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ACT-ⅩⅤ「バラバ」

こういうSSは、中二扱いされるくらいが調度良い。


守ることはできた。

しかし、敵を殺すことはできなかった。

失敗し、お互いに殺される前に、悠介は、ツクヨミを離脱させた。

故に、彼女は無傷だったが、自分は、その衝撃は、相当なものだった。

一瞬、世界が崩壊したような感じになり、一気にブラックアウトしたのだ。

他人のことなど、非常時には集中など、できはしない。

自分が必死になっている状況なら、なおさらだ。

何が起こっているのかなど、解れば、それは楽なことであるのだろう。

人が何をするのかなど、そうそう、見えるものではない。

それが、殺されるかのような状況だったら、なおさらであり、相手を気にしている状況など、全くない。

何をされてしまったのか、何が起こったのかなど、まったく理解することなどできはしなかった。

気がつけば、体が、宙に浮いているような気がした。

自分の足に安定感や、地に足がついていないことを確認した時に、あぁ、自分は宙に浮いているということを確認することができた。

ただ、解ることができたのは、自分の死期と言えるものだろうか。

体の自由は聞かずに、動かすことなど、できはしなかった。

脳が、何かを指令しても、指一つ動くことができずに、かつてない脅威にさらされる。

包まれるという感覚の後に、落ちるという感覚を味わった。

蒼い月光が、紅い月光に変わる。

幻想的な世界で、月の光が蒼から紅に変わるというのは、実に幻想的なグラデーションは、一つの芸術とみることもできる。

蒼から紅に塗りつぶされたかのように、そして、色は、意識がなくなるのと同時に黒に塗りつぶされ、フェードアウトした時、自分は確信した。

あぁ、俺はこれから、死ぬのだと。

死ぬのは怖い。

ここまで、嫌な思いをしてしまうと、失った記憶もよみがえってくるような気がした。

走馬灯のように、落ちる度に、記憶のフィルムが頭の中に流れ込んでくるようだった。

流れ込んでくる記憶は何があるのか、わからない。

生い立ち、そして、ここに来る前であろう記憶が流れ込んでくる。

そして、ここに来た時の記憶。

戦い、自分の闘いの中で、何があった。

戦いの中で、何があったのだろうか。

前にも、このような状況があったような気がした。

記憶にないもの、それが、蘇る。

上に、何が見えている。

ヴィジョンの中に、何が、何が見えているというのか。

地獄を見た。

さらに、地獄の先にあるおぞましいもの、煉獄を見た。

戦いの中で、戦いの中で、戦いに興じて、戦い、殺し、生き続けてきた、無表情に、何も思わずに、自分を殺そうとする、敵を殺した。

殺すことに、躊躇いが無かった自分がいた。

別に、敵を殺してもためらいなどなかった。

冷酷にも程がある、ほど、一撃で敵を破壊した。

惑うことなどない。

何を恐れる必要があった。

殺すことに、敵を殺すことに、そして、殺されても良い奴が生きていても仕方がないじゃないか。

そういう意味では、あの男の言うことは正しい。

そうだ。

何を、自分は迷っていたというのか。

迷うな。

迷うな。

迷うというのなら、殺せ。

殺してしまえ。

何もかも。

何が、目の前にいる。

巨神・・・

巨大な神が、自分の目の前に、4体存在している。

死ぬ。

死ぬ。

死ぬ。

死ぬという言葉に、脳が汚染されて、考えるという行動が、麻痺してしまう。

眼もとにたまる、涙は、落ちる体と異なり、逆に上昇し、助けを求めているかのようだった。

自分の手を伸ばすことができない代わりに、涙が、助けを求めているかのように。

言葉を発することはできなかった。

何も、何もできないまま、このまま、落ちて死ぬというのだろうか。

結局、ここで、自分は死んでしまうというのだろうか。

思うのは、あの男に対する憎しみと、悔しさ。

動かすことはできないのに、視界の中に飛び込んでくるのは、自分に手を差し伸べてくる、一人の銀髪の女だった。

月の女神が、悠介に手を差し伸べようとしていた。

ツクヨミの金色の瞳は流星のように輝いて瞳は、蒼い瞳に変わり始めていた。

あぁ、ツクヨミの時間は終わったのかと。

それでも銀に靡く髪が、本来の姿、朱色の形となる。

ティアナ・ランスターに戻ってきた瞬間だった。

「悠・・・!!」

手を差し伸ばし、大地に叩きつけられようとしている体に触れようとする。

「瑠璃!!いい加減に・・・一瞬でも良いから、目覚めなさい!!」

いないはずの人間に、叫ぶ。急落下する中で、指一本が、悠介に触れようとする。

空気抵抗が、激しい。

まともに、前を見ることができなくなってしまっている。

本の、一瞬の出来事が、何分もの出来事に思えてしまう。

一コマ一コマ、端整に描き込まれていくように、繊細に描かれる一瞬の出来事。

「私が魔法を使うことは・・・」

意識が飛ぶ中で、目の前に見える仁王立ちしている一人の男がいた。

この男の醸し出している圧迫感で、吐き気が出そうなほどの気持ち悪さだった。

「絶対勝利と言うことだ・・・」

これから、ティアナ・ランスターが行うことは、すべてが無駄であるかのように、

「君たちを、生かすことも、瀕死の状態に置くこともできるさ。ただ、使う気が起きないだけ。」

使うのは選別の時と、大量殲滅の時のみ。

未だに、主以外に破られることの無い魔術。

「くっ・・・!!」

ゆっくりと、手を差し伸ばす。

迷うな。

聞こえてくる声は、遠からず、頭の中に響いてくる。

迷うな。

この、目の前にいる男を、

「殺セ!!!」

「っ・・・!?」

ティアナの体は、月の加護を受けて、既に、自由にはなっていた。

しかし、今度は、悠介の体が自由となった。

バラバと対峙した時以上の、オーラが、溢れ出ているのではない。

噴き出ていた、と、言う表現がぴったりだった。

殺意のオーラ。

殺意、殺意だけ。

黒きオーラは、先ほどのものではなく、邪気すら含んでいると言っても良いだろう。

「殺ス・・・・・・!!」

体の自由を全て取り戻し、全ての自由を確認したとき、大地に、足をつけた。

アスファルトは割れ、怪しげに笑いながら、自分の体から湧き出た鮮血を、顔全体に、べっとりと付ける。

あの時とは違う、血化粧。

牙を剥き出しにし、バラバに突撃する。

「これは・・・修羅以上・・・これほどのものと、相見えるのか・・・!!」

修羅以上の修羅・・・

邪鬼神。

「ウオォォォォォ!!!!!!」

鬼の防衛本能と言うべきなのだろうか。

上着を脱ぎ捨て、先ほど以上に鬼のような姿となり、血の禍々しい入れ墨のようなものが浮かび上がる。

殺してしまえ。

目の前にいる男など、完全に殺してしまえばいい。

跡形も残さずに。

「ふっ・・・面白い。」

ある種、先ほどの悠介より戦いがいがあると見たのだろう。

あの時の鬼は、まだ、理性と言うものが残っていたが、ここにいる鬼は、破壊のみに特化した鬼神とでも言ったとおころだろう。

まさに、スサノオが産声を上げた時のように。

この男に与えるべきダメージは、下手な小細工でもなんでもない。

確実的な、強力一撃。

「これは・・・どうかな・・・!?」

呼び出したのは、殺せば害にならない民間人。

「殺セェェェェ!!!!邪魔ナ奴ハァァァァァ!!!!死ンデモイイ奴ハ!!!!」

十字架に張り付けにされた、社会に害をなす存在である、人間たち。

そんな人間達を、悠介は、

「ハァ!!」

鬼のような腕で、貫き殺す。

刃を逆手に持って、突き刺し殺す。

殺すことに、躊躇いと言うものが無い。

返り血を浴びながら、用意されたすべての人間を殺し、突破しながら、バラバを、その手で捕らえようとした。

ビルの壁を足を一瞬着いた時、足のばねを使い、一気に、バラバに向かって飛び出した。

あの、頭から、食らおうか、体から食らおうか、腕から食らおうか、足から食らおうか。

牙から、溢れ出る唾液を拭かずに、バラバに取りつこうとしたときだった。

「ラァ!!!」

腕を思いきり振り上げて、鬼のように鋭い、五本の爪でバラバの顔を引き裂こうとしたときだ。

壁のようなものが、その攻撃を受けとめた。

バラバは、その攻撃を障壁だけで受けとめた。

しかし、悠介は、もう一撃、今度は草薙の剣で攻撃した時、障壁に傷が付き、悠介は、ニヤッと、怪しい笑みを浮かべる。

「ラァァァァ!!!!」

「ふっ…」

破れば破るで、一つの物理を破壊した後の、独特の隙が生まれる。

フィールドを破壊したのと同時に、バラバは悠介に瞬時に近づいた。

死ぬ。

そのような、感情に突き動かされた。

しかし、死ぬという恐怖の前より、悠介の瞳が光り始めた。

「何?」

「死・・・ネ!!!」

「うぉぉぉぉ!?!?!?」

男に、何があったのかはわからないだろう。

しかし、完全に、吹き飛ばされているのは自分だと気づいたとき、光に包まれ、何があったのかは、全くわからなかった。

横一線に、光の柱が、貫いているように、ティアナは見えた。

光線。

悠介という男の瞳から、一瞬、虹のような光を発したとき、確かに、光線のような光が放出された。

光・・・

光・・・

光が、放出された。

発光されたのは、死の光。

撃ちだされたものに、ある種の、恐怖を感じた。

「この力・・・そうか・・・そうなのか!!」

破壊の光は死の光。

「スサノオ・・・憎しみで、無理やり覚醒しようとしているのか・・・」

白い、光の道の様な物の中で、その衝撃に耐えながら、バラバは、この力の意味を理解した。

死の閃光の中で。

「死ネ!!!俺ハ、アンタヲ斬リ裂ク!!!」

「しかし、君は、まだ・・・私を殺せない」

死のふちから、出鱈目に編み出した光線の中で、そのダメージを受けている間に、悠介はその、光の通路を通って、バラバを殺すために動き出した。

その光の通路の中では、完全に、悠介の世界。

勝利を収めるのは、悠介であるはず・・・

だった。

死の光の通路の中で、二、三度の突きを繰り出し、それを失敗すると見ると、今度は、下から、切り上げながら、足を上げ、顔面にけりをかまそうとするが、それも失敗。

とどめの一撃とするはずだった、大振りでさえ、簡単に避けられてしまった。

「・・・ッ!?」

大振りが終わった瞬間に、悠介の顔面を片手で全てを掴み力を奪い取るかのように、握力を強くさせ、握り始めた。

そのバラバという懐の奥に、刀があることを確認する。

それだけで、手加減されていたということが、よく解った。

屈辱に近い。

刀を持っていても、持たない男に、やられたということは、スサノオとして、この敗北を認めたくはなかった。

「クッ・・・!!!」

「あの程度で、私は死なない。もちろん、こんな、光の中でもね。」

バラバは、ニヤッと、妖しく笑い、アイアンクローで顔面を掴んだまま、あいた腕は、簡単に、ただ、腕を前へと伸ばすだけのような仕草で、右胸を貫いた。

何が、起こったのか、解らなかった。

ただ、解るのは、自分の体から、異常なまでの血液が放出されてしまっているということ。

なぜ、そのようなことになってしまったのか、なぜ、どうして、そのようなことを考えているうちに、

「ガァァァァ!!!!」

貫通の痛みが走りだす。

全身を駆け巡るそれは、炎と雷のようだった。

「ウワァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

「流石に、ここまでダメージを与えれば、動くことなどできまい?」

バラバは、目の前にいる、悠介に妖しげに笑う。

男でありながら、その姿は色っぽいと言える。

残酷さの中にある、優しさ。

貫かれたのは、悠介の肌身。

全身の穴と言う穴から、血が零れ、噴き出る。

返り血を浴びる、バラバの姿は、残酷と言うより、その、美しさを余計に与えていた。

男と言う、部類の中で、この世界の男と言う人間の中で、美しい部類にはいるだろう。

美しく、そして、強い。

「悪魔め・・・」

その姿を見て、クロノは、ただ、恐怖から、悪魔と呼んだ。

もとより、記述通りならば、人を殺し続けていた、死刑囚として見られていたのと同じなのだから。

さらに、握力が強くなり、嫌な音が聞こえ始める。

顔の骨に皹が入りるような、音が入り始める。

この状態になっても、死というのを、間近に体験し、そのまま、新たに、瞳から光線が出るということには、ならなかった。

進化はしなかった。

しかし、一瞬、握力が弱くなった。

悠介は、その腕の中で足を絡めて、骨ごと、持って逝こうとしたとき、バラバに、簡単に払われてしまった。

「では・・・」

感じ取ることのできた、一つの声。

「それも、今は必要ないというのか・・・主がそういうのであれば・・・」

払われた悠介は、ビルの屋上に、コンクリートを削り、砂塵を上げながら、着地して、バラバという、男を眺めていた。

その隣に、ティアナ・ランスターがいた。

「どういうこと・・・?殺すなり、攫うなり・・・なんでも、できるはず・・・」

不審。

「では、いいだろう。今一度、私は帰るとしよう。さようなら。スサノオ、ツクヨミ、そして、その体を貸し与えたカグツチ、ワルキューレ、ハーデス、オーディン、ペルセポネー、アヌビスに、よろしく。ふっ・・・」

バラバは一瞬、愛想の良さそうな、笑みを浮かべた後、自身の魔力の光を、ビー玉レベルの球体を作り出し、それを、地に落とした。

「ん・・・?」

何が起こった。

クロノ・ハラオウンの中で、嫌な予感が走るように、憎悪が走る。

球体を地についたとき、悠介は、ティアナを抱きしめ、燈也を助け出し、急ぎ、この場から離脱した。

「悠介・・・!?」

体を見れば、血の入れ墨のような、模様は消えていた。

その代わりに、開けられた、傷口から流れる血が、悠介から流れており、その姿は、誰が見ても、痛々しかった。

「大丈夫・・・いまは・・・ここから、離脱するくらいの力はある・・・」

それでも、クロノは、それにあわせて、悠介とともに、消える。

それと同時に、街を包む光・・・

消えた。

簡単に、クラナガンの、5分の一が、消滅したのと同時に、バラバも、そこから離脱した。

「安心するといい。ここにいる人間は、私が消した。」

選別の時に、隠れながら、この付近にいた、全ての人間は破壊したり、別の場所へと送り出した。

選ばれた人間たちは、自分の居るべき場所へと。

故に、廃墟を消滅させた。

そこに、誰もいない。クラナガンの五分の一は、蛻の皮。

街に広がるクレーターの規模は、あの時、ミッドチルダに来訪したときに、悠介が開けた穴と同じだった。

戦慄・・・

それが、真夜中のクラナガンを支配していた。

廃墟となった、クラナガンが支配してい物は、バラバのはなった、戦慄。

カメラは壊れ、映像は何も写らない。

ただ、見たのは、最悪の状況。

放射能の無い、核爆発級の攻撃。














「何とか・・・終わったかぁ・・・」

全ての戦いを、その瞳を全開にしてみていた、はやては、腰を抜かして動けなくなっていた。

そして、久しぶりに人間の血が噴き出る瞬間を見たし、また、なのは等が敵となってしまったこと。

これは、嫌でも、メディアがこぞって取り上げるだろう。

もう、そうなれば、止める手段はない。

テレビのニュースを止めたとしても、他のメディアが取り上げる。

ネットや、アングラ雑誌、その他諸々が取り上げる。

止める気すら起きないし、今後派手な行動を起こすのなら、止めたって意味はないだろうと、はやては諦めていた。

それよりも、六課の負傷者の処置が大事だった。

「シャマル・・・重傷者・・・頼むわ・・・」

重傷者が、一人と言うのは、不幸中の幸いだったのかもしれない。

ただし、六課の中ではだ。

民間人は、多大な被害を上げてしまったが。

「えぇ・・・はやてちゃん、お疲れ様・・・」

シャマルを見送った後に、再び、はやては仕事に戻った。

「マルス・・・ダン・・・おる?」

はやてがその言葉を聞いた時、あらかじめそこにいたかのように、忍者ように、上から、降りてくる。

「なにか?」

「あの場にまだ、生きている人がいたら、確認してきてほしいんや。」

「解りました。では・・・」

燈也の直接的な教え子であり、唯一生き残った二人。

その二人を見送った後に、生きている自分を考える。

選別と言う行為の中で、選ばれなかった人間たちの末路を。

思い出すだけで、吐き気が出そうになるほどの、気持ち悪さが襲いかかる。

まだ、生きている人間がいるかもしれない。

あの衝撃では、不可能だと思ったが、ただ、そう思いたかった。

まだ、誰か、生きていて欲しいと、思ってしまった。

助け出して、どうなる。

もう一人の自分が、そのようなことを考える。

助け出したとしても、何か言われるに決まっている。

そう思うと、はやては、これから、自分のしようとしていることに恐怖していた。

「はやて・・・?」

自分で言ったことでありながらと、笑う。

ゆえに、誰も、生きていなければいいと思ってしまう。

「ヴぃーたぁ・・・大丈夫やぁ・・・」

情けなく、言うはやてを、ヴィータは何も言わずに、ただ、抱きしめた。

向こうの考えに、会いそうな気がしてきた。

とはいえ、選別によって、自分が選ばれるかどうか、自覚はないが。

「あかんね・・・生きる価値の無い人間は、確かに助けるにならへん・・・良くわかる・・・」

そして

「うちらの敗北は、まぬがれへんかもしれへんな・・・」

「何言ってんだよ!!はやて!!」

弱気になりすぎていることは分かっている。

しかし、そう思わざるを得ないほどに、あの力は強大すぎた。

また、管理局の名のある、二人のエースオブエースが敵となってしまった。

管理局全体の戦意が削がれるのは当然と言えるだろう。

二人のエースオブエースに、クロノ・ハーヴェイ、さらには、ティーダ・ランスター、そして、バラバと言う男。

おそらく、かなりの強化はされているだろう。

しかし、バラバという男は、予想など、簡単に上回る人間だった。

いや、あれを、人間と呼ぶことが間違いであるのかもしれない。

姿形は人間であろうともだ。

あの力を見てしまえば、だれもが、勝てないと思ってしまう。

勝てない。

勝利することなど、出来やしない。

絶望の淵に立たされそうになった。

「弱気にも・・・なるわよ・・・」

弱気にも。

シャリオ達にも、敵の恐ろしさというものは良くわかっている。

絶望したくなるのも、無理はない。












「燈也さんも・・・」

敗北した。

戦場に出れば、勝利の風を呼び込むとも言える、エースの一人である、燈也の敗北。

さらに、悠介も、未完成とはいえ、敗北。

途中で、銀髪に変化した、ティアナ・ランスターも、マントを切り裂いたものの、敗北。

キャロも、瀕死の重傷。

五体満足状態になった。

唯一の、クロノ・ハラオウンは、対ユーノ・スクライア戦で、全魔力を使用。

内通者など、必要ないほどの力。

悪魔。

バラバは改心し、熱心にキリストの教えを述べ伝えて殉教したとも伝えられる。

しかし、今の、人間に、それを説いても、無意味。

故に、裁きを下すことにした。

「裁きを下されるのも・・・仕方あらへんことやなぁ・・・」

「何言ってんだよ!!はやて!!」

自分だって、何を言っているのかくらいは解っている。

しかし、救いようのない人間など、この世には何人もいる。

その人間を守っているのも、時空管理局の人間であり、その中にも、救いようのない人間等、数多くいる。

そして、自分も、そう思われているかもしれないという、疑心暗鬼に陥って、眩暈が起きた。

「ヴぃーたぁー・・・あかんなぁ・・・」

「はやては、休まなきゃ駄目だよ・・・」

「せやなぁ・・・」

周りを見れば、全員が頷いていた。

既に、時刻は、0時を回っていた。

あれから、五時間。

士気高揚のために、絶対に勝てると言っても、あの、力を見せられた時には、もう、何も言えなくなってしまう。

何も、なにも・・・

指令室を出た、はやては、いずれ、今日のことが、ヴィヴィオにばれると思っていた。

どう、切り出すか。

あの戦場から、帰ってきた、悠介達を迎えながら、考える。

「燈也・・・!!」

すずかが、帰って来たばかりの、燈也を抱きしめている。

「痛いよ・・・すずか・・・」

「ご、ごめんなさい・・・」

「骨を何本か、折られた・・・しかも、あの戦闘で・・・気を失わされた・・・こんな、屈辱は、初めてだ・・・・・・」

「燈也・・・」

「あいつは、手加減しているよ・・・」

如何なるテスタメントとはいえ、燈也の砲撃を食らえば、ダメージが与えられるが、あのバラバという男の場合は、砲撃した瞬間に、強大な殺意を感じた。

自分以上の力を持っている存在に、恐怖し、徹底的な屈辱を浴びてしまった。

下唇をかみしめながら、その悔しさをあらわにしていた。

燈也が気を失う洗浄など、無かった。

アヤとの戦いの後でも、意識を保ち、レイディーンを召喚し、戦い続けた。

しかし、あの一撃だけで、気を失ってしまった。

さらに、それで、手加減というのだ。

テスタメントの力、発動している、していない関係無しに。

「燈也君!!」

「シャマル、俺より・・・悠介君を・・・」

「えぇ・・・」

シャマルは、アスファルトに寝込んではいるが、息を荒くしている、悠介の元へと、走った。

「そんな・・・こんな状態で・・・」

シャマルは、悠介の容態を見て、絶句する。

既に、その状態で生きているということが、さらには、意識を保っているということが、奇跡と言える状態だったからだ。

開けられた、右胸の大穴は、見ることでさえ、辛いと思ってしまうほどだった。

しかし、その奥で、異常な物を見た。

悠介の体の中で何かが、動きまわっているようなものだった。

何か、何かが、動きまわっている。

「シャマル先生・・・・・・わりぃけど・・・・・・これ以上、意識を保つの、無理っぽい・・・・・・」

「え、えぇ・・・」

そう言いながら、悠介の傷ついた、体を覗き込んだ。

意識を失ってもなお、何かが、動きまわっている。

穴が、完全に塞ぎ、砕かれていたはずの、肺が復活しようとしていた。

自然治癒されていたのだ。

細胞、細胞が、活性化され、一つずつ、修復されていく。

丁寧に、修復されていった。

「なんですか・・・シャマル先生・・・これ・・・」

ティアナが、覗きこんで、その状態を恐れる。

人間の治癒能力は、ここまで、凄い訳がないということを知っているが、ここにいる人間は、何をしている。

貫かれ、破壊された臓器が、復活しているのだ。

神のように。

「解るわけ・・・ない・・・」

これが、別世界の人間であるということの証なのだろうか。

しかし、そのような事、聞いたことない。

そのような種族は、聞いたことないのだ。

「できれば・・・この事は・・・他言無用で。」

「当たり前ですよ・・・こんなもの、見せられれば・・・」

人間とは思えない、別世界の生物とも見て取れるほどの、異常な回復・・・いや、再生能力といったところだろうか。

確実に、丁寧な作業を、この体は行っている。

シャマルが見る限り、そのスピードは凄まじい。

体の一部が吹き飛んでも、瞬時に再生してしまうのではないのだろうかと、思ってしまう。

無い物を、細胞たちが創り始めているのだから。

一度限定とは言え、粉砕した臓器を一度だけ復活させた燈也がいるように、ここに、時間がかかろうとも、何回も完全に再生されてもおかしくは無い、人間が此処にいるということだろう。

覚えるのは戦慄。それほどまでの能力がありながら、悠介は、あの男に、傷をつけることさえ、出来なかった。

これを認めてしまえば、バラバの恐ろしさを認めてしまいそうになったからだ。

担架に運ばれてきて、悠介の体は、シャマルの指導のもとに、運ばれていった。

「完全ではないが・・・」

また、また、ティアナの頭の中に聞こえる、一つの声。

あの時と同じ。

「あなた・・・ツクヨミね・・・?」

「そうだ。悠介に、全てを許した・・・月の神だ。」

「何故・・・姿を表したの・・・?」

「あの子を助けるためと、言った筈よ?」

あの子を、助けるためだけに。

「なんで、私の体の中にいたわけ?」

「アマテラスを守ってくれた。」

「アマテラス・・・?ヴィヴィオのこと?」

「あぁ。」

「それだけで?」

「それだけだ。」

今は、深く詮索しない。

彼女は、ツクヨミは利用しようとしている。

いや、自分の体を乗っ取ろう意図していたからだ。

自分の体の主要件を自分の者にするために。

まだ、対等な状況ではない。

ただ、飲まれないようにするのが、彼女にとっては必死だった。

ただ、体の中から、伝わってくる事が一つだけあった。

彼女は、悠介を愛している。

それだけだった。

だから、全ての事を、恥ずかしげも無く話したのだろう。

運ばれていく悠介を見ながら、乗っ取ろうと画策している、この女を、ティアナは抑えていた。

二体の神が、その上位種であると言える、ツクヨミに歯向かおうとしていた。

恐らく、一人の体ではなくなっている。

同化しようとしている。

ティアナでありながら、ツクヨミになろうとしていた。

どちらでもなく、どちらでもある、同一に。

「あんたに、この体をあげるつもりは無いわ・・・」

「当然だ。そのくらい、抵抗してもらわなければ、面白みが無い。」

「それより・・・あんたと、悠介の関係はなんなわけ?」

「愛し合った関係だ。あの子は、忘れているが・・・」

その言葉を聞いた時、どこか、寂しさの感情が流れ込んできたが、敢えて、詮索する事はしなかった。

自分の中だけの思い出にしたいのだろう。

同化すれば、記憶は共有されるというのに。

ある種の、人間を本当に超えた存在と、その意味を此処で見た気がしてならなかった。

しかし、完全に修復されるまで、いつまで、かかるのだろう。














それは、永久に近い夢の中にいる、少年だけが知る世界。

「ユウスケ・・・ウラシマユウスケ・・・俺の名前・・・」

血みどろの紅。

その紅は、自分の体。

そして、怒り。

もう一人の自分の体を借りて、少年は見ることができる。

目の前にある世界を。

「負けた・・・負けたんだった・・・」

全力の筈だったが、いとも簡単につぶされてしまった。

これが、スサノオだというのだから、悠介は笑った。

最強の戦闘神ではなかったのかと、一人笑う。

この、暗い、紅と黒だけの世界で。

体を埋めるのは、求める事ではない。

この、精神だけの世界で、自分は何を望むのか。

敵・・・敵・・・敵・・・思い返してみる。

自分は弱かった。

滅茶苦茶だった。

それでも、強かったという自身はあった。

しかし、敗れた。

やはり、弱かった。

自分の爪を噛む。

自分の記憶の中で思い出すことは、スタイルに拘っていたわけではない、戦い方。

正義の味方を気取っていたように思える。

正義の味方を気取ったような、犠牲を出さない戦い方。

今までの、俺は何をしていた・・・?

思い出す、自分の世界。

「さぁて・・・殺すか。世界を助けるなら、なんだってしてやるさ・・・」

どの道、あのバラバと言う男と戦った事によって、再び、目覚めようとしていた、鬼神の力。

「それよりも・・・今は、休息かい?」

自分の体に、意識を再び、戻そうとしても、それをする事が出来なかった。

完全に、修復していないからだ。

自分の体が。

故に、精神の中で今、此処に存在している。

「まぁいい・・・回復したら、後は、殺すだけだ・・・」

自分に、戦場での甘さが残っていた事に、失望する。

それは、最初に殺したものが、人間だからじゃない。

それは、鬼だった。

故郷に救っていた、邪悪な鬼。

邪鬼・・・

故郷は、どこかわからない。

しかし、覚えているのは、そいつが、覚醒した手の自分が初めて殺した敵だった。

煩天・・・

煩天は、あの日、バラバと同じ事を言っていた。

とは言え、性格や、他のものは全く違うものでは合ったが。

古代の英霊と、単なる、鬼。

いや、しかし、バラバも鬼か。

あの力は、鬼でなければ、何でもない。

鬼。

鬼のバラバ。

「キサマガ・・・マダ、オサナイガキノヒトリガ、ワタシヲコロスノカァァァァァ!!!!!!!」

バラバと似ていたものだった。

しかし、この男は、支配者となろうとした。

だが、バラバは違っていたような気がした。

「煩いんだよ・・・あんた。」

「ワタシガ、ワタシガ、シヌハズガナイ!!!ワタシガ、キエルハズガナイ!!!!ワタシハ、ヒトノヨクヲスイトリ、シハイシャニナロウトシタダケダ!!!!!」

「そして、殺そうとした。人の魂をその身に取り込むことによって・・・強くなるから。」

鬼と、煩天と接した時の、会話を思い出す。

奴は、確かに、何も悪くは無かった。

「イラヌヨクヲスイ、バカナニンゲンノチョウテンニタトウトシタノニ!!!」

指導者には、相応しくなかった。

それだけは、解ったような気がした。

煩天・・・

人の欲望と魂を吸い取りつづけ、強化した鬼。

「コゾウ!!!キサマニハ、ワカルマイ!!!」

「解らない。」

「コノセカイノニンゲンニハ、イキルヒツヨウガオオイニンゲンガオオイ!!!!」

「だからって、殺して良いの?」

「カマワヌ!!!!イラヌモノナド、ヒツヨウナイノダ」

必要ない。

「そうだな・・・こっちの世界に取り込むためとは言え、言っている事は、理にかなっていたよ。解っていた。だから、あの時、殺した。でも、俺をころすっぽかったから・・・ね?」

バラバが目の前に出した、人間を。

バラバの言う、生きる必要の無い人間と言う者を。

この世には、腐っても、本当に、何故生きているのか解らない人間など、数多くいる。

いや、いすぎている。

「だから・・・俺は切った。俺は。」

さっきの戦いで。

抵抗など、何も無かった自分は、鬼になろうとしていた。

鬼と。

鬼とは人が、怨念が人の器に納まりきることが出来ずに、器がそれに対応するために変化した物だった。

煩天は、500年前から故郷を巣食っていた、呪いの悪鬼。

思い出すだけで、あの男との戦いは懐かしい。

再び、自分に帰るための戦いとなるのだろうか。

精神の中で、それを思う。

「兄さんなら、大丈夫だよ。」

「仲間・・・」

誰の声だか、覚えてはいない。

しかし、優しい声だった。

「大丈夫か。また、戻るよ。俺はね。」

戻ることができる。

戦場と言う世界へ。

呼び戻されるという事は、自分が、まだ、生きているという証。

「そう・・・君はいていた。そこまで、生きてもらわなければ困る。」

さっきの声の男ではない。

しかし、聞いた事のある声の持ち主だった。

やさしさの中に、激しさのある男の正体。

それは、バラバ

「バラバか・・・」

「そう。でも、攻撃は出来ない。私は、ここまでは限界だ。此方へ来る気はないか?」

「無いね・・・悪いけどさ。」

「そうか。解ったよ。」

やけに、素直な態度の中で悟る。

この男の言う、次という場所で、浦島悠介に何をするつもりなのかをだ。

次は、もう、此処にはいない。

この、ミッドチルダと言う世界の中で、存在はしていない。

目指すのは、修羅の先にあるもの。

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