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彼女

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深橋がモデルのSS


「その身体を使って契約を取って来い!!!」
「そんなの嫌です!!!!」
今までは、ある程度のことは我慢はできてきた。その日、初めて奈々未はオフィスで上司の前で感情を爆発させて天地を揺るがすほどの声をあげて上司から言われたことをすべて拒否した。
黒いスーツが皺になろうと大きく動かして、目の前の理不尽な要求を突っぱねた。上司と思われる男は当然のごとく、自分の言うことを聞かない部下に修正を加えるために動き出すが、それ以上に早く、こんな場所にはいられないと吠えた奈々未のほうが先に踵を返して私物の置いていないデスクと鞄を持ち出して嫌な顔を浮かべた時だ。
ふと、何かが横切ったのを感じた。錯覚かと思った瞬間には、金属がはじけるような音が聞こえたから、それは錯覚ではない。灰皿がオフィスの壁に激突して力をなくして床に落ちている。
後ろを振り向けば、これから元上司になる禿げ頭がゆでだこのように顔を赤くして、怒りの形相で自分が灰皿を投げた。と、でも主張するかのポーズをとって息を乱していた。
それを見ても、何も思うことなく奈々未はオフィスから出ていき、会社から消えた。
そうして、徐々に消えたものがよみがえってくる。自分は生きているのだと、感情を爆発させて、初めて生気が戻ってくるような何かに包まれる。
手を動かせること、自分のことを考えられること、すべてにおいて実感できる。生きている。戻ってきたのだ。
それは一人の女が自分というものを取り戻した瞬間でもあった。
ブラック企業という場所に努めて、ずっと己という個人は否応にも封じられてきたのが、奈々未の体験してきたことである。
廊下を出て、改めて鏡を見る。
黒いショートヘアの髪、それなりにしっかりしている化粧といい、今まで黒く濁っていたようにも思えた瞳にも生気が宿っている。
自分がここに生きているということを実感できた。
だれも止めることはない。これが日常茶飯事だから。あぁ、今度は、あの人が辞めるのだな。そんな雰囲気に包まれて、周りの人間の目は死んでいた。
そして、もう戻ることはできない。そして、戻る気もない。
「あぁ、もう、今年も一か月しかないんだ。」
忌々しい闇に飲まれたかのような建築物を後にして逃げるように外に出たとき、間抜けな声で、突き刺すような冷たい冬の風を感じつつ、ライトアップされるクリスマスイルミネーションを見つめながら、そんなことを社会人になって奈々未は季節の移り変わりを、こうして初めて感じ取って呟いた。
いつ春が来て、いつ夏が来て、いつ秋が来て、そして冬になったのか分からなかった。そうなると、栄光のある学生時代に戻りたくなるのが人と言うものだろう。
そう言えば、あのころ、自分を好いてくれた地味な女の子は何をしているのだろう。そんなことを考えるも、現実が押し返し、今日までのろくでも無い思い出に頭が汚染される。働きすぎ。いや、働きすぎることを強要させられた。
どこで人生の選択を間違えたのか。悲劇のヒロインぶることもなく、ただただ、漠然と考える。しかし、考えても、もう思い出しようがないほど社畜という言葉にふさわしい存在になった奈々未の中には学生時代の思い出はわずかに残り、後は全て不快な企業での日常に飲まれていった。
「もう今年で3年目だったんだ。」
そうして、自分が、此処でめげずに、そんな働いていたことを実感する。
クリスマスイルミネーションを見なければ、奈々未の季節は永遠と変わることは無かっただろう。感覚が鈍った訳ではない。それを感じさせないほど、忘れさせるほどに会社の激務に心身が向かっていた。
所謂、ブラック企業に勤めている存在であり、それに気付きながらも辞めることはできないのは察するべき事情があるからだ。大学生活の半分を犠牲にして死にもの狂いでとっても、不景気を理由に内定は取り消しされ、当然の如く、内定取り消しの契約書に当然の如くサインさせられた。何百という企業を受けても不採用になるのが、奈々未の時代でもあり、現代でもある。そうして、奈々未達、同年代や後輩たちが、そうした中で入り込むのが最初は天使の笑顔で入社を歓迎し、後から悪魔の顔を出すブラック企業と言うわけだ。
仕事が終われば疲れに肉体が蝕まれて季節を感じることすら忘れて帰路につく。ブラック企業なんて場所で働いて、身体には疲労がたまっている。仕事疲れ。社会人になってからと言う物、この社会の若者いびり、いかに上の人間が若者と言う存在を大切にしない存在か、そういう物が良く解る世界に入り込んで、なんとか1年は保つことはできたが、流石に、それ以降となれば精神的に疲弊してきている自分がいることに気づく。
親に相談をすれば「俺達の時代はもっと厳しかった。」と、引き合いに出してまともに話し相手にもなってくれない。
「なんか、良く、ここまで頑張ってこれたな。」
情熱、やりがい、そんな物はただの言葉遊びで片付けられて、そんな言葉を伴って入り込んで来る後輩たちを「青臭い」と心の中で罵りながらも、「早く新しい仕事場を見つけて。」と、願う。此処は、そういう地獄。
それが、この世界の仕組みとでも言うべきだろう。
自分はどうかと言えば、そんな青臭い信念を持って入ったものの、その後は、付き合いたくも無い上司と、人間関係を円滑に回すための飲みにケーションと称した上司のストレス発散のための道具として、上司が満足するまでフルに部下が使われる宴会の参加。
最悪、上司に何度も肉体関係を求められそうになった。しかし、それだけは。と、かたくなに拒み、拒み続けてきた。そういう部分では鼻持ちならない嫌な女だとかなり思われていただろう。思考が古く、女は男の肉奴隷程度にしか思っていないくずのような老害には。
上司の「俺は長く生きてるから言ってる事は正しい」という老害にも等しい思考と、奈々未の社会人としての年月の薄さ、クビになるわけにはいくまいと言う考えが「自分はまだ未熟だから謙虚にいこう」という思考が噛みあってしまい「頭を下げれば下げるほど、図に乗るクソ上司」という現象が生まれる。
しかし、奈々未が上に出て意見すればまちがいなくクビと言う現実が待っている。頭を使うことなく、下げてばかりいたが故に、レイプとまではいかない物の、奈々未や似たような境遇の同期を、若い女と言うだけで典型的なセクハラやら暴言を浴びせて、ストレス発散に使い、いびられた者達はストレスが嫌でもたまる。上司から後ろ指を刺されて、会社内で堂々と暴言を吐かれることも、頭が麻痺して自分がダメな存在であると言うことを認識することで、それは試練なのだと受け入れる。守られない労働基準法、それでは飽き足らず、サービス残業と称した長時間労働を強いらせて、パワーハラスメント、モラルハラスメント、セクシャルハラスメント、ノルマを達成できなければ浴びまくる言葉の暴力に自然と体内と精神はボロボロになっていることに気づかず、麻痺して聞き、受け入れる。
更に、そんな汚染された状況に身を落としてしまえば嫌でも男性恐怖症になる。そうして今度は身体が壊れて、会社に問題人物として報告書を出しているものの、古い気質故に取り合ってもくれない。いつしか、会社の歯車として生きていく、その変わり映えの無い日々を過ごして何年か。
最初に意気込んでいた目標なんてものも心の霧の世界に消えて、歯車として生きていく楽な感覚を味わった。それでも、体調は悪くなれば、管理が出来ていないと罵倒される。
そんな世界。
従順な歯車になることを喜ぶ会社、しかし歯車でも調子が悪くなれば不良品と罵る。慣れた。そう言い聞かせて無ければ自然となれる。そういったものだと、社会のことを理解した時、殻の中に閉じこもるように過ごして生きる術を覚えた。しかし、そう生きる術を覚えたとはいえ、人間だ。
時折、張り詰めていた糸が切れたように、その上司から言われた暴言を脳内がフィードバックして吐き気に襲われて吐き出す。「バカ、死ね」と罵られ、それで辞めようとすれば個人情報を掴んだと言うことを人質に取られた状態で懲戒解雇扱いされて転職もできなくさせる。
歯車は壊れるまで使う。
と、言うのが、この会社の方針。
仕事は出来ている方だが、認めてくれない。
そして露骨に人と比較されて疲れる日々。
それに疲れたと言えば甘えと罵られる日々。
「此処をやめても、何も無いぞ。」
と、懲戒解雇するが故の脅し文句で、今と言う生活を送れなくなることは、それで困るからこそ、ブラック企業に留まってしまい、思考が停止する。それが世界の縮図。
ただ、それでも、ソレを見て、同僚や、少し上の先輩からは同じ境遇であるが故に同情を貰う物の、それで自分自身、リフレッシュできるわけがない。ただの傷の舐めあいではどうにもなれない。リフレッシュできることと言えば、仕事から帰った後の就寝時間。
何も食べずに、好きな音楽も、好きなテレビも、そんなことに触れることなく、仕事を行って帰って、疲れて寝てしまう。もう、何もせずに眠り、起きて、会社のために尽くす。そんなことを刷り込まれながら歯車奴隷として生きる価値がある。
何かアクションを起こせば会社は変わるかもしれないが、結局、何をしても受理されず元の位置に収まる。
何をやっても無駄だ。
この地獄から解放されるなら会社を辞めるしかない。
しかし、やめれば食っていけなくなる。そんなことを悟り、全てを諦めて、そう生きようと思わせる社会と言う存在を知る。そうなれば、そうなれば良い。そうなれば覚えてしまうことがある。それでも、時折、街を歩く恋人達を見てしまえば、自分より幸せな人がいれば、奴隷として生きている自分が酷く自分が惨めに思えてくるし、それが奴隷として生きることを抗う意志となる。そんなカップルを尻目に惨めな自分を見られたくないから足早に帰ろうとした。そんな日常を送ることに対して疲れと言う物が生まれ出るのが、この日々。
思い出す。
学生時代、それなりの青春を送って社会に、それなりの目標を持って自分と言う物をアピールした、あのころの自分は消滅した。
他人が幸せである分、自分の隷従生活と言う物が嫌になる。対人関係にも疲れが出てくる。現実から目を背けたくもなる。それを脱するには、何か、変えなければなるまい。自分と言う存在を変えていかなければ、この会社の奴隷として、やめて自立することなどできない。だが、その方法が解らない。
今一つ、奴隷として舌がわされて来た分、自分のやりたいことが解らなくなっていった。何をすれば良いのか。社会の汚染物質を受け入れてくれる奴隷さえいればよしと、仮面をつけて、ただただキツイ仕事を受け入れる奴隷になり始めようと受け入れる。別に、故郷的にも、そういう意味でもきついわけではない。ただ、次の保障と言う物が無いからこそ、希望を捨て、仕方なく働き、気づけば心は汚染されて奴隷になる生き方を選ぶ。会社、ひいては社会の奴隷と人はなる。
ただ、それでも、働いていたとしても正社員では無いのだろうが、幸せに暮らしている同年代の男女を見つめるたびに希望が欲しくなる。以前まで、働いた当初はバイトをしている同年代を見下していた時期もあった。お前たちとは違うんだと見下していた。そうすることで、自分を保ち、あの境遇でも生きてこられたのだ。だが、今は違う。
「羨ましいな……」
求めてしまう。
目の前にいる恋人たちの幸せそうな表情がほほえましい。憎たらしく、妬ましいほどに羨ましくなる。人並みの幸福感と言う名の希望が。それが人の性と呼べるものなのかもしれない。今までは、変なプライドと考えてもあって、奴隷となることを甘んじて受け入れて来た。それが自分のプラスになると信じていたからだ。
「私も、恋人、欲しいな……」
いや、恋人でなくて良い。
自分に温もりを与えてくれる人であれば、それで良い。
しかし、今日は、もうこのことを考えるのはやめよう。改めて季節が変わるころ、そうなって、また奴隷としての自分を甘んじて、社会の与えた枷と言う名の泥を自ら被り、社会に貢献する。
「何、やってんだろ。」
ボーっとしながら、近くのコンビニで購入した缶ビールを開けて、近くの公園のベンチに座り、グイッと飲み干す。特に肉体に変化があるわけではないが、ただ、こうしてボーっとすることで、無駄に年月を過ごした。と、思えるほどの安らぎを得る。
流石に、長く経ち過ぎると冷静さを取り戻して、その社会の枷を付けて働くことに対する意味を真剣に見つめなおす。
「このまま働いてたら、どうなるんだろ……」
何か、落ちつけることでも、ゆっくり考える。改めて周りの幸福感を見て、自分を見つめなおす。
鬱屈とした日常、自分の負の情念が生み出す重い空気が、嫌味な上司の言葉となって、それを許そうとしない。
ただ、これから落ちつくだけでは、嫌でも、明日からの会社のことが脳内に蔓延り、吐き気を催しそうになった。ゾワゾワと背中を走る気持ちの悪い寒気が襲いかかり、街の中心で立ち止まった。
”お前の道は、それしかない。考えることは無駄だ。”
何かが、そう囁いた。
恐れていた何かが己の中に入り込む。
ジワッと、嫌な汗が背中に溢れ出てシャツを濡らす。同時に顔面蒼白になって、崩れそうになる。呪詛のように、これから先の未来は無い。そんなことを誰かが囁く。牢獄に囚われ、抉られるような拷問を受ける。出勤しようと迎えるたびに嘔吐する。そういう場所だ。虚無に囚われ、そして、結局、そんな今まで考えようとしていたことは無駄だと徒労に終わると考えて、全ては飲み込まれていく。
現状を変えたければ自分を変えろ。と、言うが、そうしたいのは山々ではあるが、どうすればいいのか分からない。
言うのは簡単だが自分が変わったとしても、それで周りが変わるわけでもないし、そういう努力をしようとしても基本は激流に流されるかのように全てが徒労に終わるのが現実だ。
(嫌だな……)
それは今、この場にいる他人が楽しそうに過ごしていると言うことからくる嫉みではなく、こういう風にやればできたはずだったのに、懲戒解雇に怯えて努力せず転職すらせずに歯車として過ごそうとした自分自身にだ。
ふと、桜を見て止めた足、こうして幸せな人達を見るだけで自分が奴隷と言う仮面をつけて過ごしたことに対する、抗わない甘さに虚しさを覚えた。
「どうしました?」
「え…?」
突如、虚無に囚われた己の心を誰かが現実に引き戻した。
同時に肉体に暖かい感触が走り、自分の手が握られていたことに気づく。
「立ち止まって、ボーっとして、如何にも倒れそうでしたので。」
目の前にいるは普通の少女だった。自分より、年下か、学生なのか。ロリータでは無い、ちゃんと教育されて行き届いた純な少女には見えた。自分を見つめる視線は、同僚の持つ死んだ魚のような目では無く、生気の宿っている瞳だ。久しぶりに、そういう人を見た気分になって思わず見惚れてしまう。
「大丈夫……だけど。」
何か気になる。
考えてみれば、会社以外の人間とまともに会話したのは、これが初めてかもしれない。
「あ、そろそろ行かなくちゃ。」
背恰好は自分と比べて小さく、柔和な笑みが、何処か創り物っぽさを感じさせる。
肩まで伸びた髪は緩やかな曲線を描いていた。自分のケアさえもしていないゴワゴワしたショートとは大違いだ。手も綺麗に、爪は短く、下手にマニキュアも塗っていない。不快にならない程度の香水のにおいと、年ごろの少女が身に纏うようなしゃれた白で統一された衣服。
靴も、それなりに綺麗なものを身にまとっている。髪は夜中だというのにライトを浴びて白く光っている。よく、手入れされている証拠だ。
それだけだというのに、自分に話しかけてきた少女の存在が天使に見えた。
血液の流れる速度が速く感じる。
名前の知らない、その少女に欲情でもしているかのようだった。
思わず、抱きしめたくなった。
自分のことを知ってほしいと思った。
自分の持っていないすべてを持っているような、そんなものを、目の前の女からは感じ取ることができる。
また、失っていた何かを甦らせるような、ふわりとした優しさを感じることができる。
この娘は、天使なのだろうか。
何処かのアイドルに所属していそうな、そう思わせる可愛いという言葉を世辞抜きに言える女の子。手が暖かく、離したくなくなる。
このまま、ずっと掴んでいたくなるような、それは自分が人肌の恋しくなるほど、そういう特別な感情を持つ存在はいなかったからだろう。
だから、見知らぬ、こういった小奇麗な少女でも、何か惹かれる物を感じてしまう。
ただ、気にかけてくれた。
それだけのことが、どうしようもなく嬉しいのだ。
「あ……」
繋いでいてくれた手を、少女は離そうとし何処かに消えてしまいそうな気がした。それを許したくない。
何故、出会ったばかりの少女に、このようなことを思うのか。そこまで、人はだが恋しいと思えるほど孤独だったのかもしれないと過去の自分を見つめ直す。
「え……?」
何故だか、奈々未は、それが嫌だと、別れを名残惜しむ野良犬のように無意識に繋ぎとめていた。
「これをどうぞ。」
それを見越して、自分の鞄から名刺を取り出して、それを奈々未に渡す。
「私、麻衣と言います。」
「麻衣……。」
透き通るような、くぐもった世界の無い童話のような世界に住んでいそうな処女性の感じる声。
枯れた奈々未の肉体に潤いが宿るかのように、全身が粟だった。
今まで、どれだけ、自分の身体が渇いていたのか。そんなことを思わせた。
「ぜひ、連絡してくださいね。予約しないと、行けないので。」
渡された名刺にはファンシーな名前で着飾った、良く解らない店。
どういうところなのだろうと考えたが、麻衣が手を離して去っていった瞬間、崩れるように視界が真っ白になった。誰かにこうして触れたこと自体、初めてだった。
「あったかかった……」
自分を救い出してくれるメシアであるかのようだと思った。
一瞬の目眩で、足元がたじろぎ、先の麻衣と言う少女の姿を確認しようとする。そこに、彼女はいない。ただ、手元には、確かに名刺があった。
「まさか、デリヘル嬢……?」
店名を見ると、どうもそう言う風にも見える。
そのまま帰宅し、調べようとしたものの、肉体的な疲れが全身に襲いかかり、そのまま布団に倒れて眠りについた。
そうして目覚めた日は、今まで、こんなことがあるのは嘘であるかのように枷から解放されたかのように会社のことを忘れて、初めてサボった。
昨日、出会った娘が気になって仕方が無い。
「そう言えば、予約する必要……あるんだっけ。」
普段着とか、そういうものには気を使った。
久しぶりにするお洒落に心をときめかせながら、あの時、出会った少女に恥ずかしくないような格好をするためにクローゼットの中にある自分の中で高い衣服をごてごてに身につける。
それなりに高い服を引っ張り出して、オシャレ感を演出する。恥ずかしい恰好、あの娘に対して、恥ずかしいと思える恰好をしていないだろうか。
久しぶりに年相応の女のような気分になる。枯れ果てていた己の人生、改めて人間性の得ることのできたことによって目を輝かせ、その手に持った名刺を手に取り、スマートフォンのネット機能を起動させる。
(そう言えば、お金は……まぁ、今は良いか……後で下しに行こう。)
低賃金であろうとも、そこまでのことはできる。使う暇がなければ、低賃金でもたまっている。何の仕事であろうか解らないが、律義にURLを入力し、画面が切り替わる。目に入ったのは。
「レズビアンの為の女性専用デリヘル……」
こういう物を見ると、学生時代、一度は女同士の恋愛に興味を持ちつつも曖昧なままに終わった思い出が蘇る。
女子校で運動神経は良く、何となく、そんな看板を見ると、当時の思い出が頭をよぎった。
同性とはいえ、それなりにモテた自分。ショートヘアとキリっとした顔立ちは男っ気のない女子校では妙に女受けが良かったのだ。あのころの思い出と、今の感情が混ざり合い、良く解らない物が生まれ始める。しかし、その過去の栄光は一瞬で消し飛ぶ。
あの天使のような彼女が。ああいう少女が、こんな店に勤めているのかと。一種のファンシー的な仕事を求めていたのだろう。しかし、予約など、そんな言葉から考えていたことはまさか辺りになるとは思わなかった。
「誰からも愛されるような可愛いルックス♪そしてスベスベなエッチボディ!柔らかい優しい聖母のような性格で小顔のとびっきりの美人の麻衣ちゃん!!まだまだ初めての新人ですが、これから人気が出ること間違いなしです〜O(≧∇≦)Oとても明るい女の子で聖母のように一生懸命つくして癒してくれますよ!」
と、そんな、デリヘル兼風俗のホームページに案内されている昨日の女性の写真を見て、あの娘が、こんなところで働いているのかと、奈々未自身、女性の使うレズビアン専用のデリヘルとはいえ、そういう場所で働いていることに幻滅はする。
ただ、それ以上に
「尽くしてくれるんだ……」
尽くして愛されると言うことを忘れていた奈々未にとって、そのワードは媚薬に近い物があった。
ああいう子に、抱かれる。
そう考えるだけで、何か来るものがあるのかもしれない。
疲れている人間に、そういう心労も祟っているような、そういう人間からすれば、こういうものは関係無い。しかし、ああいう可愛い顔をしている人間が、何故、こういう店で働くと言うのか。
思い返してみれば前に会社でセクハラに近い感じでアダルトビデオのペッケージを見せられたことがある。
それに出てる女優は正直、アイドルと見紛うほどに可愛かったのを覚えている。
今は、そういう時代なのかもしれない。
「会社に疲れている人は是非ともね♪か……」
今となっては忘れてしまった、あの時の情熱。
あの子が、見つめ直すチャンスをくれた。もう一度会いたい。そして、同時に癒して欲しい。だから、電話は割と躊躇いなくかけることが出来た。
『お客様、こういうお店は初めてですか?』
とりあえず、簡単な事を済ました後に指名する相手を選ぶ時が来た。
「この子……深河麻衣さんで……あの、甘えさせてくれる恋人のようなプレイで……3時間。」
『解りました。元より、この子は、そういうのが得意ですので。』
高い料金を払うことになってしまったかな。と、思ったが、休日は寝てばかり、持っている金は必要最低限の物を買う時以外、消えることはないから寧ろたまっている。低賃金であるものの、普段の生活が生活であるが故に、普段、買い物もせずに溜めこんでいる資金は大量にあるからこそ、こうしてデリヘルに多少、金を使いこんでも問題は無い。
飯を食う程度には生きられ、遊ぶ金は極僅か。
その極僅かも塵も積もれば山となる。
故に、こういうこともできるわけだ。とりあえずの予約はし終えて、後は来るまで部屋を片付けたり、銀行に行って貯金を降ろしたりしてきた。綺麗でお洒落な服を着たり、部屋を片付けたり、とにかく、デリヘル嬢だと言うのにあの子に失望されるような汚い部屋であってはならない。と、そんな使命感が生まれる。
相手はしょせん、デリヘル嬢だと言う、以前の自分なら社会的底辺の人間とバカにしていたと言うのに変な気分だ。
変に気になる。
恋に落ちたとでも言うのか。
忘れかけた想いが蘇るように、自分に触れて声をかけてくれた、麻衣と言う少女が気になる。
しかし、空虚な生活から自分を蘇らせてくれた麻衣と言う子を考えると変に気になる。ああやって誘うこと自体、デリヘル嬢としての営業かもしれないと言うのに。そうして部屋も片付け、遅めの朝食を取った後だ。
アパートのチャイムが部屋いっぱいに鳴り響いたのは。ソワソワした気持ちで息を飲み、何か、変なところはないだろうか。と、再確認した途端、心臓の鼓動が鳴り響くチャイムの音以上に激しくなり、緊張が走る。
『あの……』
「ご、ごめん!今、出るから!」
相手は営業に来ていると言うのに、何故、こうも焦る。落ち着きを取り戻して部屋のドアを開けた。
変に緊張が走り、目の前にいた、あのあどけない少女の笑顔を見たとき、すぐさま麻衣と言う少女は口を開いた。
「あぁ、昨日のお姉さんでしたか。」
「覚えて、たんだ……」
「はい。」
営業スマイルなのだろうか。ふとした、疑問が吹き飛ぶほどに、昨日とは違う、少し豪華な衣装。
素朴さがありながら、清潔感が漂う姿は、即席で清潔感を作り上げた自分とは大違いだ。営業に向かうときは、そういう衣装なのだろう。
そして、人心掌握でも出来ているかのように恐れずに、自分の中へと入りこんで来るような笑顔は一瞬、奈々未を恐れさせた。しかし、それでも奈々未の全てを分かっているかのように自分から一歩進んできた。
「本日は、ご予約、ありがとうございました。深河麻衣です。」
にっこりと優しく微笑んで、デリヘル嬢だと言うのに、本気で恋に落ちそうになる。
同時に、デリヘル嬢と言っても、男に抱かれるようなものではなく、女専門と言う部分もあって、そこに汚らわしさなど感じることは無い。あのろくでもない男たちを見てきているが故に、男性と言う物に嫌悪さえ抱いていた奈々未にとっては、麻衣のような存在は神のような何かに見えて溶け込んでいく。
満面の笑み。
暫く、そういう人の自分に向ける優しい笑顔を見ていないからこそ、変に委縮してしまいそうになる。今までの自分に向けられてきた笑顔は全て下卑たもの。セクハラ、パワハラ、モラハラ、そんな物で人心掌握をするブラック企業に良くある男尊女卑の世界のことだったからこそ。
だから、男の向ける笑顔が皆、下劣に見えた。
だが、麻衣の場合は営業とはいえ、自分に、そういう笑みを向けられるのは嬉しいし、心から触れて来たような、そんな錯覚に陥った。解れば、考えてみれば、こうして触れていない。
だか奈々未は自分が他人に飢えていることに気づく。
そして、奈々未の中で社会的信用を失った男よりも、こうした金さえ払えば自分を一時的とはいえ愛してくれる。もう、変に恋人を作ることすら億劫になった奈々未にとっては、レズデリヘルは調度良いのだろう。そう自己完結させて、今の時間を楽しもうとした。
「え、と、これ、お金……先に。」
「はい。ありがとうございます。それでは、準備をしますので、少し待っててくださいね。」
「あ、うん。」
そう言って会社に連絡し、先に資金を貰ったことを説明し、電話を切り、このデリヘルの仕組みを話す。
たとえば、男を呼んで3Pをすることは禁止。等、そういうルールを話され、それを理解した上で、彼女はこういった。
「営業は、今日、これしかないんです。だから、お仕事が終わったら、お姉さん、暇なら、一緒に何処か行きません?」
「あ、うん……」
「ふふ、デート……」
まさか、こうなるとは。
ただ、資金的に余裕はあるし、麻衣とデートと言うのも悪くは無い。
向こうもそう思っているのか嬉しそうに衣服を脱ぎ始めて準備をし始める。そうして準備している間に奈々未は気になる事を遠慮しがちながらも、こういう職業で働いていることに興味があるが故に気になっていることを口にした。
「ねぇ、今まで……何人の女の子を抱いたの……?って言うか、男性経験とか……」
気になる。
あの時の笑顔が忘れられないと言うだけで、こういう場所で働くと言うこと、他の女と抱いたことに、何故か嫉妬のような物を覚える。恥ずかしそうにしながら、はにかみつつ、作業を止めて答えた。
その顔には緊張感と言うよりも、恥ずかしさ、十代の年頃のような少女を浮かべていた。
「男性経験はありませんよ。でも、女の子は、この職業に就いたころから……いっぱいです。」
「そう、なんだ。」
嘘はあるかもしれないが、何故か信じることはできた。唯一、男に抱かれたと言うことが無いのは嬉しく感じた。それなら、まだ、奈々未が麻衣の処女膜を破れる。
そんな期待さえも抱ける。
何故か、そういう期待を抱いてしまうのは、バカみたいな妄想からか。
「奈々未……さんは、女の子にはもてたんですか?」
「昔……はね。」
「綺麗ですよ……」
他人との、こういう他愛のない会話なんて、何年ぶりのことか。口が良く動かないし、言葉が続かない。
「化粧、してない……」
肌のケアはしたくらいでスッピンだ。高校時代も、化粧せずに、そういう風に勝負したが故に同年代や年下の女子にも告白はされた。
「素が綺麗なんですね。」
「そう、なのかな。」
「そうですよ。憧れます。あ、恋人プレイ……でしたね。」
忘れていたかのように、その後の雑談は恋人とのような口調になった。
しかし、それ以上に奈々未としては、こんな会社の歯車になって疲れ果てた顔しかない女の何処が綺麗なのか。
そういうことに対して(嘘……)と、言う言葉が脳裏によぎる。
だが、その言葉には不思議と力がある。自分が彼女の優しさのような物に酔っているのか、信じてしまう。何故だろう。そういう風に学んでいるからなのか、何か言われるたびに心臓をわしづかみにされたかのようにドキっとする。女同士、かつては、そんな関係に酔い、そして未来に憧れを持っていた時期だった。
この少女、女を抱くという職業柄故か、そういう時代の事を思い出し、心さえも、あの時代に戻ってしまいそうな錯覚に陥る。
時が戻るとでも言うべきなのか、身も心も、幼くなっていきそうだ。目の前のデリヘル嬢は、女の子は年下に見えるが、何かが違う。
「それじゃぁ、始めましょうか。」
服を脱ぎ終えて、彼女の裸体が露わになる。
一糸纏わぬ少女の姿。
少女は人前で裸体になるのは慣れている。
胸は、そこまで大きくない。
白い肌に桃色の乳輪と乳首、露わになっている淫唇は処女そのものだ。
プロフィールを見た限りでは、自分と同い年。
同じ年だと言うのに、奈々未と麻衣は天と地の差があるのではないか。
痛切に、その違いを感じていた。
毛先まで輝いている髪と言い、鎖骨まで届いているそれが毛先まで輝いていているし、程良い形の尻に、モデルのようなスレンダーな体系と、さらにアイドルのような顔までしているのが、何処か悔しくもなる。
現状、これではいけないと気づかせてくれた女の全ての初めてではないと言う、そういう嫉妬のようなもの。
これでも、昔は女子校でモテたと言うのに、何処で差がついたのか。嫌でも比べてしまうし、考えてしまう。見惚れてしまう、そこまでグラマラスだというわけでもないのに、肉体が発情し、血液が溶鉱炉のマグマのように熱く、そして激流のように早くなる。
瞳が、その幼いと言っても良い体を離そうとしない。
美しく白く輝く肌に不健康さすら感じられない。
その人としての美しさそのものに惹かれていた。自分の中にある社会の毒素が浄化されていく。昔、見た深夜の特撮ドラマで体内の邪気がとある光を浴びることによって浄化されるシーンがあった。その時の主役の登場人物も気持ちも、こういう状況だったのだろうか。
「あ、奈々未、こういうのは初めて?」
「女どころか、男ともない……から。」
「それじゃぁ、私が奈々未の初めての相手になるんだね。」
光栄です。
と、でも言うかのように「脱がせてあげる……」と、口にして、優しく奈々未の衣服を脱がし始めた。
一瞬、心臓がバクッと破裂したかのように電流が全身に走った。
赤子のように、久しぶりに母親に甘えられるような、そういう感情。
好奇心と愛情、そして、性欲が一つに混ざり合い、醜いコントラストを生み出す。
奈々未の中にある麻衣の中から感じる母親のような母性、それは、長年飢えていたもの。親に言おうにも言えない物を全部、吐きだせそうな、それを忘れさせてくれそうなほどの大きなものを感じた。
「ねぇ、なんで、私に名刺をくれたの?」
「だって、素敵な年末の夜に死にそうな顔をしてたから。心配になっちゃうよ。それを、私なら、なんとかできるんじゃないかな。って思った。」
自意識過剰だね。と、言いながら、抱きしめて、ブラジャーを外す。しかし、実際に自分を、こうして救うことが出来たのであれば、それは違うよ。と、麻衣に聞こえないように唱えた。
「今日は、私にいっぱいいっぱい甘えて良いよ?いっぱい、気持ち良くしてあげるから。」
「うん……」
「ほら、やっぱり、綺麗。」
「そう……?」
本気で言っているのだろうか。
自分の肉体には自信が無い。白い肌とは少し無縁は黄ばんだような日本人特有の肌に、処理を忘れている下腹部と、ただ、そんな目立ってはいないと自分で確認し、麻衣が来る前までにシャワーを浴びて、ちゃんと整えておいて良かった。
変な匂いがしてたら、どうしよう。と、思われないようにあらかじめ浴びておいたのが功を奏したようだ。
それに安堵をしつつ、麻衣が自分の淫唇を隠す最後の布切れ1枚に手をかけた。
「どうして、こんな仕事を始めたの?」
「んー?私、昔、好きだった人がいたんだけど、その人は私を見ないから、どうしたらいいのか。って、家庭教師だったお姉さんに相談をしたら処女を奪われて、そのまま、女の人に抱かれるのが好きになって、気づけば、この道です。」
「そう……彼氏、とかは?」
「彼氏も、彼女もいないんです。」
ざっくばらんに話した後に、これ以上は何も無い。と、言うかのように、最後の砦を外して、「私より、貴女の方が心配。」そっと奈々未の髪を撫でた。
心身ともに疲れている奈々未にとって、その行為は求めていた物なのかもしれない。体内に渦巻く黒い塊が融解していくような、そんな心地良さだった。今まで溜まっていた物が消えていく。どうやら、こういうデリヘル嬢と言う物は、そういう作用があるようだなんて、変な考えさえ抱いてしまいそうになる。
「キス、とか、してくれるの?」
「喜んで。」
遠慮なく、麻衣は奈々未の首に手をまわしてきた。10センチほど麻衣の方が背が低い。こうして並べば姉妹にも見えるだろうか。
澄んだ瞳をしている。
こういう職業でも安定していると、そんな自分のように死んだ魚のような目にはならないのか。それとも、女同士のセックスが好きなだけの、そういう尻の軽い存在なのか。考えている暇も無く、目の前のデリヘル嬢が、そのまま近付け唇を重ねた。
「んっちゅ……むちゅ……」
「んぅ……ちゅ……」
知らなかった、セックス前のキスの感覚。
「んっ……!?」
しかも、今度は舌まで挿入してきた。あまりに事に身体がビクっと跳ねあがり、肢体を震わせる。舌を絡めて、口の中でぐっちゅぐっちゅと蠢かしてきた。奈々未は当然、初めてであるが故に対処することが出来ない。為すがままにされたら力が抜けていく。
刺激が強く、立っていられなくなるほどにドロドロとした物が口の中から、体内に入り込んで来る。
熟練したものと全くの初心者、処女である己の肉体が淫靡にもっと麻衣が欲しいと求めている。この興奮を更に高めようと、より、ねっとりと舌を絡めて口の中まで冒してきた。
「んぅ………んー………」
あの少女から、このように見事になすがままにされている。初めてであるが故に、此処から、どう動かせばいいのか分からない。舌で口の中をミキサーのようにかきまぜられてるような感覚を覚え、ミックスされた唾液が流れていく。
(この子の、麻衣の匂いでいっぱいになる……犯されてる……いっぱい、口の中、いっぱい……)
内側から肉体を犯される感覚とは、こういう物なのか。ただ、このような可愛いと自分が感じているデリヘルに勤める少女になすがままにされるのは悪い気分では無く心地よい。
発熱しそうなほどに興奮している肉体を感じたのか、ドクドクドクと心臓も強く脈を打つ。
全身が溶鉱炉にでもなったかのように舌で口の中をより激しくおかされるたびに熱くなる。
「あぁ……」
奈々未が糸の切れた操り人形のように、生気を失って倒れ始めた。
「このまま、ベッドに行く?」
「う、ん……お願い……」
とぼとぼと歩いて、近くにあるベッドに倒れた。
頭を麻衣の膝に置かれて、そのまま寝てしまいそうになりそうになる。
夢のような世界とは、まさしく、このことを言うのだろう。
ほど良く柔らかい、その感触は下手な枕よりも眠気を誘ってしまう。
生まれたままの姿で、さらに出会って、一時間も経っていない二人が、こういう状態になっている。膝枕され、優しい笑顔で此方に微笑んでくれる。頭まで撫でられて、奈々未自身は童心に戻っていた。
「お疲れなの?」
「うん……結構、ね。会社が辛くて。」
母親にあやされている赤子になったようだった。今日はさぼった。このままだと、懲戒解雇だ。等と、上司の言葉が脳裏に走って、奈々未の身体が震えだした。このまま、何か今後の人生をふいにしてしまいそうな、そんな上司の言葉で汚染された脳内から全身に走り出し、禁断症状のように肉体が現実と言う空間に一気に夢から引き戻される。
麻衣は何も言わずに震える奈々未を優しく抱きしめた。何か黒いものが浄化されていく。氷の塊を熱湯に入れた時のように自身の中にある黒い何かが消えていく。奈々未に安らぎを与え、自然と余裕と言う物が生まれてきた。
あの嫌味な上司の言葉も消えて、聞こえてくるのは麻衣の声と、優しい温もり。聖母と呼ばれる人間と触れ合うのは、こういう物なのだろうか。
「どうしますか?これ以上、続けます?」
「ん……お願い。折角、お金、払ったし……」
麻衣の乳房が視線の中に入り込んだ。
上半身にある女を象徴する半球は巨乳と言う訳ではない、控えめなサイズ、ただ、その先端にあるピンク色の果実は今まで食してきたものの中で、唾を飲む音が部屋に響くほどには、麻衣の胸の先端にある果実を美味なものだと思い込んだ。
しかし、他人の乳首をこうして舐め回すように見るのは初めてだ。
しかし、麻衣の乳首は果実のような甘い香りが何故だかする。香水でもつけてるのか。
ただ、こうして見つめているだけでも、これからすることを考えると淫らな物に見えてしまう。
胸が好きな男の気持ちは、こういう目の前に美味な果実に被りつきたくなる心境が多少なりとも理解できた瞬間だった。
「良いよ。」
それを察したかのように先ほどの素朴な顔から、淫らさが溢れる妖艶な顔つきになって、蛇に睨まれた蛙のような状態になった。聖母と言うよりは悪魔とでも呼ぶべきか。人の精を吸収して生きる悪魔の名前が奈々未の頭によぎった。
最終的に、その人の愛撫しか受け入れられなくなる程の魅力を持った悪魔、サキュバス。
その名前を思いだした瞬間、麻衣の口の端が釣り上がり、しなやかに舞うように奈々未の身体を起こした。その胸が視線の先にあった。身体の衝動が激しくなる。
唾を飲んで、目の前にある控えめな乳房を見て口を開き、桃色の先端の舌がいやらしくぬるっと動かした。母に授乳してもらう赤子のように形の良い乳房を口に含み、出ないミルクを期待でもするかのようにキスをするだけで、その後は何もしない。
AVの裏パッケージで、そういうのを見たが、この後、口に含んでどうすると言うのかが解らない。
「もっと、口の中で舌を動かして?」
それを察して助言を与えた麻衣の言われたとおりに口の中にある淡い桃色の蕾を舌で弾いてみた。
「んっ……」
微かに感じている声が耳の中に入り込んで全身に響く。脈を打つスピードが一瞬、早くなった。感じている。自分の舌で感じていることに胸が高鳴る想いがした。
「そう……もっと、舌で乳首を転がして……」
息を乱して感じる声が可愛く感じて、もっと気持ち良くさせたくなる。
「あっ……あぁッ……」
奈々未の下半身も疼き始めた。
ドクッ……ドクッ……
次第に身体が煮えたぎるように熱くなり始めるのを感じる。顔が紅潮して、全身がどうなっているのかを理解することすらできる。熱さが全身に走るのは一瞬。自然と浸かっていない腕は股間に走り始める。
クチュ……
音が走った。
「……ああっ、ひいっ……あうっ……」
感じている、淫らな声。
改めて、奈波は自分がこういうことをしているのだ。と、言う実感が生まれて出てきた。ただ、こうして胸を弄られているだけで、流石に物足りなくはなって来るのか、徐々に麻衣から嬌声が消えていく。
この後、どうすれば良いかわからない。
ただ、乳を愛撫すれば、それでレズセックスになる奈々未にとっては、その知識は明らかに偏っているし、本人としてもそれで満足はしていた。しかし、そうではない。と、言うかのように麻衣は艶やかな顔で呟いた。
「それじゃぁ、私のも行くよ……失神しないでね……」
ビクッと、一瞬、身体が跳ねて血の気が引いた。目の前のセックスのスペシャリストは、その柔和な笑みで人の中に侵入してくる。素早く自分が動きやすいように移動し、これからすることに対して飢えた何かに変貌している。
本当に、さっきの人なのだろうか。さっきまで、自分の愛撫に感じていた人なのか。そんな疑念がわき上がるほどに、ゆっくりとナメクジのように割れ目を這う麻衣の舌の動きは、奈々未の真新しい官能を掘り起こす。
(ああん、いい……。舌を、そんなところまで……初めてすぎて……?)
「奈々未……。そんなに気持ちいの?ここ……。本当に、凄い熱くなってる……」
「自分でも、解んない……。ああん、ねぇ、だから、もう……。はぁぁぁっ、ああっ……」
麻衣が背中に密着しながら胸を押しつけ、そっと優しく手は股間の中に忍び込み、処女の淫唇を撫でながら、そっと侵入してくる。
(何だろう……。こんなに密着したの、初めて……ああっ……。気分が落ち着かない……)
麻衣は躊躇わなかった。
抱きしめるように背中に密着したまま片手を股間に伸ばし、奈々未の割れ目の先端に指をなぞると、そのまま強引に淫核を露出させようとしていた。耳元に麻衣に吐息がかかり、変に身体が蠢いた。優しく太股に麻衣の股間が擦りつけられ、陰毛のふわっとした感触がくすぐったい。
「ああ、ヤバい……。麻衣さんの手の感触が、あああ、たまらない……」
いまにも肉体が何かから解き放ちそうな奈々未の昂ぶった声が麻衣の耳に入り込んだ。
「好きな時にイって良いよ。それでも、時間までは沢山してあげるから。」
(でも、ミルクをしぶかせるのは、もうちょっと待ってね……もっと、この身体を堪能したいから。)
指を絡めた乳房の先端が極限にまで勃起している。
感度は初めてということもあって、頭が白くなってしまいそうなほど上がっているが麻衣が満足するには程遠い。平均サイズの胸を奈々未は強く揉みし抱かれるのも、何もかもが初めてだ。
性技に翻弄されて勃起した乳首が、これ以上に無いほど、いや初めてと言って良い。その熱が伝わるほどに勃起しているのがしゃぶりつきたくなるほどにいやらしくなってしまっているのが解る。
「ああっ、私の、変な所にいる……」
麻衣が自らの指で奈々未の膣の淫唇に運び、舌から抉るようになぞられた。
まだ、浅く中に入っているだけだと言うのに心臓を鷲掴みにされ、全身に電流が走り、意識を失いかける。すかさず奈々未の身体は未知の衝動から逃げるように身体を蠢かす。クレヴァスから指をはなすようにくねくねと蠢きながら拒否するも、それを麻衣は更に拒絶して爪先が膣孔に呑み込まれるまで指を離さなかった。
ブチブチと繊維が破れるような感覚が自分の身体に襲った。
「無理……太い……」
息苦しくなるも聞いてもらえない。丁寧に初めての玩具を扱うようなものではなく、初めての玩具だからこそ乱暴に扱ってしまう荒々しさのよう。たった二本の指が自分を支配する。奈々未を壊していく。
「あああーーーーっ、入ってくるぅ……」
まだ、処女と言うこと、これだけ快楽が高まったこともあって肉体は麻衣の指の先端とともに膣の浅瀬まで潜り込んで、そして指を引き抜くと、再び電流のような愉悦が全身に走った。
奈々未は全身を戦慄かせながら、自分の膣内から引き抜かれた後の己の花弁を見つめた。
(あああ、凄いけど……恥ずかしい……。こんなに濡れてる……)
「これで良いんだよ……奈々未は、もっと、これからエッチになっていくから。」
「怖い……」
ショートカットの髪が震える。今の自分の体は、誰かが入った別のものではないか。おぞましい何かが自分の全身を張っている。この世の生物では無い、未知の何かが肉体の上で蠢き、そして膣内まで侵入しようとしているのが解る。
そんなことを思った瞬間、狭隘な膣孔の襞を削り取るような麻衣の二本の指が太い肉棒となって、脈を打つ奈々未の膣内に入りこもうとしていた。
麻衣がさらに指を進めると、一気に膣奥まで届きそうになり意識が本当に奈々未の中から消滅しそうになった。それを勘違いしてペニスが入り込んできたと錯覚した子宮が迎えに降りてきて軟骨の輪のような入口に、膨らんだ爪先を擦りつけて、奈々未は喜悦の声をあげていた。激痛が走るが、それを痛みと思うことは無かった。ふとして、己の処女膜が破られたことに気付きながらも、そんなことは、今の自分の何かに支配された身体にとっては些細なことだったからだ。
「い、いいわ。ああ、き、気が変になりそう……」
「どう?」
「お、大きくて、太い……。ああ、あああ、夢中になりそう……。あ……」
痛みよりも、心地良さが襲い来る。
強引に拡張されて肉棒の爪先の動きが齎す桁外れの愉悦感に、奈々未の中から恐怖心が取り払われて、もっと、と拒否では無く催促するように大きな尻を自ら振り回しはじめていた。
「奈々未……」
弄っていた太腿の内に手をかける。
(どうして……?もっと欲しいのに……)
麻衣、横になったまま脚をMの字に開いた。
先ほど、絶頂を迎えさせられた股間の女裂が淫蜜と同時に処女血が混ざり露わになっている。麻衣は体をずらし、奈々未の足の間に上半身を潜りこませるようにした。眼前に、濡れた恥所が露わになっている。ヒクヒクと強引に開かれた花弁が蠢き、蠢くたびに発散される女臭にくらくらしてしまいそうだが、その味が麻衣を淫らに映した。
処女血を見てうっとりする姿は、まるで吸血鬼のようだ。
(ああっ……恥ずかしい……)
意識が戻り始めて、こんな恰好で見つめられている。まともな神経ならば、恥ずかしくて、このままではいられないだろう。
だが、初めて玩具を与えられた子供のように、初めてセックスの味を覚えた奈々未は、もっとしてほしいと視線を感じながら腿を開き、自ら淫核まで見せようとする。麻衣はやんわり太腿の内側を撫でながら、唇を奈々未の下腹部に重ねた。
「気持ちいい?」
舌を差しだし、円を描くようにおへその初めて開いた淫唇の周りにある処女血と淫蜜を舐める。淫裂の周囲は溢れでた愛液でべったり濡れ、濃密な秘毛が肌に張りついた感じになっている。
指先で濡れた女襞を広げ、サーモンピンクの粘膜を露わにさせる。淫裂下部の秘穴が、呼吸するように開いたり閉ざしているのまでよくわかった。もっと欲しいとでも訴えるかのように。
「あぁン……いい……」
「まだまだ、たっぷり気持ちよくなってもらうからね。」
麻衣は舌を差しだしながら、ゆっくり膣壁に侵入しやすいように近づけていく。
もう、周りを舐めとるだけではなく、ヌメっとした生暖かいものが奈々未の身体を侵略するのだ。まだ、処女の血の匂いと淫蜜が香る膣肉の中に。
「あぁぁっ」
奈々未のお腹が波打つようにうねった。
麻衣は濃密な秘毛の茂みが揺れるように動くのを見つめながら、舌先を股間の丘陵に滑らせた。
「はうっ」
まずは秘毛の周囲をやんわり舐める。
股間からほんのりしょっぱい恥所の匂いが漂ってくる。漏れている。気持ち良くなって黄色い液が微妙に流れ出ている。
舌先で撫でるように淫核の皮を剥いて先端を舐めた。ドクッとエビ反りになっていることなど気にも留めず無理やり拡張するかのように強引に二本の指を再びねじ込んだ。
股間の体毛はやわらかく、ふわふわとした感触だった。
舌先で弄ぶように淫核をねぶりながら、指は両足を抑えながらそっとアナルを撫でつつ、移動させ、淫裂からはみだす二枚の襞は開いた。白っぽい愛液に濡れ、股間の恥毛が数本張りついている。
陰毛を優しく掻き分けるようにして、女裂をゆっくり撫でる。
「あうぅぅっン」
腰がくねり、せつなげな嬌声が漏れる。軽く撫でただけでべたべたになるほど、そこはたっぷり愛液を溜めこんでいた。
「気持ちいい?」
今度は舌先を淫裂の上部に近づける。
愛液にぬめる花芯から、汗と尿臭と処女血、女のフェロモンが混じった噎せ返るような生々しい匂いが漂う。麻衣は胸一杯に淫靡な芳香を吸いこみながら、充血しふくらんだクリトリスに、舌先を押しつけた。
「んうぅぅっ!いい!」
腰がびくんと跳ねあがる。女の亀裂から、とろみを帯びた体液がこぼれ出た。
「今日、こんなに……すごく濡れてるよ。初めてなのに、凄いね……」
奈々未を恥ずかしがらせるようなことを平然と口にし、奈々未の羞恥心を煽った。
「あぁン……だめ」
くねくねと腰を振り、舌から逃れようとする。
しかし、そこには本当に嫌だ。と、言う意思は全く感じられず、理性は拒否していても身体が求めているのが良く解った。麻衣自身、そういう処女を何人も相手にしているからか、余裕を持って唇を女裂に押しつけ、ねぶり回した。
「あっ!んんっ!あふぅっ!」
唇から漏れる嬌声が、甲高いものになる。麻衣の口中には、ほんのりしょっぱい愛液のアロマが広がっていた。クチュクチュと淫猥な音を立て、女裂をねぶり回す。奈々未は背筋を弓なりに反らせ、太腿をぷるぷると震わせながら、せつなげに喘ぎつづけていた。
「そ……そんなに攻められると……本当に……おかしくなっちゃう」
「良いよ。もっと、おかしくなって。」
奈々未は言葉にならない。
麻衣は、冷淡に奈々未に言葉を告げて愛撫を繰り返す。初めてのセックスの感動は、奈々未の想像をはるかに超えていた。無理もない。今まで無縁にもほどがある生活を送ってきた。気づけば感極まって、涙さえ浮かべている。
(こんな初体験……あぁ……癖になる……もっと、欲しくなっちゃう……)
麻衣は、このボーイッシュだが塞ぎがちな少女を手に取り、自らが快楽で満たすことに感動している。
憧れてと言う訳ではないが、あの時、死んだ目をしていた女がこうして生気を取り戻して乱れているのだ。考えただけで、衝動に身体が震え、嬉しさで総毛立ってしまう。
「あぁ……おかしい……初めてなのに、こんな……昨日会ったばかりの子に、身体、好きなようにされて……うう……感じてる……」
「好き?」
そう聞かれても答えは解らない。
麻衣だから、気持ちが良いのかもしれない。下手をすれば、麻衣でなければ、この先、感じることが出来ないかもしれない。
「ほら……こんなにいっぱい……」
すり寄りながら、見せつけるように淫唇をぬぐった指を見せつける。ドロっとした気持ちの悪いものがいっぱい、取り撒いている。潤んだ瞳のように指先が輝きで息子を見つめている。
「好き……かも……」
「解るよ。奈々未、あなたのどきどきがわかる……膣襞にはっきりとついていたもの……宝石みたいよ?」
奈々未は目を閉じ頬を紅くした。それは、それ以上、観るのは恥ずかしいといし。
それよりも早くして……そういうように奈々未は腰を緩やかに揺らした。
花弁から淫唇に変貌した膣の角度が変わり、二人が同時に低くうめく。
時間差のない歓びが、繋がっていることを二人に実感させる。
「奈々未、いっぱいしてあげるからね……」
官能小説に出てくる恋人のような口調で麻衣は呟き、甘えるように淫唇に顔を埋めてくる。確かに、そういう風に求めた。だから、間違ってはいない。一次とはいえ恋人に、こんなことをさせていることに変な罪悪感のような物を覚える。
だが、それ以上に快楽が支配した。両太股の間に、麻衣が自分の顔を押しつけると、奈々未は信じられないように自分が後頭部を優しく麻衣を抑えるように撫でている。一つになった感じが強まり、幸福感が増してくる。
「麻衣……ちゃん……」
自分の名前を呼んだが麻衣は聞こえない振りをして再び攻める。出会ったばかり、恐らくは同い年に近い。本当に好きになってしまいそうなほどの心地良い責め苦が続く。一回の性行為で、こんなにも夢中になるなど考えたことも無かった。
感情に任せて目の前にいる相手のことを好いているのはなんとなくわかるが、そうならざるを得ないほどに他人の情熱で飢えた身体はどん欲なまでに麻衣の舌や指を求めていた。刹那的な感情に支配されている。そして、この先のことがわからない不安と羨望で、快楽の海に飛び込んだ方が楽だと言う自分が奈々未を大胆にさせた。
(私のあそこ、麻衣ちゃんに好き勝手にされてる……今までの記憶が奪われていくみたい……)
今、働いている会社にいる記憶、そんな物が全部なくなっていく。
嫌な思い出しか無いから、一時の快楽で得られる心地良さは記憶回路が落雷でショートした電子器具のように消滅していった。今頃、あいつらは、何をしているのだろう。まさか、こうして快楽の海に溺れている奈々未のことなど考えてもいないだろう。
そういう一時の愉悦感に浸っている奈々未の淫唇に、麻衣の舌と指が容赦なく攻め上げる。可愛く勃っている淫核を吸う。吸いながら腰を、ゆっくりくねるような腰を止めてアナルに指を挿入する。
「あぁ、これ……ヤバいかも……身体に、熱い何かを埋め込まれて……擦れて……感じて……」
結合部分は密接して麻衣の顔が奈々未の股間に溺れているように見える。
恥丘をまさぐる舌が上へ下へと動くたび、ぐぽ、ぐぢゅ、ぢゅく……と、恥ずかしいほどの初めて聞く汁音が響く。
もちろん歓びは言わずもがな、淫唇を舐めている麻衣の呼吸も、次第次第に甘くなる。
「奈々未の此処、とっても綺麗よ。」
甘い甘い快楽が自分を包む。気持ち良すぎる。セックスジャンキーにでもなってしまいそうだ。舌でゴリゴリと膣壁を研磨されていく。一匹の牝犬になった気持だった。奈々未の瞳は昇天を失いつつある。
下半身全体が痙攣し始めて、再び肉体が反りかえった。再び、二本の指を入れて引き離そうとすれば食らい付く貪欲な淫獣のように捉えては肉ビラが離そうとしない。
「舌より、指の方が好みみたいね。」
そう言うと再び、奈々未の液で濡れた顔を見せながら、さっき処女だった女の膣口から吹いた液体でべとべとになった麻衣の顔が現れる。
淫靡だ。
指がクチュクチュと自分の身体が奏でられて自由を奪われている奈々未は、それを見て何もすることはできない。
「何もしなくて良いよ。」
悟った顔を浮かべた麻衣が舌を出して、再び唇を重ねた。
指を出し入れするストロークが激しくなる。忘れていく。この快感が全身に電流となって脳に走り、大学を卒業してから、今日までの記憶の何もかもが。嫌なことが、麻衣に愛される事で忘れていく。
頭の中にある記憶の海が快楽と言う薬物によって汚染されていく。生きるための手段を忘れさせていく、この時間。
「ッ……」
声が出ないほどに心地よさが増し、体内の温度の上昇と、これ以上に激しいものが来るという予感から全身が発狂しそうなくらいには心地よい悲鳴を上げている。相反する二つの何かが奈々未の中でぶつかり合い消滅しては生まれ、肉体から安息は抜けなくなっていく。
ぐっちゅぐっちゅと、自分の身体から聞いたことのない得体の無い音色が入り、身体に混乱を産む。
そして、麻衣の指をもっと味わいたいと膣肉が蠢いた。
膣内に第一関節が蛇のように動き回る。にゅるにゅると爪先で抉られる感覚が脳細胞の一つ一つが死んでいく。
「あら、離してくれませんね。」ヌプッと音が奈々未の下腹部にある肉壺の中で卑猥な音が響く。
(こんなの、私の身体じゃない……)
違和感と共に漏れる嬌声、理性と快楽の乖離性が奈々未をさらに未知の世界に連れて行こうとする。
このまま、いつかは終わってしまう。自分が死してしまいそうなほどの衝撃が肉体にダメージとは違うモノによって崩壊しそうになる。肉と骨で構成されて魂で繋がれた体は引き離されそうになる。
淫裂が指で一気に埋まる。身体を埋め尽くすような圧迫感が奈々未を包みこんでいた。
指が二本、膣口にぐちゅぐちゅと音を立てながらストロークし、呼吸困難になりそうなほどの激しい愛撫が全身に押し潰されそうなり、額や、頬、身体に伝う汗の量が多くなる。処女膜を破られた痛みなど忘れて内股を蔦う液体が肉体に舞う。
心臓の一回の鼓動が爆発するほどに激しくなっている。
好き勝手に声を出されて肉体を支配され、勃起した乳首を指で弾かれる。
「ひぅっ!?」
イった。
軽く、絶頂を迎えたと言うことを自覚した。
だが、それで求めることは無かった。聖母のような優しさをしながら、獣のように優しくすることをせず無慈悲に犯される性器を愛撫される。破瓜の痛みさえも心地良さになって無理やり膣内を拡張されることでドンと物凄い衝撃が肉体を圧迫する。
「あっ……麻衣……ちゃん……」
愛撫している人間に唇を求めた。目の前の聖母は優しく自分にキスをしてくれた。
だが、やることは凌辱者のそれで、聖母とはほど遠い。だが、それが良い。目の前の可愛い女に支配されている自分に酔っていた。業務であると言うのに愛されていると言う想い冴も芽生えてくる唇の貪り方に恋人だと思ってしまう幻覚。
麻衣が自分の唾液を貪っている。既に自分と言う物をかなぐり捨てて性の快楽を求める。焦点を失った目で、ただひたすら、麻衣の愛撫を受け入れる。疼きすらも止まらない。おかしくなっている。自らが、こんな淫らな本性を秘めて、それを前に出されるなど思ってもいなかった。
しかし、全身を包む快楽に翻弄されて、そんなことはどうでも良くなっている。思考はワルツを踊るかのように奈々未を狂わせた。
「自分からしてる……」
「え……?」
唇を離され耳元で呟かれる。確かに指の動きに合わせて腰を振るう。
「嘘っ……ひぅ……んぐっ……」
しかし、それでも良い。
もう、おかしくなっているのだから、此処で自分から腰を振っても、魅力に溺れたとしても。女に侵される心地良さを知ってしまえば、そんなことはどうでも良い。
音が立つほどに速い抽送、処女肉を掻き回される心地良さに酔っている。
無意識に膣口が麻衣の指を逃がすまいと拘束していた。白い淫蜜と破瓜の血が混じった桃色の潤滑油で指がスムーズに動く。胎内の温度の上昇、肉体の疼きがこれ以上に無いほど高まった。
甘美な心地良さに一瞬、包み込まれた時、吐きだすような快楽が意識が薄れていった。
「あぁぁぁ……ふぁっ!?あぁぁぁ……あぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
肉体の内部が崩壊そうなほどに爆発するような衝動で真っ白に吹き飛んだ。
淫摩擦をしていた指が引き抜かれ、自分の肉体を爆発させた指を奈々未は見つめていた。
(最高の……気持ちよさ……)
そう呟くと次第に自分の意識が消えていくことに気付いた。
視界が黒に染まり、ただ、優しい感触が自分の身を包みこむ。大きな絶頂によって何かが弾けて意識が消えていく。
最後に見えたのは麻衣の優しい悪魔のような笑顔だった。


「お待たせしました。」
あの後、何があったのか意識を失ってからは全く覚えていない。ただ、気づいたときには眠る奈々未を麻衣がジッと優しく見つめていたこと。
麻衣に促されてデートをすることが決まって改めてデートする時のために服を身に纏ったときだ。首筋だけではなく、マーキングされるようにキスマークが付いていたことに気付いたのは。何故、そうしたのか。と、聞いたとき
「今後も頼むとき、私以外の女の人とエッチしないために。」
とのことだそうだ。
「なんで、そこまで……」
「だって、奈々未さんの反応、可愛いんだもん。」
一瞬、小悪魔な表情を浮かべた。
「サキュバス……」
そう言葉にしてしまうほどに聖母と言う言葉からは不釣り合いな淫靡な笑顔だった。
「さぁ、いきましょう。」
本社に立ち寄って、今回の資金を出した後、本当にデートすることになった。
さらに、今月分の給料が出た。と、言うこともあって麻衣の奢りでデートに向かうことになった。此処からは完全なプライベート、それだと言うのにこれでもかと言うほど麻衣と言う女を刻みこむかのように抱かれた。
此処までされると愛されているのかと言う錯覚さえ持覚えてしまいそうだ。ただ、固定の客を得たいがための行為にしては入念すぎる。淫乱なのか。女に抱かれるのが好きなのか、ホテルに寄って抱かれた。ホテル代込みでだ。
ただ、心地良さに身を委ねて、このまま好き勝手にされる。
「ね、また、頼んで良い……?」
「もちろんです。」
満面の笑みだった。その笑顔は、その言葉は本物なのだろうか。
客に対しての社交辞令なのだろうか。
いや、新たな客を得ることが出来たことに対する悪魔の微笑みなのか。
今、思えば、自分の稚拙な舌技で感じたのも、そういうことなのだろう。考えていた時に自分のスマートフォンが鳴る。会社からのメールが来た。内容はいわなくても分かっている。
「懲戒解雇か。」
ある程度は解っていた。無断で休んだのだ。あの会社の環境であれば無断休暇は懲戒解雇に等しい。それを見た麻衣が嬉しそうに奈々未に告げた。
「あ、私と一緒にデリヘルのお仕事、どうです?可愛い女の子にいっぱい抱かれるの、良いですよ?」
「いや、それは……」
「じゃぁ、他のお仕事を紹介してもらいましょう。うちの親会社は、そういうの融通利きますよ?」
「あ、うん。」
これから、どうしよう。と、言う前に彼女が道を示す。
「お仕事してくれないと、この後、私を愛してくれませんから。」
そうして世界は回る。この面倒見の良さに妙な納得をして、別れを告げた。
そして、帰って例の行為を調べてみれば客に恋させるほどにセックスをすることによって中毒状態にするのだと言うことを知る。釣られたのか。彼女の術中にハマったのだろうと、今日までの行為を見ていて理解する。
思い当たる節がある。
そうして彼女のことを思い出すと愛撫を思いだして肉体が疼き始める。あの麻衣の聖母のように包み込むような愛撫が奈々未の孤独を埋める。既に奈々未自身、聖母の牢獄に囚われたも当然だ。
恐らく、もう彼女でなければ彼女を愛さなければ肉欲も孤独も埋めることはできないだろう。懲戒解雇されたと言うのに、そんなことよりも麻衣の思い出で頭が満たされる。聖母が生み出した牢獄の中に悩める子羊は永遠に囚われる。

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