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やっぱりお姉さんがリードしないとダメ?

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うづりん


「ほら、もう練習終わりにしな。本番に身体壊したら意味ないよ?」
トレーナーが見かねて数日後に行われるライブの自己レッスンを止めた。ふと、声をかけられてから言われて少女たちは糸の切れた人形のように座り込んだ。
いつまで、練習していたのだ。
時計を見れば11時を過ぎてしまっている。
電車はあるが、今から帰れば何かしらの危険に逢いそうな、そんな時間になっていたのかと誰もが顔面が蒼白になる中で、疲れに身を委ねて自分を夢中にさせる人のことを考える。
「凛ちゃん。」
誰かが凛を呼んでいる。
ただ、疲労感がたまっている身体を壁に預けて座り込みながら、自分の心の中にいる好きな人との今日までの出来事を思い浮かべる。
イラつき。
島村卯月と出会ってから、渋谷凛の人生の歯車は変わった。
いや、人生的には前に動き出したのかもしれない。
しかし、新たに歯車を変えれば何か不測の事態が起きるように、凛の全ては変わろうとしている。恋愛的な感情は凛にとって予測できない事態を迎えた。
卯月にしか目がいかない。卯月しか考えることができない。本音を言ってしまえばニュージェネレーションなんて、どうでもいい。シンデレラプロジェクトも。好きなのに手が届かない、何もできない歯がゆさと言うのは全ての集中力を奪い取り、心を卯月に染めていく。
前に、あそこまでしておきながら、何もできない。何もしてこないなら、今度は自分からと決心はしたはずなのに行動に映せない。
渋谷凛の中にたまった腐敗に近い感情は暴発しそうになるが、どうすればいいのかわからなかった。
コンクリートミキサーにぶちまけたような泥濘の感情を、このまま卯月をレイプしてしまおうか。と、脳内は考える。
しかし、そんなことができるのか。あの時、卯月に触れることさえできなかった自分が。
あのキスから、何も起きない。
あのキスの一日から、何も起きずに、また一日が終わろうとしている。
あの瞳の光が唇の震えが幻だとしたら、何もかもが、夢の中に沈んだ。
微笑みかけた、あの時間も、芽生えかけた愛も、二人だけの秘密も。全てが振り出しに戻った。
あの後、何も無く、一日が過ぎていく。
そんな卯月は、凛に変わらず接触してくるものの、スキンシップはいつもと変わらない。手をつないだりするだけ。
だが、それ以上にスキンシップをすることに対して踏み出す勇気も無いと知った時、遠ざけているのは自分なのだと理解した。卯月は求めてはいるが、自分からしない。誘っている気がする。何故だかわからないが、凛からしてくれることを待っている。
そして、それから上手く動くことの出来ない。
あの時、最初のキスから次の行動に移すことが、何もできなかったことがトラウマにでもなっているかのようだ。いざ、行動すれば、醜態を繰り返してしまう。そう思い込むと何もできなくなる。
「でも…」
抗うことの出来ない聖母のような暖かさは手にしたい。
そして、あの暖かさからと、柔らかく包み込む卯月の肉感が忘れることが出来ないのだ。
許されるなら、もう一度触れたい。あの感触に。
触れて、自分だけのものにして、自分の色に染めてしまいたい。
「凛ちゃん。さっきから、プロデューサーが呼んでるよ?」
「卯月・・・」
汗のにおいをまき散らしながら近づいてくる。
ここまで惚れてしまうと、その汗の匂いでさえ香水のようにも思えてくる。ここまで変態的にもなったか。そんなことを思いつつ、自分を見つめる卯月の存在に鼓動が高鳴った。
「凛ちゃん?」
「あぁ…」
頬に暖かい運動後に卯月の手の感触が凛に走った。
少し、汗ばんでいるのかぬるっとしている感覚も心地よい。
あの暖かい手で頬に触れられた。考えるだけで自然と顔が熱くなり、胸が高鳴るのを感じた。もっと、このまま触れたままでいてほしい。卯月の中では、まるで手玉に取られたように、いつものようになれない。飢えた獣のように凛の中では何かが暴れそうになる。
これが惚れたものの弱みなんだと、理解しているし、それでもいいと思っている。卯月になら。自分を、この世界に導いてくれた卯月にならと。そのまま離さないように頬に触れている卯月の手の甲に凛は自分の掌を当てようとした。
「すいません…そろそろ、私の話を…」
しかし、そこに、痺れを切らしたプロデューサーがいつも以上に眉間に皺を寄せ、二人に近づいてきた。ただでさえ、強面であるがゆえに、その痺れを切らした顔には迫力もあり、卯月も思わず凛の頬から手を離して直立不動になった。
凛もつられて、そうなってしまう。
「今日は、ご苦労様です。こちらで、ホテルを手配しておきましたので、今日は、そちらで。皆さん、既に部屋割りは決定していましたので、後はお二人が同じ部屋となりました。」
全員、呼ばれているのに、此処でいちゃついているのは卯月と凛のみ。
誰もが見かねて溜息を吐いたり、悪態をついたり、そんなことをしている。
「それでは…」
プロデューサーが言うには、こうだ。夜、遅くなることがあれば事務所のスポンサーが経営するホテルに無料で泊まることがある。未成年と言うこともあって様々な問題はあるものの事務所が手をまわして保護者に連絡し、そしてアイドルである当事者も両親に連絡し、そのまま了承を得てホテルに泊まる。
むろん、保護者から連絡が来れば、そのまま説明されて了承される。ライブも近い時があれば、練習時間は増えるし、満足できずに遅くまでいることもあるがゆえに、そういうことも含めて、遠出までして家に帰れば、その分の時間が無駄になるし、遅くなればなるほど夜道は危険だ。
そうして、用意された近くの、それなりに信頼と安心の高級のホテルに荷物を置き、そのまま眠りについて、起きて、朝食をとり、そのまま事務所で練習を開始する。
ちゃんと誰かが管理をして、定時になったら返す。と、言うことをすればよかったのだが、今回のケースは初ライブと言うこともあり、失敗できないという中、多量の練習をこなすと言う環境の中で、物足りなさに満ちているアイドルたちの要望に対して、プロデューサー自体、その気迫に負けて思わず、こんな時間までの練習を許可してしまった。と、言うのが主な原因ではある。
えてして学生であるがゆえに、この手の部屋割りとなるとイベント、修学旅行に行くような気持になり、誰が誰と同じ部屋になるのか。そんなことでもめてしまう。
「それでは。」
凛はチラッと卯月を見た。
出来れば、凛と一緒のベッドが良い。
凛と一緒になって、できれば一緒に寝手、それ以上のこともしたい。
そんな願いを持っているものの、元来の口下手な部分が災いして、どうしようと考えていた時だ。
何かを悟ったかのように卯月がこっそりと耳打ちしてきた。
「ね、凛ちゃん、知らないところで一人で寝るのって怖いから一緒に寝てくれませんか?」
「え?あ…うん…」
突如の暴露。
これは、そういうことなのか?
凛の思考が走る。脳内のサーキットで、この言葉の真意を知ろうとする。焦る感情が走り出す。体は動かないものの気持ちだけは前に出て止めようと感情が先走って何をすればいいのかわからなくなってきた。
卯月と一緒のベッドで寝る。
宣言するなら自分の口からが良い。
そうすれば卯月に何か変化が起きるかもしれない。
淡い期待をのぞかせながら高鳴る鼓動と共に感情を吐き出そうとする。この言葉を言えばすべては解決できるのに、それが出来ない。出来たとしても、これから卯月と、そういうことができるのか。せめて、この前と同じようなキスまで行くことはできるのか。
そんな不安が言葉を塞いでいた。
だが、行動を起こさなければ優しい卯月のことだ。一人で寝るというかもしれない。
卯月と一緒に寝れば色々と出来るじゃないか。
そう考えれば、これから行動しなければ一生、卯月と何もできないまま終わってしまう己の人生を振り返って未来永劫の後悔をしてしまうというのか。
そんなことは、凛は叫びたくなるほどに嫌だった。
これほど、誰かを好きになったのは初めてだし、それが取られるのだって嫌だと心の内が叫びあがる。
一瞬、卯月を見たら優しく微笑んだ。
”どうするの?凛ちゃん”
そう告げているように見えた。
嫌なわけがない。
卯月と一緒に寝たい。
ここで、自分の人生は変わる。
そんな大げさな判断をしながらも、言葉を詰まらせながら口を開き、何かを言おうとする。
普段、感情を吐露することがないからこそ今と言う凛の性格が築き上げられてきた気もする。
クールでとっつきにくい性格である分、上辺の友人との関係ばかりだったがゆえに、此処まで深い感じになりたいと思う人との、そして、その性格を無視してスキンシップしてくる相手の付き合い方を知らない。
だから、今まで一歩下がって第三者に近い視点で突っ込みを入れてきた。
そうして、出来上がったのが、何に対しても斜めに構えて前に出ることの出来ない今の自分だ。
しかし、今、行動を起こせれば卯月に何かできるような気がした。
そのチャンスを踏みつぶされるのは嫌だと言葉が走った瞬間、凛は大声を出して宣言をしていた。
「卯月と一緒が寝たい!!」
珍しく感情を吐露したような叫びに誰もが振り向き、プロデューサーも呆気にとられた。
「し、しぶりんが…叫んだ…」
普段、誰もそんな渋谷凛と言う存在を知らないし、見ないからだ。
「では…」
と、でも口にしたプロデューサーは、なんとか、その場は誤魔化して、そのまま凛は卯月と一緒にホテルに入り、急ぎ部屋に入ることになった。
二人が泊まるホテルに入るなり、フロアでメンバーが感嘆の声を上げた。
ただのビジネスホテルだと思って覚悟してみれば高級クラスのホテルだったからだ。
シンデレラプロジェクト自体、姫宮グループと呼ばれる組織から出資され、そして、このホテルも姫宮グループが経営し、こういうことがあれば無償で貸し出すようにとも出資者から許可は得ているがゆえに、資金のないアイドルが高級ホテルに泊まることができるというのは、そういう事情がある。
「そういえば、此処のグループ、姫宮って言ったっけ…前に、女性と結婚して色々とあったって。って、同性…」
テレビで、この施設で結婚式を挙げていたことを思い出す。それは、とても綺麗な女だったと言うこと。ファッション雑誌でも取り扱われたほどのこと。そして、同性同士で付き合って結婚した。まだ、凛が小学生のころだ。幼いながらに、こういうのも悪くない。そんなことを思ったから、女同士、いや同性同士に対する考えは基本、シンプルなもので出来ている。
考えても見れば、このホテルのオーナーは凛が考える卯月との理想の形を普通に実現させている。どことなく、それが羨ましい。
「凛ちゃん、凄いよ!このホテル!」
「うん。」
卯月との理想の形を妄想しながら二人が入る部屋のカードキーを受け取り、二人で部屋に入り込んだ。
「私の家よりもすごい…」
「私もです…凛ちゃん…」
ホテルの部屋の感想は、ソレだった。
同時に今までの疲れが来たのか自然と足がベッドに移動して死んだように倒れてしまう。
母親に抱きしめられているような感覚のベッドの上にいる。
「凛ちゃん、寝たら洋服が皺に…」
「クリーニング、近くにあったから…」
「もう…」
このまま、眠ってしまいそうだ。
「凛ちゃん、先にシャワーを浴びちゃうね。」
「うん。」
卯月と一歩、関係を深めるのではなかったのか。
だが、この感覚はずるい。と、敗北宣言をしたかのように、ベッドのぬくもりと言うのは凛の身体から力を奪っていく。
「うわ、ユニットバスじゃないんだ!」
卯月の無邪気な声が部屋いっぱいに響き渡った。
しかし、そういう状況であれば一緒にシャワーでも浴びてよくある光景に入り込めるものの、いまいち、これだけでは体が動こうとはしない。それだけに、ぬるま湯につかっているような心地よさは反則的だと言える。
包まれれば眠りの世界に落とされる。いや、もう、落ちている。だが、その眠りの世界から、突如、引き戻された。
卯月がシャワーを浴びて流れ、そして水の打つ音が凛の耳の中に入る。
あの生々しくも瑞々しい肉感の身体が弾く水の音が嫌でも寝ようとしている凛の耳に入り込む。
覗いてしまおうか。
確か、ユニットバスタイプではない。
そんなことを言っていたことを思い出し、眠くなってはいたが覚醒していない身体を叩き起し、卯月がシャワーを浴びている場所に向かう。
不用心と言うか、信頼されているのか、それとも挑発されているのか、ドアが開けっぱなしで、それでありながら、ちゃんと新しい下着と寝巻を用意している。ただ、天然な部分があるのか、先ほどまで穿いていた下着が散らばっていると言う表現が似合うと言うわけではないが、それなりに整理されているものが、これから着るであろう下着の隣には脱ぎたての下着が置いてある。
こんな高級なホテルに泊まるともなれば、確かに燥ぐ気持ちもわからないわけでもないが。まさか、誘っているのでは。邪な思いが身を包み込んだ。
邪心、そんな感情が湧きあがる。
だが、抑えることをどうして出来ようか。
脳内が眠気から解放された卯月で染まっている凛と言う少女にとってはとてつもない誘惑である。
甘美な香りのする毒そのものと言ってもいいだろう。誘惑と言う言葉が肉体の中にしみこんでいくように、欲望に従順な獣が出来上がる。恐る恐る拳銃のトリガーを引く指のように卯月の下着に手を出した。
鼓動が激しくなっているのが解る。肉体全体が疼くような、そんな熱を身に帯びて高鳴る感情を抑えつつ手に入れた存在を強く握りしめる。
「卯月の下着だ…」
先ほどまで身に着けていたもの。
それを手に取り、急ぎ足で戻った矢先にベッドで倒れ、早速、その香りを楽しもうとして高鳴る鼓動を抑えつつ、リラックスをし、改めて卯月が身に着けていた下着をじっくりとみる。まだ、温かさが残っている。
自然と利き腕が下半身に動き出す。
そのぬくもりと香りを汚らわしいものとは思わず、さらに凛の脳内に背徳感が泡のように消え始めた。
今、これは自分の手の中にある。
それをより強要すべくが脳細胞が一つとなって、これからの行為を全力で勧めようとした。本能と性欲が混ざり合う。下着を鼻に当て、脳内をマヒさせるように頭痛を止める。
すべては凛の全身が共犯者に等しい。
凛の身体の反対していた部分も、全てを巻き込んで島村卯月を感じ取る。汗が噴き出て、蒸発するように身に着けている衣服を濡らしてしみこんでいた。
「凄い…匂い…」
甘美で官能的な匂い。
過去、これほどまでに興奮したことはない。
そして生まれて初めて胸の鼓動が爆発しそうなまでの自慰行為。
匂いを嗅いで、お留守になっていた下半身にもぐりこませていた腕を布の上から擦りだす。
下着越し、まだ、他人に触れさせていない未知の領域に初めて自分そのものが入り込む。一気に身体が引き締まるような感覚が全身に走った。入っただけで、こんなになるのは予想外だった。
卯月の下着が媚薬になっているのか。
そんなことすら思わせる。
マグマのように滾り始めた肉体、しかし、初めてであるがゆえに勝手がわからない。ゆっくりと、すっと陰唇の中に入り込む指の第一関節。入るたびに拡張されていくような、そんな感触。中指が一気にどろっとした液体に包まれた。
「熱い…」
煮込んだように滾った熱い唾液が凛の指を濡らす。
熱いほどばしりが全身を走り、そのまま試しに指をくいっと曲げてみたとき卑猥な粘水音が響く。吸い付くように、いや、卯月の下着を求めるように濡れている気がした。
「これ…ダメ…だ…」
最初は未知の部分に無理やり穴を広げるように指を使って蹂躙し、そのまま、膣内に指を走らせていた時、指が包皮をゆっくり剥きながら淫核を露出させていることに気づく。
「敏感すぎる…」
まだ、敏感すぎる、第一関節も入っていないというのに全身が痙攣し汗が噴き出て、そのすぐに身体がすぐに引き締まり瞳がうるみ始めた。何処か、色気づいたような錯覚を覚えそうになった。
悩ましげになりながら、指に絡みつく膣壁の感覚を覚えつつ、これ以上すれば何かが起きる気がしてならない。指を膣内から引き抜いた時、ぬるっとした感覚が凛を包み込んだ。気づけば、頬に熱いものが流れていることに気付く。
「嘘…泣いてる…?」
陰唇を指の第一関節に与えただけで、こんなにぐったりとするものかと。
先端に、ぬるっとしたものがついている。
卯月の下着を離して、ぐったりと未だにシャワーを浴びている最愛の人のいる場所を見つめた。静かな水音と、卯月の鼻歌が流れてくる。
「卯月が…」
衣服をまとっていない卯月の姿が脳内で描かれる。
抜けることのない、その妄想。乳首が立っている。
ブラが擦れて意識をつなぎとめるのが必死になっている自分がいる。
「卯月…!卯月ぃ……」
静かに叫びながら、再び指を動かそうとした。
卯月が、たまらなく好きだと恥もなく、シャワーを浴びる卯月を妄想しながら下着の匂いを嗅ぎ児戯に等しい稚拙な自慰行為だけで、意識は消え入りそうになった。
一番、敏感な部分をはじいたら、どうなるだろう。
一瞬の恐怖があった。ピンと勃ったクリトリスを指先で弾く。どうなる。恐怖がありながらも気持ちよくなってみたいという思いが強かった。ゆっくりと指先を動かし、心臓の鼓動の激しさと同時にめまいが襲い掛かりそうになる。
「あ…あぁぁ……うづ……」
淫核を静かに弾いただけで意識が全て飛んだ。
頭が真っ白になり、脳内の卯月が優しく凛を抱きしめる。どれだけ、自分の肉体が敏感になっているのか。
ぐったりとした感覚を持ち眩暈が起こり、何も考えることができなくなっていった。解らなくてもだらしない顔をしている。いつもの自分とは違う、とてつもなく淫らな顔。
「これ、だめだ…いまの……わたし……卯月に知られたら……」
臭いをかぎながら、そっと膣内から指を引き抜く。
同じ部屋の浴室でシャワーを浴びている卯月がいる。
バレたら、どうなる。
ドロっとした感覚が、再び膣口から流れ、凛の着ていた衣服を濡らし、太ももを伝ってベッドに零れ落ちる。
痺れるような感覚に腰がビクッと動く。
まだ、一本筋の控え目な割れ目に触れることをやめて、ぐったりとしてだらしない顔を浮かべている自分が卯月を見つめていた。
しかし、体は動かない。
ぐったりとしたまま、一気に疲労感が押し寄せる。
オナニーの後の快楽による代償を、こうして知った。
切なげな瞳を持った糸の切れた人形のようにベッドに深く沈み込み、卯月の脱いだ下着は握ったまま。
「凛ちゃん、凄い疲れてる顔してるね。お風呂、入らない?さっぱりするよ?」
気づけば、シャワーを終えてホテルの専用の浴衣を身に着けていた卯月が凛を見つめていた。
「いや、私、朝一で…疲れたから…寝かせて…」
「そう?」
疑うことをせずに、そのまま、横に卯月が凛の隣に倒れこんだ。一緒に寝る。卯月が隣にいる感覚で、また肉体が滾るような暑さが蘇る。
自分が卯月の下着で何をしたのか。
そんなことはわからない。
しかし、わかってほしくないとも、そんなことを思う。
まだ、お互いを完全に理解できていないからか、ここまで。そう考えると前回は自分の部屋で、かなり大胆なことをしたんだな。凛はそう考えながら、今日は、キス以上の性的なことをしたことに恐れを為した。
いたたまれなくなったのか、いつの間にか部屋の照明が消えて自分の横に卯月がいた。互いに顔は見ない。ただ、卯月は凛の首筋を見つめている。
「ギュってしていい…?」
「え!?あ、うん。」
横にいる。
卯月の吐く息が凛の首にあたる。
そして、心臓の鼓動が、また激しくなった。
体も、より熱くなっている。
卯月と一緒に気持ち良くなりたい。
卯月が抱きしめているのに、何もできない。
そんな欲望が走るも、許してくれそうにないほど体は今になって今日の芸能活動の疲労が襲う。
このまま、意識を眠気にゆだねようとした時だった。
「凛ちゃん、寝ちゃった?」
確認しても、返そうとは思わなかった。
具体的な会話は、もっとゆっくり、意識がはっきりしているときにしたい。朦朧としている時は、どうこたえるのかわからない。ちくりと心に針が刺さったような感覚を覚えた。
こんな時、もっと動けたら。
脆弱な自分の身体と、ヘタレな意思に反吐が出そうになった。
卯月を抱きしめたい。
しかし、そうできないほどには体が動いてくれそうになかった。
そっと、両手が凛の身体にまとわりつく。思わず、ドキッとなって振り向きそうになった。
露出した後ろ首に凛の頬が当たるのを感じた。
抱き枕のように卯月は凛を抱きしめていた。何か、してくれるのだろうか。そんな期待すら覚える中で、暗い空間に声が走る。寝たふりをしながら凛は聞く耳を立てて卯月の言葉を心に受け入れようとした。
「凛ちゃん、何もしてくれないんだから…」
そっと、卯月に向かって凛が寝たと思い込み、ひとり呟きはじめた。
やはり、年上がリードしなければダメなのか。
どこかで凛にリードして欲しいという願望があるのは、そのクールな表情でキスされたりしたいのだろうと思っていたが、思いのほかクールとは無縁なヘタレな部分に焦れている自分がいる。
「でも、凛ちゃんの可愛い声が聞けたから良いかな…」
(卯月に、ばれて…!?)
卯月からすれば、よくよく考えてみれば、なんと大胆な行動をとったのかと、そんなことが、脳裏によぎる。凛は流石に焦った。あの下着の配置も、全て、卯月が誘いをかけていたのかと。
「可愛い……凛ちゃん……」
一種のお姫様的な状況に憧れているからなのかもしれない。
しかし、あれ以降、何もしない凛はヘタレなのだろうと、挙動を観察していて思った。
例えば、ちょっと手を握ろうとすれば身体がものすごく震えているし、目線すら合わせようとしない。
今日、一緒のベッドの上で寝たいというだけで叫んだのは、まさに清水の舞台から飛び降りる。
そのまんまの意味での一大決心だったのかもしれない。
しかし、今は、ご覧のありさまだ。
「お休み…凛ちゃん…いつか…」
本当に交わろう。
そう考えるたびに卯月自身は、下手したら、自分の意志のせいで、交わらずに関係は終わるかもしれない。凛と、このまま交わらずにアイドルを引退して、良い友人のままでいて、いつかは知らぬ男と結婚して、それが当たり前になるのかもしれない。脳裏によぎる未来を「嫌だな。」と、感情のままに吐露した。
でも、期待はしている。
凛の行動を。
だが、自分から手を出すことはできない。自分から手を出せば元に戻れない場所に行ってしまう気がする。そして、もう一つ、本気で好きになってくれた凛に失礼ではないのかと思う自分がいる。自分からふれてしまえば、それこそ凛は本気に思うだろう。
卯月自身が、そんな関係に興味を持ったのは、それは、この女同士と言う世界に興味を持ってはいるが、興味本位と言う部分が強いのではないのか。
凛が心から好きなのか、その感情に対する整理がつかないから、今は凛と関係を持とうとしているのは凛に失礼なことであると同時に侮辱であるとも思った。
凛のことに対して強く言い出せないのは、興味本位だけで肉体関係を築こうとしている自分の失礼さが思いにブレーキをかけていた。ただ、流れに任せて抱かれるのなら、それで本当の想いと言うものはわかるというのなら楽なものなのだろう。
だが、そういう風に器用にできてはいない。
でも、もしかしたら、この状況を楽しんでいるのかもしれない。
世間一般でいう禁忌に触れるということ、アイドルのタブーを破る背徳感によっている、この状況が楽しいのだろうと接していて思う。
本当に、自分は凛が好きなのか。
興味本位とタブーを破る快感に身を委ねて喜んでいるのか。そんな自分が人の心を踏みいじる歪で嫌な女に見えてくる。
だから、
「ごめんね……凛ちゃん……」
それゆえに自分からするわけではなく、凛からしてもらいたい。そんな我儘を卯月は抱いていた。抱かれたとしても、この思いは変わらないかもしれないというのに。結局、背徳感を楽しんでいるだけかもしれないというのに。
「何もしないんだったら………ね?」
(卯月が…)
起きていても声を出すことができない。
声を出しても、出すことを許されないような、そんな何かが凛の心をつかんで離さない。
だから、封じられたように声は出なかった。
「凛ちゃんの………意気地なし………ごめんね。私もだね…」
(う、卯月!?)
その言葉に思わずドキッとなったが、それ以上の言葉は出てこなかった。首筋に暖かい息が当たったことを感じた。
「ッ!?」
「やっぱり、お姉さんがリードしないとダメ?」
暖かく柔らかい感触が首から全身を通って走る。
刃先のような硬さと包み込むような、そんな感覚が凛に襲い掛かった。
ぬるっとした何かが柔肌を撫でて何かが吸い上げていく。
痛み、前のキスした時とは違う降伏ではあるけど、どこか呪いじみた感触。
しかし、考えさせてくれない。
考えようとすればするほど意識が視界が現実から離れていく。
何があったのか。
あっけにとられた瞬間に夢の世界に落ちた凛には気づくわけもなく、朝起きてから卯月に甘噛みされたことに気付くのはシャワーを浴びてる時に微かな痛みを感じた時だった。

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