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DYNAMITE EXPLOSION




主役がマクロス7のバサラとAKB0048の凪沙と智恵理。
タイトルであれですよ。
シェリルとランカも出るよ?


「ん?」
「どうしたの?バサラ。」
「あぁ・・・ちょっとな。」
バサラと呼ばれた、その男が立ち上がり、持っていたアコースティックギターをかき鳴らす。
「久しぶりにセッションしたくなる奴が来そうだぜ。」
眼鏡をかけ直し、ゆっくりとギターを奏で出した。何処か、無気力ででたらめな引き方に思えながらも、確かな力強さと優しさがある。
「此処に来ると、思いだす…」
REMENBER16・・・一つの集落に流れ始める、飾り気のない本当の歌声。
男の確かな声が街に響き、全ての人たちが集まり始める。
何かを待つように、上空を眺めて、歌いながら、それを待つ。確かな輝きを持ったバサラの待っている二人。今か今かと、熱気バサラは、その二人の存在を全身と歌で感じ取り、導くように、ただただ、歌い続けた。


「何か、物足りない。」
「凪沙も?」
「うん…」
ふと、智恵理と、そのような会話をする。
いつもの会話、そんな会話をしていれば、贅沢な悩みであると友歌達に叱られるも、いまいち、実感のない感覚に戸惑いながら、目の前の現実にぶち当たる。
此処まで、がむしゃらにやってきた分、前を見る余裕が出来たが、改めて方向性を確認しようとしたときに、目指していた物になってしまったが故に息詰まる。何のために歌い、そして、何のために踊っているのか。ただ、そこに何かあるように、観客を楽しませることも確かではあるが、何かが足りない。
だが、それ以上に何かがあるような気がしてきた。我武者羅にやりすぎたが故に、前に立って、この何かに気づく。
人と言う物は、改めて何のためになるのか。成就して暫く経つと、その最初に思っていた何かを忘れる。だが、凪沙と智恵理の場合は、AKB0048になることが目標であったが故に。それが解らない。だが、その物足りなさは何かが解らなくとも、自分の中に気づけば出来ていたモノなのだろう。
嬉々として状況を喜び、危機として欠落した物を探そうとする。それが飢えとなり、身と心を乾かしていく。もっと高みへ。そして、もっと上へ。能力の上昇を求めて、より、高みへ登ろうとするのは、このアイドルグループに入った時から、太陽が昇ることと同じように定められた伝統の一つである。もっと、高みへと、もっと上へという上昇志向は時に人を焦らせ、そして、プレッシャーとなり、重く圧し掛かる。上昇志向と言うのは、時として、人と言う存在の成長を著しく止めてしまう。
しかし、そうした時に、立ち止り、改めて自分と言う存在を見つめ直すきっかけでもあるのだ。
「あぁ・・・」
14代目前田敦子を襲名した本宮凪沙も、より、高みへと登ろうとしたところで、それ以上の物になるためには何をすべきか分からずに悩み続けた。それは恋人関係である智恵理も同じで、センターノヴァになったとしても襲名できずにもやもやした感覚が胸の中に突き刺さる。
共に、二人で、高めあいながら周りの物を吸収して今の地位がある。
しかし、どん欲な人間のように高みを求め続け、その先の物がわからずに、立ち止りっぱなしだった。もっと、もっと、大きな存在から何かを吸収したい。そんな欲求が膨らむのも無理はない。時として、誰かに教わろうとしても、既に、何回もアドバイスを聞いた人間からは、対して、新鮮なアドバイスを受け取れない。
立ち止っている自分を見つめていると、何処か、歌わされていると錯覚してしまう凪沙がいた。歌っていることが楽しかった筈が、何れ、歌っていると楽しくなくなってしまうかもしれない恐怖と言う物が付きまとう。気軽に旅に出て、見知らぬ人出会い、何かを学ぶのも良い。何か新しい体験が、人生の経験になり得難い知識へと昇華する。そんなことを言っていた速さを求める偉人がいた。そこからインスピレーションを得ることができれば、この状況も変わるかもしれない。
しかし、この御時世、そう簡単にアキバスターから抜け出せないし、何より、公演を休むわけにもいかなかった。旅に出て、見知らぬ人と触れ合うことができれば、そこから、さらなるインスピレーションを得て、自らをステップアップさせることもできるだろう。
未知の物に触れる感覚と言うのも自信を飛躍させることに一役買う。そんなことを、とある本で読んだことを思い出した。このとき自身の中にある飢えのような感覚が心を乾かし、徐々に気力と言う物を奪っていく。身も心も、全て、別世界にあるような違和感を抱きだした。
「凪沙は、最近、ずっと、この調子なの?」
「ん。まぁね。」
「私も。」
寝る前の恋人同士のささやかな時間。
お互い、二人きりで駆け抜けたことがあるからこそ、何でも話せる関係と昇華された。ただ、こうして話すだけで、どういう物になるのか解決するわけでもないが、ただ、話すだけで楽になる。
「お休み。智恵理。」
「ん…凪沙。」


恋人としての営みを終えて14代目前田敦子こと本宮凪沙と園智恵理は夢を見る。
それは、13代目前田敦子がいる、その世界と言うわけではない。何処か、荒野。小さな集落で、アコースティックギターを奏でている男がいる。
男は「俺の歌を聞け。」と言う。
丸眼鏡をかけて、シャウトを聞かせて、確かなリズムの中で圧倒的な歌唱力で、聞く者たちを魅了する。思わず、彼の世界に引き込まれてしまうような、その歌。凪沙の知らない歌には、いい加減な鼻歌ではなく、ちゃんとした歌詞がある。
「どうしたんだよ。歌いたいんだろ?お前も。」
凪沙の存在に気付き振り向いた、その人の声は力強く、我が道を行きながらも、しっかり人を引きつける歌声を持っている。一緒に歌おうと、そう思わせるほどにはオーラのようなものがある。この男は、唄うために生まれてきた存在なのだ。嬉々として唄う、その姿に、確かな魂と言う物が存在している。
歌と言う物が伝える、そのエネルギーの源を、歌っている男から凪沙が感じることができた。身体に入り込む電流のような、一種の快楽にも似たような心地良さが、男の唄う歌から伝わってくる。アコースティックギターを軽快に鳴らしながら、魂を振るわせるような歌声が、この見知らぬ老若男女の人間達を魅了している。できれば、いつも、聞いていたい、そんな、元気になるような歌声が、凪沙を振るわせて、誰よりも圧倒させる。
AKB0048の中でも、このような全身から力が湧きあがるような歌を唄うメンバー存在はいない。
触れてしまえば光になってしまうかのような恐れさえも、いや、それは、恐れと言うよりも、スリルとでも言うべきだった。この男から伝わってくる未知の音楽は、スリルとなって、全身を突き抜けるほどの爽快感まで生み出した。視界の全てが、光と言う光に包まれる。
夢と言う虚無の空間から、生の肉体と、生の感覚、何から何までが目覚めさせられて、自分が、14代目前田敦子として活動している世界の方が夢野では無いのだろうかと誤解してしまうほどに、夢の世界の凪沙の身体は不思議と活性化していた。夢、現実、何もかもが正反対な、夢と言う名のアンダーワールドに、確かな現実性と言う物を、この世界に生きているという感覚を実感させた。
「あの人は…」
当然のことながら、その人のことが気になってくる。
全身から伝わってくる男への情熱は、凪沙を圧倒するには十分な存在だった。内なる炎と言う物があるのなら、それが嫌でも燃えあがるような、自然と唄い出したくなるような、どんなに落ち込んでいても元気にさせてくれるような力強さと言う物がある。何処か、可能性に挑戦しようとする、その姿勢を見て、何処か我武者羅だった自分と被っているように凪沙は思えた。
凪沙は近づき、そして、手を伸ばそうとする。目の前の存在が熱く燃える炎、いや、炎以上に眩しく輝く光のような存在になっていく。
「凪沙・・・」
「智恵理…?」
夢の世界だから、恋人の存在がそこにいるのだろうと凪沙は踏んだ。夢であろうとも、この未知の領域を一緒に感じあう。
足元が、興奮によって金縛りにあい、その男の発するシャウトが全身を震わせる。未知の領域の歌が、AKB48と言うアイドルの歌しか知らず、それしか唄えない二人の少女が、髪を逆立てた丸縁眼鏡の男の歌によって、細胞の一つが活性化していく。
自然と、男の歌の影響によって身体のうちにたまりだすエネルギーを吐き出すかの如く、凪沙と智恵理は口を開き、歌おうとした。ソウルと言う物をあふれさせるほどの圧倒的な歌唱力を全身で受け止めた。凪沙と智恵理の本質を見抜いているかのような、その男の歌う姿を見るたびに、二人の魂と言う物を、人そのものが持っている奥底のエネルギーを爆発させる。揺さぶられる歌は、凪沙達に、これまで以上にないほどの歌いたいと言う欲求を爆発させた。爆発しそうな想いを声に託して、そして、口を開こうとする。
それを感じ取ったのか男は、ニヤつきながらセッションを開始しようとする。男の発する光の向こうを垣間見ようとした時、そこは、0048の寮に景色が変わっていた。


いつもの寮の部屋。
ベッドの隣には、智恵理がいる。
「むにゃ…なぎしゃぁ…」
差し込む陽光を見て、夢に出てきた、あの男の存在を思い出した。誰よりも激しく輝き続ける中で歌う男。あの夢に出てきた男を見ただけで、憧れや尊敬などと、言葉で飾ることのできないほどの、その存在が頭の中に蘇る。鮮明に肉体と精神に刻み込まれた、その男の歌が凪沙から離れようとしない。
「智恵理・・・」
「今日は・・・もっと、寝たい・・・」
「もう・・・」
凪沙の腕を掴んで、離そうとしない智恵理。
「今日、煩い夢を見て・・・寝た感覚がしないの・・・騒がしい男の・・・」
「え?」
凪沙が、ふと、感じた智恵理の夢は自分と同じものではないのか。と、嬉々とした表情を向けたものの、目覚めた本人には、その夢の内容は良く覚えていなかったらしい。
「それよりも、凪沙…私は、凪沙に、あれをされないと、起きることが出来ないのだけど?」
「あぁ、はいはい。」
いつもの日常。
やけにリアルに見えた、あの夢の世界は、やはり、夢は夢であるという錯覚が身に宿る。
目覚めれば、この寮のベッドの上で、智恵理と一緒にいる。中々、朝の儀式をしようとしない凪沙に智恵理は獲物を睨むような目つきをしながら、袖を無理やり引っ張り、凪沙を自らの口元に誘導して唇を奪う。
「んっ!?」
「ちゅ…ん、ぁむ…」
光惚の表情を浮かべる凪沙の前に、してやったりと言う表情を浮かべる智恵理の表情。口周りを舌で舐めとり、凪沙の温もりを全て感じ取る。
「おはよう。凪沙…」
「ねぇ、智恵理も…」
「ん?」
夢を、同じ夢を見たことを確認し合う。目覚めてから、あの未知の音楽を凪沙と智恵理に伝えた一人の男。
しかし、襲名メンバーや研究生でも、その夢を見た物は二人を覗いて誰ひとりいなかった。
何故、夢の話を聞くのか。そんなことを聞かれても、それは、改めて、歌の素晴らしさと、その力強さを感じ取ったからこそ、誰かに、その魅力を伝えようとしても、所詮は夢物語。確かな証拠のようなものが無い。
何かと二人だけで、夢や幻想までも共有する、凪沙と智恵理の前では、その特異な存在からメンバーの中で浮いてしまう部分も持ち合わせてしまっている。
ダンスの練習のときでも、しかし、歌の練習のときは例の男に感化されたのか、体から魂を感じるほどの歌声を出した。それこそ、凪沙に至っては、別人なのではないか?と、言われるほどに。
確かに、此処最近では、気持ちよく歌えたし、それ以上に、開放感のようなものさえある。昨日の夢で、歌おうとした時間に現世に戻されたが故の発散に近い物なのだろう。歌っていることが、心の底から楽しいと思えるほどに、今までの悩みがバカみたいに思えてくるほどには、解放的な歌を、その口から発していた。
しかし、引っかかるものがある。
あの、男は、誰なのか。
そんな、もやもやした感覚を二人で何も言わずに、アイコンタクトで伝えあっていた時だった。
「アキバスターの都市伝説?」
ふと、凪沙と智恵理が、そんな噂をしている鈴子達の会話を耳にした。
その内容は、こういうものだ。
この、アキバスター含む宇宙以外にも、独自の芸能が存在しているということ、そして、アキバスターは元は一つの都市船団であるということ。そして、地球移民が行われた理由は星間航法技術や資源の争いから始まった時空戦争と大量破壊兵器が使われて地球と言う星が人の住めなくなったものだからではなく、かつて、巨人が地球を攻めて、壊滅状態に陥り、後に歌の力で、その戦争が終結し宇宙移民を図った。
そして、芸能禁止を行ったのは、その戦争を止めた歌の力を信じ切れないものと、それに依存して、“歌の力”と言う、あいまいな物に民衆が依存し闘争心を無くさないように。
元より、DESが本来、表向きでは作られた理由と基本理念は来るべき宇宙生物との戦争のためと言われている。それが、かつて地球を攻めた巨人の存在なのか、はたまた噂されている帝国観察軍と呼ばれる存在なのか、人の精気を吸いつくす悪魔の集団なのか、宇宙を渡り歩く虫の存在なのか、まだ、明らかにはされていない。
その奥にあるのは、かつての巨人との戦争を終わらせたアイドルの力を恐れているから。彼等の圧政とも言える芸能禁止と言う法は、巨人と人間同士の争いを止めたように、自分たちの、この圧政の開放を導くシンボルの登場を恐れているとも言われている。
AKB0048とて、センターノヴァなど前田敦子の襲名等で超常オカルト的な力、戦争を止めるほどの力を持ったリン・ミンメイと呼ばれるアイドルの再来が登場すれば狂信的な力を持って反政府的な発言をすれば世論は一気に傾くことからの恐れ。
その組織、この場合は芸能が禁止された中で、AKB0048グループが、タカラヅカスター以外では唯一の非合法ながらのアイドル芸能組織。
一度、強制的に捨てられた芸能文化の中で、唯一、活動している組織を思えば、あの世界でAKB0048は切り捨てられない物。再び得られた芸能の形がAKBであれ、なんであれ、再び得ることが出来た貴重な存在に切っても切り捨てられない物になるわけだ。
そうなると、あの世界でAKB0048と言うのはカルト宗教以上であり、3大宗教に限りなく近いモノであるはずだ。そうなればより一層、アイドルへのファンの思いは、その影響は一種のカルト宗教以上であり、3大宗教に近い物と言われている。皮肉にも芸能禁止が、此処まで強固な物にしてしまったわけだ。
「リン・ミンメイ・・・?」
「私も、見たことはありませんが、そういう歴史は、あったそうです。」
「夢物語よ。」
と、智恵理はあくまでも否定する。
ただ、芸能禁止である理由に関しては引っかかるものはあるが。
「それに、ゾディアックが過去に智恵理さんのお爺様が買い取る前はゼネラルギャラクシーと呼ばれていたことも。」
ゾディアックの前身であると言われる、ゼネラルギャラクシーと呼ばれた会社。ライブスーツを制作した新星インダストリー社。そして、アキバスターと呼ばれる、明らかに内部構造が宇宙船の都市内に近いそれ。
開発初期のコードネームはメガゾーンと呼ばれ、その移民船団の一つから始まった、その事柄。マクロス48船団と呼ばれる一つの船団が、他の船団と別れ別れになり、連絡が取れないほどに遠くの銀河へとワープし、時間は遥か過去へと遡りながら艦隊を司るマクロス48がDGTOを名乗り、シティ48と呼ばれる都市船がアキバスターと呼ばれる星となり、各星をテラフォーミングし、ランカスターや、イテザスター等の星が生まれ、今の状況になった。
キララ等は、この世界に到着した船団の副産物とも言われている。等などと、これは多量にある都市伝説の一つである。中には、銀河クジラや銀河を渡る昆虫、電脳アイドルのシャロンなどと、様々な伝説もあるが。これが、アキバスターに伝わる都市伝説の一つである。
そして、やたら、前田敦子の襲名を恐れるのは一節としてのAKB0048の前身であるAKB48の中で、ファンは一種のキリストを超えた存在であると言わしめた。ある種、この組織には神に近い存在。それであるが故に誰よりも特別な存在であると言う説もあるが、それは、まだ先の話。
「それって、確かな情報なの?」
智恵理が汗で濡れた髪をタオルで拭きながら、そんなデマにも近い情報をペラペラと喋る鈴子に声をかけた。
その瞳には、そんな下らないことを調べるよりも、自主練したら?と、そんな意味も含まれている。
都市伝説と言う曖昧な情報を楽しむ。と、言う、そんな術を知らないお嬢様らの智恵理らしい言動とも入れる。
「確かな情報が無いから、都市伝説と言うんです。」
鈴子は呆れ気味で、それを説いた。
「そして、他に都市伝説として…AKB0048以外にも、アイドルが存在しているということ…」
鈴子は、何処か、それが気になる様子で明後日の方向を剥く。
此処一帯の情報しか入らないが故に、当然の如く、他の船団があるにしても、技術水準が地球で言う西暦2010年代レベルでは、どうしようもないというのが現状だ。そんな中で、この時代にDGPOの影響していない場所で、このアキバスターでもカルト的に爆発的な人気を持っているアイドルがいる。
「それが、熱気バサラ・・・と、呼ばれている人です。」
「熱気バサラ?」
鈴子が、端末の画面に、そのバサラと呼ばれた人物の画像を出した。
「あ・・・」
見たことがある。
まさに、その人こそ、夢の中に出てきた、丸縁眼鏡で、髪が逆立って、アコースティックギターを弾いている、その人だった。画像は荒いものの、確かに、その熱気バサラは、夢に出てきた人だった。
「凪沙さんと、智恵理さん、この方にあったんですか?」
「ま、まぁ・・・」
「夢の…中で。」
と、曖昧な回答をしたならば、当然の如く、笑われて、二人は部屋に戻る。
確かに、夢ではあるが、それが夢とは思えない。
久しぶりに歌が楽しいと思える、その男の唄い方に心ひかれたのは事実であり、それが、今日と言う日の結果を与えたこともまた事実なのだ。
何処か、湧き上がるような思いが、闘争心と似たような感情を奮い起こす。
「で、結局…どうすれば。」
と、思いながら、部屋に戻っても、なにもすべきことは無く、そのまま、夕食を取る前の夜間練習を行っているときだった。
ダンスと歌。
踊り、そして、歌い足りない、そのエネルギーを、この場所でぶつけようとする。
もっと、もっと、歌いたい。
先走る感情の中で爆発するような歌声が、寮の中で響き渡った時、凪沙と智恵理のキララに包まれる。
眩い光に先へと情熱が向かう先へと智恵理と凪沙の二人を導いていく。
「って、智恵理と凪沙が消えた!?」
優子が流石に、戸惑いを隠せない。ツバサも、誰もが、その場にいた人間が驚きを隠せない。当然だ。突然、いつも以上にテンションを隠さず、情熱の赴くままに歌いだしたとたんにキララの光に包まれて、消滅してしまったのだから。
『まーりこ。』
そんな心配する襲名メンバーや噂を聞きつけた研究生たちの声に入る先代の声。
「あっちゃん!?」
「ど、どうして!智恵理と凪沙は、センターノヴァになっても・・・!」
『彼女たちは自分の意思で一時的な旅に向かったの。今に生きる、歌の神に出会うために…』
「何故…」
『彼女たちは、目標だった0048の一つの頂点になることを目標として、その場所へと到達してしまった。でも、同時に忘れてしまったの。』
「じゃぁ、今日まで何処か上の空だったのって…」
『我武者羅に走ってしまった分、目標に辿りついて止まったら、そこには何も無かった。だから、失った何かを掴むために二人は、旅に出た。』
13代目前田敦子から語られる言葉の一つ一つ。
思えば、アキバスターの防衛を含め、それ以降、無茶をし続けた結果が実って、今の0048の誰もが憧れる位置にいる。いざ、目標を達成して立ち止った時、その目の前には何も無い。
贅沢な悩みかもしれないが、新たに目標を得ることが出来ない限り、ひたすら、路頭に悩むことになるだろう。それを解消するために。
『大丈夫。彼女たちなら、失った物、全てを見つけて戻ってくるから。でも、望めば、彼女達が貴女たちを呼んでくれる。』
13代目前田敦子の不思議と説得力のある言葉によって釈然としない雰囲気を醸し出す。
「まぁ、あっちゃんの言うことなら。」
「ツバサさん!!」
流石に、その言葉に全員が総突っ込みが入る。そこまで絶対的に信頼できるのは、かつての恋人であるからなのかと言う疑問さえも浮かんだが、こうして、律義にも現れたのは、そういうことなのだろうと理解するしか無かった。
「ツバサさんは、それで・・・」
突っかかるようにツバサに喰いつこうとする栞の肩に光の手が置かれて制止された。
「たかみな。大丈夫だよ。あっちゃんは、何もかも知ってるから。」
「それで、良いの…?」
「まぁ、紛いなりにも、あの世界に行ったくらいだからね。」
自虐するように口にして、何処か、痛々しい笑顔を浮かべながら諭すように、栞に告げた。
仕方ないのか。
と、総監督と言う立場を預かる人間として、表情が曇る。突然のアクシデントであるがゆえに、自主練へと流れを変えた夜間練習は簡単に終わりを告げて、其々が、恋人と共に寝床へと向かう。
この状況の中で、全員が全員、13代目の言葉を信じると言うことに不安を覚えそうになる。
「たかみなさん?」
「彼方…」
確かに、説得力のようなものはあるが。簡単に受け入れきれない物が栞の中には渦巻いている。
「今は…」
「ん。信じ切れないってわけじゃないんだよ?ただ、ね。」
「皆、たかみなさんの言葉を聞き入れ無くて、寂しくなりました?」
「ば、ばか!」
そっと、彼方が栞を抱きしめた。
頭を撫でながら、「大丈夫」と耳元で囁いたとき、ほんのりと、顔が赤くなったものの、自分の威厳が失われると思ったのか子供のように喚き散らしながら彼方の手を引っ張り、自分の部屋へと戻っていった。


光に包まれる時、二人は確かに歌声を聴いた。
真夏の太陽以上に熱く、そして、眩しい歌そのものを。その歌に導かれて、二人は、再び、荒れ地に辿りついた。
聞こえてくる、その歌声に、血が騒ぐと言う言葉が似合うほどには唄いたくなる欲求と言う物が身体の中から、全身を通して膨れ上がってくる。それこそ、まさに爆発と言う言葉が似合う。感情、精神、肉体、爆発しそうなほどの衝動が歌そのもののエネルギーとなって、今にも溢れだしそうだった。
「唄い始めたころの鼓動、揺さぶる思い…」
「凪沙…?何、その…歌…」
「へ?」
無意識だった。
凪沙の口から出た歌。それは、夢の中で唄っていたギターを持った長身の男が圧倒的な歌唱力で人に感動と言う物を与えていた歌の一曲。
「来いよ!」
ギターを持ってる男の唄う歌詞が、自然と脳内に入り込んで来る。
その歌声が、何もかも、そして、全てが入り込んで凪沙は男の、いや、熱気バサラの声に惹かれて走り出した。同時に、智恵理も走り出す。智恵理も凪沙と同じ、あの、男から、何かを感じ取った。歌詞の言葉一つ一つから紡がれる、かつて、忘れていた、かつての自分達が忘れていた物が歌詞に乗って、身体全身に刻み込まれて、そして、思い出していく。
「どうしたんだよ!?お前たちの歌は、それほどのものじゃねーだろ!?」
何を知っていると言うのか。いや、歌う者同士の共鳴。
二人がバサラの歌の歌詞を受け取ったように、バサラが二人の心理を知ったのだ。それゆえに、いつも以上の歌で唄っても、自分たちの調子では無い凪沙と智恵理の歌声にバサラは渇を入れた。
本能が知っているのだ。
そんな、歌声では無いと。だからこそ、その証拠にキララはセンターノヴァであろうと、14代目前田敦子であろうと、微妙な輝きを発さず、バサラの前にしか寄りつかない。オーラ、覇気、その圧倒的な歌唱力が、アイドルとしての血を騒ぎ立てる。それは、ずっと忘れていたような感覚だった。
AKB0048のステージに立って、今まで、ずっと、それを実践していたはずだったのに、いつの間にか忘れてしまっていたこと。
目標を得て、立ち止ってから、忘れてしまっていた物。
バサラは言葉で教えようとしない。バサラは歌で二人に気づかせる。同じ、歌を唄いあうもの同士であるからこそ繋がる感覚。
爆発するような感情を抑えようとする智恵理と凪沙を無視して、アコースティックギターを軽快に奏でながら、幸福と情熱の入り混じった歌声を発するバサラの前にキララ性質が集まり、さらに強い光を放ちだした。
熱気バサラと言う男の歌が、全てが入り込んで来る。
自然と集まる観客たちは、リズムを奏で出してバサラの曲に乗っている。
それだけの魅力。
AKBにはない歌のジャンルで、確かな新しい魅力と言うのが男の発する歌から感じられる。それを生きている証とでもいうのか、男が歌と言う物を、どういう風に捕えているのか、その情熱から歌から、熱気バサラと言う男の全てが伝わってきた。
その歌声からは、本当にDESのしていることの愚かさと言う物が心で理解できるというものだ。
大胆で激しく熱い歌を、流れ込んできた男の感情を受け止めるようにして、その激しさの奥に感じる繊細さを掴み取り、智恵理と凪沙の二人は先ほど以上のテンションで熱気バサラと一緒に歌い出す。何もかもを曝け出すように。
「へ…やるじゃねぇか!」
バサラの歌声に示されるように、ギラギラに太陽以上に眩く輝く、その瞳から発せられる歌声。一緒に歌って、数分で、今日歌った、全ての時よりも充実している。
シャウトを含め、何から何まで桁と言う物が違う。唄うために生まれてきた男であるのだと、その全てから伝わってきた。才能などと、そんなちんけな言葉で語ることが失礼と言える。いわば、彼は、歌の神だった。生き神と称しても良いだろう。もっとも、本人は、そういう称号を見に纏うことなど邪魔と捉える人種であることは明らかである。
ギャラリーの誰もが、熱気バサラの名前を叫び、共に歌っている二人の存在すらもかき消すほどの熱い歌声に、凪沙と智恵理の全身がしびれるほどの電流を受けた衝撃が走る。
ギラギラに輝く、その歌声は、二人の本気を待っている。
まだ、足りないのだ。
忘れている物、智恵理と凪沙の中で蘇り始める。無意識に、それを掴みとんで、二人は刹那の瞬間、無意識に、それを実践した。
「智恵理!!」
「えぇ!凪沙!!」
ギャラリーのテンションがヒートアップする中で、凪沙と智恵理も全てを曝け出すように、その情熱と言う名のエネルギーを込めて、バサラと全力のセッションを楽しんだ。とことん、ただ、バサラとのセッションを楽しんだ。
目の前の観客の前で、自分の全てを曝け出して全力で唄う。叫ぶように、魂を震わせて。久しぶりと言っても良い、全身から、3人から放たれるセンターノヴァクラス以上の光が交わって銀河へと突き抜けた。
『もっと!もっと!』
『もっと、輝きたい!』
『うぉぉぉぉぉ!!銀河よ!!!俺たちの歌を聞けぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!』
バサラの歌声と凪沙と智恵理の歌声が宇宙を揺るがした。
何を悩んでいたのか。この爆発的な快楽と言っても良い。歌っている自分。いつも以上に、何かを考えることを放棄したくなるほどに、この空間が楽しい。ただ、バカみたいに歌声が響かせるだけで全てが解消されたような気分になる。
かつてないほどの興奮とでも言うべきか。これが、歌神と呼ばれる存在なのか。いや、今は、ただ、歌っていたい。銀河が、銀河全体が、バサラと凪沙と智恵理の歌を聴いている。そして、銀河が震えている。この歌声が、銀河を響かせる心地良さと気持ちよさは、何物にも代えられないものであり、凪沙にとって、智恵理にとって、その意味を理解する。
「そっか…」
「そういうことだったのね…」
そして、何かを掴んだかのように迷いを全て、この身に取り入れた、全てを解消したかのような顔を浮かべながら、今、この確かな歌のセッションを楽しんだ。
銀河を揺るがすほどの確かな歌声が響く。
それが、今、生きている全ての者たちに聞こえているのか、それは解らない。
しかし、その歌は、今、確実に、この場所に存在しているのだ。
キララに包みこまれて、歌うことで、バサラと唄うことで、こうして、忘れかけていた物を、いや、知っていたが、実感できなかった物を思い出す。
その自覚はあったのだ。
だが、それを、何故だか、感じることをずっと忘れていた。
バサラとこうして、銀河を響かせるほどのサウンドを爆発させることによって、失った物を取り戻していた。
バサラが教えてくれたのだ。バサラが、何もかもを。ただのアコースティックギターが、銀河を響かせるバックミュージックになり、それに反応して桃色と緑色の戦闘機が、さらに、いくつもの巨大な要塞が現れる。
『楽しいことしてるじゃない!バサラ!』
「ミレーヌ!お前も来いよ!」
ミレーヌと呼ばれた少女の駆る桃色の戦闘機が人の形となり音を響かせた。
「ね、熱気バサラ?!ランカちゃん、どういうことなの…?!」
「お兄ちゃんの好きなバンドグループの…ですよね?シェリルさん!」
さらに、バサラと凪沙、智恵理の歌声に誘われて、緑の髪の少女とストロベリーブロンドの少女が二人。皆、凪沙と智恵理の知らない世界のアイドル達である。
銀河に集まった名だたる実力者のアーティスト達が、辺境の惑星に導かれて豪華なセッションを繰り出す。
銀河を揺るがす、強大で贅沢なサウンド。
叫び声が銀河を揺るがす。かつてないほどの興奮をエクスタシーに包まれた銀河全体が唄い出すかのようにだ。バサラの歌を知らない者たちの、誰もがバサラの歌を唄い出す。凪沙と智恵理は、思い出す。かつての、アキバスター解放作戦を。いや、それ以上の暴力の無い銀河を巻き込んだ歌の祭典を楽しんでいた。誘われるかのように、戦艦カチューシャがやってくる。
『歌に誘われてきてみれば…こんな、ところで、何してんだ!智恵理!凪沙!』
五代目高橋みなみの声が響く。
しかし、すぐに、その会場を見て、その怒声は場の空気を濁す者だと理解して後悔した。此処は、コンサート会場なのだ。呼び出された、AKB0048のメンバーが知らない、銀河を震えさせたアーティストたちが集う、その会場。
集いだした、キララが、これ以上にないほどの輝きを放つ。
「ウォォォォォォォ!!!!!ファイヤァァァァァァ!!!!!!!!!!」
バサラの掛け声に、誰もが口を合わせて「ボンバー!!」と、口にする。
「俺たちの歌を聞けぇぇェェェェェェ!!!!!!!!!」
全てのアーティストたちを巻き込んだ銀河のコンサートが…
「銀河も一緒に唄おうとしてるぜ…」
今、始まろうとしていた。
「凪沙、負けてられないわよ!」
「うん!智恵理!」
二人が、センターノヴァ、いや、それ以上の輝きを放つ。それは、バサラの発している情熱の輝きと同じだった。
それにつられるように、シェリル、ランカ、そして、この場へとやってきた0048のメンバーが、輝き始める。白夜のように宇宙の色が白銀に染まるほどの激しい輝き。
「AHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!」
バサラの激しいシャウトから、コンサートが本格的に始動した。
DYNAMITE EXPLOSION・・・
忘れた物を取り戻した凪沙と智恵理を祝福する、この銀河のコンサートの幕開けを告げる歌として、これ以上に相応しい物は無いだろう。


後日、アキバスターに帰還した智恵理と凪沙は、これ以上にないほどの輝きを放つ歌声を発しながら劇場にいた。
ダブルセンターノヴァと呼ばれるほどの輝きを放つ二人は、常に、会場を輝かせていた。
「そういえば、バサラと出会った時、って言うか。」
楽屋で、織音と友歌が前日のことを聞き始めた。
「突然、消えて、あの場所で再会したとき、何を、見つけてきたの?智恵理、凪沙。熱気バサラに先に会ってきたんでしょ?」
「そうだよー。何を教えてきてもらったのさ。」
いつもと違う二人。
忘れていたことは、ほんの些細なことだった。尋ねられた二人が、これ以上にないほどの満面の笑みでこたえる。
「「それはね…」」

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