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新しい一歩

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そんな感じで、うづりんバレンタインSSです。


「今日、無事にニュージェネレーションのお仕事が成功したら、家に泊まりに来ない?」
生放送での音楽番組が始まる前、卯月が凛に恥ずかしそうに耳打ちしてきた。
「それって…」
「そ、それ以上は聞かないで…」
伝え終わった後に、もじもじしながら、頬を染めて語りかける姿が可愛い。卯月からすれば心臓が張り裂けそうな思いで、このことを打ち明けたに違いない。
凛も凛で、卯月の家に泊まると言うことを考えて、その思考に卯月の白い肌の裸体の映像が走る。しかし、卯月の反応から行くと、それも満更では無い様子で、仕事の本番前に、そんなことを囁かれてしまっては集中が出来なくなってしまった。
恋人同士が部屋ですること、卯月自身、そういう自覚はあるようで、それゆえに泊まると言う意味に対しても解っているし、そう考えると、かなりの断腸の思いと言うか、そういう言葉が似合うほどの決意で凛に囁いたのだろうと思う。
「未央には言わなくてもいいの?」
「それが…」
未央は蘭子と用事があるらしく、丁重に断られたらしい。
実際はニュージェネレーションのテレビでの仕事の成功祝いとして呼ぼうとしたらしいが、そこで未央が変な気づかいを起こし、それも卯月と凛の関係を察しているのだろうか「お二人の世界を壊す訳には行かないよ。」と、満面の笑みで返されたらしい。
しかし、そうなると二人きり。二人きりになると、恋人同士、ある種、誘っているように思えて淫らな女に思われないだろうかと卯月は心配しながら、勇気を振り絞って、今、凛に聞いてきた。と、言うわけだ。
事情を知らない人から見れば、そういうことを求めるために誘いかけているようには見えない。
普通に女同士の友人であれば、泊まることなど当たり前ではあるが、二人は面倒なほどに遠回りをして結ばれたカップルであり、恋人同士。そう考えてしまうと”お泊まり”と、言うことに特別という言葉が似合うほどの行いであることは間違いない。
まだ、キスが精いっぱいの二人なのだし、とにかく、凛は卯月の手を握り、一先ず、泊まることに対しては了承した。
あまりある数多くの凛との逢瀬の妄想を重ねているだろう卯月が恥ずかしがっていると言うことくらい一目でわかるほどの彼女を見つめて凛は言葉を紡いだ。
「うん。卯月の両親に…挨拶…しないと…恋人同士って…」
感情が先走った。
なんて言葉が似合うくらいの不意打ち。
言った後に、思わず失敗した。と、そんな言葉が脳内を走ったのは言うまでも無い。
ただ、あまりにも突発的すぎるイベントの啓示にどうすればいいのかと言うことすらも解らなくなっている凛がいることも事実だ。
女同士、さらに、恋人同士。
緊張の糸はほどかれるどころか、妄想を嫌でもしてしまうため、互いに絡み合いすぎてほどけなくなる。
「あ、挨拶!?」
しかも、両親にカミングアウトするという方向まで話を一気に進めてしまったのだから、余計に。
だが、暖かさも感じた。嬉しさと言うのも感じていた。凛が自分のことを、そこまで進んだ関係になりたいと言うことが聞けたのは嬉しかったのだ。
「あ、そ、それは、まだ、早いか…!」
「う、うん…でも…なんか、嬉しいかな…」
卯月が優しく微笑みながら、そっと凛を抱きしめた。
「あ、あぁぁぁ…」
身体が卯月に抱きしめられてると理解して身体的な熱気とボルテージが上がり、心臓が高なってきた。
こういう時に行う卯月の不意打ちは卑怯だ。
時として卯月の行動は凛の理性を破壊しようとする。と、思いながらも強く言いだせない。
凛自身、その暖かさの心地良さは誰よりも知っているからだ。それと同時に抱きしめ返したいとは思う物の、心地良さと、この泊まりという言葉の雰囲気に負けて何も出来なくなってしまった。
このまま、抱きしめてキスして、本番に備えることが出来れば良い結果が出せる。そんな思いをかみしめながら、緊張する肉体と心を収めて行動に移そうとする。恋人とキスをする、唇を重ねると言う行為に、此処まで緊張感が走るのか。
付き合ってから、まだ、数えるくらいしかしたことはないし、その全てが簡単にあっさりと出来ると言うわけでもないほど緊張感が漂い、終わった後は心臓の鼓動はそのままに、甘い雰囲気に満たされる。だが、爆発しそうなほどの緊張感の中で、胸を抑えつつ、すぐに互いを抱きしめて緊張をほぐそうとするも、今度は肌同士が触れ合っていると思うだけで突き放すように離れ、暫くは顔すらも見れなくなるほどに、初々しさと言う物が卯月と凛の間にはある。
凛自身、クールに徹しようとしても卯月との関係などを考えると、クールと言うよりムッツリスケベと言う言葉が似合うような顔にもなってしまうし、卯月自身、お姉さんぶろうとしてリードしようとしても上手く行かず空回りしてしまう。
互いに、そういった障害に近い何かを乗り越えることで、今日は新たなステップへと飛び出そうとする。
今回の儀式も、そういうことなのだと言うことでキスから、そして泊まりこむことによって全てが上手く行くように行おうとした時だった。
「スイマセン、ニュージェネレーションさん、本番お願いしますー」
控室にスタッフが入り、結局、長いモノローグの中でキスどころか何も出来ずに本番を迎える。

数多くの音楽アーティストが集まる番組、当然、アイドルも例外ではなくシンデレラプロジェクトもほかのグループと被るなんてことは多々ある。
とはいえ、そこから別の組織の人と友情が育まれる、情報が交換される。なんてのはあり得ないことではない。そして、そんな場所で繰り広げられる何気ない会話から忘れていたことを思い出すということもよくあることだ。
渋谷凛は、この場所で、とあるアイドルの会話から忘れていたことを思い出す。
そんなところから、この物語始まる。
他のアイドルと共演するなんてことは、この業界に入ってから多々ある。それが、卯月と凛、シンデレラガールズにとっては今回が初めてだった。
金曜日の20時ごろから行う生放送の音楽番組となれば、多数のアイドルが入り乱れる。なんてことは当たり前だ。頭角を現す中で、収録が終わり渋谷凛は卯月の家に泊まって淫らなことをするという妄想を片隅に置いておきながら、仕事終わり、初めての音楽番組の仕事が終わり、緊張感が解けて落ち着きながら他のアイドルを観察していた。
こうしているだけでもアイドルと言うものの勉強はできる。
そんなことを思いながら、ただただ、じっと見つめている。
「凪沙…その、今日、バレンタイン…」
「後で、家に戻って二人きりになった時に…ね?智恵理…」
「あぁ…」
他のアイドル、いや、先ほど卯月と一緒にメールアドレスを交換した二人の友人が、別のエリアでバレンタインの話で盛り上がる。目の前で話している二人は、プロジェクトや事務所のアイドルではなく、別の事務所に所属している。ネット上じゃレズビアンカップルであるという定かではないが噂が持ち上がっている存在だ。と、卯月と未央に教えてもらったことを思い出した。
そんな中で、目の前の二人が口にしていたこと
「バレンタイン…あ…」
忙しさのあまり、そのことをすっかりと忘れてしまっていた。
卯月に渡すチョコレートを考えていなかった。
「しまった…」
しばらく、無縁だと思っていたし、なおかつ、卯月と恋人同士になったということに舞い上がりすぎて、こういう大切なイベントを忘れていた。
クリスマスになれば、そういう派手に特集はするし、覚えてはいたものの、バレンタインも同じではないか。と、思われるが、今回の場合はニュージェネレーションとして初の音楽番組の仕事と言う緊張もあり、すっかりと忘れていた。さらに、終わるまで気付かなかったのはお泊り会と言うワードに精神全体を支配されていたからだ。嫌でも、チョコよりも健全な青少年らしい妄想で時間は早く過ぎるし、他のことなど眼中になくなる。
街の雰囲気はすっかり、バレンタインの気配だというのに。そんなことをすっかりと忘れているほど緊張していたこともある。
ステージもそうだが、テレビと言う仕事となると、全国ネットやら、何やら、複雑な感情が舞い込んでしまう。
「あ、何か、チョコ!」
買わなければ。そんなことを思いながら焦り行動をしようとするも、一度にすべきことを考えすぎて動けなくなってしまう。
思考がオーバーヒート状態になってしまった。
とりあえずとして着替えて急ぎ、チョコレートを買いに行こうとするも、適当じゃだめだ。何を買えばいい。そうして、また何をすればいいのかわからなくなる。
卯月の好きなチョコレートは?卯月なら。卯月なら。卯月なら。卯月のことばかりを考えてしまえば、拘りと言うものが生まれる。こういうイベントなのだから、卯月に美味しいものを。本来ならば、手作りが喜ばれるのかもしれないが、時間はない。
ならば、
「あ、自分が美味しいと思ったチョコ・・・」
それを出せばいいのだ。
そんなことを考えて息を吹き返すかのように大きく安堵の溜息を吐く。
「今日、チョコ、何を持ってきたっけ?」
急ぎ、カバンの中をあさる。
チョコはあった。
チョコを見つけたものの、徐々に顔が青ざめていく。
チョコは、確かにあった。
そこにチョコレートがあるというのに青ざめていく喜びとは遠い表情を浮かべて、凛はとうとう、何をしているんだ。と、嘆きの表情を浮かべていた。張り裂けそうで、この場で叫びたくなる。
確かにチョコはあるのだ。しかし、それは、コープ等の、そこらへんのスーパーで売っている、一つの袋の中にいくつもの一口サイズのチョコレートが入っているタイプのもので、全くバレンタインに向かないタイプのファミリーチョコレート。
「これで、バレンタインチョコはないよね…」
新たにプレゼント用でも買おうとしたものの既に締まっている店も多いだろうし、近くに何かあるわけでもない。そして、言ったとしても、考えてみればどういうチョコレートを。
そんなことすら考えてしまう。
「素直に、謝ろう…」
いや、もしかしたら、卯月も忘れているかもしれない。
そんなことも思ったが、やはり卯月に、言わないのはダメだ。
卯月を誤魔化したりするというのは、やはり許せない自分がいた。
しかし、用意していないことを暴露して、「凛ちゃん…どうして…?」と、泣きそうな顔で、そんなことを言われたりするのはつらい。卯月は用意してあるはず。それにこたえるために、美味しいとはいえ、こんなものを出すというのも納得はいかないし、適当に買って、包んで、そして届ければいいとは思うだろうが、凛の場合はそうはいかない。
大切にしたいのだ。
こういう菓子企業に踊らされる企画であったとしても、だが、恋人同士にとって大切な日の一つであることは間違いないのだ。
ましてや、このお泊まり回と言う壮絶なイベントの中で、バレンタイン。
卯月が、本当に、淫らなことを考えて誘っていると言うのなら、チョコは、何かしらに使える。
しかし、プレゼントするためのチョコは。と、長々と考え、結局は行動もせずにだらだらと時間を過ごしてしまう。
「凛ちゃん、どうしたの?か、かえろう…?」
「う、うん…」
どうしたものか、そう思いながら、結局、卯月に送るバレンタインチョコに対することは何も言えずに凛は卯月の家に到着してしまった。
適当に
「本日、泊まらせていただく渋谷凛です。」
と、卯月の両親に挨拶し、心の中で「卯月の彼女です。」と口にしてから、今、いる場所は卯月の部屋。
少女の趣味らしいインテリアで、心を落ち着かせ緊張をほぐすためのアロマが飾ってある。
しかし、いたたまれない。
アロマは緊張をほぐす。なんていうのは嘘ではないのか。と、思えないほどに不安を煽るような無駄な時間が流れる。
こんな関係を求めていたわけではない。もっと、恋人同士のようなことをしたい。しかし、これでは、何もできないヘタレ童貞男子と夢のようなメルヘンチックなセックスに憧れる処女、そんな二人のようなもじもじとしたじれったい雰囲気が漂っているだけ。
キス以上のことなど、夢のまた夢状態だった。
此処まで来るのに会話らしい会話は無い。
卯月は卯月で、やはり、そういうレズセックス的な物をしてしまうのだと妄想してしまうと、やはり色々と思考が先行して会話をすることを忘れてしまう。
一応は、恋人らしく手をつなぎながら、この家まで帰ってきて今に至る。
何とも言えない緊張感が走る中で秒針が進む音だけが聞こえて鼓膜に響く。
心臓の鼓動と呼応するように、ただただ、音だけが響く。
普通なら、他愛のない会話を繰り返して笑いあって、そんな青春的なものをするのだろうが、しかし、それとは違うベクトルの関係にある二人には、何をすればいいのか。泊まりと言う部分だけを意識しすぎてしまっている部分が出ていることに気付かず、何とも言えない雰囲気が漂う。
外を走る車の音、珍走団の迷惑なバイクの音が響き渡り、ただただ静かな部屋の中をアピールしているようだった。
早く流れる音のように、自分も何かをしなければなるまいと、凛は息と唾を飲んで、体の下に流れたことを確認して口を開いた。
「その、今日、バレンタインだし…あたしの、今日、持ってきたファミリーチョコ…一緒に食べない?」
「え、あ、うん…」
ただ、一口ずつチョコを食べて、互いの顔を一瞬、見合ったものの、結局、何もせずに再び静かな雰囲気に戻ってしまう。
この緊張感のせいか、チョコレートの甘さは感じられない。むしろ、無味無臭と言う感じで何も起きずに味が感じられない。味覚障害に陥るほどの緊張感などあるのかと凛の脳内に言葉が走る。
こういう場合、何をすればいいのか。とりあえず、会話をしようとバレンタインのチョコに関しては、凛から、まず懺悔と言うわけでもないが、口を開いた。
「ごめん…チョコ、用意できなかった…」
「私も、忘れてたから…おあいこだよ…凛ちゃん…」
「そう、何だ…」
何処か、安どの表情を浮かべながら、簡単に解決してしまったバレンタイン事件はこうして幕を下ろすのではあるが、むしろ、ここからが本番と言ってもよかった。
しかし、依然として、何とも言えないじれったい雰囲気だけが漂った。いたたまれない。
凛にいたっても、卯月にいたっても。さっきは、凛が意を決して話しかけてくれた。
今度は、お姉さんである自分が上手く動かなければ。もう一人の自分が促すように背中を後押しした。
卯月としては、このまま、甘い雰囲気になってみたい。
恋人同士の初めてのバレンタインであるわけだし、ちょっと、積極的に。
考えてみれば、これからやろうとしていることは、かなり大胆なのではないか。
一瞬、はしたない考えではないのかと、そんなことが脳裏によぎったが、だが、このまま進展しないのも、それはそれで気まずい。折角、凛が今日は家にきて自分の部屋にきている。何かしないと。アウェー状態であるからこそ、ホームである自分がどうにかしなければ。何かをアクションしなければ。
考えるだけで脳内が沸騰しそうなほどに体が熱くなる。
その先を妄想すれば、何か、いやらしい女に見えてしまうのでは。ドラマ等で見たこと、ソレは画面を通してみると憧れになるが、いざ、やってみるとこれほど恥ずかしいものもないと呟きそうになった。
だが、もし、ここから先の関係になれるのならと、卯月は一歩、前に足を踏み出す気持ちで自分の中に渦巻いていた柵的なものを振り払い、凛の用意した一口サイズのチョコレートを手に取り、包み紙を外した。
「凛ちゃん…」
名前を呼んだ後に一口サイズのチョコレートを半分加えて凛に向けた後に目を閉じた。
これは、どういうことか。
考えれば大胆すぎる行為。
お姉さんがリードしなければ。と、思ったことに関しては大胆すぎる、この行いを前に当の恋人は鼓動が高まる。
恥ずかしい。
ここまで誘っているのに凛は何もしてこない。
何をしているのだ。
そう叫びたくなるも口もチョコを加えて言葉を発することもできないし、目を閉じた手前、顔を確認できないのがつらい。肉体が熱くなっていくことに呼応して、徐々に、チョコの感覚が柔らかくなっているのが解る。
溶けてしまう。
これから、チョコの液体が口元から垂れてしまう。
今か今かと、凛の口づけを待ちながら、少し、このヘタレと毒づきしつつも期待して待っている。
心臓が、とうとう、破裂しそうだ。
この状態をいつまで見つめているというのか。
このまま、チョコを飲みこんで、凛に泣いて喚いて困らせてやろうとも考えてしまう。
行動を起こそう。
そうやって、お姉さんとしてリードしたのに食いついてこない恋人の不甲斐なさを前に暴れる覚悟をしようとした時だった。
「卯月…好き…だよ…」
そう言葉を紡ぎ鼓動を抑えながら、ゆっくり呼吸をして唾を飲んだ。
緊張して緊張して止まらないが、ゆっくりと近づき、まじまじと、その顔を眺めていた。
桃色の唇がチョコのブラウンカラーの色に染まり始めていた。口の中には甘いチョコの香りと唾液が交わり、グラデーションを生み出している。
既に、溶けそうなチョコレートを見つめつつも白雪姫のようにキスを待つ卯月を前に委縮してしまいそうになる。
いつもは天然な部分がある中で、こういうときに限って大人の色気に近いものを醸し出す。目を瞑っているものの、卯月の心は常に、今も凛を見つめている。それが解ってしまう。これが、恋人になったことなのかも。
そんなことを思いながらも、そうやって見つめられてしまえば、何もできなくなるではないか。
(卯月は、そういうの…わからなすぎるよ…)
自分勝手な言い訳だということくらいはわかっている。
寧ろ、そうされると嬉しい。
だが、そうでもしないと自分を落ち着かせることなどできるわけがないのだ。平静を保てず、卯月に乱暴と呼べる狼藉を働いてしまいそうにもなる。卯月の天然性から表現される行動は無自覚な悪魔の誘惑にも等しい。そんなことをされたら、押し倒してキスして、そのままつながったりしたいものの、ソレをぐっと抑えて、今までに至る。
ただ、それ自身も、あたふたしてしまう自分に対する良いわけでもあるのだが。
しかし、今の状況を確認すれば卯月の両親は既に時間的に寝ていると踏んだ。そして、この閉鎖された空間は自分達だけ。
何処か、こういう時に手を出せないヘタレな自分と決別する時ではないか。
そんな良く解らない脳内の自分が出している決意と共に背中を押されて渋谷凛は気持ちを改めて唇を近付けた。
手が震えている。
これから、することを考えれば、解ることもあるかもしれない。
卯月の口元からチョコレートの液体が流れようとしている。
「頂きます。」
何度目かの意を決してペロリと垂れた液体チョコレートを舐め上げてから、凛は卯月の唇がはさんでいるチョコレートを口にして、そのまま唇を重ね押し倒した。
「ん、ぅ…」
「ちゅ…んぁ…」
チョコレートを口の中で共有し、甘さが広がる。
しかし、こうして唇を重ねた分、今までじらされていた感情を、鬱憤を晴らすように舌を絡めながら長くキスを繰り返す。
ぬちゅぬちゅと、舌同士が絡み合い、何処か淫らな音が流れながらも気にせずにチョコの感触と互いの暖かさを感じ取る。
力が抜けそうになる舌同士の絡み合いに魅了され、二人の肉体が同調したかのように熱くなった。
ぬるっとした舌同士の感触が、もっと二人のキスを激しくさせた。
甘い幸福感を感じている。
卯月を感じ、凛を感じていた。
既に、気持ちも体も、何もかもは恋人同士である互いのもの。
両片思いだった時とは違う別格の甘さに、肉体が溶け合うような言葉には表すことの出来ない心地よさとでもいうべきか。
鼓動は激しくも緊迫したものではない、この甘さによう、今後の展開を一歩踏み出すためのカウントダウン。
互いに内なる存在が名前を呼びあいながら愛していると連呼する。
淫らに思えてしまう、この形のキス。
こんな舌を絡めるキスなど、成人を迎えてからするんだろう。と、そんなことを考えていたが、しかし、止まることのない思いが暴走しそうになる。
甘く来る暴走…
それは部屋の照明すらも淫靡な光で照らされているように思えてくる。
幸福、いつもと違う、まだ数えるほどしかしたことのないキスの中で、今日は最上位のキス。
「はぁ…はぁ…」
「凛…ちゃん…」
「卯月…」
チュポッと音がするほどに唇を密着させていた。
息苦しくなって離した唇。
一分ほどではあるが無限に等しいほどの時間で互いに唇を貪りあっていた。
糸を引き、それが切れて互いの衣服を濡らす。凛が卯月の衣服を。卯月が凛の衣服を。
激しい心臓の鼓動は淫靡な世界への招待状。
互いの顔を見つめるだけで頬が赤く、体が熱くなる。
艶めかしく演出させる夜の暗さと粕かな電光、だが、二人の肢体に刻まれた忘れられる快楽の刻印が…
今…
「凛ちゃん…」
「卯月…」
恥じらいも込めながら、二人は言う。
「「もう、我慢できないよ………」」

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