2008.12.22 Mon
Last-Action「貴女に全てを・・・」
最終回・・・
あぁ、最終回・・・
最終回・・・
09/08/10何か、修正。
あぁ、最終回・・・
最終回・・・
09/08/10何か、修正。
最終話「貴女に全てを・・・」
この庭園の前にいる、一人の男。
トウヤ・テスタロッサ。
母に、負担を掛ける訳にはいかず。
望み、戦場へと立つ。
必ず、帰ってくると、約束して。
侵入者は、最悪の場合、全て殺すと。
「ケルベロスは・・・自ら、死を選んだ・・・」
トウヤは、既に、その序章の尖兵の目的を知っていた。
スサノオと、アマテラス、ツクヨミに仕組まれていた、出来事。
自らの覚醒。
これだけ。
後は、覚醒したトウヤに殺されるということ。
この覚醒は、上手くいった。
しかし、何故、トウヤの覚醒が必要になった。
いや、全ては、あの、スサノオとアマテラス、ツクヨミが一つになる前から、決められていたこと。
こうなることは、アマテラスにもスサノオにも、ツクヨミにも予想は出来ていなかったか。
何れ、起こるであろう、三人の最高神の再臨にあわせての、護衛として、必要となる。
ただ、アマテラスは一旦、敵の手に落ちることになるが。
まぁ、些細な事になるだろう。
歴史に刻むのも愚かな事になる些細な出来事。
三人の最高神が、送り込んだ、神の尖兵としてのトウヤ。
最高神が降臨するまでの、世界の守護者となるために。
「あんたの力は必要になる。だから、正気に・・・いや、それは残酷すぎるのか?」
歪んでいるとは言え、トウヤは、今の生活には、満足している。
プレシアは愛し、トウヤはプレシアを愛している。
ここで、正気に戻すことのほうが、残酷だ。
「クロノくん!!それに・・・燈也・・・?」
駆けつけたのは、高町なのは。
意識不明の重態となっているユーノは動けず。
ここで、少し、歴史が食い違っている。
「さぁて・・・人形供が沸いてきたんだが?」
「人形・・・?」
アニメとかに出てきそうな、西洋甲冑を纏ったような、機動兵器。
気付けば、それが、クロノと燈也、そして、なのはを囲んでいた。
「殺せ。」
燈也は、躊躇いなく、言い放つ。
「やれやれ・・・一騎討ちといきたかったんだがね。」
「どうするんだ・・・悠介!!」
「俺がでるまでも無く。ぶちかましちゃいな。」
「解った。」
人格をクロノに、変え、見せ場を創る。
既に、全体の力・・・
魔力だけでも、充分の急を封じられている悠介は、無駄に力を使いたくなかった。
だから、クロノに任せる。
「近くに来たものを攻撃するだけの機械なら・・・」
「じゃぁ、私も・・・」
クロノは、なのはを、左手のみで制す。
この意は、
「無駄弾を使う必要は無いよ。」
迫り来る人形たち。
しかし、クロノは、S2Uから、光の鳥を打ち放った。
それは、たちまち、一機を破壊し、徐々に、全てを貫く。
「うぅん・・・あれほどなら、簡単だけど・・・憐さんには、かなわなかったんだよな・・・」
「知っているのか!?」
憐を
「まぁ、仲間ですし。」
悠介のミッドチルダではクロノと戦い、今のところは、99勝99敗となっている。
未だに、決着をつくことは無い。
刃の付いていないデバイスで暴れまわる姿は、未熟ながらもテスタメントである証とでも言えようか。
最後の一機を、ブレイクインパルスで片付けた時、既にそこに、燈也の姿は無い。
「逃げられた・・・ね。」
「あぁ。」
唇を噛み締め、クロノとなのはは、動き出す。
「全く・・・えげつない地形だね・・・」
虚数空間のことを、言っているのだろう。
全ての魔法がデリートされてしまう、その空間。
落ちれば、全てが終わるに等しい。
だが、それが、魔力だけであるのなら、神の力を得ている悠介は、どうなのだろうと、自分で考えてしまう。
下らないことであると、解っていてもだ。
「あぁ・・・ここに落ちたら、最後だからね・・・」
精神の中での、悠介の会話。
確かに、黒騎士と戦っても、今のクロノでは、倒すことなど出来ないだろう。
だから、中にいる男。
浦島悠介に、委ねるしかない。
如何に、この、身が傷つこうともだ。
扉を開けた時、そこにも、無数の機械人形がいた。
数の問題ではない。
ここで、二手に分かれる。
どの道、プレシアを目指すのであれば、黒騎士と当たるだろう。
なのはは、駆動炉の破壊を担当。
クロノは、道を創り、なのはを通す。
「クロノ君!!気を付けてね!!」
「あぁ。同時に助けて見せるさ・・・」
ブレイズキャノンで、なのはの道を作り、自らは、その奥へと進みだす。
「ここにもいない!?」
「いるなら・・・プレシアの近くだ・・・」
群がる、邪魔な人形達を、クロノは倒す。
何処だ。
何処にいる。
何故、黒騎士は、姿を現さない。
「婆ちゃん・・・」
悠介にとって、会った数は少ないとは言え、プレシアは、祖母のような存在。
しかし、ここで、余計なことに手を加えることは許されない。
「さぁて・・・ここが最後・・・かな。」
クロノが、扉の前で、足を止めた。
無傷で、良くここまで来られたものだ。
クロノは、一人で感心する。
悠介は、何も応えない。
その先に、ある物を感じたから。
お前は、ここにいたのか。
変わるときは、闘うとき。
無駄に力を消費させないために。
燈也は、ずっと、そこで待っていた。
「頼んだぞ?」
「あぁ・・・信じてくれたことに・・・感謝する。」
剣を構えていなくて、黒騎士でもない燈也から溢れる殺気。
悠介は、びりびりと、それを感じ取ることが出来た。
「あんたが、投降してくれれば・・・プレシアと、二人で暮らすことができるんだけどな。」
「お姉ちゃんがいないと、意味が無いんだ。それは、ママがお姉ちゃんだけではいけないように。」
話し合う予知は
「無い・・・ね。」
基から、敵と見方だ。
燈也は、黒騎士となりて。
悠介は、鬼神となりて。
「「参る!!!」」
お互いに、その相手に向かって、真っ向対決といく。
同時に、二人は、屋敷を縦横無尽に駆け巡り、二人の刃が、ぶつかり合い、最初の衝撃が生まれる。
草薙の剣と、懐園剣
親と子供の刃が合わさり、生まれる衝撃波は、庭園の障壁を完全に打ち崩す。
その、ソニックブームは、壁を破壊し、二度目に起こるソニックブームは、その部屋を崩壊へと導く龍となる。
懐園剣を弾き、草薙の剣で、倒そうとするも、
「貴方には、僕を殺したくないという欲求がある!!」
「その通り!!!」
否定する必要は無い。
自らの心をさらけ出し、悠介はぶつかる。
悠介が、切り払うのと、同時に、距離を取った時、それを予期していたように、トウヤは巨大なカマイタチを発生させた。
「ソニックブレード!!!」
「ちっ・・・!!」
悠介は、その身で受け止める。
しかし、無傷だ。
鬼神障壁の使用。
「全く・・・」
「強者だ・・・」
二人が、同時に呟く。
「あれを使うとはね・・・ソニックブレード・・・強いよ。」
風乃如。
ソニックブレード・・・
そして、悠介の完全にソニックブレードを防いだものは、防御障壁。
山乃如。
絶対防御。
鬼神障壁・・・並みの攻撃なら、完全に防げる。
この男も、それと似たような物から得たのだろう。
「四つの基礎にあるうちの一つ・・・なら、それを打ち砕くのであれば・・・全てを越えるほどの技を出せば良い!!」
そして、今目の前にいる男は・・・
「早い・・・!!」
凄まじい、その斬撃、侵略をする火の如。
悠介は、紙一重で、それを受け流すものの、流石に、精神と体が、マッチしていないのか、若干の遅れが出ている。
言うなれば、未来の管理局の切り札である悠介には、かなりのハンデがあるのだ。
徐々に押され始めている。
まだ、経験が浅いとは言え、常人では死んでいる。
管理局の人間なら、この火の時点で、何人も死んでいるだろう。
無限にも見える、その斬激によって。
しかし、
「その中に、弱点はある・・・」
トウヤは、気付いていない。
既に、悠介の剣の結界の中に、入っている事をだ。
「0.6秒の隙が・・・まだ、あんたにはある。」
悠介は、それより速く動く。
体自身は、まだ、突いてきていないゆえに、左腕かに、懐園剣が辺り、血飛沫が出るものの、その隙を突くことは出来た。
トウヤの鎧の一部の破壊と同時に、左腕を切りつける事が出来た。
また、それよりも早く。
トウヤが、身を引いていたが故に、ダメージは浅く済んだものの、それによって、隙が再び生まれる。
「らぁっ!!!!!」
ソニックブレードと同威力とも言える。
斬衝破・・・
いや、性質はソニックブレードと同じ。
黒騎士の体が真っ二つに消えるも、それが、分身だということはわかっている。
本体は、
「後ろ!!!」
クロノが、精神の中で叫ぶ。
しかし、その場所
「いや・・・もう、囲まれている・・・!!!」
囲まれている。
何を、言っている。
相手は、たったの一人の筈だ。
しかし、クロノが、周りを見渡した時、そこは、黒騎士で染まってる。
あの一瞬で、動き、いや、自分の分身をできる限り創り、その隙を突いて、一斉に囲んでから、殺す。
悠介の反応が、遅ければ、既に、クロノの体は真っ二つだっただろう。
フェイトよりも速く、なのはよりも攻撃力があるといっても良いだろう。
管理局が口から手を伸ばしてでも欲しがる理想的な男
後に、剣聖とまで呼ばれる立場に上るこの男を。
既に、ミラーまで習得している。
自らの分身を、50まで増やし、そこから打ち込むは風。
速きこと、風の如。
しかし、何故、この技を覚えている。
プレシアと交わっている時に、覚えたとでも言うのか。
いや、日ごろの戦い・・・
死の淵に立ったことによって、自然と身に付けたのだろう。
しかし、風では、山は動かせず。
絶対防御の山で、その風を防ぐ。
「おい、一体を倒せば・・・」
「無駄だよ。奴等は、全員・・・」
トウヤ・テスタロッサとしての意思を持っている。
トウヤ・テスタロッサとして生きている。
無論、魔力が切れれば、消える。
しかし、一体を殺したとしても、49体の分身に殺される。
「お前は!!」
「出きれば、とっくにやってる・・・」
しかし、殺すわけには、いかない。
分身で対抗しようとしても、その間に、倒される。
「敵になるとは思わなかったからな・・・」
「どういう・・・ことだよ・・・」
「俺のいたミッドチルダだと、あの人はこっち側だから・・・!!」
最低でも、トウヤの場合は、Sが四つ付いていても、良いだろう。
さらに、この様子なら、魔力をそこを尽きるのは、最低でも、後30分後。
ソレまで、我慢するは、プレシアの餌食。
クロノのツッコミを無視しながら、対応する。
風なら、山で対応できる。
やはり、まだ、同じような相手と戦ったことが無い。
「いい加減!!」
「死ぬ訳には・・・!!」
四体同時の攻撃を、全て、その一太刀で防ぎ、ただ、今は耐えるのみ。
しかし、分身を発生させても、全てをコントロールする程の思考力は、九歳にしてはまだ無い。
それと同時に、四体しか動いていない。
警戒しすぎていた。
迫り来る刃を、受け流し、後ろからの斬激は、半身ずらしで避ける。
まだ、剣聖時のようなキレのある動きではない。
見の状態で、そこまで見抜くことが出来た。
ならば、後は、攻略することのみ。
「いい加減に・・・死ねよぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」
分身が、全員動き出す。
このとき、全員が動き始めた。
生きているかのように、全てが動き出していた。
進化した・・・
「全員・・・コントロールできるようになったのか・・・早いだろ・・・本当、天才だよ。この人さ・・・」
怒りによって、ソレを編み出す。
その、戦闘適応力、戦闘力の進化。
流石は、剣聖と言える。
「障壁を崩すか!!!!」
『エリュシオンサンダーレイジを使う!!!!!!!!!!!!!』
屋敷を破壊してまでも、50人分のサンダーレイジを食らえば、悠介を焦がすことはできる。
ただ、この技。
悠介は、それを聞いたとき、不敵な笑みを浮かべる。
それは、ヴィヴィオやティアナなら、良く知っている。
この、意味の笑みの意味を。
プレシアの使う、この技を、集中させ、50体分のサンダーレイジがある。
威力は、フェイトの使う以上の物だろう。
なのは、フェイトとて、リミッターを外した状態、さらには、バインドを駆けた、スターライトブレイカー、その後のライオットセイバーを防ぐことは余裕で出来た。
ただ、これに、耐えられるか。
かなりのハンデがあるのだ。
しかし、それでも、笑みを浮かべる理由。
それは・・・
簡単なことだ。
「あえて、馬鹿みたいにかかる魔法で止めを刺す事に拘っている・・・其れは、存在を消したいからね。生きたままで!!」
「上級魔法故に・・・隙ができるか・・・」
しかし
「おい!!耐えるつもりなのか!?ラウンドシールドも張らずに!!」
「ラウンドシールドなんざ張ったところで、力の無駄遣い・・・!!そんなんすんのはバーカ!!」
それは・・・
「この詠唱時間が・・・」
既に、
「命取りだ!!!!」
「消えた・・・!!??」
トウヤの目には、そう映っているのだろう。
しかし、それは、まともに目に映るものではない。
これを、見切れるのは、ミッドチルダでは、高町ヴィヴィオと、ティアナ・ランスター、クロノ・ハラオウン、憐・ヴィオラ、亡きイエス・キリスト、観月悠矢、観月葉子、そして剣聖・・・高町燈也。
「未来のあんたが、敵じゃなくて、良かったよ!!」
「そんな!?」
詠唱中の燈也を、何かが砕いている。
一体ずつ、消え行く燈也。
この状況で、
「対応して見せるさ・・・!!」
目にも写らぬ速さで、動くこの男。
捕らえることができる者・・・
この場にはいない。
「詠唱を忘れている・・・この間なら・・・」
サンダーレイジを完全に防ぐことができる。
あくまでも、数十人で、捕らえようとしたことが、仇となったのだ。
「さぁ、どうするよ!!もう、あんたで最後だよ!!」
「解っている・・・」
音速以上で動く相手・・・
しかし、そこまで速く動くのなら、異常なまでの風が吹く
風の音が聞こえる。
燈也の聴覚は、風を感じ取り、そのまま、風の起こる方向へと、相手を、
「プラズマソニック!!!!!!!!」
切り裂く。
しかし、その風は、
「ダミイでね!!!!!!!」
「解っていたさ!!!あんたが、本気を出そうにも、本気が出せないこともね!!!!若干のブレがあることも!!!!」
悠介の天から降り注ぐ斬を防ぎ、トウヤは、土壇場に進化していることに気付かず、悠介の音速レベル以上のスピードを捕らえ、その斬激を防いでいた。
焦っている。
目の前にいる、前までと違うクロノ・ハラオウン。
刀を使用する、クロノ・ハラオウンに。
ギギッ・・・
二つの刃がぶつかり合うこと、その衝撃に、魔力によって、炎が生まれる。
これは、闘志の編み出す、許された戦士の炎也。
お互いに、できる限りの全力で戦っているという証。
トウヤは切り払い、悠介はトウヤの斬激を防ぐ。
「食らいつけ!!!」
飛翔龍・・・
風の龍が、トウヤを襲う。
だが、懐園剣にもてるばかりの魔力を込め、その太刀で、風の龍を切り裂く。
しかし、
「牙突!?」
また、その刃には、龍が見えた。
ここで、外しても、再び龍が食らいつくだろう。
できるだけ、距離を取れる分だけ、トウヤは距離を取る。
この人間は、何者だ。
クロノ・ハラオウンとはであったことがある。
しかし、捻り潰すことは可能だった。
だが、口調が変わった瞬間に、鬼神の如き強さとなった。
まだ、トウヤには解らなかった。
クロノのもう一つの人格だと、思っていたのだ。
しかし、それが、あの時、夢の中で、自分を助け、アイン・エンゲージを与えた悠介だろ、思いもしなかった。
「ブレード・サーヴァント・・・!!」
「小ざかしい!!!」
牙突の体勢から、無理矢理、斬激の構えにし、それを破壊。
そのまま、斬の体勢でトウヤを、斬ろうとするものの、紙一重で、それを避けたが、翼を、片方だけ、失った。
しかし、ここまでの急激な戦闘力の進化。
「この変化は、何処にあるんだ!?」
この男ほど、強くなる理由に単純なものは無いだろう。
「愛じゃない?単純に言えばさ・・・!!プレシア・テスタロッサって言う、唯一の肉親を得たから・・・」
繰り返された、母の面影に、愛がほしいと求めたから。
不安定な、命だったが、愛を得たことによって、本物の生きる命へと変わった。
永遠に刻まれるであろう、その黒騎士としての傷。
プレシアへの強すぎる思いは、歪みだす。
悠介が、戸惑ったのは、本物の愛を知ったのに、また、失わせてしまうことが、戸惑いの原因だ。
やっと、苦労して手に入れた物を。
悠介は、壊そうとしている。
「・・・わかる気がする。」
「クロノさん・・・そうか。」
「僕だって、父を失っているんだ・・・」
今なを、繰り出される、トウヤの斬激を受け流しながら、感じ取ることのできる。
トウヤの、プレシア・テスタロッサへの愛情を・・・
愛と言う名の哲学を、終わらせることを許さない。
歪んだ思いによって、強くなる。
目の前にいる少年は、誰よりも強いだろう。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
「まさか・・・あそこまで、力を失って・・・」
アイン・エンゲージを呼び出した。
自滅するような物だ。
しかし、乗り込むわけではない。
それは、逆に支配しようとしている。
その状態で、アイン・エンゲージと同化すると言うのか。
魔力を
「完全に・・・いや・・・違う・・・」
想いは集い、力となる。
強すぎた思いゆえに。
トウヤ自身が、アイン・エンゲージを取り込んでいた。
「何処まで・・・愛していると言うんだ!!!」
プレシア・テスタロッサを。
クロノは、叫ぶ。
ミズカラノカラダ・・・ドコマデモ、ムリシテデモ、
この、歪んだ力に、恐怖さえ感じる。
「もう・・・ママの邪魔をしないでくれ!!!!!!!!」
「泣いて・・・いる・・・」
それは・・・
「プレシアの思いを知っている・・・だから、泣いているんかね」
どうする。
下から、鮫のように喰らいつくような太刀筋
悠介は、その剣を受け止める。
今までとは、違うほど、大きく、強い。
横薙を受け止め、そのまま、トウヤの顔面をアイアンクローで拘束し、膝蹴りを使い、顎に大きな一撃を与える。
「このままじゃ・・・不利なのか!?」
「アンタは、黙ってる・・・!!」
認めたくは無い。
だが、歪んだ思いの力によって、強くなっている。
本当に、この少年から、今の愛を取ったらどうなる。
精神崩壊など、序の口と言えるだろう。
精神は、消えるかもしれない。
「間違っているのは・・・僕達じゃないのか・・・?」
クロノが、、思わうほどに、トウヤの想いは力強い。
油断となった。
だから、悠介は、クロノの精神と感応し、動きにブレが生じ、刃が弾かれた。
初めてのことだ。
戸惑っている。
戸惑いは、死を生む。
クロノによって、自分の中に迷いが生じた。
「間違っているのは・・・」
何だ。
「僕達じゃないのか・・・?」
首筋に剣を突き付けられてその疑問を考える。
「ここまでなのか・・・?」
ふと、周りを見渡してみると、部屋の次元側の壁は、崩壊していた。
ここまでの戦いをしたというのか。
「燈也!!!!」
「また・・貴女なのか・・・」
なのはが、現れた隙を付き、殴ることなく、悠介は、神殺を手にした。
殴ることなど、闘うことなど出来ない。
「クロノくん・・・?」
「黒・・・騎士・・・?」
「僕には・・・出来ない・・・あいつと、闘うことが・・・」
「おい!!クロノさん!!」
「甘い事は解ってる・・・しかし、戦って、彼をこっちに助けた事によって・・・彼の為になるのか・・・?」
「解るけどさ・・・!!」
ただ、寂しげに、目の前に立つ騎士に、何もかける言葉は無い。
本当なら、今のプレシアの望みを、叶えてもいいのかもしれない。
クロノは、そう考える。
ただ、なのはにとっては、弟を、どういう気持ちであれ、助け出したいのだ。
この後、どのような結果になろうとしても。
「だから・・・私が・・・」
「やめるんだ!!」
「どうして!?おかしいよ・・・」
「本当の母・・・家族を得た、あいつから・・・また、それを奪うのか!?」
魂は別とは言え、精神でトウヤと交わったからこそ、燈也の本当の思いが解る。
「本当の・・・お母さん?」
「フェイトちゃん?」
「でも、間違っているんだ・・・」
確証は無い。
ただ、それは、間違いであると、フェイトは言えた。
では、
「人間じゃないお前に・・・ママの何が、解るんだよ!!」
「人間じゃない・・・か。ま、わかるけどね・・・」
小学生・・・子供、まだ、10にもなっていない人間が、平気で戦う。
そして、平然と戦わせる時空管理局。
確かに、中身は人間ではない。
答えなど、何処にも無い。
この形について、答えなど、何処にもないのだ。
「トウヤのお母さんは・・・ママは、プレシア・テスタロッサじゃないよ!!」
「何十世界の僕のママを殺して・・・よく、そんなことが言えるな!!」
怒りという名の、感情のままに。
動き出す。
もう、遅いのかもしれない。
「何で・・・どうして・・・」
「プレシア・テスタロッサって言う揺り篭を得たんだ・・・そっと、しておくべきだったんだよ・・・」
もう、出会うことが無かった筈。
だから、諦めることが出来た。
しかし、出会える筈の無い人と、出会ってしまったのだ。
人間なら、全てをかなぐり捨ててまで、そこに行こうと思いたがる。
トウヤはそれを行ったまで。
「フェイトちゃん・・・間違ってるなら・・・間違ってるって、教えてあげよう・・・」
「うん・・・」
このことが、間違いであるとだ。
ただ、間違いであるなど、言えなくも無いことではあるが。
その答えに、正解というものは何処にもない。
何処にもだ・・・
それは、人が求めて編み出した一つの形なのだから。
「うん・・・」
なのはとフェイトは動き出す。
この時点で、この二人は人の愛を否定している時点で、間違いであるといえるだろう。
気付いてはいない。
トウヤをプレシアから救うということは、トウヤを傷つけるということをだ。
しかし、クロノは、ただ、見ていることしか出来なかった。
悠介は、そのクロノに付き合うことにした。
何処で、動くか、見極める。
「僕から・・・ママを奪わないでよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
「トウヤのお母さんは・・・高町桃子・・・私のお母さんだよ!?」
なのはは、訴えながら、無防備な姿で、燈也の前で現れる。
しかし、燈也は、無防備だからと言って、手を出さない訳が無い。
憎いと・・・
思っているのだから・・・
「いい加減なことを言うなぁぁぁぁぁ!!!!!」
フェイトは、バインドをかけようとしたものの、すぐさま、それは破壊される。
バインドキャンセラーと呼ばれる、一部の拘束魔法を、無力化できる。
故に、そのような手は、無意味。
「やらせる訳には・・・!!!!!」
フェイトは、燈也に、その金色の鎌を振り下ろそうとするが、燈也の前では、無意味だ。
この戦いで、成長したのだ。
なのはや、フェイト・・・
クロノを超えるほどの戦士へと。
ラウンドシールドを展開し、それを無効化させた後、ラウンドシールドを刃へと変化させ、フェイトと対峙し、向かってきたフェイトのバルディッシュを砕く。
そして、フェイトを吹き飛ばす。
時を同じくして、なのはも、ディバインバスターを撃ち放ったが、剣により、光線は真っ二つとなる。
だから、プレシアをここまで思うことができる燈也は、幸せだから。
フェイトを、追い詰め、胸倉を掴み、勢いよく、頭上から、フェイトを投げ飛ばす。
「がっ・・・はっ・・・!?」
この状況になのはは呆然として、浮遊した状態で、ただ、弟だった者を見ていた。
本当に、自分の弟なのか。
トウヤは、なのはの視線に気付くと、ただ、言い放つ。
「撃ってこいよ・・・あんたの、最高の魔術をさぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
スターライトブレイカーを・・・
「僕には・・・何も出来ない・・・?」
「でも・・・それが、間違ってることは確かだよ・・・?」
「ヴィヴィオ・・・?」
クロノの体の中に、入ってくる、もう一人の人格。
高町ヴィヴィオ・・・
アマテラス・ヴィヴィオ・・・
「間違っていることは、間違っているって・・・教えてあげなきゃ・・・残酷なことでも。」
ヴィヴィオも、今までのものを見ている。
答えが無いということも解っている。
だから、燈也の思いは、痛いほど、伝わってきた。
燈也を止めることが、良いことであるのか。
解らなかった。
「キャぁ・・・!!」
「あぁぁぁぁ!!!!!」
バリア・ジャケットを、破壊される。
避けたと思っても、それがソニックブレードならば、バリアジャケットなど、破壊することなど、簡単なことなのだ。
愛を手放したくない、化け物が、これを可能とする。
「死んでしまえ・・・・ママの障害となるものは!!!!!!」
バルディッシュを、破壊。
フェイトを殺そうとするも、衝撃が、燈也に走る。
「うざいだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
収束される光が、黒騎士の鎧に逆に収束された。
「何が・・・高町なのはだ・・・!!!!!!!!!!それでも、僕の姉だった人間かよ!!!!!!!!!!!これが、憎かった高町なのはかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!所詮、マスかいてる人間の対象だ!!!人間でありながら、人間じゃないんだよ!!!!!」
スターライトブレイカー・・・
この化け物の前では、無意味と化すのか。
「あれを、くらってダメージ無って・・・どれだけ・・・」
化け物と呼べる。
歪む想いは、少年を強くする。
今、なのはが燈也に向かって撃ち放ったのは、トウヤの要求した、なのはの最強収束魔法・・・
スターライトブレイカー・・・
後に語り継がれるであろうなのは最強のものである。
筈だった・・・
しかし、今・・・
それは、封じられた。
「もう・・・言葉は・・・とどかないの・・・燈也?」
「僕の前を呼んでいいのは、ママだけなんだ!!ママだけが、僕を見てくれる!!ママだけが、僕を愛してくれる!!ママだけが、僕に優しくしてくれる!!!!」
それだけで良い。
ウィングブースターを、最大出力にし、哀れで孤独な狼のように、なのはの基へ最大出力で向かう。
襲い駆けるディバインバスターを、全て無効化にし、アクセルシューターでさえも、致命傷と呼ばれる部分に向かって、討ったとしても、無効化される。
「無駄だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!」
全てを、無効化。
それは、人間などではない。
誠に、人間の形をした化け物。
修羅であると言える。
怒り・・・
憎しみ・・・
母への想い・・・
これが、全ての力を活性化させる。
禍禍しくなりつつも。
力は、本物であるといえる。
母の前では、人間として。
敵の前では、修羅として。
ここまで、出来るのはプレシアに対するゆえの思いのことか。
なのはは、思い知る。
ここまで、プレシアを思っているのか。
そこまで、プレシア・テスタロッサを、愛していたのかと。
考えている時には、既に、目の前に、燈也はいる。
ここで、殺すつもりであったのなら。
まだ、肉親だと思っているなら、なのはは、燈也を殺すことは出来ない。
いや、9歳の少女に、目の前の弟を殺せというのは、無理なものか。
とは言え、今のトウヤを殺すことは不可能に近いことだが。
「やめて・・・」
「・・・」
何も、応えずに、レイジングハートを粉砕する。
ただ、コアだけは、無事だったのを解った時、少し、安心できた。
その、安心できた瞬間に、トウヤは攻撃を与える。
バリアジャケットを破壊。
容赦なく、その体に打撃を与える。
なのはの存在を許さないように。
「そん・・・な・・・お兄ちゃんだって・・・死・・・ん・・じゃうんだよ・・・?」
タカマチキョウヤ
「死んでしまえば良いんだ。」
「燈・・・」
まだ・・・
「なんだよ!!」
「がぁぁ・・・ぶはっ・・・」
頭部から全体に走る巨大な衝撃。
何も出来ずに、床へと突き落とされる。
全身に走る衝撃に、何とか耐えながらも、なのはは、動き出そうとゆっくりと鈍く、動き出した。
レイジングハートのコアを取ろうとした時、トウヤは、なのはの左の掌に、何かを撃ちつけた。
一瞬、その指に触れたレイジングハートを、また離してしまう。
「・・・次。」
なのはが、急ぎ、それを引き抜こうとしたとき、今度は右の掌に何かが突き刺さる。
「逃げないでね。邪魔しないようさ。」
意味は・・・?
「でも・・・それだけじゃ、逃げちゃうかもしれないよね。」
だから、ここで
「さっきのスターライトブレイカーっていったっけ?この光杭さ・・・それで作ったんだ。」
拘束
「仕方ないよね・・・これさ、バインドよりも、凄いんだよ!!!!!」
ここで
「ママの邪魔をされる訳にはいかないんだからさ・・・」
この場で
「苦しませて殺してあげるよ・・・昔、姉だったんだしさ。」
その身に・・・
「何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も・・・刻み込ませてあげるよ!!!!!!!!!!」
言葉どおり、燈也はなのはの体に、何本も杭を打ち放つ。
なのはに向かって。
対応できずに、なのはの体を埋め尽くす。
心臓や、人間の急所に当てないのは、わざとか。
人とは思えない行為。
なのはの痛覚を切ることによって、傷みはないが、自分がどれほど、人間ではない存在になっているか、確かめる事ができる。
「っっっっっ・・・!!!!!!!!????????」
痛み・・・いや、それ以前に、無数に突き刺さるが故に、声が出ない。
声より先に、自分の体を想像した恐怖が襲う。
徐々に、増えていく。
「声に、出ないよね・・・!?それほど、気持ちいから、声が出ないんだよね!!!!!!!!!!」
わざと、痛覚を消している。
トウヤは、容赦することなく、首だけでも起き上がろうとするなのはの首を絞め始めた。
既に、なのはの中に痛感というのは無いだろう。
首から下まで、無数になのはの体に埋め込まれた光の杭。
激しく、そして、冷酷に。
「まだ・・・」
地面に貼り付けられたなのはに最後の釘を突き刺して、ゆっくりと降り立った。
なのはは、顔を横に向けて、ゆっくりと近づいてくる成長した少年を眺める。
「トウ・・・ヤ・・・?」
ただ、名前を呼ぶことによって、取り戻させようとする。
「まだ・・・呼ぶんだ・・・僕の名前を。ママしか呼んじゃいけないのに。」
故に、それ許されることなく。
「だって・・・私の弟だから・・・」
この期に及んで・・・
「あんたは・・・」
迷いは、無し。
「殺す・・・」
トウヤは、なのはの首を絞め始める。
「死ねよ・・・死ねよ・・・死ねよ・・・」
自らの手で、殺すことによって。
憎い相手を、自ら殺すことによって、実感を得ようとする。
「ゥ・・・ヤ・・・や・・・め・・・て・・・」
ここまで、人を簡単に、殺せる。
そこまでしたのが、プレシア・テスタロッサへの愛ならば、
「トウヤは・・・?」
「死ねよ・・・」
断ち切られたなのはの痛感を、トウヤは、復活させた。
なのはにまたがり、必死に、首を絞めて殺そうと言うのは、苦しめて、自分と同じくらいの苦しみを、刻み込もうというのか。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
救えず・・・
「フェイ・・・ト・・・ちゃん・・・?」
無
「引っ込んでろよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!弱いんだからぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
無防備ながら、なのはを助けたいと言う思いが、フェイトを動かした。
バルディッシュを復活させて、戦場へと。
ただ、トウヤの前では、無防備すぎる。
その金色の羽が、意思を持つかのように、無数の刃となって、フェイトを突き殺そうと変化し、蛇のように動き出した。
「フェイト!!!」
「ある・・・ふ・・・?」
フェイトの勢いが、止まったのは、目の前にいる自分の使い魔が、トウヤの金色の羽によって、血塗れになったという情から生まれた感情。
「だから・・・ダメだって・・・」
「アルフ!!!!!」
「終われよ!!!!!!!!!!!!!!!」
冷酷に言い放つ、その声。
「え・・・?」
フェイトの耳に、風の音が走る。
気付いた時には、既に遅い。
トウヤの金色の翼の刃が、フェイトの腹部に深く・・・
突き刺さる。
「ぐぁ・・・・・・・・・・」
「ママの邪魔ばかりするから!!!!!!!!!!」
「クロノさん・・・」
「殺され・・・る・・・?」
目の前にいる少女が、殺されようとしている。
自分の、殺せない相手によって。
「どうすればいい・・・」
殺せない。
殺したくても、殺せない。
しかし、ここでなのはが殺されれば、どうなる。
「解っている・・・」
だから、動けなくなる。
他人の命を犠牲にしてでも、自分が生き残るという手段さえある。
最も、人間らしいが、後味の悪い結果になる。
「あいつは・・・!!」
プレシア・テスタロッサがいたから
「だから、ここまで強くなれた・・・!!あんたたちといたら、ママに会う前に、殺されてたよ。高町士朗にね。」
「違うよ・・・トウヤ・・・お父さんは、そんなこと絶対にしない・・・」
トウヤが、何を望んでいたのかを。
「穢れを知らないから・・・奇麗事しか言えない。そうやって、常に自分の考えを肯定させようとする。」
本能的に、トウヤは、そういう人間を嫌う。
ここで解る。
タ
カ
マ
チ
ナ
ノ
ハ
を嫌う理由の一つというものが。
それが解っていれば、こんなことにならずに、すんだのかもしれない。
「トウヤと・・・接してあげれば・・・上げれば・・・良かった・・・んだ・・・」
「ほら・・・奇麗事を言ってる。」
そういえば
「アイツもそうだったよね・・・ユーノ・スクライア・・・あいつは、僕の中に勝手に入ってきた。だから、死よりも、その身に苦痛を刻み込んだんだ。」
また、嬉しい誤算として
「あんたとの絆も崩壊したことだしね。」
黒騎士の正体・・・
「げほ・・・ゑ・・・」
自分の、自分のことを、なのはがわかると言うのか。
燈也は、なのはの痛感を復活させ、そのダメージを感じさせる。
「ママを何人も殺したあんたに・・・死よりも思い苦痛を与えたい。その後に・・・殺してやるよ・・・絶対にね。」
「殺して・・・無いよ・・・」
殺したと、思っているのなら、それは
「トウヤが・・・どこかで望んでた・・・事・・・」
「燈也の見た・・・悪い夢・・・」
「私達が燈也を虐めたのも・・・悪い夢・・・」
「悪い夢なんかじゃないんだよ!!そうやって、自分を否定することをしない!!自分が正しいと思っているから!!」
なのはは、懇親の力を振り絞って、燈也を慰めようとした。
しかし、それは、燈也の怒りを買うことになった。
自分のことを慰めていいのは、プレシア・テスタロッサであり、アリシア・テスタロッサだけだから。
「死ねよ・・・」
そこに、躊躇いは無い。
「全てを決する・・・どのような、形で終わろうともだ!!ヴィヴィオ・・・!!!!」
「うん・・・」
悠介の封印をとくことができるのは、ヴィヴィオと悠介だけ。
北欧の、戦闘神。
一時的であろうとも、封印を解く時。
ヴィヴィオとて、その哀れな黒騎士から愛を奪うことなど出来ない。
しかし、やらなければならないのだ。
それが・・・
どのような結果に、終わろうとしても。
「封印・・・解除・・・」
この、突如現れる突出した力。
しかし、それを所持しているのは、 実体を持つクロノ・ハラオウン・・・ただ、一人。
「この力・・・?まだ、クロノ・ハラオウンは!!」
なのはを殺すことは、いつでもできる。
しかし、この力は危険だと、理解することはできる。
今、自分以上の力を、クロノの中にいる、誰かは、有すしていると。
いや、クロノの中にいる誰かが、クロノの潜在能力を解放したと、トウヤは見た。
「ごめん・・・殺さないから・・・」
謝りながら、クロノは、なのはの拘束を全て解除し、自分の場所へと転移させ、燈也の足元に結界を張る。
何人たりとも、そこから出ることの出来ない、絶対結界。
神霊極結界・・・
「違う・・・さっき、戦ったときのクロノ・ハラオウンじゃない!!!動け!!!動けよ!!!僕の体!!!」
動けず。
そこは、既に悠介がトウヤの動きを止め、クロノの支配している世界同様
「何だ、クロノ・ハラオウンの背後の・・・神は・・・!?」
クロノに漂うオーラは、全て形作る。
この、背後にいるか身の名は・・・
「オーディン・・・!?」
「ごめん・・・」
戸惑いを捨て、クロノはゆっくりと歩き出す。
結界から作り出される、刃で創られた球体に、包まれながら、トウヤは、そこから脱出する方法を考える。
しかし、脱出など、できるはずも無い。
この結界から、さらに・・・
一体の神が現れる。
それこそ、背後にいた神オーディン
さらに、複数の剣。
クロノの体が、光り輝き、草薙の剣を振り下ろした瞬間に、一斉に燈也に切りかかる。
「そんな・・・こんな、こんなことって・・・」
信じられない・・・
さっきまで、互角だったのに。
何故、こうも簡単に。
「燈・・・也・・・!?」
なのはが見た時、それは、燈也が切り刻まれたかのように見えた瞬間。
しかし、クロノは殺していない。
その証拠に、血塗れになっても、弱弱しく、燈也は立ち上がった。
元の姿で・・・
トウヤ・テスタロッサとして・・・
「燈也!!」
なのはの叫びは、トウヤには届かない。
「ま・・・だ・・・」
あるだけの力を振り絞って・・・
翼を展開させ、トウヤは、プレシアの元へと、戻った。
「ご苦労様・・・浦島・・・悠介君?」
「いえ・・・こうしなければ、被害は、増えていましたから・・・母さんたちを守るため・・・ですから。それより、自分の心の弱さに、苛立ちましたよ・・・」
「ヴィヴィオ・・・後を、頼む。」
「うん・・・」
クロノの体から、現れる一体の精神体。
アマテラス・・・
その存在が、なのはの体に刺さった無数の光の杭を浄化していく。
さらに・・・
なのはと、フェイトの傷を無かったことのように、癒し始めた。
「ごめん・・・なのはママ・・・フェイトママ・・・。」
「トウヤ!!!!???」
プレシアは、帰ってきた、我が子の姿を見て、急ぎ抱きしめた。
傷だらけの姿。
そこまで、強い人間が、管理局にいたのか。
いや、そのようなことはどうでも良い。
トウヤが、それでも、こうやって、無事に帰ってきたことが、プレシアには嬉しかった。
「ごめん・・・なさい・・・」
「ううん・・・ごめんね・・・ごめんね・・・」
強く、抱きしめ、トウヤのために、涙を流す。
それに、嘘と偽りは無い。
「トウヤ・テスタロッサ・・・いえ、高町燈也の返還を・・・求めます。」
「うるさいなぁ・・・」
「私と・・・燈也・・・そして、アリシアと・・・三人で・・・」
「なんだ・・・本当に・・・愛されている・・・僕には、それがわかる。」
クロノの進入など、気に求めず。
燈也は、自分を抱きしめている人間を見た。
目の前にいる、姉・・・アリシア・テスタロッサ。
フェイトの言っていることなど、全くわからなかった。
何を、言っているのだろう。
消えゆ。
「まだ・・・終われないんだ・・・!!」
「トウヤ!?」
もう、ここに、あの鬼はいない。
ならば、
「大丈夫・・・僕が、全て・・・排除する・・・」
「トウヤ・・・!!」
「刃で殺しておくべきだった・・・如何なる、ことになろうとも。あの時、僕は、母さんのいない地獄を、一瞬見たんだ・・・」
だから・・・
「もう、お前は、娘じゃないんだよ!!!お前は、受け入れないんだよ!!!」
プレシアの人形であるのだから。
「まだ・・・これほどの・・・!?」
瀕死に近い重傷を負って尚、立ち上がろうとする力は、何処から湧く。
「トウヤ・・・もう、いいの。」
「何を、言って・・・」
言い訳が無い。
「もう、言い訳が無いんだ。」
このトウヤにとっては。
「ここにいる敵を、全員殺さなきゃ・・・ダメだ!!」
プレシアのために動くが為に、トウヤは立ち上がることが出来る。
「だって・・・」
力が抜けていく感覚。
何故・・・
「母さん・・・どうして・・・」
力をプレシアが、放出していた。
これ以上、戦闘はさせたくない。
母ゆえの、優しき愛。
「もう、私たちを放っておいて!!!!」
突如、プレシアはトウヤを抱いたまま、巨大な、魔法陣を展開させた。
崩壊する時。
そして、トウヤが・・・
プレシアと、共に逝く時。
故に、揺れが激しくなることも、トウヤは予測できた。
そして、三人で
「一緒に・・・」
「そうよ・・・トウヤ・・・アリシアと一緒に・・・」
その、次元の穴へと、落ちる・・・
「ずっと・・・こうして・・・」
「えぇ・・・一緒だもの・・・行きましょう・・・アリシア、トウヤ・・・今度は、もう・・・はなれないよ・・・」
「寂しく・・・させないで・・・」
「燈也!!」
落ち行く燈也を、なのはは、必死で救おうと、全力で、その場を駆けようとした。
しかし、何かが、なのはの腕を掴む。
「もう、諦め・・・燈也は、プレシア・テスタロッサと一緒にいることが、一番、良いんだよ!!」
「そんなこと・・・」
「闘って、解っただろう?燈也が、プレシアをどれくらい思っているのか・・・」
クロノは、無理矢理、なのはとフェイトを引っ張り、転送させた。
これで良い。
「これで・・・良いんだ。」
クロノは、一つ呟いて、アースラへと帰還。
崩壊する庭園を、アースラの中で、ただ眺めていた。
そして、自分の中にいるオーディンの感覚が、消えたのを感じた。
封印される中で、トウヤのことを考える。
ソシテ・・・
ヒトリノニンゲンハ・・・
ココデ、キエ・・・タ?
この庭園の前にいる、一人の男。
トウヤ・テスタロッサ。
母に、負担を掛ける訳にはいかず。
望み、戦場へと立つ。
必ず、帰ってくると、約束して。
侵入者は、最悪の場合、全て殺すと。
「ケルベロスは・・・自ら、死を選んだ・・・」
トウヤは、既に、その序章の尖兵の目的を知っていた。
スサノオと、アマテラス、ツクヨミに仕組まれていた、出来事。
自らの覚醒。
これだけ。
後は、覚醒したトウヤに殺されるということ。
この覚醒は、上手くいった。
しかし、何故、トウヤの覚醒が必要になった。
いや、全ては、あの、スサノオとアマテラス、ツクヨミが一つになる前から、決められていたこと。
こうなることは、アマテラスにもスサノオにも、ツクヨミにも予想は出来ていなかったか。
何れ、起こるであろう、三人の最高神の再臨にあわせての、護衛として、必要となる。
ただ、アマテラスは一旦、敵の手に落ちることになるが。
まぁ、些細な事になるだろう。
歴史に刻むのも愚かな事になる些細な出来事。
三人の最高神が、送り込んだ、神の尖兵としてのトウヤ。
最高神が降臨するまでの、世界の守護者となるために。
「あんたの力は必要になる。だから、正気に・・・いや、それは残酷すぎるのか?」
歪んでいるとは言え、トウヤは、今の生活には、満足している。
プレシアは愛し、トウヤはプレシアを愛している。
ここで、正気に戻すことのほうが、残酷だ。
「クロノくん!!それに・・・燈也・・・?」
駆けつけたのは、高町なのは。
意識不明の重態となっているユーノは動けず。
ここで、少し、歴史が食い違っている。
「さぁて・・・人形供が沸いてきたんだが?」
「人形・・・?」
アニメとかに出てきそうな、西洋甲冑を纏ったような、機動兵器。
気付けば、それが、クロノと燈也、そして、なのはを囲んでいた。
「殺せ。」
燈也は、躊躇いなく、言い放つ。
「やれやれ・・・一騎討ちといきたかったんだがね。」
「どうするんだ・・・悠介!!」
「俺がでるまでも無く。ぶちかましちゃいな。」
「解った。」
人格をクロノに、変え、見せ場を創る。
既に、全体の力・・・
魔力だけでも、充分の急を封じられている悠介は、無駄に力を使いたくなかった。
だから、クロノに任せる。
「近くに来たものを攻撃するだけの機械なら・・・」
「じゃぁ、私も・・・」
クロノは、なのはを、左手のみで制す。
この意は、
「無駄弾を使う必要は無いよ。」
迫り来る人形たち。
しかし、クロノは、S2Uから、光の鳥を打ち放った。
それは、たちまち、一機を破壊し、徐々に、全てを貫く。
「うぅん・・・あれほどなら、簡単だけど・・・憐さんには、かなわなかったんだよな・・・」
「知っているのか!?」
憐を
「まぁ、仲間ですし。」
悠介のミッドチルダではクロノと戦い、今のところは、99勝99敗となっている。
未だに、決着をつくことは無い。
刃の付いていないデバイスで暴れまわる姿は、未熟ながらもテスタメントである証とでも言えようか。
最後の一機を、ブレイクインパルスで片付けた時、既にそこに、燈也の姿は無い。
「逃げられた・・・ね。」
「あぁ。」
唇を噛み締め、クロノとなのはは、動き出す。
「全く・・・えげつない地形だね・・・」
虚数空間のことを、言っているのだろう。
全ての魔法がデリートされてしまう、その空間。
落ちれば、全てが終わるに等しい。
だが、それが、魔力だけであるのなら、神の力を得ている悠介は、どうなのだろうと、自分で考えてしまう。
下らないことであると、解っていてもだ。
「あぁ・・・ここに落ちたら、最後だからね・・・」
精神の中での、悠介の会話。
確かに、黒騎士と戦っても、今のクロノでは、倒すことなど出来ないだろう。
だから、中にいる男。
浦島悠介に、委ねるしかない。
如何に、この、身が傷つこうともだ。
扉を開けた時、そこにも、無数の機械人形がいた。
数の問題ではない。
ここで、二手に分かれる。
どの道、プレシアを目指すのであれば、黒騎士と当たるだろう。
なのはは、駆動炉の破壊を担当。
クロノは、道を創り、なのはを通す。
「クロノ君!!気を付けてね!!」
「あぁ。同時に助けて見せるさ・・・」
ブレイズキャノンで、なのはの道を作り、自らは、その奥へと進みだす。
「ここにもいない!?」
「いるなら・・・プレシアの近くだ・・・」
群がる、邪魔な人形達を、クロノは倒す。
何処だ。
何処にいる。
何故、黒騎士は、姿を現さない。
「婆ちゃん・・・」
悠介にとって、会った数は少ないとは言え、プレシアは、祖母のような存在。
しかし、ここで、余計なことに手を加えることは許されない。
「さぁて・・・ここが最後・・・かな。」
クロノが、扉の前で、足を止めた。
無傷で、良くここまで来られたものだ。
クロノは、一人で感心する。
悠介は、何も応えない。
その先に、ある物を感じたから。
お前は、ここにいたのか。
変わるときは、闘うとき。
無駄に力を消費させないために。
燈也は、ずっと、そこで待っていた。
「頼んだぞ?」
「あぁ・・・信じてくれたことに・・・感謝する。」
剣を構えていなくて、黒騎士でもない燈也から溢れる殺気。
悠介は、びりびりと、それを感じ取ることが出来た。
「あんたが、投降してくれれば・・・プレシアと、二人で暮らすことができるんだけどな。」
「お姉ちゃんがいないと、意味が無いんだ。それは、ママがお姉ちゃんだけではいけないように。」
話し合う予知は
「無い・・・ね。」
基から、敵と見方だ。
燈也は、黒騎士となりて。
悠介は、鬼神となりて。
「「参る!!!」」
お互いに、その相手に向かって、真っ向対決といく。
同時に、二人は、屋敷を縦横無尽に駆け巡り、二人の刃が、ぶつかり合い、最初の衝撃が生まれる。
草薙の剣と、懐園剣
親と子供の刃が合わさり、生まれる衝撃波は、庭園の障壁を完全に打ち崩す。
その、ソニックブームは、壁を破壊し、二度目に起こるソニックブームは、その部屋を崩壊へと導く龍となる。
懐園剣を弾き、草薙の剣で、倒そうとするも、
「貴方には、僕を殺したくないという欲求がある!!」
「その通り!!!」
否定する必要は無い。
自らの心をさらけ出し、悠介はぶつかる。
悠介が、切り払うのと、同時に、距離を取った時、それを予期していたように、トウヤは巨大なカマイタチを発生させた。
「ソニックブレード!!!」
「ちっ・・・!!」
悠介は、その身で受け止める。
しかし、無傷だ。
鬼神障壁の使用。
「全く・・・」
「強者だ・・・」
二人が、同時に呟く。
「あれを使うとはね・・・ソニックブレード・・・強いよ。」
風乃如。
ソニックブレード・・・
そして、悠介の完全にソニックブレードを防いだものは、防御障壁。
山乃如。
絶対防御。
鬼神障壁・・・並みの攻撃なら、完全に防げる。
この男も、それと似たような物から得たのだろう。
「四つの基礎にあるうちの一つ・・・なら、それを打ち砕くのであれば・・・全てを越えるほどの技を出せば良い!!」
そして、今目の前にいる男は・・・
「早い・・・!!」
凄まじい、その斬撃、侵略をする火の如。
悠介は、紙一重で、それを受け流すものの、流石に、精神と体が、マッチしていないのか、若干の遅れが出ている。
言うなれば、未来の管理局の切り札である悠介には、かなりのハンデがあるのだ。
徐々に押され始めている。
まだ、経験が浅いとは言え、常人では死んでいる。
管理局の人間なら、この火の時点で、何人も死んでいるだろう。
無限にも見える、その斬激によって。
しかし、
「その中に、弱点はある・・・」
トウヤは、気付いていない。
既に、悠介の剣の結界の中に、入っている事をだ。
「0.6秒の隙が・・・まだ、あんたにはある。」
悠介は、それより速く動く。
体自身は、まだ、突いてきていないゆえに、左腕かに、懐園剣が辺り、血飛沫が出るものの、その隙を突くことは出来た。
トウヤの鎧の一部の破壊と同時に、左腕を切りつける事が出来た。
また、それよりも早く。
トウヤが、身を引いていたが故に、ダメージは浅く済んだものの、それによって、隙が再び生まれる。
「らぁっ!!!!!」
ソニックブレードと同威力とも言える。
斬衝破・・・
いや、性質はソニックブレードと同じ。
黒騎士の体が真っ二つに消えるも、それが、分身だということはわかっている。
本体は、
「後ろ!!!」
クロノが、精神の中で叫ぶ。
しかし、その場所
「いや・・・もう、囲まれている・・・!!!」
囲まれている。
何を、言っている。
相手は、たったの一人の筈だ。
しかし、クロノが、周りを見渡した時、そこは、黒騎士で染まってる。
あの一瞬で、動き、いや、自分の分身をできる限り創り、その隙を突いて、一斉に囲んでから、殺す。
悠介の反応が、遅ければ、既に、クロノの体は真っ二つだっただろう。
フェイトよりも速く、なのはよりも攻撃力があるといっても良いだろう。
管理局が口から手を伸ばしてでも欲しがる理想的な男
後に、剣聖とまで呼ばれる立場に上るこの男を。
既に、ミラーまで習得している。
自らの分身を、50まで増やし、そこから打ち込むは風。
速きこと、風の如。
しかし、何故、この技を覚えている。
プレシアと交わっている時に、覚えたとでも言うのか。
いや、日ごろの戦い・・・
死の淵に立ったことによって、自然と身に付けたのだろう。
しかし、風では、山は動かせず。
絶対防御の山で、その風を防ぐ。
「おい、一体を倒せば・・・」
「無駄だよ。奴等は、全員・・・」
トウヤ・テスタロッサとしての意思を持っている。
トウヤ・テスタロッサとして生きている。
無論、魔力が切れれば、消える。
しかし、一体を殺したとしても、49体の分身に殺される。
「お前は!!」
「出きれば、とっくにやってる・・・」
しかし、殺すわけには、いかない。
分身で対抗しようとしても、その間に、倒される。
「敵になるとは思わなかったからな・・・」
「どういう・・・ことだよ・・・」
「俺のいたミッドチルダだと、あの人はこっち側だから・・・!!」
最低でも、トウヤの場合は、Sが四つ付いていても、良いだろう。
さらに、この様子なら、魔力をそこを尽きるのは、最低でも、後30分後。
ソレまで、我慢するは、プレシアの餌食。
クロノのツッコミを無視しながら、対応する。
風なら、山で対応できる。
やはり、まだ、同じような相手と戦ったことが無い。
「いい加減!!」
「死ぬ訳には・・・!!」
四体同時の攻撃を、全て、その一太刀で防ぎ、ただ、今は耐えるのみ。
しかし、分身を発生させても、全てをコントロールする程の思考力は、九歳にしてはまだ無い。
それと同時に、四体しか動いていない。
警戒しすぎていた。
迫り来る刃を、受け流し、後ろからの斬激は、半身ずらしで避ける。
まだ、剣聖時のようなキレのある動きではない。
見の状態で、そこまで見抜くことが出来た。
ならば、後は、攻略することのみ。
「いい加減に・・・死ねよぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」
分身が、全員動き出す。
このとき、全員が動き始めた。
生きているかのように、全てが動き出していた。
進化した・・・
「全員・・・コントロールできるようになったのか・・・早いだろ・・・本当、天才だよ。この人さ・・・」
怒りによって、ソレを編み出す。
その、戦闘適応力、戦闘力の進化。
流石は、剣聖と言える。
「障壁を崩すか!!!!」
『エリュシオンサンダーレイジを使う!!!!!!!!!!!!!』
屋敷を破壊してまでも、50人分のサンダーレイジを食らえば、悠介を焦がすことはできる。
ただ、この技。
悠介は、それを聞いたとき、不敵な笑みを浮かべる。
それは、ヴィヴィオやティアナなら、良く知っている。
この、意味の笑みの意味を。
プレシアの使う、この技を、集中させ、50体分のサンダーレイジがある。
威力は、フェイトの使う以上の物だろう。
なのは、フェイトとて、リミッターを外した状態、さらには、バインドを駆けた、スターライトブレイカー、その後のライオットセイバーを防ぐことは余裕で出来た。
ただ、これに、耐えられるか。
かなりのハンデがあるのだ。
しかし、それでも、笑みを浮かべる理由。
それは・・・
簡単なことだ。
「あえて、馬鹿みたいにかかる魔法で止めを刺す事に拘っている・・・其れは、存在を消したいからね。生きたままで!!」
「上級魔法故に・・・隙ができるか・・・」
しかし
「おい!!耐えるつもりなのか!?ラウンドシールドも張らずに!!」
「ラウンドシールドなんざ張ったところで、力の無駄遣い・・・!!そんなんすんのはバーカ!!」
それは・・・
「この詠唱時間が・・・」
既に、
「命取りだ!!!!」
「消えた・・・!!??」
トウヤの目には、そう映っているのだろう。
しかし、それは、まともに目に映るものではない。
これを、見切れるのは、ミッドチルダでは、高町ヴィヴィオと、ティアナ・ランスター、クロノ・ハラオウン、憐・ヴィオラ、亡きイエス・キリスト、観月悠矢、観月葉子、そして剣聖・・・高町燈也。
「未来のあんたが、敵じゃなくて、良かったよ!!」
「そんな!?」
詠唱中の燈也を、何かが砕いている。
一体ずつ、消え行く燈也。
この状況で、
「対応して見せるさ・・・!!」
目にも写らぬ速さで、動くこの男。
捕らえることができる者・・・
この場にはいない。
「詠唱を忘れている・・・この間なら・・・」
サンダーレイジを完全に防ぐことができる。
あくまでも、数十人で、捕らえようとしたことが、仇となったのだ。
「さぁ、どうするよ!!もう、あんたで最後だよ!!」
「解っている・・・」
音速以上で動く相手・・・
しかし、そこまで速く動くのなら、異常なまでの風が吹く
風の音が聞こえる。
燈也の聴覚は、風を感じ取り、そのまま、風の起こる方向へと、相手を、
「プラズマソニック!!!!!!!!」
切り裂く。
しかし、その風は、
「ダミイでね!!!!!!!」
「解っていたさ!!!あんたが、本気を出そうにも、本気が出せないこともね!!!!若干のブレがあることも!!!!」
悠介の天から降り注ぐ斬を防ぎ、トウヤは、土壇場に進化していることに気付かず、悠介の音速レベル以上のスピードを捕らえ、その斬激を防いでいた。
焦っている。
目の前にいる、前までと違うクロノ・ハラオウン。
刀を使用する、クロノ・ハラオウンに。
ギギッ・・・
二つの刃がぶつかり合うこと、その衝撃に、魔力によって、炎が生まれる。
これは、闘志の編み出す、許された戦士の炎也。
お互いに、できる限りの全力で戦っているという証。
トウヤは切り払い、悠介はトウヤの斬激を防ぐ。
「食らいつけ!!!」
飛翔龍・・・
風の龍が、トウヤを襲う。
だが、懐園剣にもてるばかりの魔力を込め、その太刀で、風の龍を切り裂く。
しかし、
「牙突!?」
また、その刃には、龍が見えた。
ここで、外しても、再び龍が食らいつくだろう。
できるだけ、距離を取れる分だけ、トウヤは距離を取る。
この人間は、何者だ。
クロノ・ハラオウンとはであったことがある。
しかし、捻り潰すことは可能だった。
だが、口調が変わった瞬間に、鬼神の如き強さとなった。
まだ、トウヤには解らなかった。
クロノのもう一つの人格だと、思っていたのだ。
しかし、それが、あの時、夢の中で、自分を助け、アイン・エンゲージを与えた悠介だろ、思いもしなかった。
「ブレード・サーヴァント・・・!!」
「小ざかしい!!!」
牙突の体勢から、無理矢理、斬激の構えにし、それを破壊。
そのまま、斬の体勢でトウヤを、斬ろうとするものの、紙一重で、それを避けたが、翼を、片方だけ、失った。
しかし、ここまでの急激な戦闘力の進化。
「この変化は、何処にあるんだ!?」
この男ほど、強くなる理由に単純なものは無いだろう。
「愛じゃない?単純に言えばさ・・・!!プレシア・テスタロッサって言う、唯一の肉親を得たから・・・」
繰り返された、母の面影に、愛がほしいと求めたから。
不安定な、命だったが、愛を得たことによって、本物の生きる命へと変わった。
永遠に刻まれるであろう、その黒騎士としての傷。
プレシアへの強すぎる思いは、歪みだす。
悠介が、戸惑ったのは、本物の愛を知ったのに、また、失わせてしまうことが、戸惑いの原因だ。
やっと、苦労して手に入れた物を。
悠介は、壊そうとしている。
「・・・わかる気がする。」
「クロノさん・・・そうか。」
「僕だって、父を失っているんだ・・・」
今なを、繰り出される、トウヤの斬激を受け流しながら、感じ取ることのできる。
トウヤの、プレシア・テスタロッサへの愛情を・・・
愛と言う名の哲学を、終わらせることを許さない。
歪んだ思いによって、強くなる。
目の前にいる少年は、誰よりも強いだろう。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
「まさか・・・あそこまで、力を失って・・・」
アイン・エンゲージを呼び出した。
自滅するような物だ。
しかし、乗り込むわけではない。
それは、逆に支配しようとしている。
その状態で、アイン・エンゲージと同化すると言うのか。
魔力を
「完全に・・・いや・・・違う・・・」
想いは集い、力となる。
強すぎた思いゆえに。
トウヤ自身が、アイン・エンゲージを取り込んでいた。
「何処まで・・・愛していると言うんだ!!!」
プレシア・テスタロッサを。
クロノは、叫ぶ。
ミズカラノカラダ・・・ドコマデモ、ムリシテデモ、
この、歪んだ力に、恐怖さえ感じる。
「もう・・・ママの邪魔をしないでくれ!!!!!!!!」
「泣いて・・・いる・・・」
それは・・・
「プレシアの思いを知っている・・・だから、泣いているんかね」
どうする。
下から、鮫のように喰らいつくような太刀筋
悠介は、その剣を受け止める。
今までとは、違うほど、大きく、強い。
横薙を受け止め、そのまま、トウヤの顔面をアイアンクローで拘束し、膝蹴りを使い、顎に大きな一撃を与える。
「このままじゃ・・・不利なのか!?」
「アンタは、黙ってる・・・!!」
認めたくは無い。
だが、歪んだ思いの力によって、強くなっている。
本当に、この少年から、今の愛を取ったらどうなる。
精神崩壊など、序の口と言えるだろう。
精神は、消えるかもしれない。
「間違っているのは・・・僕達じゃないのか・・・?」
クロノが、、思わうほどに、トウヤの想いは力強い。
油断となった。
だから、悠介は、クロノの精神と感応し、動きにブレが生じ、刃が弾かれた。
初めてのことだ。
戸惑っている。
戸惑いは、死を生む。
クロノによって、自分の中に迷いが生じた。
「間違っているのは・・・」
何だ。
「僕達じゃないのか・・・?」
首筋に剣を突き付けられてその疑問を考える。
「ここまでなのか・・・?」
ふと、周りを見渡してみると、部屋の次元側の壁は、崩壊していた。
ここまでの戦いをしたというのか。
「燈也!!!!」
「また・・貴女なのか・・・」
なのはが、現れた隙を付き、殴ることなく、悠介は、神殺を手にした。
殴ることなど、闘うことなど出来ない。
「クロノくん・・・?」
「黒・・・騎士・・・?」
「僕には・・・出来ない・・・あいつと、闘うことが・・・」
「おい!!クロノさん!!」
「甘い事は解ってる・・・しかし、戦って、彼をこっちに助けた事によって・・・彼の為になるのか・・・?」
「解るけどさ・・・!!」
ただ、寂しげに、目の前に立つ騎士に、何もかける言葉は無い。
本当なら、今のプレシアの望みを、叶えてもいいのかもしれない。
クロノは、そう考える。
ただ、なのはにとっては、弟を、どういう気持ちであれ、助け出したいのだ。
この後、どのような結果になろうとしても。
「だから・・・私が・・・」
「やめるんだ!!」
「どうして!?おかしいよ・・・」
「本当の母・・・家族を得た、あいつから・・・また、それを奪うのか!?」
魂は別とは言え、精神でトウヤと交わったからこそ、燈也の本当の思いが解る。
「本当の・・・お母さん?」
「フェイトちゃん?」
「でも、間違っているんだ・・・」
確証は無い。
ただ、それは、間違いであると、フェイトは言えた。
では、
「人間じゃないお前に・・・ママの何が、解るんだよ!!」
「人間じゃない・・・か。ま、わかるけどね・・・」
小学生・・・子供、まだ、10にもなっていない人間が、平気で戦う。
そして、平然と戦わせる時空管理局。
確かに、中身は人間ではない。
答えなど、何処にも無い。
この形について、答えなど、何処にもないのだ。
「トウヤのお母さんは・・・ママは、プレシア・テスタロッサじゃないよ!!」
「何十世界の僕のママを殺して・・・よく、そんなことが言えるな!!」
怒りという名の、感情のままに。
動き出す。
もう、遅いのかもしれない。
「何で・・・どうして・・・」
「プレシア・テスタロッサって言う揺り篭を得たんだ・・・そっと、しておくべきだったんだよ・・・」
もう、出会うことが無かった筈。
だから、諦めることが出来た。
しかし、出会える筈の無い人と、出会ってしまったのだ。
人間なら、全てをかなぐり捨ててまで、そこに行こうと思いたがる。
トウヤはそれを行ったまで。
「フェイトちゃん・・・間違ってるなら・・・間違ってるって、教えてあげよう・・・」
「うん・・・」
このことが、間違いであるとだ。
ただ、間違いであるなど、言えなくも無いことではあるが。
その答えに、正解というものは何処にもない。
何処にもだ・・・
それは、人が求めて編み出した一つの形なのだから。
「うん・・・」
なのはとフェイトは動き出す。
この時点で、この二人は人の愛を否定している時点で、間違いであるといえるだろう。
気付いてはいない。
トウヤをプレシアから救うということは、トウヤを傷つけるということをだ。
しかし、クロノは、ただ、見ていることしか出来なかった。
悠介は、そのクロノに付き合うことにした。
何処で、動くか、見極める。
「僕から・・・ママを奪わないでよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
「トウヤのお母さんは・・・高町桃子・・・私のお母さんだよ!?」
なのはは、訴えながら、無防備な姿で、燈也の前で現れる。
しかし、燈也は、無防備だからと言って、手を出さない訳が無い。
憎いと・・・
思っているのだから・・・
「いい加減なことを言うなぁぁぁぁぁ!!!!!」
フェイトは、バインドをかけようとしたものの、すぐさま、それは破壊される。
バインドキャンセラーと呼ばれる、一部の拘束魔法を、無力化できる。
故に、そのような手は、無意味。
「やらせる訳には・・・!!!!!」
フェイトは、燈也に、その金色の鎌を振り下ろそうとするが、燈也の前では、無意味だ。
この戦いで、成長したのだ。
なのはや、フェイト・・・
クロノを超えるほどの戦士へと。
ラウンドシールドを展開し、それを無効化させた後、ラウンドシールドを刃へと変化させ、フェイトと対峙し、向かってきたフェイトのバルディッシュを砕く。
そして、フェイトを吹き飛ばす。
時を同じくして、なのはも、ディバインバスターを撃ち放ったが、剣により、光線は真っ二つとなる。
だから、プレシアをここまで思うことができる燈也は、幸せだから。
フェイトを、追い詰め、胸倉を掴み、勢いよく、頭上から、フェイトを投げ飛ばす。
「がっ・・・はっ・・・!?」
この状況になのはは呆然として、浮遊した状態で、ただ、弟だった者を見ていた。
本当に、自分の弟なのか。
トウヤは、なのはの視線に気付くと、ただ、言い放つ。
「撃ってこいよ・・・あんたの、最高の魔術をさぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
スターライトブレイカーを・・・
「僕には・・・何も出来ない・・・?」
「でも・・・それが、間違ってることは確かだよ・・・?」
「ヴィヴィオ・・・?」
クロノの体の中に、入ってくる、もう一人の人格。
高町ヴィヴィオ・・・
アマテラス・ヴィヴィオ・・・
「間違っていることは、間違っているって・・・教えてあげなきゃ・・・残酷なことでも。」
ヴィヴィオも、今までのものを見ている。
答えが無いということも解っている。
だから、燈也の思いは、痛いほど、伝わってきた。
燈也を止めることが、良いことであるのか。
解らなかった。
「キャぁ・・・!!」
「あぁぁぁぁ!!!!!」
バリア・ジャケットを、破壊される。
避けたと思っても、それがソニックブレードならば、バリアジャケットなど、破壊することなど、簡単なことなのだ。
愛を手放したくない、化け物が、これを可能とする。
「死んでしまえ・・・・ママの障害となるものは!!!!!!」
バルディッシュを、破壊。
フェイトを殺そうとするも、衝撃が、燈也に走る。
「うざいだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
収束される光が、黒騎士の鎧に逆に収束された。
「何が・・・高町なのはだ・・・!!!!!!!!!!それでも、僕の姉だった人間かよ!!!!!!!!!!!これが、憎かった高町なのはかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!所詮、マスかいてる人間の対象だ!!!人間でありながら、人間じゃないんだよ!!!!!」
スターライトブレイカー・・・
この化け物の前では、無意味と化すのか。
「あれを、くらってダメージ無って・・・どれだけ・・・」
化け物と呼べる。
歪む想いは、少年を強くする。
今、なのはが燈也に向かって撃ち放ったのは、トウヤの要求した、なのはの最強収束魔法・・・
スターライトブレイカー・・・
後に語り継がれるであろうなのは最強のものである。
筈だった・・・
しかし、今・・・
それは、封じられた。
「もう・・・言葉は・・・とどかないの・・・燈也?」
「僕の前を呼んでいいのは、ママだけなんだ!!ママだけが、僕を見てくれる!!ママだけが、僕を愛してくれる!!ママだけが、僕に優しくしてくれる!!!!」
それだけで良い。
ウィングブースターを、最大出力にし、哀れで孤独な狼のように、なのはの基へ最大出力で向かう。
襲い駆けるディバインバスターを、全て無効化にし、アクセルシューターでさえも、致命傷と呼ばれる部分に向かって、討ったとしても、無効化される。
「無駄だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!」
全てを、無効化。
それは、人間などではない。
誠に、人間の形をした化け物。
修羅であると言える。
怒り・・・
憎しみ・・・
母への想い・・・
これが、全ての力を活性化させる。
禍禍しくなりつつも。
力は、本物であるといえる。
母の前では、人間として。
敵の前では、修羅として。
ここまで、出来るのはプレシアに対するゆえの思いのことか。
なのはは、思い知る。
ここまで、プレシアを思っているのか。
そこまで、プレシア・テスタロッサを、愛していたのかと。
考えている時には、既に、目の前に、燈也はいる。
ここで、殺すつもりであったのなら。
まだ、肉親だと思っているなら、なのはは、燈也を殺すことは出来ない。
いや、9歳の少女に、目の前の弟を殺せというのは、無理なものか。
とは言え、今のトウヤを殺すことは不可能に近いことだが。
「やめて・・・」
「・・・」
何も、応えずに、レイジングハートを粉砕する。
ただ、コアだけは、無事だったのを解った時、少し、安心できた。
その、安心できた瞬間に、トウヤは攻撃を与える。
バリアジャケットを破壊。
容赦なく、その体に打撃を与える。
なのはの存在を許さないように。
「そん・・・な・・・お兄ちゃんだって・・・死・・・ん・・じゃうんだよ・・・?」
タカマチキョウヤ
「死んでしまえば良いんだ。」
「燈・・・」
まだ・・・
「なんだよ!!」
「がぁぁ・・・ぶはっ・・・」
頭部から全体に走る巨大な衝撃。
何も出来ずに、床へと突き落とされる。
全身に走る衝撃に、何とか耐えながらも、なのはは、動き出そうとゆっくりと鈍く、動き出した。
レイジングハートのコアを取ろうとした時、トウヤは、なのはの左の掌に、何かを撃ちつけた。
一瞬、その指に触れたレイジングハートを、また離してしまう。
「・・・次。」
なのはが、急ぎ、それを引き抜こうとしたとき、今度は右の掌に何かが突き刺さる。
「逃げないでね。邪魔しないようさ。」
意味は・・・?
「でも・・・それだけじゃ、逃げちゃうかもしれないよね。」
だから、ここで
「さっきのスターライトブレイカーっていったっけ?この光杭さ・・・それで作ったんだ。」
拘束
「仕方ないよね・・・これさ、バインドよりも、凄いんだよ!!!!!」
ここで
「ママの邪魔をされる訳にはいかないんだからさ・・・」
この場で
「苦しませて殺してあげるよ・・・昔、姉だったんだしさ。」
その身に・・・
「何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も何本も・・・刻み込ませてあげるよ!!!!!!!!!!」
言葉どおり、燈也はなのはの体に、何本も杭を打ち放つ。
なのはに向かって。
対応できずに、なのはの体を埋め尽くす。
心臓や、人間の急所に当てないのは、わざとか。
人とは思えない行為。
なのはの痛覚を切ることによって、傷みはないが、自分がどれほど、人間ではない存在になっているか、確かめる事ができる。
「っっっっっ・・・!!!!!!!!????????」
痛み・・・いや、それ以前に、無数に突き刺さるが故に、声が出ない。
声より先に、自分の体を想像した恐怖が襲う。
徐々に、増えていく。
「声に、出ないよね・・・!?それほど、気持ちいから、声が出ないんだよね!!!!!!!!!!」
わざと、痛覚を消している。
トウヤは、容赦することなく、首だけでも起き上がろうとするなのはの首を絞め始めた。
既に、なのはの中に痛感というのは無いだろう。
首から下まで、無数になのはの体に埋め込まれた光の杭。
激しく、そして、冷酷に。
「まだ・・・」
地面に貼り付けられたなのはに最後の釘を突き刺して、ゆっくりと降り立った。
なのはは、顔を横に向けて、ゆっくりと近づいてくる成長した少年を眺める。
「トウ・・・ヤ・・・?」
ただ、名前を呼ぶことによって、取り戻させようとする。
「まだ・・・呼ぶんだ・・・僕の名前を。ママしか呼んじゃいけないのに。」
故に、それ許されることなく。
「だって・・・私の弟だから・・・」
この期に及んで・・・
「あんたは・・・」
迷いは、無し。
「殺す・・・」
トウヤは、なのはの首を絞め始める。
「死ねよ・・・死ねよ・・・死ねよ・・・」
自らの手で、殺すことによって。
憎い相手を、自ら殺すことによって、実感を得ようとする。
「ゥ・・・ヤ・・・や・・・め・・・て・・・」
ここまで、人を簡単に、殺せる。
そこまでしたのが、プレシア・テスタロッサへの愛ならば、
「トウヤは・・・?」
「死ねよ・・・」
断ち切られたなのはの痛感を、トウヤは、復活させた。
なのはにまたがり、必死に、首を絞めて殺そうと言うのは、苦しめて、自分と同じくらいの苦しみを、刻み込もうというのか。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
救えず・・・
「フェイ・・・ト・・・ちゃん・・・?」
無
「引っ込んでろよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!弱いんだからぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
無防備ながら、なのはを助けたいと言う思いが、フェイトを動かした。
バルディッシュを復活させて、戦場へと。
ただ、トウヤの前では、無防備すぎる。
その金色の羽が、意思を持つかのように、無数の刃となって、フェイトを突き殺そうと変化し、蛇のように動き出した。
「フェイト!!!」
「ある・・・ふ・・・?」
フェイトの勢いが、止まったのは、目の前にいる自分の使い魔が、トウヤの金色の羽によって、血塗れになったという情から生まれた感情。
「だから・・・ダメだって・・・」
「アルフ!!!!!」
「終われよ!!!!!!!!!!!!!!!」
冷酷に言い放つ、その声。
「え・・・?」
フェイトの耳に、風の音が走る。
気付いた時には、既に遅い。
トウヤの金色の翼の刃が、フェイトの腹部に深く・・・
突き刺さる。
「ぐぁ・・・・・・・・・・」
「ママの邪魔ばかりするから!!!!!!!!!!」
「クロノさん・・・」
「殺され・・・る・・・?」
目の前にいる少女が、殺されようとしている。
自分の、殺せない相手によって。
「どうすればいい・・・」
殺せない。
殺したくても、殺せない。
しかし、ここでなのはが殺されれば、どうなる。
「解っている・・・」
だから、動けなくなる。
他人の命を犠牲にしてでも、自分が生き残るという手段さえある。
最も、人間らしいが、後味の悪い結果になる。
「あいつは・・・!!」
プレシア・テスタロッサがいたから
「だから、ここまで強くなれた・・・!!あんたたちといたら、ママに会う前に、殺されてたよ。高町士朗にね。」
「違うよ・・・トウヤ・・・お父さんは、そんなこと絶対にしない・・・」
トウヤが、何を望んでいたのかを。
「穢れを知らないから・・・奇麗事しか言えない。そうやって、常に自分の考えを肯定させようとする。」
本能的に、トウヤは、そういう人間を嫌う。
ここで解る。
カ
マ
チ
ナ
ノ
ハ
を嫌う理由の一つというものが。
それが解っていれば、こんなことにならずに、すんだのかもしれない。
「トウヤと・・・接してあげれば・・・上げれば・・・良かった・・・んだ・・・」
「ほら・・・奇麗事を言ってる。」
そういえば
「アイツもそうだったよね・・・ユーノ・スクライア・・・あいつは、僕の中に勝手に入ってきた。だから、死よりも、その身に苦痛を刻み込んだんだ。」
また、嬉しい誤算として
「あんたとの絆も崩壊したことだしね。」
黒騎士の正体・・・
「げほ・・・ゑ・・・」
自分の、自分のことを、なのはがわかると言うのか。
燈也は、なのはの痛感を復活させ、そのダメージを感じさせる。
「ママを何人も殺したあんたに・・・死よりも思い苦痛を与えたい。その後に・・・殺してやるよ・・・絶対にね。」
「殺して・・・無いよ・・・」
殺したと、思っているのなら、それは
「トウヤが・・・どこかで望んでた・・・事・・・」
「燈也の見た・・・悪い夢・・・」
「私達が燈也を虐めたのも・・・悪い夢・・・」
「悪い夢なんかじゃないんだよ!!そうやって、自分を否定することをしない!!自分が正しいと思っているから!!」
なのはは、懇親の力を振り絞って、燈也を慰めようとした。
しかし、それは、燈也の怒りを買うことになった。
自分のことを慰めていいのは、プレシア・テスタロッサであり、アリシア・テスタロッサだけだから。
「死ねよ・・・」
そこに、躊躇いは無い。
「全てを決する・・・どのような、形で終わろうともだ!!ヴィヴィオ・・・!!!!」
「うん・・・」
悠介の封印をとくことができるのは、ヴィヴィオと悠介だけ。
北欧の、戦闘神。
一時的であろうとも、封印を解く時。
ヴィヴィオとて、その哀れな黒騎士から愛を奪うことなど出来ない。
しかし、やらなければならないのだ。
それが・・・
どのような結果に、終わろうとしても。
「封印・・・解除・・・」
この、突如現れる突出した力。
しかし、それを所持しているのは、 実体を持つクロノ・ハラオウン・・・ただ、一人。
「この力・・・?まだ、クロノ・ハラオウンは!!」
なのはを殺すことは、いつでもできる。
しかし、この力は危険だと、理解することはできる。
今、自分以上の力を、クロノの中にいる、誰かは、有すしていると。
いや、クロノの中にいる誰かが、クロノの潜在能力を解放したと、トウヤは見た。
「ごめん・・・殺さないから・・・」
謝りながら、クロノは、なのはの拘束を全て解除し、自分の場所へと転移させ、燈也の足元に結界を張る。
何人たりとも、そこから出ることの出来ない、絶対結界。
神霊極結界・・・
「違う・・・さっき、戦ったときのクロノ・ハラオウンじゃない!!!動け!!!動けよ!!!僕の体!!!」
動けず。
そこは、既に悠介がトウヤの動きを止め、クロノの支配している世界同様
「何だ、クロノ・ハラオウンの背後の・・・神は・・・!?」
クロノに漂うオーラは、全て形作る。
この、背後にいるか身の名は・・・
「オーディン・・・!?」
「ごめん・・・」
戸惑いを捨て、クロノはゆっくりと歩き出す。
結界から作り出される、刃で創られた球体に、包まれながら、トウヤは、そこから脱出する方法を考える。
しかし、脱出など、できるはずも無い。
この結界から、さらに・・・
一体の神が現れる。
それこそ、背後にいた神オーディン
さらに、複数の剣。
クロノの体が、光り輝き、草薙の剣を振り下ろした瞬間に、一斉に燈也に切りかかる。
「そんな・・・こんな、こんなことって・・・」
信じられない・・・
さっきまで、互角だったのに。
何故、こうも簡単に。
「燈・・・也・・・!?」
なのはが見た時、それは、燈也が切り刻まれたかのように見えた瞬間。
しかし、クロノは殺していない。
その証拠に、血塗れになっても、弱弱しく、燈也は立ち上がった。
元の姿で・・・
トウヤ・テスタロッサとして・・・
「燈也!!」
なのはの叫びは、トウヤには届かない。
「ま・・・だ・・・」
あるだけの力を振り絞って・・・
翼を展開させ、トウヤは、プレシアの元へと、戻った。
「ご苦労様・・・浦島・・・悠介君?」
「いえ・・・こうしなければ、被害は、増えていましたから・・・母さんたちを守るため・・・ですから。それより、自分の心の弱さに、苛立ちましたよ・・・」
「ヴィヴィオ・・・後を、頼む。」
「うん・・・」
クロノの体から、現れる一体の精神体。
アマテラス・・・
その存在が、なのはの体に刺さった無数の光の杭を浄化していく。
さらに・・・
なのはと、フェイトの傷を無かったことのように、癒し始めた。
「ごめん・・・なのはママ・・・フェイトママ・・・。」
「トウヤ!!!!???」
プレシアは、帰ってきた、我が子の姿を見て、急ぎ抱きしめた。
傷だらけの姿。
そこまで、強い人間が、管理局にいたのか。
いや、そのようなことはどうでも良い。
トウヤが、それでも、こうやって、無事に帰ってきたことが、プレシアには嬉しかった。
「ごめん・・・なさい・・・」
「ううん・・・ごめんね・・・ごめんね・・・」
強く、抱きしめ、トウヤのために、涙を流す。
それに、嘘と偽りは無い。
「トウヤ・テスタロッサ・・・いえ、高町燈也の返還を・・・求めます。」
「うるさいなぁ・・・」
「私と・・・燈也・・・そして、アリシアと・・・三人で・・・」
「なんだ・・・本当に・・・愛されている・・・僕には、それがわかる。」
クロノの進入など、気に求めず。
燈也は、自分を抱きしめている人間を見た。
目の前にいる、姉・・・アリシア・テスタロッサ。
フェイトの言っていることなど、全くわからなかった。
何を、言っているのだろう。
消えゆ。
「まだ・・・終われないんだ・・・!!」
「トウヤ!?」
もう、ここに、あの鬼はいない。
ならば、
「大丈夫・・・僕が、全て・・・排除する・・・」
「トウヤ・・・!!」
「刃で殺しておくべきだった・・・如何なる、ことになろうとも。あの時、僕は、母さんのいない地獄を、一瞬見たんだ・・・」
だから・・・
「もう、お前は、娘じゃないんだよ!!!お前は、受け入れないんだよ!!!」
プレシアの人形であるのだから。
「まだ・・・これほどの・・・!?」
瀕死に近い重傷を負って尚、立ち上がろうとする力は、何処から湧く。
「トウヤ・・・もう、いいの。」
「何を、言って・・・」
言い訳が無い。
「もう、言い訳が無いんだ。」
このトウヤにとっては。
「ここにいる敵を、全員殺さなきゃ・・・ダメだ!!」
プレシアのために動くが為に、トウヤは立ち上がることが出来る。
「だって・・・」
力が抜けていく感覚。
何故・・・
「母さん・・・どうして・・・」
力をプレシアが、放出していた。
これ以上、戦闘はさせたくない。
母ゆえの、優しき愛。
「もう、私たちを放っておいて!!!!」
突如、プレシアはトウヤを抱いたまま、巨大な、魔法陣を展開させた。
崩壊する時。
そして、トウヤが・・・
プレシアと、共に逝く時。
故に、揺れが激しくなることも、トウヤは予測できた。
そして、三人で
「一緒に・・・」
「そうよ・・・トウヤ・・・アリシアと一緒に・・・」
その、次元の穴へと、落ちる・・・
「ずっと・・・こうして・・・」
「えぇ・・・一緒だもの・・・行きましょう・・・アリシア、トウヤ・・・今度は、もう・・・はなれないよ・・・」
「寂しく・・・させないで・・・」
「燈也!!」
落ち行く燈也を、なのはは、必死で救おうと、全力で、その場を駆けようとした。
しかし、何かが、なのはの腕を掴む。
「もう、諦め・・・燈也は、プレシア・テスタロッサと一緒にいることが、一番、良いんだよ!!」
「そんなこと・・・」
「闘って、解っただろう?燈也が、プレシアをどれくらい思っているのか・・・」
クロノは、無理矢理、なのはとフェイトを引っ張り、転送させた。
これで良い。
「これで・・・良いんだ。」
クロノは、一つ呟いて、アースラへと帰還。
崩壊する庭園を、アースラの中で、ただ眺めていた。
そして、自分の中にいるオーディンの感覚が、消えたのを感じた。
封印される中で、トウヤのことを考える。
ソシテ・・・
ヒトリノニンゲンハ・・・
ココデ、キエ・・・タ?
| 漆黒の破壊天使(完) | 00:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑