔つきで、バサラは聞くまでも無いか。そう思いながらも一緒に旅を続けて来た中だからこそ、勝手に行くのも自分が許せなかったのだ。
 「おい、命、俺はそろそろ行くけど、お前はどうする?」
 「私、もう少し、ここにいて頑張ってみたい。」
 それが、この世界の真のアイドルとして、輝き始めた第一歩に経った少女の言葉だった。その目にある確かな信念を理解した。
 「それで、いつか、バサラやFire Bomberの皆と一緒に、また唄う。」
 「あぁ。楽しみに待ってるぜ。もう大事なこと忘れんなよ!」
 くしゃくしゃと、頭を撫でながら、バサラは己のバルキリーに乗って惑星ARIAから飛びだって行く。
 いつの間にか、そのサウンドフォースとしての地位やら、そういう物に敬意を表していたのか、マクロス・リリィ政府は最大のお持て成しをし、見送っていた。
 「さぁて、私は、ここで少しだけ唄おう。」
 暫く、命は、この場所に居続けると同時に、マクロス・リリィの代表的なアイドルとなり、7船団、フロンティア船団等にも、その歌は届き、この世界の代表的なアイドルとなるが、暫くして美月、陽美を連れてバサラのように放浪することになる。これに関しては本来の世界に戻るためと言う話もあり、時折、新曲を引っ提げては、ひょっこり戻ってくることも多かったようだ。
 「ありがとう。私の出会った、最高のアーティスト。」
 熱気バサラとの共演は、その後、Fire Bomberのメンバーと共に何回か行われたと言われ、そのたびに、園命の存在も、その素性のせいで伝説的な存在になっていったと言う。
 そして、この惑星ARIAで命は決めなければならないこともあったが、それは、まだ、決断が速い。
 「それで、どっちを選んでくれるの?」
 棘の抜けた二人は、そわそわしながら、その言葉を今か今かと待っている。だが、命は、その答えに関しては、まだ、四捨五入して十代にも満たないのだ。まだ、そんなことを決断できる年頃でもないからこそ、命は照れながら口に言う。
 「それは……まだ、決めない。だって、二人とも大好きなことに気づいたんだから。でも、二人が良ければ……二人と一緒に……」
 頬を紅く染めて、だいぶ、恥ずかしそうにしながら、もぞもぞと口籠りはしたが、その先の言うことが二人にはすぐに解り、発情した犬のように命を抱きしめた。
 「じゃぁー、今すぐしよう。そうしよう。思ったら吉日っていうし。」
 「そうね。どうせなら、ここで。」
 陽美と美月が命を抱きしめながら、そう口にして満更でも無さそうに告げている。命は、それも悪くないかな。って表情を隠しながら、小声で口にし、そのまま口にする。
 そして園命は美月・イルマ、陽美・マリアフォキナ・フォミュラ・ジーナスと恋に堕ち、3人と結婚してたくさんの子供をもうけることになり、何度も本来の世界と、この世界を行き来したと言われている。噂には光の巨人と出会い、子供の名前は姫子と千歌音と名付けられ、後に陽の巫女と月の巫女に選ばれるとか、どうとかあるそうだ。
 不確定なのは、あまりにも彼女に対する資料は少なく、本当に両方を選んだのか、そして、この後、3人目も加わり4人で結婚……なんて話もあるが上記の話も含めて真相は不明。一生の全てを愛する女の歌を唄うために捧げたと言う。素性は、この世界で知らないまま、彼女もまた、この世界の中で代表されるアイドル歌手となっていく。

| マクロスLily | 00:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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