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ACT-Ⅹ「人の顔」

終盤でその意味が解る。
12/3日:追加。


「ねえ・・・」

ホテルの一室。

煌びやかな装飾によって、その部屋にいる人は、全てが、上品に見えてしまう。

ここにいた、男は、辺りを見回した。

なにしろ、初めてのスウィートルームと呼べる、高級な部屋だったのだから。

男は、シャワーを浴びた後に、柔らかな、高級そうなベッドの上に倒れ込んだ。

今にも、眠りそうだったのは、この男の疲労がたまっていたからである。

怨念の力を借りて、斬られた腕を復活させて、元の腕の色と、生やしたばかりの自分の腕の色が、違うのは、新たに、再生させたからだ。

このホテルの、この類の部屋を使う人間は、大抵、時空管理局の上の人間が、愛人を連れ込むために使用している部屋だ。

それでも、この部屋を使うことに、悪い気はしなかった。

シャワー室には、女がいる。

栗色の髪をした、女が、男を待っている。

男は、我々には顔を見せることなく、栗色の髪をした女だけに、素顔と、全てを見せる。

我々の前では、覆面をかぶっていたとしても、栗色の髪の女の眼だけでは、素顔を見せる。

男受けしそうな、栗色の髪で、純粋そうに見えるその瞳の女を、目の前にいる男は、自分のものに出来た。

ある意味で、自分がフェイトを超えたとでも、思ってしまったのかもしれない。

目の前にいる、本物の高町なのはを、自分のものに出来てしまったのだから。

その、栗色の髪女の名前は、

「なのは・・・・・・」

「久しぶりだね。」

「やっぱり、君は・・・僕の天使だったんだ…」

なのは・・・

高町なのは。

かつての、エースオブエース。

何故、その男を助けたのかなどと、考える人間もいるだろう。

しかし、この女が、覆面の男を助けたというのは事実なのだ。

では、その目的は、何なのだろうか。

単純に、利用しているのか、愛した男であったのか。

この女も、淫猥で、自分の色に染まったかと、自分のものにすることが出来たという、興奮で、男の、海綿体が膨張した。

これから、男は、自分の道程を、夢にまで見た、女にささげるというのだから、これほどまでにない興奮を覚えた。

「おいで…なのは…」

「うん…愛しているよ・・・」

どこか、なのはの動きが、ぎこちなかった。

しかし、男は、平気で、なのはを抱きしめ、そのまま、自分のものにした。

それが、何なのか、今の、男にとっては、どうでも良い話なのだろう。

ただ、愛した女を、女から取り戻し、自分のものに出来たのだから。

少しづつ、なのはの色が、怨念によって、黒ずんでいく。

黒く、黒く、黒く、醜い色に、なのはの体は、泥にでも塗られたように、変わっていく。

いや、黒いオーラ・・・怨念に纏わりつかれてしまったとでも、言うべきなのだろうか。

「僕のものになっていく…」

黒く染まるかの如く、確かに、自分のものになっていくという、快感が、この男にはたまらなかった。

「ぼくのものに、ぼくのいろにそまっていく・・・」

月の光を遮るかのように、その部屋は、闇となって、黒く染まる。














「燈也・・・・・・」

微かに聞こえる声。

十字架に貼り付けにされている一人の女性が存在している。

かつて、二人の子供の母親だった人間。

「ママ・・・・・・大丈夫だよ。すぐに、ママのもう一人の子供を連れ戻してあげるから。私の弟」

目を瞑りながら、十字架に貼り付けにされている女性に、フェイトと良く似た少女が、話しかける。

そのフェイトと似た少女と、フェイトの違いは、神秘さといえるものだろう。

彼女の存在は、フェイトと比べて、神秘的過ぎるものがあった。

神々しく、輝き、聖母マリアのような笑顔を浮かべる。

貼り付けにされているのは、燈也の実母である、プレシア・テスタロッサ・・・人間の禁忌を犯し、時を止められた彼女は、ずっと、貼り付けにされたまま、眠らされていた。

犯した禁忌は、人間の複製と呼べるもの。

人が死ぬのは当然であり、如何なる場合でも、如何なる手段を使ってでも、蘇らせてはならない。

死んだ人間を蘇らせるために、新たな、肉体を蘇生させる等、神の行いを、たかが、人間が行ってはならないのだ。

それをプレシアが、犯してしまったということだ。

プロジェクトF・・・アリシア・テスタロッサの複製を作るために、プレシア・テスタロッサが参加したというもの。

実験結果は、成功したものの、望んでいたものには、ならなかった。

「アリシア・・・」

母のいる、間に少女を呼び止める、一つの声があった。

振り向けば、すでに、絵画として描かれている中年の男性、いや、その外見は、青年と呼べる顔立ちとなっていた男が、そこにいた。

「お父様・・・後、少しなのですね・・・ママが、お母様が目覚めるのは・・・」

「あぁ・・・深い苦しみの中に、彼女の罪は償われる・・・」

「本当に、罪は償われるのですか・・・?」

「そうだよ。しかし、なぜ・・・プレシアは私を信用しなかったのだ・・・これでは、かつての、私の弟子達と同じではないか・・・」

迎えにいくと、言ったはずでありながら、彼女は、あせり、アリシアの複製品を造り、人が、人為的に命を吹き込んでしまったということになる。

奇跡を見ても、奇跡を信じない人間はいる。

そう言うことなのだ。

プレシアは、奇跡を信じることが、出来なかったから、人造人間と言える、プロジェクトFから、フェイト・テスタロッサを作り出してしまった。

イエスは、涙を流しながら、プレシア・テスタロッサを、自分の妻を眺めていた。

細身の腕を伸ばした、イエスは、彼女の心に触れるかのごとく、優しく抱きしめる仕草をした。

アリシア・テスタロッサは、まだ、映像でしか見たことのない、トウヤ・テスタロッサを思い浮かべながら、妖艶な笑みを浮かべた。

すべての情報は、アリシアの頭の中に入ってきている。

もう一度、家族になるために、初めて、弟を愛するために、アリシア・テスタロッサは、ミッドチルダと言う血で汚れた世界を眺めた。

「罪無き者を殺す者を、いつまで、あの二人は、のさばらせておくのでしょうか・・・・・・」

アリシアは目の前に広がる、世界を眺めながら、一人呟く。

それでも、彼女は、バリアジャケットを身に纏い、外に出ることなど、しなかった。














「悠介さん・・・!?」

ヴィヴィオは、その光景を見て、驚いた。

表情を厳しくして、悠介の近くまで、駆け寄った。この男は、何をしようとしているのだろうか。

ヴィヴィオには、自虐行為としか、見ることができなかったのだ。

胡坐をかいて座っている、悠介の横には、無地の札のような紙が、数枚存在している。

指の皮膚を、八重歯の一番尖った部分まで付け、シャッと、勢い良く、引っ張り、指を傷つけていたのだ。

案の定、傷つけた、指の皮膚からは、鮮血が、ゆっくりと、顔を出していた。

先日の闘い以来、思い出した、一つの記憶。

その中に、呪符を使ったものがあった。

故に、それを試してみたくなり、作りだしたということだ。

「悠介・・・さん・・・?」

「ん・・・あぁ、ヴィヴィオ・・・」

ゆっくりと、傷口から出てきた血を悠介は、眺める。

ヴィヴィオは、大変なことが起きたと、悠介の血を、その舌で飲もうとしたが、悠介は、それを、片手で、制した。

そこで、自分が何をするのか、ちゃんと見ていろと言うかのようにだ。

悠介は、目をつむり、札のような紙を浮かび上がり、悠介の周りを回り始めた。

それと同時に、自ら傷つけた傷口から、ゆっくりと、出ていた血液は、勢い良く、噴き出て、龍のように、舞い上がり、また、その血液も悠介の周りを回り始めた。

悠介は、手で印を切った後、眼を、カッと、開き、唱えた。

「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤!!!」

悠介の周りに現れる、一つの魔法陣に似たもの。

悠介を太極として、八卦爻は描かれた。

ヴィヴィオの、全く知らないものが、浮かび上がる。

上記のものから、天、地、雷、風、水、火、山、月の順番に、後天八卦図は美しく描かれ、その順番に、札のような紙は、その位置に止まる。

龍は、悠介の上空に止まり、爆散するのと同時に、紙に降り注ぐ。

「こんなものかな・・・何年ぶりかに、やった気がする・・・」

悠介が、緊張の糸を自らほどいた時には、パタリと、8枚の紙が、全て、8枚づつ増えて、合計、64枚のものが、形成された。

ゆっくりと落ちた。

「何…?これ…」

八卦の呪符とでも言ったところだろうか。

六十四卦の組み合わせができるとでも言ったところだろうか。

天と月、火と水、雷と地と言った物の組み合わせだ。

全て使えば、それなりに、森羅万象を司る術も行うことができるとでも言ったところか。

「札…俺の武器の一つかな・・・?」

ある種、助ける物であり、殺すためのものであるといえるだろう。

助けることができないのなら、悠介は、殺す。

助けることのできない人間など、すでに、意味はないと考えているのだから。

まだ、あの二人のことを、良く知らないのなら、一番知らない自分が、あの二人の女を殺せば良いと思っている。

恨まれても、まだ、良く知らない悠介が殺されても、自分の中で、しょうがないことと思えるような気がした。

そう、言い聞かせていた。

ヴィヴィオに知られ、恨まれようとも。

「使えるの・・・?」

この札の目的を、ヴィヴィオは、良くわかっていない。

しかし、それでよかった。

汚い手段ではあるが、なのはとフェイトはしたいとして、誰かに殺されて、死体として見つかったと、言い聞かせる手段もある。

助ける事ができなければ、殺す札。

殺すか、どうするか、それを選ぶことができるのは、悠介のみ。

「そうじゃなきゃ、作らないよ。」

何もできなければ、殺すのみ。

せめて、苦しまないように。

それを、悟られないように、くしゃくしゃと、少し、雑にヴィヴィオの頭をなでた。

ヴィヴィオは、一回だけ、瞬きをした後に、優しく、それを受け入れた。

こう言った、頭の撫でかたは、ヴィヴィオにとっては、初めてであり、新鮮なものだったといえるだろう。

ずっと、こうしていて欲しいとさえ、思ってしまったが、悠介は、その手を止めて、ぐったりと床に寝ころんだ。

完全か、どうかは、まだ、思い出すことはできないが、手ごたえはあったと、悠介は思った。

あの、戦いの中で、思い出せた、自分のもう一つの武器のようなもの。

とはいえ、とある、大技を出すために使用するものだが。

「それより・・・血が…」

「止まっているけど?」

先ほどの、傷口を、ひょいっと、悠介が見せた。

そこには、確かに、なにも、流れていなかった。

傷口さえ、そこには、何もなかったことを表すように、完全にふさがっていたのだ。

「な・・・?」

「う、うん・・・」

ヴィヴィオに、それを見せた後、雄介は、少し、課にしみをこめた、微笑を見せた。

それは、自分が、人ならざるもの、ここで言う、人の概念を完全に、超えてしまっている、化け物のような存在であると、自負していたからだ。

この戦いが、終わった後、自分は、人間扱いを受けるのか、という、馬鹿なことを考えた。

「悠介お兄ちゃんは・・・いなくならないよね・・・?」

「ん?何が?」

全てのことをやり終えて、話していいタイミングだと思ったのだろう。

ヴィヴィオが、悠介の顔を覗き込むように、話しかけてきた。

「なのはママや・・・フェイトママのように・・・いなくならないよね・・・?」

一応、空気は読める。

戦場にいる人間は、いつ消えるか分からないが、この場合は、いなくならないといわなければならない状況なのだろうと、悠介は認識した。

「ま、大丈夫だろ?」

「うん・・・」

高町なのはと、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンが、敵となったことなど、言うことはできない。

邪魔をするならば、この札で、完全に、あの男ごと焼きつくそうとは思っているが。

「仮にさ…敵として、出てきたら、どうする・・・?」

「え・・・?誰が…」

「ヴィヴィオの母親・・・」

言った後に、しまったと思ってしまった。

しかし、舌打ちしたくても、確信を突かれるから、何もできなかった。

しかし、ヴィヴィオは、首をかしげたまま、何も詮索しようとはしてこない。

考えているのだろう。

自分の母親が、敵として出てきてしまった場合、どうして欲しいのか。

ぐるぐると、ヴィヴィオの頭の中が回り始めて、どうすれば良いのか、わからなくなり、回答できずにいた。

母親が、敵に回ることなど、考えたことはなかったのだろう。

しかし、今のヴィヴィオの場合、なのはとフェイトが、敵となったことを知ってしまった時、どうなってしまうのだろう。

考えてはならないと思った時には、ヴィヴィオは、すでに、そのことを想像してしまう。

駄目だと、自分の心に言い聞かせても、そのようなことを想像してしまったのだ。

最悪の状況だと思ってしまったが、

「そんなことないよ?」

精一杯、悠介の言ったことを否定した。

自然と目頭が熱くなり、自分の頬に、熱い雫が流れる感覚が、走った。

自然と流れ出た雫は、掌に落ちて、ヴィヴィオは、初めて、自分が涙を流していることに気づく。

悠介は、その様子を見て、しまったと思い、急ぎ、起き上がり、ヴィヴィオを抱きしめた。

「ごめんな・・・変なこと聞いたな・・・」

「うん…」

否定は、しないのか。

子供は、どこか、残酷だなと思いながら、必死に、ヴィヴィオが泣きやむまで、抱きしめていた。

「なに、女の子泣かせてんの?」

「馬鹿なこと聞いただけ・・・」

ゆっくりと、振り向けば、ティアナ・ランスターが、そこに立っていた。

ゆっくり近づき、ヴィヴィオの頭を撫でた。

ヴィヴィオを、こうして、あやしながら、ティアナは、悠介に念を送った。

『全く、だめね・・・』

『男の方・・・?』『両方。ヴィヴィオを泣かしたあんたと、逃げてるほう・・・』

『うっ・・・ごめん・・・んで、逃走しているのは、音もなしに消える…か。』

『えぇ…それに、ここ最近らしいの…白いバリアジャケットの二人組は…』

『高町なのはと、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンの二人だろ?』

『確証じゃないわ…』

『確証も何も、バルディッシュとかいう、デバイスを使っているんだったら、そうだろう?』

『まぁ…』

『やらなきゃ…ダメ…だろ?』

『えぇ…』

受ける恨みは、全て、自分が受ける。

わずかな会話の中で、ティアナは、悠介の覚悟のようなものを感じ取っていた。

しかし、そろそろ、怨念が、漏れ始める時期であるとも、思っていた。

『怨念が、漏れる…?』

『前に言ったろ・・・要領は、無限じゃないってさ…』

『あぁ…そういうことね…』

無限じゃない、容量は、何時か漏れる。

今まで、漏れなかったのが、不思議なくらいだ。

しかし、それでも、

『なんかの切欠で、漏れる事はあるさ・・・例えば、精液を出すとかね・・・』

『そんな、簡単な事で・・・?』

『あぁ・・・』

しかし、四体もの人形を作れるほどだ。

余程の怨念を自分の中に入れているというところだう。

見境なく、殺すのは、防がなければならないが。

あのとき、竜の業火に焼かれて、死ぬはずだった。

しかし、あの男は、生きていた。

あれほどの業火。

何故、何故、生きていられることが出来たのだろう。

『なぁ…』

あれほど、苦しみ、キャロに怨念を植え付けたとはいえ、あれほどの業火を掻い潜ることは難しい。

ましてや、辺りには、水辺と言う場所などありはしない。

あの業火を消すことなど、不可能。

しかし、次に対峙した時は、男は、丁寧に、スーツまで直して、無傷状態で、悠介達を襲った。

あの場に、二人いたとでも言うのだろうか。

ゾンビなら、それなりの、独特のオーラを感じる。

しかし、あの男は、ゾンビではなく、そのまま、人間としての、あの男だった。

少しばかり、気配は変わったように見えたが。

魔法なら、何でもありと言うことなのだろうか。

ユーノ・スクライアの死から、殺しの手段を選ばないように、なってきた。

ただ、確実に、人は、マリアージュへと作りかえられているというのが、事実であり、その討伐を行っているのが、別部隊の人間であるということだ。

『魔法は、何でもありなのかね?炎を消すことも…』

『そうね・・・取りあえず、規格外だからね…』

多種多様の術を使う故に、捕えようや、形がない。

さらには、高町なのはの魔術の真似事まで、行ってしまうのだから、やろうと思えば、フェイトの魔術だって、使うことができるだろうと思った。

おそらく、使わないと思うが。

相当、フェイトのことを憎んでいたようだ。

『ま、どの道…あの二人って、恨まれてたし・・・』

『高町なのはと、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン?』

『いちいち、フルネームで言わなくたっていいじゃない。』

その二人の名前を呼ぶとき、大抵、悠介はフルネームで呼んでいる。

別に、友人でもなんでもないし、悠介の場合は、完全に敵であるのだから、どう、呼んでも構わないが、ティアナの場合、言葉にできない異様感のようなものがあった。

やはり、かつての仲間が敵になるという現実に、違和感を覚えてしまっているのだろう。

『とりあえず、それよりさ・・・何で、恨まれてたの?』

『似たようなものよ。』

理由は、簡単なことだ。

高町なのはに、片思い、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンに片思い。

二人が選んだ相手は、お互い。

そうなれば、なのはに片思いしていた人間は、フェイトを恨み、フェイトに片思いしていた、人間は、なのはを恨む。

『それって、結局、高町なのはが誰とでも結ばれていたら、キレるってことじゃん。』

『うぅん・・・それ以上にね・・・女に負けたって、片思いしている人たちは思う訳。』

『あぁ…屈辱な訳なのね…?敵わない、女への嫉妬と言うわけだ。』

そうなれば、あの男が、フェイトを嫌っていた理由も、良くわかる。

『くっだらねぇな・・・・・・そんなんで、あんな術に、手ぇ染めるんだ……』

ある種、人間の愚かさを、悠介は知ったような気がした。

そんな、下らない嫉妬のために、最悪の術に手を染める。

嫉妬のために、好きな女のために、最悪の術に手を染める。

愚かだと、思うしかなかった。














「冷静になれませんね・・・」

「鎮圧しようと思ったときには、犯人には逃げられてますからね・・・」

「まるで・・・亡霊ですね・・・」

「コーヒーです。」

「ありがとう。」

ギンガが運んできた、コーヒーを受け取り、砂糖とミルクを入れた後に、持っていたボールペンを錬金術でスプーンに変化させ、そのまま、かき混ぜた。

一瞬、ギンガは、その光景に驚いた。

プラスチックで出来ていた、物が、瞬時に、金属になったからだ。

「珍しいかい?」

「ア、はい・・・」

「ママの残してくれた、遺産の一つだよ。魔法は、物質変化は出来ないからね。錬金術の場合は、物質を自在に変化させて、それ自体を武器とする。魔法より、瞬発性はこっちの方が早い。」

「なるほど・・・」

「しかし、本当に、凄い魔術師だったんだな・・・プレシア・テスタロッサは・・・」

「当然ですよ。ママを超える魔術師は、いない。」

真髄しすぎている。

ギンガは、ただ、尊敬の念を込めてみていたが、クロノはマザコン気質が、完全に抜けていない、燈也を心配する。

そして、話を戻した。

「捕まえられないんですか・・・?」

「まぁね・・・この事件が終わった後に、何も起こらなければいいと思ってしまうよ。」

その、人を配置させても、結局は、逃げられるか、殺されるの繰り返しとなる。

すべて、後手後手に回ってしまう。

「あぁ・・・わかってはいるんだけどね・・・」

「そろそろ・・・僕を、前線に出してくれませんか?」

実際、エースの温存と言う名目のもと、上の人間は、燈也を前線に出したがらないのは、燈也と言う存在を嫌っているからだ。

そもそも、六課を動かす事自体を、良く思ってさえもいないのだ。

高町なのは、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンの二人がいなくなり、後見人であるクロノは降格し、さらには、その歯車となった。

このことによって、ようやく、扱いやすく、自分の部隊に取り込めるかと思ったときに、リンディ・ハラオウンの鶴の一声によって、どの上の人間の部隊でもない、再び、独立部隊として、形成される事になった。

先の事件によって、テスタメントの能力の封印は、もちろんの事、テスタメントと言う、危険因子は、極度に酷い戦場ではない限り、出撃する事を禁止された。

悠介は、以前、テスタメントとして、報告されていないし、ティアナは、中途半端な時期に覚醒した故に、テスタメントとして扱われていないものの、隠し通すために、その能力は封印された。

クロノは、完全覚醒していない故に、動ける筈なのだが、魔導師ランクが、オーバーSクラスの物すら、戦闘時には、相当なハンデをつけられた。

しかし、リンディからの根回しによって、人事に関して、何とか、口を入れられずに済んだ。

それが、今、スバルや、ティアナ達が残っている証拠である。

さらに、燈也を嫌う理由は、反時空管理局的な考えを持っているのは、全ての人間に伝わっている。

本人に、その気は無くとも、反乱でも起こされたら、困ると言う、事だ。

すずかが、此処におかれたのも、上記で述べた理由と同じ物と考えても良い。

独立部隊でありながら、最も、運営が難しい部隊として生まれ変わってしまったと言う事になる。

そして、一部からは、嫉妬の対象として見られている部分もあることが、表舞台に活躍させずに、裏で、勝利に導くような扱いを受けてしまっているのだろう。

ガーディアンと呼ばれた、かつての、機動兵器。

レギオンを使用して、非魔導師にも、使用できるような、画期的な機動戦闘兵器であったが、それは、人の体をレギオンとしてしまう欠陥機であり、ファントムセイヴァーすら、倒す事の出来なかった兵器だった。

さらには、あろうことか、レギオンにまでされてしまい、報告されてはいないものの、ティアナ・ランスターに破壊された。

また、機動兵器ガーディアンシリーズは、レイディーンを超えるべく生まれた兵器でありながらも、ライディーンを凌駕するどころか、比較にもならないほどに、脆弱な機体であった。

さらに、あの事件で、レイディーンは更なる進化を遂げてしまったのだ。

レギオン如きが、追いつける機体では無くなってしまった。

凍結された、非魔導師用戦闘兵器開発は、凍結された。

「そういえば、無限書庫・・・今、大変みたいですね。」

「あぁ…優秀な司書長を失ってしまったからな・・・」

ユーノ・スクライアの死亡は、まだ、完全ではない、無限書庫に支障をきたし、司書一人の仕事量が倍増してしまった。

燈也達は、ガフを利用しているが故に、そこまで、困ったことはない。

しかし、無限書庫二資料請求している上の人間たちは、情報到着まで、一ヶ月の遅れを強いられる状況となってしまった。

「せめて、斬られた腕を、こちらで回収できれば良かったんですがね。」

「そうだな・・・」

しかし、回収する事は、かなわず。

「妹さんが、敵に回りましたね。」

「お前も、姉がな…」

「姉とは思っていない。」

こうなる場合は、予期していた。

故に、そうなった場合は殺す覚悟は、とっくの昔に決めていた。

一度は、殺そうとした人間なのだ。

「あんたも、非情にならないと死ぬよ…?」

これは、一種の警告だった。

敵の前で、非情になりきれない、非情になることのできない、クロノ・ハラオウン。

今までは、それでもありだったが、これからは、それは、許されない。

「何故・・・これから、殺戮の時代が…」

「きますよ。大きな、全ての世界を巻き込んだ、戦争が。」

悠介が、スサノオとして降りてきたときには、全てが、起こっている。

さらに、ファントムセイヴァーの襲来。

レギオンに囚われた、パイロット。

「そうか・・・」

望みたくなくても、望んでしまうことがある。

既に、綺麗事だけでは、片付かない。

「忘れてはいないでしょう…ティーダが死んだ、あの世界のことを…」

「覚えてはいるさ…」

紛争、戦争などが、当たり前の世界と言える。

止めるために、管理局は、介入。

人に絶望した、レギオンゴッドの覚醒。

エンゲージでの撃破。

しかし、その後、結局、戦いが終わることはなかった。

管理局が、止めるために入った戦いは、結局、意味などなかった。

見方が殺されそうになった中で、その業を背負い、燈也は、守るために殺した。

クロノは、そんな燈也を見ていることしかできなかった。





『覚えていてくれたかい・・・・・・?燈也……』

『!?』

気付けば、意識が引きずり込まれていた。

そこは、いつものデスクではない。

そこは、亜空間。

いや、あの時、ティーダが死んだ場所に燈也はいた。

目の前にいたのは、知らない人間ではない。

ティーダ・ランスターだった。

「覚えているだろう・・・」

「ティーダ!?なぜ、お前が…!?殺されたのではないのか!?」

「そうだよ…僕は、一度、殺された。」

生きていたんだ。

「燈也・・・・・・」

「何故・・・・・・」

「俺は、生きているからさ。」

生きている。

いや、

「蘇ったとでもいうべきか・・・」

蘇った。

「ティアナは、元気かい?」

「あぁ・・・・・・」

馬鹿の一つ覚えのような返事しか出来なくなっていた。

目の前にいる、ティーダと言う存在の前に、ただ、単純な事しか、こたえる事が出来なくなっていた。

ただ、目の前にいる、ティーダの事を、信じることが出来なかった。

創造の神の力でも使わない限り、人は蘇る事など、出来ない。

ましてや、この世界であれば、アルハザードにでも行かなければ、蘇生術など使う事は出来ない。

「お前は、あの後・・・」

確かに、死んだ姿を見た。

魂は、回収され、アルハザードへと向かい新たな肉体を与えられ、魂は、天の国より帰還し、ティーダ・ランスターは蘇生された。

そう、目の前にいる、ティーダ・ランスターは語った。

蘇生した相手は、創造の神であると、語る。

「信じられるか・・・」

母プレシア・テスタロッサが、捜し当てた場所。

一度、この世界から、数年たった後の世界から、プレシアは確かに、アルハザードへ行ったと言う事、そして、不治の病は完全に完治した事も。

「さて・・・トウヤ・・・こっちにおいで。」

「何を・・・」

「すずかと一緒に、僕らのところにおいで。」

差し伸べる手。

「お前を・・・ティーダと信じていいのか!?」

かつての、ティーダの死んだ世界。

延々と、流される、ティーダの死んだ瞬間。

思い出したくは無かった。

このようなことなど、思い出したくなかった。思い出せば、思い出すほど、あの時、死んだ、ティーダがどのような扱いを受けたか、嫌でも思い出してしまう。

そして、執行部という名の、ロリコン部隊が、ティーダより実力も無いくせに、ティーダに何を言ったのか。

死者を愚弄するような、物だった。

「信じられないのは、無理ないね・・・ただ、俺達は、そろそろ、動き出す。」

「動き出す・・・?何を、するつもりだ・・・!!」

悲しげな表情をしながら、ティーダは、燈也を見つめ、燈也は、何をするのか解らないティーダを見つめていた。

「今は・・・何もいえないよ・・・」

「どうして・・・ティーダ!!」

「君の大事な人も待っている・・・だから・・・」

それだけで、行く訳には行かなかった。

大事な人というのは、母である、プレシア・テスタロッサの事だろう。

「何故・・・では、何故、お前が来た・・・?ティーダが・・・ママが、生きているのなら、ママがくるのではないのか!?」

「今、あの人は・・・目覚めてはならない状態にある。」

ただ、それだけだった。

「どういう・・・!!」

そのとき、燈也の目の前が、完全に、さえぎられた。

黒い、霧のような物が、さえぎったのだ。

「燈也・・・何れ、お前を愛している人が、迎えにくる。そして、此れの元凶を止めてくれ。私の主は、罪無き者を殺したことを嘆いている。」

「主とは、誰だ!?」

帰ってこない。

「ティーダ!!」

応えない。

「ティーダ!!!」

完全に遮られた。

そして、現実の世界に戻ってきた。

「燈也・・・?」

「いえ・・・何でもありません・・・」













「ん・・・!?」

隣に、安らかな寝息を立てているしかし、異変が起こったのは、自分。

一瞬、おそる、おそる、掌を見てみる。

しかし、見ようと思えば、思うほど、心臓が早く鳴る。

気持ち悪くなりそうな感覚に、襲われた。

既に、冷や汗が流れているが、何を、此処まで、おそれる必要があるのか、解らなかった。

しかし、好奇心が、見てしまう。

「っ・・・!?」

「娘にあわせて・・・・・・」

「っっっっぅぁ!?!?!?」

掌に存在していたのは、人の顔・・・人の顔が、浮かび上がっていた。

「何だ・・・此れは・・・」

払うような、仕草をした後に、汗が、ドバッと流れ出る。

しかし、そこまで、汗が出るのは、異様だと、思い、汗を拭き取ろうと思ったときに、その汗から、また人が、人の顔が流れた。

ドロッと、したような流れ方で、呻き声を上げながら、人が、流れ出ていた。

流石に、その状態に、驚愕する。

「ねぇ・・・・・・返して・・・・・・」

「ママに会いたいよぉ・・・・・・」

流れ出る、自分の液体や、体を通して、人の顔となりて、男に伝えていく。

「ママに会わせて・・・」

「子供の誕生日だったんだ・・・」

「ねぇ・・・此処から、出して・・・」

「暗いよぉ・・・」

「恐いよぉ・・・」

「オギャぁ!オギャぁ!」

殺したのか。

生まれてきたばかりの、子供を。

ふと、鏡に移った、自分の顔を眺めると、自分の顔ではない。

自分の顔が、赤ん坊のような、顔になっていることに、恐れを抱く。

さらに、頬は、まだ、幼い少女や、少年の顔が、無数と言えるほどにまで、浮き出ていた。

「ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

あまりの、恐ろしさに、悲鳴を上げてしまう。

ソレは、そうだろう。

ふふ・・・だって、殺した怨霊が、形となって、術者に訴えているのですから。

殺した報いは、受けてもらわなければなりませんからねぇ。

「なのは・・・なのはぁ・・・!!!」

男は、隣で眠る、高町なのはに、訴える。

しかし、彼女は、何も応えなかった。













「漏れた・・・・・・」

「な、何がよ・・・・・・」

ティアナが、その意味を履き違え、悠介の下半身を見た。

しかし、漏れてもいないし、臭ってもいない。

「いや・・・お前・・・って、そうじゃない。」

ヴィヴィオは、既に、寝かしつけてある。

「死霊たちが・・・奴の体から、漏れ始めている。気を張ってみな・・・伝わってくるさね。」

悠介は、既に、相手が何処にいるのかと言う方角まで解るかのように、その方角を見ていた。

ティアナも、気を研ぎ澄まし、感じてみる。

あぁ、確かに、漏れ始めているのが解る。

出ているのではない、抑えきれずに、漏れているのだ。

ソレも、大量に。

「どうして・・・?」

「精液でも出したんだろ。」

「そんなもんで・・・?」

「精液の中には、精子がいるっからねぇー・・・」

ある種、生命の集まりと呼べるものを、大量に出したのだから

「オーラルでも、生でもね・・・出した分だけ、本性をあらわすよ。」

悠介とティアナは、同時に立ち上がり、迎撃準備に入るために、クロノ達の元へと向かった。

攻撃開始・・・

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