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ACT-ⅩⅣ「迷」

うちの、アリシアねーさんは、坂本真綾さん・・・


「殻にこもるの・・・?そう・・・でも、止めはしません。」

夜空に、輝く、一つの巨星

「私は、あなたが帰ってきたことが嬉しい。貴女が、あなたが、帰ってきたことが・・・」

古代ベルカ時代、その人間だけは、帰ってくることはなかった。

ミッドチルダと、違う世界へ、月の女神と共に、旅立った。

かつての、参神の中で、ミッドチルダに残ったのは、アマテラスのみ。

ツクヨミとスサノオは、別世界へ。

「貴方が汚れようとも・・・私は、貴方を愛したというのに・・・」

しかし、

「目覚める、それは、漆黒の光・・・」

「ヴィヴィオ・・・?」

アイナの代わりに、ヴィヴィオの護衛を頼まれた、ザフィーラが、ヴィヴィオの部屋に姿を現したとき、ヴィヴィオが金色の、太陽のような光を出していた。

今までの、聖王となったヴィヴィオとは、まったく違う存在と言える、ヴィヴィオの存在に、ザフィーラは、困惑した。

その姿は、彼女が、テスタメントであるという、証であると言えるだろう。

「漆黒の光・・・天を貫く・・・そして・・・片鱗が目覚める。」

まだ、片鱗。

片鱗だけが、目覚めている。

スサノオも、アマテラスも、そして

「月の光・・・」

ツクヨミも。

片鱗だけが、目覚めようとしていた。

完全ではないが。

「完全となるには・・・まだ・・・私も、皆・・・足りない・・・」

「その男を・・・生かすわけにはいかない・・・」

しかし、殺すことはできまい。

「今、その男を・・・いえ、欲張りません・・・ただ、生きて・・・」

それだけを、アマテラスは望む。

アマテラス・・・オリヴィエ・アマテラスは、何を見る。















変わる。

変わる。

変わる。

草薙の剣を取り込んで、一人の人間は、鬼の角を出現させ、鬼神のような体に変貌し、変わる、変わる、変わる。

ただ、弱弱しく立ち上がった少年は、立ち上がる。

姿を変えて。

翼は、悪魔のごとく、邪悪な物。

機械的な体。

いや、それが、美しく漆黒に輝く体こそ、頑丈な体を表していると言える。

鬼・・・確かに、そこにいるのは、鬼神。

漆黒鬼神・・・

そのような、言葉が似合う。

月の光に照らされて、蒼白い光と共に、照らしあわされる、漆黒の巨体は、美しさの中に、見惚れさせるほどの、神秘性を誇っている。

そして、瑠璃の光と、金色の瞳の先にある物は、神の瞳。

禍々しさなど、感じることは、無い。

人間が変わり、鬼となった時、蘇るのは、鬼神とでも、言ったところだろうか。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

咆哮をあげる、その姿は美しい。

鬼の、その姿は、美しかった。

「さぁ・・・喰らい尽くす・・・」

「たかが、鎧・・・私には、興味の無いことだ。」

バラバは、簡単に言い放った。

その、漆黒鬼神を恐れていないかのように、いや、それを、弱者として、見るように、ただ、口元に、優しい笑みを浮かべながら、バラバは見ていた。

この男は、何者なのだ。

燈也達は、余裕の顔を浮かべる、バラバと言う男に、底知れぬ恐怖を覚えてしまう。

あの鬼を恐れず、その先をみたいという、恐怖心。

あの男の、優しさの奥にある、激しさと言う、オーラに飲み込まれてしまいそうだった。

既に、人間という領域を、軽く突破しているということなのだろう。

なのは、フェイト、ティーダ、クロノ・ハーヴェイがその、鬼の見えない、プレッシャーと言うものに、恐れているというのに、バラバだけは、恐れることはなかった。

鬼という形態は、第一形態。

漆黒の鎧のような、皮膚は、機械的な印象を受けるほど、神々しいと言える。

鬼の角、草薙の剣でできた、両手、両足の爪、そして、翼。

夜でありながらも、黒く輝く体は、神秘的だ。

翼を羽ばたかせて足場が崩れる前に飛翔し、目の前にいる、バラバや、他の人間達を見た。

「うぉぉぉぉぉ!!!!!!」

完全に、その姿は、人間としての面影を見ない。

フリードより、巨大なその体で、膨脹した口の中から、漆黒の閃光が放出され始める。

「くっ・・・!?」

放出した、漆黒の閃光は、劣りだった。

華麗に避けたつもりであろう、クロノ・ハーヴェイを、殴り飛ばし、地面にたたきつける。

叩きつけた時、受け身すらとることもできず、そのまま、背中から、叩きつけられたのだ。

血反吐を吐き、全身で、それを浴びる。

その巨体で、行うことは、一瞬の行為。

ほんの、数秒の出来事である。

鬼はより、悪魔の翼を広げ下半身、足が全て含めてドリルような姿となり、クロノにとどめを刺すべく、急降下する。

クロノ・ハーヴェイは、その姿を見た時、自分の死に際が、流れ込んできた。

能力を、能力を使えば、助かるが、鬼のプレッシャーに、圧迫されそうになり、何もできなくなってしまっている。

瞳は、ただ、龍一点を見つめ続け、心臓の鼓動が、バカみたいに、激しくなる。

息苦しくなり、げろでもはきそうなほどの、悪寒さえ覚えてしまう。

目の前に迫った、その時だった。

クロノ・ハーヴェイが、生きているということを確認したとき、バラバは、一瞬の詠唱をしたのちに、異次元に送った。

鬼は、途中で、突撃形態を解き、辺りを見回した。

どこだ、どこに消えたのだ。

しかし、すでに、奴の気配を感じることはないということを確認したとき、次の相手に目をつけた。

マントで、顔も、目から下しか見えないバラバと言う男の存在。

わずかに見える、皮膚を除けば、全てが、黒で覆われたと言えるだろう。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ・・・!!!!!!」

鬼は、咆哮を上げ、次に攻撃する相手を指名した。

相手は、高町なのは、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンの二人を、鬼の眼光がとらえ、一瞬、不敵に笑ったように、二人には見えた。

恐怖!

それが、その言葉が、二人の中に、突き刺さるかのように、何かが、何かが、気持ち悪さを訴える。

「面白い。」

バラバは、不敵に笑った後に、右手をのばし、右手首を左手で掴み、悠介を眺めた後に、一瞬の詠唱を唱えた時、鬼と化した、悠介をチェーンが拘束する。

それを確認した後、なのはとフェイトは、バラバを見た。

バラバは、一瞬だけ、頷くと、なのはとフェイトは、どこかへと消えた。

ティーダは、その姿を見て、満足したのか、そこから消える。

後は、バラバと言う男一人だけになってしまった。

それでも、燈也は、勝てる気がしないと思った。攻撃対象を失った、鬼は、一瞬怯える。

この、バラバと言う男に、鬼が怯えてしまった。

鬼が、怯える瞬間など、見たことはない。

しかし、この男は、鬼を怯えさせることのできる男である。

一点を見つめる、鬼は、バラバをとらえているものの、攻撃することができなかった。

攻撃しようとすれば、どうなるか、解っているからだ。

仲間を巻き込んでしまうことを、解っている。

これほどの、火力を、この鬼は持っているということでもある。

これほどの騒動がありながら、誰もいないのは、ここら辺付近にいる、クラナガン市民は、選別という行為によって、崩壊してしまったからだ。

故に、ここには、すでに、人と言う人はいない。

いるのは、ここにいる、六課の人間たちと、バラバ、そして、鬼となった悠介のみ。

「ん・・・!?」

振りほどこうとするも、振りほどくことなど、できない。

全身をくねらせたり、羽を刃にして、破壊しようとしても、それは、破壊することはできなかった。

「所詮は、第一形態なのだろう?半端な状態…本来の姿じゃない。身を隠すための姿。その、鎧の体の中に、何がいるのかな?」

バラバは、誘っているように見えた。

悠介に、これ以上の呪いを見せつけるかのように。

脳の中に、バラバは、悠介の邪悪な記憶を流す。

その鬼の姿が、偽りとは思えないほど、美しい姿であると言える、鬼の姿。

拘束される中で、姿を変えていく。

「まだ・・・あるのか・・・」

燈也は、その奥に興味を抱くも、悠介が、鬼の体の中で、望んでいないという感情も読み取った。

送られてくるのだ。

悠介は、何を見せられているのだろうかと。

もう、この姿で、良いではないかと。

思うほどに、彼は、拘束される中で苦しんだ。

「言うなれば・・・今の君は、蛹。」

今の鬼の体は、鎧の意。

ただ、バラバと言う男にとっては、バカでかいだけの存在であり、そのようなものに、興味など湧かないということだ。

興味など。

鬼の鎧など、必要はない。

その鎧を解き放った姿をみたい。

戦士として、その姿に、バラバはある。

見かけ倒しである、鬼の姿などには、興味がないのだ。

その奥に、貴様は、何を持っている。

さぁ、私に姿を見せろ。

「鎧を外せ・・・」



その奥に、真の姿があるのかもしれない。

恐怖と共に、興味が湧きあがる。

「瑠璃・・・あなたは、なぜ、出てきた・・・」

ティアナの再会した女。

霊体として、彼女は存在しているのだが、ティアナを見た時、一瞬、優しく微笑みかけたのを、ティアナは見逃さなかった。

消滅したのでは、無かったのか。

なぜ、そこにいるというのか。

解らない。

愛した人、この世で一番愛していた人が、なぜ、完全に消えずに、そこに存在しているというのか。

いや、自分が見つけた、幻影だとでもいうのか。

「困惑することはない・・・信じていれば、また、彼女に会える。」

「誰・・・?」

自分の中に、入り込んでくる、声。

見知らぬ声。

どこか、母のような安らぎを覚えるような、優しい声だった。

聞いたことはないけど、聞けば、優しくなれるような、落ち着きのあるような声であり、一瞬でも、その声に身を委ねたいと思った。

「あなたは・・・?」

「悠介を・・・」

深くは、なにも、言わなかった。

ただ、

「悠介に、何が起こったの・・・?」

今、何が起こっているのか、なぜ、鬼の姿になってしまったのかなど、理解できるはずもない。

「あの子は悠介は、精神的にもろい部分があってね・・・」

この声の女は、悠介の姉か何かか。

悠介と言う、人間という種族が、鬼に変わったというのだ。

「あれは、あの子の心の弱さ・・・」

鬼の鎧は、心の弱さであると、ティアナに話しかけた、声は言う。

心の弱さ。

如何なる人間であろうとも、遺伝子を組み替えて、龍になるなどと言うこと、信じることはできなかった。

「あれは・・・貴方の考える手段で、ああいう姿になった訳ではないわ。呼び出したの・・・」

「呼び出した・・・?」

「あの体・・・鬼の鎧を呼び出したの。そして、あの子は、一つになった。心を、閉ざすために。」

「殺されるべき人間であろうとも、この戦いに無関係な人が死んだから・・・精神的に傷ついた・・・?」

「そう。優しいから、あの子は、傷つきやすい。絶対的な攻撃力を持っていたとしても。」

だから

「あの殻に閉じこもって、無意識に敵を殺す・・・ただ、それを乗り越えた時、あの子は強くなる。それが、覚醒へのトリガー・・・」

「あなた・・・誰・・・」

「私は、ツクヨミ・・・」

「ツクヨミって・・・」

月ノ女神。

神滅大戦時、スサノオが選んだと言う、ツキノメガミが、何故、自分の中にいるというのか。

前世であるともいえる、カグツチは、同時期に生まれた存在であり、決して、同じ命に宿るはずがないと思っていた。

「どうして・・・」

「正確には、ツクヨミの神人とでも言うべきね・・・」

助けろ。

「開放しないというのなら・・・砕くのみだ・・・」

悠介、目の前にいるのは、悠介だ。

悠介の人格を借りた何かではなく、悠介なのだ。

こいつは、どれほど、神を見においているというのだろうか。

燈也は、そのような眼差しを向けながら、悠介の背中を見た。

明らかに、無数の神のような存在がこの悠介と言う男の中にいる。

出現しようとしているのか、変わろうとしているのか、何をしでかすのか、想像するだけで、燈也は、頭が痛くなった。

それほど、無数に近いほどの神を蓄えることなど、不可能だと、燈也は思う。

そうでなければ、人格は崩壊していいと言っていい。

いくら、それが、スサノオであろうともだ。

バラバは動き出し、そこから、姿を消した。

一瞬で、拘束した、龍の前に現れる。

その、鬼の黒い体に触れた腕が、光始め、爆発する。

鬼の鎧が、破壊され、現れるのは人間。

ガラス細工を落としかのように、割れる音が聞こえ、龍の体の奥に、取り込まれるように、十字架に張り付けにされていた、一人の人間が、そこにいた。

内部の、鬼の肉片が飛び散り、それが、幻想であったかのように消滅する。

違う。

消えたのではない。

中にいた、男が、取り込んだのだ。

いや、人間の姿に近くても、それは、人の形とは違う。

目の前にいるのは、スサノオ。

殻を破られたことによって、その鎧を取り込み、一つの姿となって、現れる。

新たに、現れた、その姿こそ、本来あるべき姿なのかもしれないと、ティアナは見た。

人と言うより、それは、悪魔のような姿だった。

人と言うより、悪魔。

いくつかの、無骨の鬼のような面影を残しているが、悪魔と言うより、鬼神という印象が強くなった。

鬼神スサノオ、その名の如し。

爆発的な力を持ちながら、その力の所有者は、精神的に弱い。

しかし、そうであろうとも、悪鬼と言う姿は、似合わず、鬼神と言う言葉が似合うと言っても良いだろう。

精神的な部分はもろくても、目の前にいる鬼の闘気によって、その脆い部分は、相殺されている。

「ぐぅぅぅぅぁぁぁぁぁ・・・・・・」

静かな、雄叫びをあげながら、その鬼はバラバを見据える。

「失望したよ・・・」

バラバの会いたかった姿は、その姿ではなかったらしい。

その姿は、失望の念に、押されていた。

「あの姿・・・いけない。」

バラバが、口を開くと同時に、ツクヨミは、そのようなことを言う。

何が、いけないというのか、理解することができなかった。

「何故・・・?あれは、貴方の言っていた、強者の姿じゃないの・・・?」

「純粋な思いじゃないの・・・純粋なら、一途に殺したいでも良い・・・でも、アレは・・・まだ、迷いがある・・・バラバは、それを見抜いている・・・」

殺された、殺された、人間の怨念。

無関係な人間を殺したということ、それを救うことすらできなかった、自分の不甲斐無さと言う、感情。

本来の、純粋なものではない。

「あの子は、完全に、スサノオの力を引き出すことはできない。迷いに囚われている以上は・・・」

その二つを有したのが、鬼ではないのだろうかと、一瞬、ティアナは思った。

しかし、ちがうのだろう。

この、ツクヨミが言うことには。

「やはり・・・記憶がないせいか・・・」

以前の悠介ならば、より強かったという言い方だった。

「迷いにとらわれず…以前よりも、力強かった…しかし、今は・・・迷いに囚われている・・・」

ティアナは、今の、悠介の状態だけでも、素直に、凄いと称賛することができた。

燈也達も、そうだ。

「今の君と、闘う気は起きない。」

「この力・・・・・・呼び覚ましたのは・・・お前だ!」

「しかし、君は、それの使い方を忘れてしまったね・・・・・・」

「バラバ・・・」

「ちがう・・・君は違う・・・」

「どういうことだ・・・」

バラバの望んだものではなかったのか。

「迷いを君は克服するかと思っていた・・・しかし、違う・・・」

それは

「迷いを克服せずに、自分の力と変えてしまった・・・」

失望だったのだろう。

その奥にある、純粋な力と、バラバは戦いたかったのだろう。

今の、悠介は違う。

そう、言うかのように、失望の顔を浮かべていた。

「その程度では・・・私は、倒せないよ。」

「ほざくな!!!」

拳に、力が宿ったかのように光だす。

悠介は、その拳を前に突き出し、バラバを付け根ごと、顔の全てを持っていこうとした。

早い。

確かに、早い。

拳の速さは、確かに早い。

しかし、

「遅いよ。君のはね。」

すかさず入れた、もう一つの拳も簡単に止められ、悠介は、唖然とした。

拳を前に突き出すだけで、風は、起こる。

突風が、起こるほどの、凄まじい拳を、いとも簡単に止められてしまったのだ。

完全に、捕えたと思っていたからだ。

「君には、失望したよ。単なる修羅か・・・」

避けられた、光の拳の波は都市の建築物を破壊し、爆発するかのように、土砂や、コンクリートが舞い上がる。

凄まじい力であるという事が解るだろう。

しかし、この男は、それを、簡単に、避ける。

あわよくば、受け止める。

繰り出される拳が、殆ど、避けられているという真実を、受け止めることが出来なかった。

勝てると思っていた。絶対に、絶対に倒せるという、自信が、悠介の中にはあった。

しかし、目の前にいる的は、自分の想像をはるかに超えていた。

恐怖さえ覚えるほどにだ。

人間たいだけでも、あの、ユーノ・スクライアは圧倒できたというのに、何故、ここに来て、あの男は、倒せない。

はるか、別次元の向こうの強さと言う壁の向こうにいるのであれば、このバラバと言う男は、真の意味で神なのだ。

では、この男の向こうにいるものはなんだ。

この男が、主と慕う者は。

その遥かなる存在の前に、自身は喪失し、いつしか、悠介は、人間の体へと戻ってしまう。

もう、こいつを倒す事は出来ないとでも言うのか。

そうだ。

なのは、フェイト、クロノ・ハーヴェイ、ティーダ・ランスターが恐れても、この男だけは、鬼に対して、恐れなかった。

笑みを浮かべていた。

「君には、拳を振るわずに、投降して貰って良いかな?」

あくまでも、殺すつもりなどない。

その意思だけは、徹底していた。

浦島悠介と言う、いや、テスタメントを欲しがる理由は、何処にある。

「以前の君なら・・・私の主の分霊と互角以上に戦っていた君なら・・・私を殺せただろう。」

この、純粋な瞳の奥にある、心理はなんだ。

どうして、こいつは、俺のことを知っている。

考えれば、考えるほど、心臓が痛くなる。

体全体が、心臓を中心に拘束しているようだった。

「貴様・・・!!」

悠介は、草薙の剣を抜き放ち、目の前にいる、男を切ろうとしたが、人差し指で、抑えられる。

あの、ユーノ・スクライアの、防壁を全身に張り巡らせて、硬い体を作った体を切り裂いた刀が、これだ。

確実に、潰すために、確実に、きるために。

抜刀術の基本は忘れてはいないはずだったのに、人差し指で、受け止められた。

しかし、衝撃破、辺りの者を切り裂き、風を切り裂き、そこには行った物質は、全て、木っ端微塵となった。

嘘だ・・・嘘だ。

嘘だ!

嘘だ!!

嘘だ!!!

嘘だ!!!!

抜刀術には、確かな自信はあるし、此処にいる、誰にでも、勝てる自身はある。

しかし、この男は、何をした。

自分の、抜刀術を人差し指で受け止めた。

目の前にいる男は、優しき笑みを浮かべていた。

しかし、その笑みは、自分をこれから地獄へと送る、死神の笑顔にしか見えなかった。

「意味はないよ。君の負けだ。さぁ、おいで。君は、私の主の下に、行く権利がある。」

主・・・

その男は、誰だ。

主と言う名前を聞くだけで、足が竦んでしまう。

主と言う人間を、恐れているのが、悠介自身、よく解った。

「そして、貴様は・・・何をするというのだ。」

連れて行かれるのか。

この世界で、何も言えないまま、自分は消えていくというのか。

此処で、結局、何も出来ずに消えていくというのか。

抜刀術を止められた事で、悠介は、恐れを抱いている。

「大丈夫だ。お前には、私がいるよ・・・」

しかし、優しい声が、

「ン・・・?」

バラバは、また、懐かしい感覚を思い出した。

それは、月のように、青白く、人一人を優しくさせる、癒しの光と同じである。

「月の光・・・久しぶりだね。月の女神よ・・・仮初の器は、どうかな?」

「悪くはない。この娘は、戦い慣れしている。」

「ティアナ・・・」

ティアナ・ランスターの声と体を借りている。

いや・・・

知ってる・・・

「ティーダ・ランスターの妹の中に眠っているね?ツクヨミ・・・」

「ツクヨミ・・・?」

ティアナ・ランスターの、両の瞳は金と銀を示し、美しい朱色の髪は、月の光を示すかのように、銀の髪をなびかせていた。

美しい・・・ティアナ・ランスターが、月の女神となっている。

荒々しいスサノオの姿とは違う、別の美しさ・・・

高町なのは、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン、月村すずか、ましてや、オリヴィエ・アマテラスなど比較する事が、愚かと言えるほどの、美しさを秘めている。

その奥にある、淫靡さや、色気は、男を魅了するならば、十分な素材と言える。

誰よりも、美しく、そして、淫美だった。

そっと、悠介を抱きしめ、かつて、愛したということを、バラバに見せつける。

「私の大好きな悠介・・・」

「お前は、俺を知っているのか?」

「えぇ・・・かつて、愛し合った中なのだから・・・」

月の女神である、ツクヨミは、臆する事無く、それを口にした。

「愛して・・・いた・・・」

「そう。私の、アナルも、オーラルも・・・初めても、全て、貴方が奪ってくれた。」

全て、全てをツクヨミに愛された一人の神である、スサノオ。

記憶を失い、目の前にいる女は、覚えていない。

ただ、これほどの女性に愛されたということが、嬉しかったように思える。

見た目とは裏腹に、一途に見える、その女神は、バラバと対峙できる物。

「ふ・・・」

恥ずかしげも無く、月の女神らしくない事を言う、ツクヨミに、バラバは、ただ、笑う。

「しかし、その程度で、揺らぎはしない。」

「構わない。それでも、私と、悠介が、愛し合った事には変わりないのだから。」

そして

「私が、お前を消す。」

「できまい。こうして、喋っているうちにも、貴様は、力を消費しているのだから・・・」

「ツクヨミ・・・?」

「気にしないで良いわ。悠・・・」

優しかった。

包み込むような、優しさだった。

「お前は・・・潰す・・・」

「できるなら・・・」

男には、深手を負ってでも、確実に倒せるという自信があった。

女は、この男を確実に殺すことができるという自信があった。

お互いに、自信と言うものがある。

クロス・ミラージュ、そして、

「瑠璃の・・・刀・・・?」

ツクヨミは、それを呼び出し、八尺瓊勾玉、クロス・ミラージュと融合させ、さらに、一つの刀を作り出す。

完全に、ティアナの体の所有権を得たツクヨミは、大太刀・・・

贄ノ神月を手にした。

「元の所有者は・・・私なのよ。この子はね・・・」

「浦島悠介に分け与えられ、そして、月村瑠璃・・・ティアナ・ランスターへと、渡されたという訳か・・・」

「そうよ。あの子が、生きるための物。あの子の、ベースは、私と悠だもの。」

いわば、親のようなもの。

「バラバ・・・消えてもらうぞ・・・私が過去の悠から、教えてもらった物で・・・!!」

キッと、ツクヨミの瞳が光り、神月を抜き放つ。

刀身は、オーラを浴びて、抜き放った刃は、衝撃波を生み、バラバは、刀自身の攻撃を避けても、衝撃波を避けることができなかった。

僅かに、スパンッという、音が聞こえたのと同時に、マントが、ばらばらになった。

「っ・・・!?」

「驚いている暇は・・・」

「ないが!?」

足を大きく、開き、バラバは、贄ノ神月を蹴り落とし、そのまま、ツクヨミに打撃を与えようとしたが、それを読んでいた、ツクヨミは、自分に重力をかけ、そのまま、神月と共に、落下し、神月をなんなく手にした後に、ビルの壁を蹴りあげ、そのまま、上昇する。

ジグザグに上昇し、相手に動きを悟られないように。

壁から、壁へ移る月の女神は、残像を残しながら、舞い上がり、月の光を味方につける。

「今・・・!!」

燈也は、己の恐怖心を解き放ち、ネクサスを、アンファンス状態で、今できる限りの最大出力でバラバを狙撃しようとした時だった。

「なっ・・・!?」

それは、もう、すぐ傍にいた。

「速い・・・!?」

「プレシア・テスタロッサの子供だね。悪い子だ・・・!!」

殺される!

危機センサーが、燈也に、そう訴えていた。

本能が、こいつはヤバイと、自分の命が消されると、思ってしまった。

「眠っていたまえ・・・」

燈也は、懐園剣を取り出し、ネクサスを、一時放棄した。

自分が、恐怖で覆われている。

これほどに、敵を恐れたのは、何年ぶりのことか。

目の前にいる敵が、たった、2mの身長の敵が、自らの裁く巨大中身のようにも見えた。

抜刀の速度なら、悠介に負けていないと言う自信はある。

しかし、抜刀していた時には、手に、懐園剣の実感は無かった。

その代わりに、自分の脇腹に、おぞましいほどの激痛が走ったのが解る。

さらに、痛みは全身を通して、やっと、蹴り飛ばされて、全身を叩きつけられ、敗北したという事実を受け入れた。

静か、心の中で思う。

なんと言う、化物だと。

JS事件の時、あの事件の時だ。

アレと、一つも変わらないようなオーラを出しておきながら、彼が、降臨したときと、非常に似ている。

誰もが、浦島悠介と言う存在を恐れた。

正に、そこにいたのは、破壊神だった。

ある物を屈服させ、ある物を完全に、従わせるほどのは気に満ちた男。

ミッドチルダの廃墟地に、巨大なクレーターを作り出したのも、浦島悠介だ。

全身防御+高速戦闘スタイル・・・この、戦い方を生かすことは出来なかったとは言え、あの腕以外は、確かなる硬さと言う物があった。

故に、持っていけたのは、腕だけだった。

しかし、その男は、目の前にいる男は、それを倒した人間である、浦島悠介を無傷で屈服させ、JS事件時、ジェイル・スカリエッティ最高の戦闘兵器といわれ、管理局を恐怖に貶めた、アヤ・スカリエッティを満身創痍でありながらも、倒す事の出来た、月村燈也の撃破。

一瞬で、敗北したと、認めさせた器量。

戦闘技量は、悠介たちを超える物があり、さらに、優しき心を持つ破壊神。

この男を恐れずに、誰を恐れよう。

「後ろを見ていて・・・良いのかぁぁぁぁ!!!!」

月の光とともに、ツクヨミは竜巻を起こすかのように、凄まじい回転をしながら、抜刀の構えを保ち、舞い降りる。

月から、使者が降りてくるかのように、凄まじい動きだった。

これでは、避けられまい。

それほどの速さと見抜き、バラバは、両手を差し出し、それを受け止める。

「はっ・・・!!!」

「ぐぁぁぁぁ!?」

「・・・その程度、見抜けない私ではない。」

贄ノ神月を受け止め、逆に、男は、そのエネルギーを吸収し、ツクヨミに向かって、弾き飛ばした。

「馬鹿な・・・!?アレは・・・アレは・・・」

「絶対に、破られる筈の無い・・・破軍星を味方につけた、抜刀術・・・しかし、私に、それは通じない。」

彼女が、彼等の存在が弱いのではない。

この男、バラバが強すぎるだけなのだ。

誰よりも、誰よりも強い。

周りに威圧を与えるのであれば、それだけで、ツクヨミの戦意を奪う。

小手先の技が通じない事くらい、解っている。

さらに、この男に好きは無い。

隙を造ろうとしても、恐らくそれは、フェイクであり、勝利する事は無い。

しかし、

「それでも・・・」

周りが、力を完全に使ってしまった者、リミッターがかかった者、別の個体であるが故に完全ではない者に勝利した所で、

「強いと言わしめさせたくない。」

だから、

「俺は・・・俺はぁぁぁぁ!!!!」

「ふ・・・まだ、動くのか・・・」

ここで、負けたくない。

「此処で、君を連れ帰ろうと思ったのだがな・・・!!」

魔術を使わない。

悠介は、この男が、魔術を使っていないという事態に気付いた。

使った者は、解放する物だけで、攻撃的魔術、能力付加、能力強化、拘束魔術は使っていないという事に気付く。

まさか、魔術を使わずにここまで来たとでも言うのか。

それでも、

「使わないのなら・・・!!ツクヨミ!!今は、あんたが、誰でも良い!!俺の思念を、お前に送る・・・」

恐らく、自分達に対して、それを使わないという、絶対的な自信があるとみた。

いや、使えば、恐らく、自分達を殺すほどの威力を秘めている物。

奴には、絶対に、悠介達を殺したくないという欲求があった。

此処で、挟撃を行えば、敵を殺すことはできる筈だ。

まだ、まだ、まだ、此処で死ぬ気など起きない。

行きたいという欲求が、強者としての欲求が、悠介を動かしたのかもしれない。

だから、動く事ができる。

「悠・・・私は後少しで、眠りに付かなければならない・・・もとより、3分が限界なのだ・・・既に、あの一撃を放つために、かなりの時間を費やした。」

「解った。30秒で、けりをつける・・・!」

倒せるかどうかなど、解らない、一つの駆けだった。

この男に対して、何処まで、勝率を伸ばす事ができるのか、それは解らない。

しかし、倒さなければなるまい。

今後のためにも、絶対に。

30秒。

絶対的な威力を持たせるには、最高の一撃を放つのならば、その時間が、調度良い。

「良いだろう。おいで・・・」

悠介の草薙の剣、ツクヨミの贄ノ神月。

二つの神刀を持ったものは、上昇する。

二人は、黒と朱の光の球となりて、交差しながら、交わりあう、その姿は正に、二匹の龍が昇るかのようだった。

一本の線を描き、鮮血が流れるかのような、いや、人をきる太刀筋を、バラバの行く末をみているかのような光だった。

誰にも、破壊させない。

その意思を、持っているといえる。

月と、破軍星を背に向けて、最大にまで飛び上がったとき、今、自分の持てる、全ての力を刀に込める。

二人の力が工作し、それ以上の力が生まれる。

あのときのものとは、全く違うものが、生まれようとしていた。

夜空を照らすには、その光は明るく、破壊の力というものを、破壊との光と言う物を見ることのできる光。

神々しさ・・・

さらに、悠介は、全ての八卦の札を取り出して、二人を守るかのような、結界の力をも取り込んだ。

まだ、月下の元で輝きながらも、その美しさを保ちつつあり、二人の力は雷光のような輝きを見せた。

美しいのだ。

如何なる、殺人術であろうとも、この技の放つ光は、神が人に希望を見せるかのごとく、美しい。

以前も、この技を、したことがあった気がした。

この、女と。

懐かしい記憶が巡る。

それは、神滅大戦時に、まだ、参神として悪魔と戦っていた時代。

この空の色は、蒼とクロノグラデーションは、人に安らぎを与える時間である空色であるはずだったのに、此処で現れた強敵の圧迫感に、それは、消されてしまった。

目の前にいる敵が、此処は、ミッドチルダではなく、別世界なのではないのかと言う錯覚さえ覚えるほどの、圧迫感だった。

圧迫感が痛みとなって、悠介達を苦しめるような、錯覚を与える。

しかし、それでも、負ける訳には行かなかった。あの男を倒すために。

どくどく・・・

心臓の鼓動が高鳴り、眼球の、黒点は真っ直ぐとバラバを見つけ、風が、急かすように吹き荒れ、木々が唸る。

「双牙・・・」

「月命破・・・!!!」

流麗・・・

その言葉が似合うかのように、二人は、敵に向かって、舞い降りるかのように、月が涙を流すかのように、蒼白い光を発しながら、バラバに向かって降下した。

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