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ACT-Ⅲ「セカイ」

何か、精神的に・・・病んできた。
あ、元からか。


戦場で、人が死ぬのは当たり前のことだ。

解っていても、受け入れられないことはある。

十数年、一緒に戦ってきた人間が、いなくなれば、当たり前のことと言えるか。

故に、深い感情のような者を感じていたから、行方不明になった時は、精神的にかなりのダメージを受けた。

草薙の剣を鞘に収めた状態で二人に話しかける。

戦場を渡り歩き、戦う者。

其れが、騎士と言うもの。

目の前の騎士と言う者に、悠介は違和感と言う物を覚える。

人の死を、見てきたのではないのか。

それを、戦友を失ったことで取り乱す。

自分より、長く生きているのではないのか。

目の前にいる女は、正に、其れだった。

そして、騎士であるのなら、人の死は見てきたはずなのに、取り乱すと言う行為。

気持ち悪さすら、覚えたほどだ。

自分は、どれほど失ってきたのだろう。

悠介の中で、その疑問が浮かび上がる。

しかし、何時までも、其れを引きずっているのは、悠介にとっては馬鹿であるとしか、思えなかった。

引きずっても、表に出さずに戦うのが、俺達なのではないのだろうか。

「シグナムさんだっけ?」

「あぁ。そうだ。」

「あんたは、ヴィータ。」

「さっきも、そういった。」

話すつもりではあったが、目の前にいる二人と対峙する。

「騎士道精神の中に・・・色々とあるけど・・・俺に対する態度は、そんな感じじゃないし・・・いやなんだ・・・やっぱ、代わりって。燈也さん達は・・・認めているようだけど。」

淡々と、悠介は話す。

「いやなんだよね。そこには、あんた達と付き合いの長い戦友がいたから・・・」

しかし、戦場に出ていれば、

「人は死ぬんだよ?何が、不満なんだ。解っている筈じゃないのか?そんなんで、あんた達の言う精神をかき乱す。やっぱ、違うんだよね。」

悠介は、首の骨を鳴らした後に、柄の部分を持ち、抜刀の体制に入った。

「貴様の得意な技は・・・抜刀か?」

「多分・・・」

「そして、あの衝撃波・・・」

しかし、それは悠介の全てじゃない。

「それだけじゃないさ。」

そう。

全てではない。

それは、使っていないだけ。

「だろうな。」

「んじゃ、やろうか・・・?現実を見れるはずの人が・・・現実を見ない。そんな、大人のために・・・さ。」

その一言で戦闘が開始される。

鞘を剣に収めたままでそのまま姿を消した。

ヴィータとシグナムもそれにあわせる。

「二体一では、彼はいくら戦闘力が高くても・・・勝てはしない。」

「アギトとの、ユニゾンもある。」

クロノ達は戦闘を見て、そう考える。

シグナムはレヴァンティンを構えて、刀身に魔力を込めて炎を纏わせる。

「その技・・・受けてみるか・・・」

ヴィータの方も一つのアクションをとってから、グラーフアイゼンを構える。

そして、二人が悠介に突撃。

紫炎一閃、そしてラケーテンハンマー。

「痛そうだ。食らうのはやめよう。」

ぎりぎりまで、悠介はそれを見切ろうとする。

殺すために、来るだろう。

殺すつもりはなくても、そのオーラから、その気が無くても殺せと言っているような気がした。

ヴィータ達は気づいてすら、いないだろう。

その気がなくても、殺すつもりはある。

「解るんだよ…そういうのさ・・・!!」

炎を纏った剣と、物騒な鉄槌。

面白いと言える。

「結局、騎士道精神とか言ってるやつらでも・・・殺したいんだろ。」

本人たちは、殺すつもりはない。

それでも、あの時、「くだらない。」その、言葉で、どこか、殺意が湧いたのだろう。

「いつまで、抜刀しない!!」

「勝負を捨てたか!?」

「違うんだな。」

襲い掛かる。

紫電一閃。

ラケーテンハンマー。

悠介はそれを上昇するだけで避ける。

異常なスピードで馬鹿みたいに、こっちに突っ込んでくる。

急に止まることはできない。

うまくいけば・・・

「がぁつ!?」

「うぁ!?」

それを証明するように、悠介はあざ笑うかのように二人を見た。

「あぁあ・・・歴戦の人だと思うけど、無様だね。」

「っ!?」

「あんた、騎士道精神がどうのこうのって人だろ?たぶんさ。でも、そういうの・・・流行んないよ?」

燈也は、この言葉から、自分以上に死を見てきた人間だと、悟ることができた。

どれ程、死を見てきたのだろうか。

燈也の中で、興味というものが湧いてくる。

ある種の、警告なのだろう。

「貫くのは結構・・・でも、死んじゃうよ?」

「死ぬ・・・?」

シグナムは、かつての騎士道精神を通したばかりに、無残に殺された一人の人間を思い出した。

「死ぬよ・・・?相手は、そんなん、貫いてくれないんだ。殺す時に殺す。それが、人だよ・・・」

その言葉は二人を困惑させた。

何かを、言おうとした。

しかし、何を言おうとしたのか、解らなかった。

「騎士道精神なんて、お遊びだよ・・・」

「君主に遣えるのが・・・愚かだというのか!?」

シグナムにとって、これを否定されるのは、いや、ヴィータにとっても屈辱と言える怒りに燃えるほどの感情だ。

しかし、帰ってきた答えは、そういうことじゃない。

「恩を感じているなら、別って考えるよ。それでさ・・・俺は、戦場で、通じない。正々堂々は、どうなのかなって、こと。ま、あんたたち二人で俺と闘っているから、そうじゃないけど。それだけだよ…わかるだろ?ま、あんたたちの技、みせてもらったよ。んじゃ・・・行くよ?」

悠介は飛行プログラムを起動させ、一気に飛び立つ。

下半身の一部に衝撃が来る。

普通なら、衝撃が来る筈。

しかし、それは叶わない。

あまりにも、悠介の速度が速すぎたのだ。

同士討ちをしようとしていたが、ギリギリで魔力を全て消した。

だが、付けた勢いは止まらない。

そのまま正面衝突するかと思ったが、二人は、お互いを受け止め、それを許した。

「ちっ・・・!?」

「また・・・!!」

二人は悠介を逃げた方向を見た。

しかし、そこには何もいない。

ただ、美しい蒼い空が広がるのみ。

「悠介は・・・アレを狙っていた・・・?」

「そう、思うよ。」

何もいないのだ。

「どこを見ている?」

どこからか響く悠介の声。

「遅いよ・・・」

その時、悠介は剣術を思い出す。

それこそ、我流でありながらも、戦場を駆け抜けてきた証。

「んじゃぁ・・・やらしてもらう・・・!!」

悠介のスピードを合わせて、相手の間近で抜刀をし、雷のごときスピード、そして魔力を雷の力に変換させ、斬り付ける。

だが、それは奥義というわけではない。

「ちっ・・・舐められたものを・・・!」

だが、気付けば、悠介はシグナムの懐に入っていた。

「じゃぁね!!」

しかし、悠介はわざとスピードを遅くした。

そのお陰もあいまってシグナムはかろうじて防御した。

「何故、手加減した・・・!?」

「意味なんて、無いよ・・・やめよう?」

「一々・・・止めるために来るのか・・・」

「憑依とか、そういうのあるっぽいけど・・・?」

アギトとのユニゾン。

日本の言い方で言えば、憑依・・・

だと、悠介は思っている。

しかし、それが、悠介にはわかっている。

悠介は、そのままシグナムを蹴りつける。

一瞬ひるんでから、辺りを確認する。

悠介は、ヴィータとの戦いに向かう。

「なめんな!!!!」

「また、同じタイプの技・・・?」

「悪いかよ!!!」

ヴィータはそれでも、発動させる。

「別に、悪くは無いけど・・・さ・・・」

悠介は、即座に抜刀をし、持った腕を右に構えその刀を中指、人差し指の間に入れる。

その独自の構え。

刀を牙のようにくらいつかせる攻撃方法こそ。

牙突。

突きの攻撃であれば、西洋の剣など一撃粉砕できるほどの威力を可能とする。

日本の刀の攻撃の中で最強に匹敵する必殺技である。

「ふん、そのか細い刀でテートリヒ・シュラークが止められるか!!」

「か細い・・・か。まぁ、そう見えても仕方ないか!!」

悠介は牙突を発動させていた。

馬鹿にした口調ではあるが、決して本心では馬鹿にしていない。

だから、ラケーテンハンマーを真に受ける為、狙いを定め始める。

「行くよ!!」

突撃。

その刀の速さ、神速の如し。

唸る草薙の剣。

「弱いよ・・・!!」

光り始める、草薙の剣。

技名など、会って、無いような物でありながらも、悠介の使う技の威力は高い。

何れ、技の名前を、叫ぶ日は、来るのだろうか。

ただ、目の前にいる少女に、悠介は、弱いと言う。

この言葉に、ヴィータはかつての敵を思い出す。

アヤ・スカリエッティ。

「くらえぇぇぇぇぇ!!!!」

ヴィータは叫ぶ。

しかし、悠介は言葉を発さない。

一言もだ。

何処か、雰囲気が似ているような気がした。

屈辱に近い、やられかた。

全力をかけたのにも、関わらず、勝利する事が出来なかった。

一撃で、倒された。

「冷静さを欠いたら、勝てる戦いにも勝てない・・・か。」

何処か、醜い力を合わせた、鉄槌。

其れが、悠介に迫る。

狂牛かのように。

どこか、アヤに似ているが故に、許せないと言う部分もあり、この手で殺したいと言う、欲求が、知らず知らずにヴィータの中で生まれてくる。

悠介は何も言わずに、抜刀の形をとる。

近づく、鉄槌。

速さは、常人の目には映らないほどのスピード。

「うらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

悠介は、ヴィータの掛け声と同時に抜刀した。

一つの刃と一つの鉄槌は正面衝突した。

その二つが爆発する。

ヴィータは、その力から、押しているようにも見えた。

悠介の剣術・・・

それは、自らの中にある全ての力を利用し、それを、刀の独自の技と組み合わせる。

燈也はそのように、悠介の型を見た。

「その鉄槌は・・・悪いけど、壊すよ!!」

「何!?」


バキっ・・・!!


そのままクラーフアイゼンに亀裂が入る。

「なん・・・だと!?」

その時、クラーフアイゼンはコアを除いて全てが破壊された。

いや、見事に砕いた。

ヴィータの横顔に、破片が飛び散る。

「安心しろ。コアは除いた。」

その目は戦士・・・

その目は、人斬りといってもいいだろう。

人斬り・・・

それこそ、今の悠介という男に相応しい言葉だろう。

ヴィータが、戦闘不可能と確認した時、次の敵、シグナムを見る。

「負けね。」

「たかが、突撃技だろ・・・?」

「普通の突撃技なら、あんずるが安し。」

「どういう・・・!?」

「あの攻撃は交わされたときをも想定され、唐竹、袈裟斬、右薙、右斬上、逆風、左斬上、左薙、逆袈、刺突。全てに対応できる。」

「そんな技・・・」

「聞いたことも無いだろうな・・・」

それこそが、人斬りとしての悠介。

「そして、普通なら、俺はあんたを殺している。あんたの負けだよ。」

戦意喪失。

「でも、あんたが冷静だった、俺は負けてたよ。」

それだけ言い残した後、最後の相手と悠介は戦う。






「流石は、草薙の剣かな・・・」

「傷一つついてない・・・?」

それが、草薙の剣が、他の刀剣と違うと言う証だろう。

クラーフアイゼンを破壊し、刀に傷一つもついていない。

どれほどの強度を持っていても、クラーフアイゼンを破壊しても、傷一つ付いていないのだ。

「流石は懐園剣の親だね・・・」

燈也は、素直に草薙の剣を賞賛する。

しかし、はやてには、信じる事が出来なかった。

草薙の剣と言っても、普通の刀にしか見えないからだ。

特殊な加工をしているとも思えないほどに、普通に見える刀。

さらに、ヴィータをたった一つの技で倒す。

異常なまでの光景。

この場にいるヴォルケンリッターを知っている普通の魔導師ならば、想像も出来ない自体だろう。












「さて・・・次は・・・」

悠介はシグナムを見る。

シグナムは戦慄を覚えていた。

悠介という存在ただ一人に。

「久しぶりだ。お前の様な人間に出会うのは。フェイトほどの。」

「誰でも良いや・・・少し、冷静になりなよ・・・」

その雰囲気は、今までのふざけていた悠介ではない。

人斬りとしての悠介がそこにいる。

「私は冷静だが?」

「そう言っている奴が、一番恐いんだ・・・解れよ。」

その悠介からは、全てのものを戦慄させるオーラを発する。

先ほど戦ったヴィータでさえもだ。

燈也

すずか

はやて

クロノ

シグナム

ここにいる人間が、ただ、悠介という一人の存在に。

此れが、スサノオなのか。

本人にとっては、無自覚に其れを発動させている。

このオーラを発するのが、無自覚と言う事に、恐れを抱く。

「仮に、此処が戦場だったら、もう、死んでんだよ・・・!!解るだろ!?人は死ぬんだよ!!戦場に出れば、絶対に生きて変えれるって補償は無いんだ!!」

「解っているさ・・・それでも・・・!!」

「馬鹿じゃないのか!?」

悠介は、騎士と言う名の、生き様を素直に馬鹿と評価した。

死んだら、何もならない。

シグナムを馬鹿と評価する。

そのようなことを言う人間は彼女の人生上いただろうか?

「生きているとすれば、そういうのは侮辱に過ぎないからなの?」

「どうだろうな・・・!!」

「謝れば、言い訳?だったら、謝るよ。やめよう・・・戦いたくないよ。冷静さを欠きすぎている・・・それじゃぁ、どんな相手にだって、あんたは勝てやしない。」

解る。

シグナムのような人間が、辿ってきた道を。

この悠介の前で、シグナムのような人間は、全て戦場で死んできた。

シグナムは、剣を持ち、瞳を閉じる。

戦う事によって、思い出される。

戦場で、一時の感情によって身を任せ、自滅していった人間。

戦ってきた二人にとって、なのは・・・フェイトと言う二人を失った事は、相当なダメージだったのだろう。

戦いから、導き出せる応えは一つだ。

「あぁ・・・戦いって事が愚かな行為。だから、止める・・・漫画じゃないんだよね。」

解るけど、目の前に止める人間はいないし、そんなことが出切る人間だっていない。

「誤るよ。ごめん。やめよう。」

こうすれば、収まるだろう。

こう言えば、戦いは終わる。

少なくとも、身内同士の馬鹿な戦いは。

「やりにくいな・・・」

「刃を持つものなら、一度は戦いたいと思わないのか?」

「んなわけないじゃん・・・」

戦いが、好きなわけではないのだ。

じゃぁ、何で戦っている。

「自分が、わからなくなるな・・・」

だから、

「やめる・・・」

シグナムに平気で、後ろを、背中を見せた。

流石に、シグナムも剣を治めた。

これ以上、戦いを望んでいない。

「戦いは・・・望んでいない・・・か。」

ある種、認めることは出来た。

しかし、それ故に、目の前にいる男と戦ってみたくもなる。

「なら・・・私の願いを聞いてくれないか?」

「そんなに・・・戦いたいの?」

乗る気ではない。

しかし、ここで、戦わなければ、ずっと言われるような気もした。

「解った・・・」

「うむ・・・」

対峙するする二人。

「本気で・・・いかせて貰う。」

その時を待っている。

ひたすらだ。

ただ、ひたすら。
「シグナム、あたしは必要か?」

リィンフォースと同じサイズの者が、現れた。

「良いよ。もう、俺と戦いたく無いようにしてやるから・・・!!」

「アギト!!!」

アギトは、一つのアクションをとった後に、シグナムがユニゾンを開始する。

青紫基調の色合いの服と金色の篭手、薄紫の目で彩度の低いピンク色の髪になる。

また、背中に炎の羽が現れる。

その時のシグナムは、今までのものとは違う。

「あんたに負けるつもりは無い。」

「それは、私もだ。」

シグナムはレヴァンティンを構え始める。

ただ、このときは、二人には絶対的な差があった。

その差は、感情という名の差である。

悠介の場合、如何なる状態でも、平静。

それ一つを通すは、全ての心を見通すが如く。

その心は一言で表すならば・・・

明鏡止水

一方のシグナムはその心、烈火の如き凄まじく。



その一言成り。

荒ぶる炎は見えるものも見えなくする。

全てだ。

この差によって、勝負は決着が付く。

「燈也、どう思う・・・」

「強い・・・恐らく、シグナムに勝ち目は無い。」

「アギトとユニゾンしてもあの余裕か・・・」

それでいて、無傷。

悠介は、無傷であるのだ。

「全力を持って、受け止めてもらうぞ!!」

シグナムは冷静さを失っていることに気付かない。

ある種、喜の感情によって、勝負の歓喜。

ただ、一つしか見ていない、喜びは、炎のように見えるものを見えなくする。

そのままレヴァンティンで悠介を斬り付けに行く。

「それが、あんたか・・・」

簡単に剣撃を交わす。

さらに、抜刀までしていない。

「少し、落ち着け。冷静であるがゆえに、あんたは強い。しかし、今のあんたはそうじゃない。」

「一目で見極めたのか・・・」

その洞察力。

全て、その洞察力はシグナムの本質を見抜く。

正に、ただの百戦錬磨ではないという証拠である。

過去の戦歴に何があったのか。

それだけは謎である。

しかし、これまでの戦闘からして、相当な経験がつまれていることがわかる。

記憶が無いとは言え、相当な実力だ。

「何をしている?冷静にならなければ、あんた、戦ったら、負けるよ?」

その言葉と共にシグナムは心の中で冷静さを取り戻す。

「やれやれ、まさか、敵に諭されて自分の戦闘スタイルを取り戻すとはな・・・」

「此れで・・・わざと負ければ、満足するか・・・」

悠介はボソッと、呟いた。

悠介は、抜刀術の態勢を取る。

静かに。

ただ、静かにだ。

冷静さを取り戻したシグナムは正眼の構え。

二人は微動だにしない。

その二人から流れる戦闘のプレッシャー。

ユニゾンをしているとはいえ、シグナムの気迫もかなりのものだ。

悠介は、其れを受け流すかのように。

日本古来の武剣、草薙の剣。

一方の剣型のアームドデバイス、炎の魔剣「レヴァンティン」。

それは何を齎すのか。

否、悠介、シグナムには何も齎さない。

ただ、お互いに期を待っている。

どちらかが、斬られるのを。

間合い。

シグナムは悠介の間合いの一歩外なのだ。

それは、剣の結界。

それは、どういう距離であっても。

悠介にとって、シグナムの強さであれば、どの距離でも対応できる。

それは、

「思い出した・・・縮地だ。」

「縮地?」

「フェイト以上の超超高速移動って所だろ?」

縮地とは、仙人の特殊能力の1つで、短時間で長距離を移動する術。

日本武術において生まれた用例でもあり、瞬時に相手との間合いを詰めたり、相手の死角に入り込む体捌きを指して、先程の縮地から同じ呼び方をしたもの。

異様なまでの速度を有している。

と、言う事だろう。

その使い手がここにいた。

それと悠介の力をあわせることで目にも見えぬ速さ。

それが、一瞬にして間合いを詰めた脚技。

それもあり、これ以上シグナムは踏み出せない。

剣の結界にいつまでも囚われているのだ。

このフィールドの全てを制覇しているといってもいいだろう。

思い出すことができたのだ。

ある種、戦場では厄介な者を思い出してしまった。

「どうした?踏み込んでこないのか?誘ったのは、あんただろ?」
悠介はシグナムに挑発する。

まるで、臆病者を見ているかのように。

(まさか・・・これ程、さっきまではこれほどの気迫が無かった男が・・・今では、この違いか・・・)

シグナムは、内心で悠介という男を再び認めざるおえなかった。

だが、負けたくは無い。

それでも、負けるなら、精一杯やって負ける。

しかし、紫炎一閃は、既に見極められている。

この場では、新たな技を開発する。

それしかない。

「凄いね・・・シグナムをあそこまで挑発するなんて。」

「これが・・・悠介・・・?」

「スサノオの悠介・・・目覚めつつある。」

「今の悠介には隙が見えない・・・」

闘いを嫌う悠介。

頼りなさそうに見えた悠介。

だが、目の前にいる悠介は、彼女らの知っている悠介ではない。

「やめるなら、今のうちだよ?」

「やめない。」

「そう・・・」

「ふふ・・・」

笑いながらも、シグナムは全身に悪寒が走るような感覚に襲われた。

シグナムは唾を飲む。

縮地、一気にシグナムの間合いに入った技。

会得できる人間は誰一人とていない。

余程の鍛錬をつまない限り。

シグナムや、フェイトとて、悠介の真似事は出来ないだろう。

それが、移動方式を極めた悠介。

「何故、剣での勝負にこだわる?その、武器は形態変化が出来るはずだ。」

人斬りとしての悠介。

「貴様は刀を使うのだろう?ならば、騎士道精神にのっとって私も剣を使う。」

「だから・・・くだらない・・・正々堂々なんて、戦場には無いんだよ。」

他愛の無い会話。

その会話が終わっても、未だに攻め込まない。

待っているのだ。

シグナムの攻撃が何で来るか。

どう、攻めてくるのか。

どう、繰り出してくるのか。

(まだ、解らない・・・どう、攻めればいい・・・?)

移動方式を極めている悠介。

しかし、そのようなものを習得していないシグナム。

微動だにせず、抜刀術を構える悠介。

何も、何も言わない。

シグナムが攻めるまで。

全く動かない。

(アレを・・・やってみるか・・・)

頭の中に過ぎる。

悠介のあの技。

クラーフアイゼンをも粉砕した、あの技を、思い浮かべる。

その技の名。

あの、一撃必殺の技。

その技の名こそ、一突きで爆発するほどの威力を出す技こそ、牙突。

あの強さ。

あの、破壊力。

人目でみようみまねで出来る技ではない。

簡単に・・・あの繊細な刀で、あそこまでの爆発力。

戦闘空間と言うストレスの中で、急激に力が伸び始めた。

悠介と言う人間の、今の状態の特徴なのだろう。

一つの剣技を自分の絶対の物と昇華する。

今、戦場の修羅として目覚めている。

溢れ出るオーラは、屈服させるには充分と言える。

やはり、そういう部類の人間なのだろう。

戦闘狂とも呼べるかもしれない。

全ての武神の能力を合わせたようなこの男。

武に関しては全てに置いてトップクラスの悠介が繰り出す牙突を真似る。

そのようなことが、シグナムに出来るのだろうか。

蘇りし、魔法というスキルが存在する世界に降臨せし侍。

その男の技が、先刻炸裂させた。

その男の技を、今、真似をする。

騎士として生きてきた人間が。

シグナムはすべてを頭の中でイメージする。

悠介が繰り出す技。

構え

太刀筋

その破壊力

要領

威力は抑えているはずだ。

悠介の時は止まっている。

全てを待っている。

シグナムが瞳を閉じた時、改めて牙突イメージを作り出す。

「行くぞ・・・レヴァンティン・・・アギト」

「YES MY MASTER」

「解ってる。」

アギトとて、その悠介を見て戦慄している。

しかし、シグナムは退かない。

だから、先程の牙突の構えをとりはじめる。

「牙突・・・何で・・・」

悠介も、牙突の構えを取り始める。

「良いさ・・・」

それは、刃を持てば、貴様より強いと言う事を証明する為。

徐々に蘇る技の記憶。

その名を思い出すことの出来ない技。

「そっか・・・全身を使うんだ。」

抉り取るような先程の牙突とは全く違う技だ。

「この技をまともにくらえば、上半身は粉々になる。」

思い出す、その技の形。

構えは同じである。

しかし、技は違う。

いや、正式なる斎藤一の牙突のアレンジ。

正式なる牙突の構え。

悠介の牙突の技。

その技を使うということ・・・

すなわち、シグナムを認めたということになる。

「私はお前のお陰で、また強くなれたようだ・・・」

その技の名の通り、レヴァンティンに炎を纏わせ、牙突を繰り出す。

シグナムの開発した技。

「そうか・・・」

悠介はその一言。

その一言は、シグナムの覚悟を受け止めた証拠。

「輝け・・・草薙の剣・・・!!」

悠介の瞳がカッと開く。

それと同時に、悠介の中にある力が刃に注がれ、輝き始める。

それを見るシグナムは神の剣を見ていると呼ぶに相応しい。

真の意味で日本神の天叢雲剣

それをみているようだ。

「行くぞ・・・悠介・・・!!」

「いつでもどうぞ・・・」

突如、目の前にいる相手が、消え始めた。

それは、悠介が縮地を使い、一気に間合いを詰めたということだ。

シグナムはあせる。

まさか、縮地がそこまで速いなどと。

侮りすぎていた。

それを、魔力などという特別な力を使わず、人間としての力を使う技が、ヴォルケンリッターが一人、シグナムを追い詰める。

シグナムは、急遽、上半身のバネのみで牙突を繰り出そうとするが、初めての牙突。

その技が上手くいくわけではない。

しかし、初段は避ける。

だが・・・

悠介は、あくまでも優勢だ。

「これで、勝負がつく・・・」

「シグナムさんが・・・」

「シグナムが・・・」

「シグナムが・・・負ける!!」

3人はシグナムの敗北を悟る。

悠介のスサノオとしての・・・

記憶を、一部の記憶を呼び覚ましたこの戦い。

悠介という人間の実力を理解したこの戦い。

全てではない。

全ての記憶は深遠の中で。

ただ、ここで・・・

シグナムが死ぬ。

それが解っている。

「シグナムが・・・そうや!!考えてみれば、シグナムが死ぬんや!!お願いや!!シグナムを・・・」

その言葉は悠介に届かない。

縮地によって生まれる無限なる残像。

たとえ、先程の初段の攻撃を避けたとしても、その残像が繰り出す技の風が動きを止める。

そして、神の刃に止めを刺されるのだ。

「殺すつもりなの!?悠介!!」

「悠介・・・」

「悠介・・・!!」

「悠介君!!」

無限なる残像が、無限なる草薙の剣がシグナムに襲い掛かる。

「ここまでか・・・!!」

覚悟を決めたシグナム。

シグナムは眼を瞑る。

覚悟を決めたのかの如く。

騎士としての立派な死に様。

しかし、シグナムが望んでいた衝撃は来ない。

そこに来たのは刃のみ。

寸止めというものだ。

悠介は、その刀を鞘に収める。

「何故・・・止めを刺さない?」

「ここは、正式な戦場じゃない。それに・・・殺すつもりは無いって言った・・・」

「そう・・・だったな・・・」

「もう・・・嫌だよ。味方同士でこんなことするのは。」

記憶は無くても、過去の記憶は存在しているのだろう。

故に、戦いの虚しさを知っているのかもしれない。

「なかなか、強かった。」

「お前ほどではないさ。」

降下し、クロノたちの元へと向かう悠介を見ていたとき、自分の頬に、何か、風邪が過ぎったような感覚を覚えた。

其れを、目で追っていったとき、黒い、弾丸のような者が、走った。

悠介!!と、叫ぶ前に、弾丸は迫る。

「ん・・・?」

悠介は、その黒い弾丸を草薙の剣で叩き落す。

「シグナム・・・さん・・・?」

「違う・・・!!私ではない!!」

シグナムの瞳が開いた。

嘘は、言っていないように思える。

しかし、弾丸はシグナムの方から、来た。

「此処に、俺達以外の誰かが入りこんだってわけね・・・」

それは、

「よほど・・・俺が、いやなんだな。此れか・・・?病院出たときから、感じていた殺気は・・・」

二人はそのまま地上に着陸する。

その降りた瞬間、四人が集まる。
どちらにも、殺意というものは無い。
ただ、一つの戦いが終わり、安堵している。
「あ・・・」

降下し、クロノたちの元へと向かう悠介を見ていたとき、自分の頬に、何か、風邪が過ぎったような感覚を覚えた。

其れを、目で追っていったとき、黒い、弾丸のような者が、走った。

悠介!!と、叫ぶ前に、弾丸は迫る。

「ん・・・?」

悠介は、その黒い弾丸を草薙の剣で叩き落す。

「シグナム・・・さん・・・は、使えるわけ無いか?」

シグナムの瞳が開いた。

嘘は、言っていないように思える。

しかし、弾丸はシグナムの方から、来た。

「此処に、俺達以外の誰かが入りこんだってわけね・・・」

それは、

「よほど・・・俺が、いやなんだな。此れか・・・?病院出たときから、感じていた殺気は・・・」

「悠介・・・?」

「あぁ、周りを見てきてくれる?」

「解った・・・」

気付けば、悠介に乗せられているシグナムが、そこにいる。







「死んでもらおうか?」

妖しく、ほくそえむ人間が一人。

今回の事件の一つの首謀者であるうちの一人。

「此処で、捕まるのは拙いからね・・・ダミーを出して、消えるとしよう。」

そして、一人は消える。

顔見せ程度だったのだろう。







「来る・・・!!」

その言葉と同時に、黒い影が、燈也の影を伝って現れる。

「雑魚が・・・」

懐園剣を抜き、そのまま突き刺し、影を消す。

此れで、殺せるなどと考えているのなら、弱すぎる。

そして、愚かである。

殺せると考えているのだとしたら、愚かだ。

「本体は、何処にいる・・・いや、本体はいつでも殺せるか?」

誰であるか、解らないが、確実に殺せる敵。

何れは殺す事が出切る。

此処で、急ぎ殺す必要性は無いだろう。

「何なんです?」

悠介は、背後から現れる影を切り殺しながら、燈也たちと合流しようとする。

「さぁね・・・俺達を快く思わない連中の仕業だろ?」

「あぁ・・・そういうアレですか。」

「まぁ、何かと言われる組織だからね。」

「既に、此処には、誰もいなくなっている。」

「いない・・・か。」

単なる威嚇にしても、これほど小さい者になると、いらつく。

「やる気が失せるな。」

「元より、無いくせに良く言うわ。」

「其れが、燈也だし。」

ここで、この燈也と言う人間の8割が、悠介には解ったような気がした。

「多分・・・反時空管理局の組織の人間と言う事も考えられる。」

「レジスタンス・・・?」

燈也の耳に、良く、反時空管理局と言う言葉が入ってくる。

「JS事件で、中々動く事のない管理局の人間。そして、殺された人間の数。」

管理局に不信感を抱かせるには、充分な素材であると言える。

魔導師や、一般の兵士の中で、管理局に不信を持ち、離反し、新たな組織を作り出した。

それが、反時空管理局組織エデン

神の創った園を作り出す。

この世界は、自分達のやり方で干渉し、世界を楽園のような世界にする。

そのような、意味を、持っているのだろう。

理想論だけで、新たな世界を構築しようとしている。

しかし、管理局を任すほどの気迫は備えているだろう。

堕落しきった時空管理局。

落とすには、絶好のチャンスであると言える。

二人のエースを欠いた位で、あの世界が終わったような顔をしている馬鹿もいる。

まったりと述べて、死んでいく人間。

それは、かつて、燈也に説教垂れて、粛正されたロリコン支部。

燈也が、そう呼んでいる組織だ。

ある種、破壊してもらったほうが楽であるかもしれない。

「アヤや、スカリエッティが破壊したくもなる理由がわかるな。」

「誰です・・・?」

「まぁ、とある事件の出来事だよ。お互いの気迫と、思惑の全てを伝えて、戦った・・・仇であり、二人目のライバル・・・」

そして

「ヴィータを一撃で戦線離脱させた人間。」

元より、これからの敵となる人間兵器の一つ。

「で・・・その、反時空管理局組織が・・・今回、俺達を襲った人間であると?」

悠介は、燈也に聞く。

燈也は、悠介の髪をクシャクシャしながら、応えた。

「予測・・・だけどね。」

「はぁ・・・あの、髪・・・乱れました。」

「ごめんね。」

燈也は、悠介を後ろから、抱きしめながら、其れを言う。

アヤや、ジェイルの行ってきた行動が、結果、管理局の中で離反を生んだ。

「うわっ・・・!?ちょっと・・・!!」

「やっぱり、似ているね。君は・・・」

それ以上、このことを思い出さないように、いや、触れたくないから、誤魔化した。

悠介が、一瞬顔を上げた瞬間、燈也が憂いを秘めたような顔をしていた。

「燈也・・・」

それでも、苗字を月村に変えさせる気は、無いように見えた。

「すずかちゃん、燈也君をあの子に取られるで?」

「そんなわけ無いよ。似ているから・・・」

自分の子供のように、接してしまう。

「ま・・・男と、あの髪型を覗けば、瑠璃ちゃんにそっくりやもんな・・・」

元より、悠介も、燈也と同じように、母親と良く似ている顔をしているのだろう。

その母親の顔は、美しく。

燈也にそれを言われ、悠介の顔が、一瞬赤くなる。

「君は、可愛いね。女の子だったら、口説いてたよ。」

「俺・・・そんな、趣味は・・・無いですから・・・」

「冗談だよ。」

一瞬、シグナムやヴィータがそっちの人間かと、誤解しそうになってしまう。

すずかは、普通にあの二人を見ていた。

何も、反応する事無く。

「本当・・・良く似てる。」

「まぁ、瑠璃ちゃんは薄幸の美少女やしなー・・・」

「そうね。あの子が言っていた通り、元より、昔は良く女装されてたっていってたしね。」

「でも・・・瑠璃ちゃんって、本来は流産してたんじゃ・・・?」

「それでも、魂は彼の中で生きていた・・・」

「瑠璃が、私に直接、話してくれたこと。」

「そうやったんや・・・元より、テスタメント覚醒の為に、あの子に送り込まれた・・・と、言う訳か。」

「本当の目的はね・・・」

消えてしまった、最愛の娘。

もう、出会うことは決して無いだろう。

「やっぱ・・・寂しい?」

「其れは、当然だよ。そのまま、いなくなっちゃったから。」

「最後は、わらっとったな・・・」

「あの子にとっては、良かったんだと思うよ?好きな人と一緒にいられたんだから。」

「逆に、トラウマを与えたけどな・・・」

ヴィヴィオと言う一人の少女に対して。

なのはが、消える瞬間を、ヴィヴィオはあの時見ていた。

光に還元され、消える瞬間を。

あの時は、なのはを外敵としてしか、見ていなかった。

しかし、今になれば、其れが、頭の中で駆け巡ってきた。

瑠璃の死とともに、ヴィヴィオの中で蘇る。

それ以来、ヴィヴィオから離れた、ヴィヴィオと一緒にいる人間は光になって消える。

そう、思うようになってしまった。

間近で、光になって消えた人間が二人もいるのだから、それは当然と言えるか。

故に、あの時、ティアナが自分の前から消えることを嫌がった。

泣いて、ティアナに訴えた。

克服できるかは、本人の意思次第。

「まぁ、ゆっくりかけて、そこらへんは治していけばいいか・・・」

「私たちのする事じゃないよ。」

「そうやけど・・・放って、おけないやろ?」

「どの道、あの子に構ってる暇は無くなるかも・・・」

凄まじい力

「管理局の巡洋艦の7割以上を破壊・・・アレが、また来ないとも限らない・・・」

「アレに対抗できるのは・・・アイン・ソフ・オウル・・・無限光のレイディーンだけ・・・か。」

「いえ・・・其れと、彼。」

すずかが見つめたのは、記憶の失ったスサノオ。

「やっと、入口の一つにたったって所かな。」

「アレで・・・入口・・・?」

最強の神であるスサノオの生まれ変わりである悠介。

完全に目覚める野は、まだ、大分、先となるだろう。

前とは、かなりの別人である。

あの時、ミッドチルダの一部を焼け野原・・・いや、消滅させた男。

完全に消滅させてしまった。

全てに、戦慄を与え、昆沌・・・カオスを与えた。

そこにいた、全ての生きとし、生ける者を戦慄させ、圧倒してみせた。

正に、最強・・・いや、無敵・・・全ての極限を制覇した、神。

言葉で表す事ができないほどの力。

これから、戦う敵は、あの時と同じ力を持って、戦わなければ、恐らく勝てない。

正に、ミッドチルダは、消滅を迎える。

言葉どおり、それは、消滅する事となる。

ミッドチルダと言う世界は、完全に消滅し、真の終焉を迎えて、此処で堕ちる。

いずれにせよ、このような世界であれば、いっそのこと消滅した方が、楽。

そのように、考えてしまう事がある。

「すずかちゃんの言葉を信じる事・・・できへんよ・・・」

「信じろなんて・・・言ってないよ。」

世界を消滅する事のできる敵の存在。

「そんなん、嘘としか思えへんよ・・・」

「だと、おもうよ。」

普通に、其れを信じろと言うほうが、無理か。

自分の常識を土俵として戦っている。

それ以上の文化と戦った事など、全く無いのだから。

「常に、自分が最高の存在だと思って戦う・・・」

人間の最悪の癖。

自分以上の組織と戦った事が無いのだ。

確かに、管理局は強いかもしれない。

しかし、それ以上に敵のほうが強い。

クラウディア級の巡洋艦を破壊したのが、良い証拠だ。

いや、その真実でさえ、受け入れる事ができないのか。

アルカンシェルの無効化。

管理局の技術では、突破する事の出来ない兵器。

「だって、アルカンシェルって・・・」

A’sのテレビで放映した物を見れば、お解りになるだろう。

しかし、今回は、其れをも凌駕する。

言わば、傲慢になっている人間達の粛正の為とも、言えるのではないだろうか。

彼らの動きと言うのは。

高町なのは、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンと言う二人の俗な教導員や、俗な執務官が消えれば、人は絶望もする。

ある種、いないほうがいいだろう。

しかし、性の対象にする奴等と比べれば、マシと言えるか。

彼女等を使い、マスターベーションに勤しみ、そのような世界を作り上げるのであればだ。

陵辱、レイプ、監禁。

そのような世界を描くのであれば、この世界など、消えてなくなってしまったほうが良いと言えるのは、確たる人間の決断であると言える。

いっそ、この手で殺した方が、マシであると言えよう。

いないほうが、マシなのだから。

だったら、殺す。

神は、そこまで来る。

「神を殺す人間か・・・」

その世界を作り上げた、神をも、スサノオは殺す。

「殺し?」

「そうね・・・これからは、人を殺すのが当たり前の世界になる。」

「嫌な世界になるな・・・」

「其れが、本当の戦いだよ。」

こういう組織にいるのだから、そうならなければならない。

何れは、誰もが人を殺さなければならない。

「殺しが当たり前になる・・・」

この、ミッドチルダに、血は流れる。

神との戦いによって、世界は崩壊する。

「神・・・か。」

先にいる、少年の瞳をはやては見た。

戦いを知らないような、純粋な瞳。

「アレが・・・人を殺す・・・」

エリオも、キャロも、六課にいる子供達は人を殺す。

「その道は、避ける事が出来ないんか・・・?」

「無理だよ。」

結局、殺さなければ、戦わなければ生き残る事など、出来ないのだ。

「活かして戦えば・・・此方が死ぬ・・・」

死にたければ、そうするが良い。

機動六課という、大半は人の殺した事の無い甘い連中は、殺す事など、出来ない。

それは、人を殺した人間が、燈也、すずか、クロノしかいないからだ。

「非殺生なんて・・・理想って、事やな。」

「何を今更・・・」

「ごめん・・・」

自らの手で、人を殺した事など、無い。

殺す必要など、無いと考えるからだ。

同じ人間であるのなら・・・と、考えたのだろう。

それが、今回の戦いで、殺す組織となる。

「其れで・・・燈也。」

クロノが、思いつめたような顔をして、燈也と悠介と間に入った。

「反時空管理局組織の事だが・・・?」

「資料は、後でお渡しします。」

「解った。それと、あの魔術の部類だが・・・」

「シャドウレイダー・・・暗殺に適した、魔術。」。

「やはり・・・其れか。」

「ひとまず、一旦戻りましょう。」

「あぁ・・・」








一旦、本局に戻りクロノは悠介と共に自室に戻り、燈也から貰った資料を拝借していた。

車での中で、眠りにつき、目覚めた悠介は、まぶしい太陽の光のせいで、われを取り戻す。

「痛いな・・・」

それが、戻ってきた時の感想だった。

「取り合えず、色々と渡す物がある。」

うーんと、空に手を伸ばし、軽い運動をしながら、悠介はクロノの話を聞いていた。

高校の退屈な授業の終わった生徒がするような行動である。

「子供だ・・・」

クロノの言葉で悠介に対する評価が決まる。

戦闘時以外は、全くの子供だと。

「ま、此れで将来苦しむ事も無いか・・・」

「しかし、働いては貰うぞ?」

「んー・・・面倒くさいな・・・」

「お前は・・・ほら、来い。」

「はいはい。」

子供ながらに、そういう所は良い子なのだろうと、クロノは思った。

しかし、記憶が無い。

だから、解らないのだ。

スサノオの本性という者が、全くわからなかった。

「大変だったな。ヴォルケンリッターと戦って。」

「まぁ、嫌な企みにしては結構ありがたかったですけどね。」

「あの技・・・か。」

「良く解りませんけどね。自分のあの攻撃方法なんて。」

基本スタイル

その技のことである。

「結構強かったですよ。クロノさん。」

「圧勝していたお前が、そういうことを言うといやみにしか聞こえんな。」

「そりゃ最もだ。」

廊下で、局員の人間と擦れ違うたびに、睨まれるような感覚を覚えた。

自分に、恨みでも持っているかのような。

そのような視線を感じた。

「放っておけ・・・」

「まぁ、放ってはおきますけど。」

「そうしておけ・・・」

「此処も、外も戦場か・・・」

「なんだ、その表現は・・・」

そのまま悠介は頭を殴られる。

取り合えず、味方を疑うなという事でもあるのだろう。

「痛い・・・」

「今は、やめて置けよ・・・?」

「気にするなって、事ですか?」

「言葉に表せば、奴等はつけあがる。」

「何で、いらついてるんです?」

「オナニーする対象がいなくなったからだろ。」

「オナニーする対象?」

悠介は、クロノから、聞かされる。

「妹と、その嫁だ。」

フェイトと、なのはと呼ばれた人間。

その名前を、悠介は思い出す。

「同性愛者ですか・・・?」

「まぁ、好きになった人間が、女の子だったって、事だろ・・・?」

「あぁ、そういう形ね。」

「そんな二人が、同時に消えたんだ。ヴィヴィオという名の子供を残してな。」

「育児放棄ですか・・・?」

「其れとは違う。」

元より、そういう人間が多いのは事実であるのも確かであるが。

全てが、健全というわけではないのだ。

先のような人間とて、そこにはいる。

その言葉が耳に入らずに消えていき・・・

悠介は公務員になれた喜びと、組織の実情を知り、そんなものかと理解した。

「完全に綺麗な組織なんか、やっぱ、無いんですね。」

「当たり前だろ?」

何分か歩いた後に、クロノが足を止めて、目の前にある扉のノブを手に取った。

そこがクロノの執務を行う時の部屋である。

部屋の中に入り、ロノは執務席の座り、悠介を見つめる。

「まさか、クロノさんって・・・結構、偉い人・・・?」

「まぁな・・・」

提督という地位にあるが故に・・・

それなりの苦労はあるが、給料は良いとでも言った所か。

ともあれ、そんな実情的な会話は終了し、クロノは真面目な表情になる。

机の引き出しから何かを取り出した。

「ほら、受け取れ。」

クロノがその何かを悠介に投げつけた。

悠介はその投げられたものを、両手でふらふらしながら受け取った。

受け取ったそれは・・・

「階級章ですか?」

「その通りだ。これから、頼む。公務員の証だよ。」

「何を・・・?」

「鈍いな・・・」

「だから、何が?」

「お前は、機動六課の一員として、働いてもらう。」

機動六課。

クロノのいる部隊、なのは達の穴を埋めるべく。

「配属された訳だ。」

「オナニーの対象になった人の変わりか。」

「誰も俺じゃ、オナニーなんか、しないでしょ?」

「どうだろうな・・・?男好きだって、いるかもしれん。」

「冗談でも止めてください?」

クロノはふっと笑い、一度目蓋を閉じる。

今一度考えてみる。

全てを。

あの時のミッドチルダ。

破壊神の降臨。

目覚めぬ、スサノオの力。

今回の戦いによって、目覚めたのは、ほんの一部。

それでも、ナンバーズたちなら、簡単に全滅できるだろう。

全てにおいて人間離れしている技。

魔力以外の力をも使いこなす。

記憶が蘇れば、敵となるかもしれないその男。

しかし、クロノは願う。

敵になる事を、望まぬ。

下手をすれば、全員が管理局を裏切るかもしれない。

だが、今は、考え付く事は無い。

ただ、今は・・・

「あまり考えないことにする。」

クロノはつぶやき、言い放つ。

「これから、頼むぞ。浦島准尉。」

その日、時空管理局に新たな人間が加わった。

浦島悠介准尉。

新設部隊。

全てが悠介にとって新しくなる。

ただ・・・悠介の中に未だに深淵の中にある記憶。

オリジン。

それが、判明するのは、まだ後の事。

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