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祝ってもらってなんとやら。

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そんなこんなで、今日は彼方の誕生日なのですよ。


「栞さん。おはようございます。」
いつものように差し込んだ朝日に反応するように挨拶をして、犬のように興奮しながら揺れる赤い髪は、東雲彼方の象徴であり、起きてそうそう鏡も見ずに近くにあったシュシュを手にとって簡単にポニーテールになっているのは、高橋みなみのアイデンティティである。
朝、特別な朝。
AKB48と名乗っていたグループの爽やかな歌で朝を迎える。時代を彩ったフレーズと、その曲は目覚まし時計のような不快音にならないし、同時に人工太陽の光と同時に生まれる朝と言うのは、この時代にとっては正午過ぎまで寝ているに等しい贅沢な過ごし方と言っても良い。そんな日を迎えられるのは芸能禁止がある時代にとっては幸せであり、そんな朝を大好きな人を見つめながら
「栞さん?」
と声をかけたのに返事が無いことに違和感を覚える。
挨拶した人がそこにはいない。
「あれ?いない?」
日常すぎて、その人が傍にいることを忘れていた。しかし、今日と言う彼方にとっての特別な、その日は、そこに彼方のベッドの隣には誰もいなかった。まさか、大切な人が奪われたのか。目の前で、肉親がいなくなったあの日がいきなり蘇る。大切な人を奪われた、あの瞬間を思い出して鼓動が速くなり、嫌な汗が肉体を蔦って流れようとした時だった。
「彼方、おはよう。今日は朝一の仕事だよ。着替えて、御飯は移動中に食べて、ほら、早く準備する。」
大切な人は、奪われてない。
安心はしたが、だが、何処か違うのだと気づく。
いつもより落ちついた冷めたトーンの声で有沢栞がスーツに身を包んで彼方に命令を下す。
更に、太陽光が栞の薬指についているシルバーリングに反射した光が彼方に当たり、その眩しさで眠気が完全に吹っ飛んだ。
「早く。」
その冷めた変化に驚きながら動揺を隠せずに東雲彼方こと6代目高橋みなみは言いなりになるしか無かった。


引き攣った笑み、彫刻のようなポーズ、形だけは綺麗な肉体、慣れないという言葉を具現化したような季節外れの水着のグラビア。
「彼方、表情。」
「は、はい!」
マネージャーの有沢栞に言われて、東雲彼方は崩した笑みを浮かべるものの、そこにはやらされていると言う部分が強調されて出る違和感と、心、此処に非ずと言う言葉が、より今の彼方に対して彫刻と言う言葉が似合う。
「ほらー、たかみなー。スマイルだよー。」
一緒に仕事をしている君島光こと大島優子からアドバイスが入る。子供をあやすように新しく高橋みなみとなった、その人を、有沢栞の代わりにサポートする。
「隣を参考にしたら~?」
君島光が言うとなりを見たとき、そこは既に異世界が出来あがっている。
「ちゃんちえ、ちゃんなぎー、どうせならキスしちゃおうかー。百合系専門雑誌だから、それくらいやっちゃっても問題ないって。」
「凪沙、見せつけてあげましょう?」
悪戯な笑みを浮かべながら、強引に
「ちえ…」
凪沙は自身の唇を奪った智恵理と深い場所へと送りこまれる。より深い世界へと、その奥へ。寧ろ、この二人の場合は、そこまですると。
「ちょ、ちゃんちえ!スイッチ入っちゃダメだって!」
暴走する。
そこまでとは言わないものの、やはり
「ほらー、栞じゃないから本気出せないのは解るけど、彼方ー、表情硬いよー。」
「そ、そんなんじゃ!」
グラビア撮影にあるまじき表情の硬さ。
人形と言うか、ロボットとでも言うか、やはり彫刻と言う言葉が見えるほどには硬い。
ポーズは取れている物の自然にしているものではない。彫刻から、石像と揶揄されながら、呆れられ、それでも、なんとか形になった数枚だけは使い物になった。
「栞なら大丈夫だよ。いつものようになるって。」
「でも…」
「だったら、直接聞いちゃえば?」
撮影が終わった後に、休憩室のベンチに座り、隣にいる光に栞が朝から冷たいことを話し、それで仕事に身が入ることが出来ないことを告げた。
それに関して、光は相変わらず意見になるような、ならないような異様な言葉を告げて彼方の尻を触る。
「ひゃぅ!?」
「っと、つい癖でね~。ごめんごめん。」
そう告げて笑いながら他人事であるといい加減な意見を彼方に入れこんだ。
「ま、こうなることは予測できなかったか。」
「へ?」
「いやいや、何でもない。」
いつものように明確なアドバイスはせずに、光は立ち上がり、凪沙と智恵理の撮影現場に向かった。それと入れ替わりにマネージャーとして有沢栞が休憩室に入り込み、光が座っていた場所に座り込んだ。
彼方がバツの悪そうな顔と同時に栞を眺めた。しかし、それを意に介さず仕事に対する意見を述べる。
「もうちょい、凪沙や智恵理みたいに……あそこまでとは言わないけど、ちゃんとさ。」
「そう、なんですけど……」
「けど?」
マジマジと彼方の顔を低い身長が覗きこみながら真剣な眼差し。起こっているような表情を浮かべて、ドキっとしてしまう。
「な、何でもないです!」
東雲彼方、6代目高橋みなみを襲名してから、
「今日で一年だぞ?舞台で結果を残しても、こういうところで手を抜いちゃダメなんだからね。」
落胆とでも言うべきか、何か失望的な物を含んだ息を吐き出される、その顔を見て思わずビクっとなる。悲しませてしまったと言う現実が申し訳ないという気持ちにさせた。
「は、はい…!」
とはいえ、その一年と言うことは彼方も解っているが、それであるが故に気になるものもある。
有沢栞が東雲彼方に、高橋みなみを託したのは彼方の誕生日である。
新しい歳を迎えながら、朝、起きても栞から何も言われず、朝食を取ったら、そのまま仕事。まさか、忘れているのだろうか。そんなことは無いとは思いたい。忙しいと言う事情もあるだろうが、それで忘れた。なんてことは無いと、彼方が不安に思ってしまうのが彼方の悩みであり仕事に集中できない主な理由である。
なんやかんやでぶつかり合って、なんやかんやで結ばれて、そして、高橋みなみを受け継いだ。彼方の誕生日に、名前をプレゼントすると言う、経歴は一気に省くものの、同時に恋人としても付き合うことになり、栞も卒業して、そのままAKB0048の職につくことにした。
AKB0048を卒業しても組織に未練を持つ物は少ない。
殆どは満足して組織を去り、新たな道を成功させたり、それかセンターノヴァとなって星となるからだ。腐ってもアイドルの素質は肉体に残るが故に広報担当、舞台演出担当、運営担当、エスクアドラブルを守護する巫女の役割など、そういう者の為に残されている役職は多い。とはいえ、それなりに夢と言う物に走りだすのが多く、有沢栞や片桐ツバサ、出戻りとはいえ南野美果子のように組織に残る元アイドルと言うのは珍しい。
運営の方にも顔を出さなければならない支配人と言う立場の片桐ツバサに対して、カメラマンの南野美果子。
そして栞に与えられた役職は総監督と言う初代高橋みなみが背負ってきた曖昧な役職を本格的に担うこととなった。主にやることと言えば現場指揮と同時にメンタルケアのマネージャーである。それと同時にツバサが気を利かせて東雲彼方のマネージャーとして今に至る。
「今日は終了ですーお疲れさまー。ちゃんちえと、ちゃんなぎは、もうちょい、過激だけど、流石にさっきみたいにエロいのは無しねー。」
二人を残して二人は次の場所に移るために移動する。
とはいえ、もう、個人としての仕事と言う仕事は終わりで、夜に行われる生誕祭のためにレッスン室に向かうのであるが。そんな二人きりの状況でも有沢栞は彼方と話すときは業務的な会話だけ。
「あの、栞さん…」
今日、なんの日か覚えていますか?
高橋みなみを襲名したこと以外に。と、聞こうとした瞬間、栞が「あ」と、思い出したように口を開いた。
もしかしたら、DESが作りだしたクローンでは無いのかと疑いたくなる。本物は、今頃、拷問されているのではないのか。と、嫌な考えが脳裏をよぎった。
「彼方ってさ。ポーズが硬いよね。高橋みなみの名前を襲名したんだから硬いのは流石に。」
「すいません。」
そう注意されて、何も言えなくなってしまった。
忘れてしまったのだろうか。
いつものように、一緒に「おはよう」を言って、一緒に朝食をとって、一緒に仕事に向かって、そして時折、仕事の合間にキスをしてたりしたのに、これまでのことを自分のことを忘れてしまったかのように常に仕事モードの栞に寂しさが募る。
もっと、自分にかまけてくれてもいいのに。
そう、栞に視線で不満と寂しさを訴えても何も伝わらないし、言葉にしても、今の栞なら軽く業務の言葉で跳ね返されそうだった。それが怖くなって、思わず何も言えず彼方にとっては気まずい雰囲気を作りだしていた。
この雰囲気、移動用の車の中に二人きり、業務用の会話だけと言うのは辛いものがある。
寂しいのに、本当は、その小さな口から誕生日おめでとう。と、口にして欲しいのに、そうは言ってくれない。
忘れてしまったかのように。
その日の公演には顔を出したが、最も言葉に出さしてもおかしくない、その後に行われたメンバーを通しての彼方の誕生日会と襲名一周年記念も有沢栞は放棄して業務に取り組んでいた。
ホントに祝福して欲しい人に祝ってくれない寂しさが募り、誕生日会が終わった後も心に靄がかかったまま晴れずにいた。
「栞さん…」
不安な心を持ちながら、いてほしい人を探すも、そこにはいない。
今日と言う日を、ホントに何とも思っていないのだろうか。と、一人ショックを受けていた。
まさか、本当にクローンなのか。それとも、洗脳でもされたのか。まさか、今、破壊工作中なのか。此処まで、構ってくれないこと、今までの冷淡な態度を考えて不安に陥る。心は、常に、此処にあらずな状況の時だった。
「栞さん…?」
携帯端末に音が鳴り、画面を覗いたときモニターに誰よりもデコレーションされた有沢栞の名前が映った時、会いたいという気持ちが強くなり走り出していた。
何かあったのなら話して欲しいし、教えてほしいと。どうして今のようになってしまったのか、今日に限って何があったのか。その心を聞きたかった。周りのメンバー達は、その様子を見て、笑みを浮かべながら彼方を見送った。
端末に書いてあった文章は [寮レッスン室で待つ] 着飾った内容では無いけれど、二人きりになれると言うだけで、この特別な日に二人きりになれると言うだけで単純に、先の不安が消えて嬉しさがこみ上げた。
全力で、今までの仕事疲れが嘘であるかのように全力で寮のレッスン室に入り込んだ。
「よー。彼方ー」
いつもの栞が、そこにいた。人懐っこい笑みを浮かべて、まだ、何処か子供っぽさを残したその人が。
「栞さん…」
涙目になって近づいたとき、栞が手に持っていたアクセサリーボックスを差し出した。
「ほら、彼方。プレゼント。」
「栞さん…」
「誕生日おめでとう!」
いつもの優しい笑顔で栞は彼方を祝った。
ハニかんだ笑顔を浮かべて、ちょっと恥ずかしさのようなものもありながら、それでも顔全体から受け取ってほしいと言う思いが垣間見える。
彼方は差し出されたプレゼントを受け取りボックスを開いた。
「ペアリング…ですか。」
渡された物を指にはめて、子供のように彼方はリングをマジマジと見ていた。
栞の薬指にされているものと同じものであると言うことを示すように彼方の目の前で、マジマジと見せつけた。
「うちのと、おそろいだけどね。」
シルバーの光を放つリングは自分の名前と栞の名前が彫られており、それが一層、オリジナルとして、自分と栞だけのモノとして、より彼方の喜びを倍増させ踊るように手首を動かして、延々と見つめていた。しかし、同時に栞の顔を見て思い出す。今日のことを。どうして。と、言おうとした時、栞の方から頭を下げて口を開き言葉を紡いだ。
「ごめんね。意地悪しちゃった。」
「栞さんが、私のこと嫌いになったって思ったら…私…今日…」
「あぁ、うん。解ってる…だから、御免。彼方。やりすぎた。」
「良いんです…栞さんが、こうして忘れてくれなければ…ちゃんとお祝いしてくれれば…」
今日のことを思い出しながら青臭く低予算のドラマのようなやり取りをして、二人きりの誕生日を巡り、このレッスン室でかつては悩み、そして、彼方に問いかけた、あの日のことを思い出す。
ただ、特別な名前で、そして、栞は特別な存在で。彼方にとってはかけがえの無い物になっていった。特別な存在は、より、特別な物になり、そして、今日は、さらに特別な存在になった。単純でありながらも、そういうのが心地良いのだ。この、バカップルのような関係が。
元より、そういう青臭い恋愛に恋焦がれていた年代と言うのもあるのだろうが。だが、それ以上に栞と過ごせるなら、栞と、こういう時間を共有できるのが一番良いと彼方は思う。
そして、栞自身も彼方が喜んでいるなら、渾身の芝居をして、ここまで頑張ったかいがあったものだと、そんなことを思った。誕生日だからこそ、ちょっと意地悪に好きな人を祝ってみたいと考えた栞が思いついた妙案は、それなりに成功を収めて、今の形に至る。
泣きそうになる彼方を見て即刻ネタばらしをしそうになった自分を抑えたのは流石だ。と、事故を称えながら喜んでいる彼方に言葉を告げた。
「改めて、誕生日おめでとう。彼方。それと、襲名一周年記念もね。よく頑張ったよ。」
「はい…栞さん…」
小さな背で彼方を抱きしめて、ちょっと意地悪な誕生日、一年の彼方の活躍を撮影した写真を収めたアルバムを、栞は何処からか取り出して、その日からをトレースする。
特別で、誰よりも愛しい人から祝ってもらえる、その誕生日は彼方にとっては、どの誕生日よりも大切な日。朝に抱いた思いが杞憂で良かった。と、改めて思った。安心していたら、なんだか、緊張がほぐれて彼方の瞳が泉となって、頬を蔦って涙が流れ始めていた。
「ちょ、彼方、泣かないでよ。」
頭を撫でられ、あぁ、いつものこの人に、いつものようにされている。
「だって、たかみなさん…」
意地悪された仕返しに、彼方の思っていたことを、今日、一日、栞に抱いていた思いを話した。そうしたら、栞は彼方のことを抱きしめながら優しく「バカ」と耳元で囁いた。
その一言で、栞の全てを知ったような気がした彼方は、新たに二人の関係が進展したかのような息吹を感じ取った。全てが杞憂で良かった。
いつもの貴方が、此処にいて、私と一緒に喋って付き合って愛してくれる、この人がいて良かった。二人きりの本当に彼方の望んでいた誕生日会は夜だと言うのにキララが星となって二人に眩いほどの光を降り注いだ。それは二人の未来が明るいと言うことを示すことなのか、閃光のように儚いと言う意味なのか、全てはキララが知る。
大切な人からの祝福と言う愉悦に浸りながら、だらしない顔を浮かべ童心に戻ったような彼方の顔に、思わず覆い被さるように両手で大切な物を扱いながら涙で濡れながらも柔らかい頬にふれて、そっと唇を重ねた。柔らかく、暖かく、緊張していた今と言う時間を共有するまでの長さ。これから見るのは嫌な夢じゃない。
幸福な夢だよ。
と言うことを伝えるかのように、栞の体温が彼方の肉体にほどばしる。
キスされた。
と言う、状況に気づいた彼方は栞を抱きしめながら、意地悪を演じている栞では無い、本当の栞が生み出してくれる夢の世界に向かうために今、彼方も気持ちを改めて栞と唇を重ねた。


「いやぁ、アカデミー賞物の演技だったよ。栞。」
意地悪な笑みを浮かべながら、明らかに侮蔑の意味を込めた言葉遣いと表情で君島光は有沢栞に対して、そう告げた。
「まぁ、栞は演技が下手だからすぐに解ったけどね。ずっと、ソワソワしてたし。ってか、皆、知ってたし。」
その次の日、そんな誕生日のことを彼方と栞が可愛いだ、なんだと惚けていた時、突如、優子こと君島光から、朝から、そんな話を聞かせるな。と、でも、言うかのように、それがずっと演技であることを彼方以外の人間の誰もが見抜いていたと告げた。
無論、メンバーに相談されたわけでもないし、その下手な演技を見てしまえば人と言うのは、この業界にいれば見抜いてしまうようだ。
「え“っ!?」
無論、それは優子以外のメンバーの同じである。
「栞、演技の点数15点。」
「まゆゆ、それ、低すぎるから!!」
3型目が冷静に、その冷静に冷静を装った栞の演技を評価し、栞は突っ込みを入れる。
「おねぃ、ホントに気づかなかったの…?」
楚方に捨てられた犬を見るような目で見られて、どれだけ自分が鈍感だったのか気づく。妹でさえ気づいていたと言うのに自分は、ずっと、気づかずにいじけていて、あの時の記憶が鮮明に蘇ってくる。あの時、メンバー達が二人きりになるのを簡単に許したのも、この周りから見れば完全なる茶番をわざわざ感動できるように演出してくれた。と、言うことにもなる。
「おかげで、よりよい物になったから良いじゃない?じゃぁーねー。」
面白い物を見た。と、でも、言うかのように光は去っていく。
「「あぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
そして、真実を知った彼方は自分の鈍感さ、馬鹿さ加減、単純さ、全てを嘆き、栞は自分の懇親の演技が彼方以外に見破られていたことに嘆くかのように叫んだ。

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