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ACT-ⅢⅩⅨ『全て終わって・・・』

彼は腐抜けた。


「・・・なんだ?!此れ・・・」

一人の男が見たのは絶望だった。

病院の小さなベッドの上で、全ての仲間たちを見送った後に、後は、勝利を信じるのみだと病院の見知らぬベッドの上から無機質な壁を眺めて感じた。

仲間たちすら信じられなくなるなる位であると言っても彼にとってはよかったかもしれない。












「さぁて・・・そろそろだな・・・敵が見えてくる。」

そこが、

「君の死に場所。」

だから、

「出ろといったのに・・・」

「だって・・・ママたちを・・・」

「あのさ。戦場で、君の母親は、戦っていたんだよね?」

「うん・・・」

「戦場に出たら、人なんて死ぬんだよ。」

それが、

「いくら、正義のための戦いとか言いながらもね・・・」

戦争なんて己が正しいから戦っている訳であり、その思想など、全ての兵士が正しいと思っているわけでもない。

戦場に正義などある物か。

正義のために戦っていても相手にとってはそれは悪。

個人の正義など単なる自己満足だ。

殆どの戦場に生きる人間は生きるために、家族とまた再会するために。

「人の死なない戦場なんて、そんなの奇跡だよ。」

だから、

「割り切りな。そうじゃないと、本当に死ぬよ?」

悠矢の言葉は重かった。

ヴィヴィオにとっては。

「ま、仇を取るのは自由だけど。それを、悲しみばかり・・・うじうじしているだけなら・・・本当に、死ぬだけ。兄さんは死んだら、復讐と言う力のためだけに強くなったしね。」

だから

「まぁ、それが出来ないんだったら・・・死んだほうが良いよ。本当に。戦える力があるのに・・・」

「私、戦ってました・・・!」

「そう。でも、アマテラスの力は全てを晴らす。筈・・・だったんだけど?」

それが出来ていないのは、

「やっぱ、気にしてるんだよ。死人のこと・・・」

大体

「問題あるのは、君の母さんの方だったんじゃないのかな?」

まんまと、敵に操られ見方に牙を向き、そして戦った。

「君の、母という人物より・・・本当は・・・」

何を言おうとしたのかヴィヴィオは聞き取れなかった。

ただ、そう、呟くだけ。

「さて・・・ブレード・・・アップ・・・!」

虚空から自然と黒と白の刃が二つ現れる。

「この結界・・・破壊する・・・!!」

二つの、何も変鉄の無い刀が其々の刀身の色に輝き始める。

その光を見て、思うことは芸術的な美しさだ。

それが、巨大化・・・

二つの刀身が、巨大化しそれは、斬艦刀以上の超巨大刀となった。

光れ輝け。

「よいしょっと・・・!」

ただ、巨大な刀を振り下ろすだけの、その刀は、

「次元断・・・!!」

此れは、ある種、

「俺は、自分の力以下の人間なら、確実に殺す事ができる。そして、壊すことができる。」

今、この結界が壊れたのは、

「ふざけてる。俺に合わせたな・・・?」

静かに言いながらも、その奥には侮辱感のような物が漂っていた。

「しかし、破壊できたから、良いじゃねぇか。」

「甘いよ。白虎。奴らは誘っているんだ。」

それと同時に向こうに行く事を的は、わざわざ待っているという。

何処まで、色んな意味で信頼されてしまっているのかと、どこか、腸が煮え繰り返るような屈辱感があった。

お前など、軽く殺せる。

とはいえ、殺すつもりは無いだろう。

その想いの中に隙がある。

そう思える。

そう、思わなければ戦えない。

それほどの敵が目の前に存在しているという事だ。

「貴方は・・・何のテスタメントなんですか・・・?」

「テスタメント?あぁ、神人のことね。僕は、オルクス・・・」

本来はエトルリアの神で墳墓の壁画などでは髭を生やした恐ろしげな巨人の姿で描かれる。

しかし、能力は殺すという部分を重点的に置かれている能力であるといってもいいだろう。

ある種、殺すという能力は、自分以下か、同等であるのなら確実に殺せる能力を持つ。

「さぁ・・・兄さん・・・返してもらうよ?」

ここから・・・

兄であるスサノオの気配を感じ取る事ができる。絶対的な力を持つ神、死を操る能力。

死神の能力を持つテスタメントは多い。

現に、憐のアヌビスの能力は死者の魂を取り込むことによって強化。

アリシアのデスの効果は、全ての正史を操る正に一番死神に近い能力であると言っても良いだろう。

そして、オルクスは殺すという分野で一番特化された能力。

殺す・・・

ある種、それだけだ。

しかし、その単純さゆえに、それは、相手の能力を殺すという意味でも使える。

それが、先ほどの、結界の破壊であると言っても良いだろう。

砕くだけ、砕く。

此処の全てを。

「・・・・・・・・・・・・!!!」

そのために、自分のブースターとなる存在が必要となる。

全てを破壊するために、自分の能力を上げるためのハイブースター。

来い。

「さて・・・久しぶりに出したけど・・・成功したね。」

そして、

「本当に降りないんだな?」

「うん・・・」

刀を二本出した悠矢は目の前にある空間結界を前に、軽く振りおろし、その結界を破って見せた。

「え・・・?」

「目の前にあるのが、兄さんのある場所。」

ミッド・・・

いや、全ての世界につながる一つの楽園・・・

それは、全てという全ての願いがかなう場所でもある。

ある人間からは、アルハザードと呼ばれる場所。

しかし、この場所は、別世界からは得てして、その名前で呼ばれることのある。

イエスや神々の血を多く飲み込んだその土地の名前が、この聖地と呼ばれる場所の真の名前である。

ミッドチルダにまでキリスト教が信仰されているというのは、ほぼ、この、アルハザードが原因であるといっても良いだろう。

全ての宗教の中で、最も、キリスト教が盛んであるのは、全ての世界にこのキリスト教の伝承者がいるからだ。












ティーダは、ふと見る夢を思い出す。

此れの意味を調べて、本来眠っている筈の力が誰なのか解る。

「ははは・・・」

ベルフェゴールの魂が存在しないからだ。

元より、二段転生ではなかった。

転生自体など、彼にとってはありえないもの。

唯一のサマエルのテスタメントでありながら、ベルフェゴールは、一種の撹乱といってもいいのかもしれない。

「暁の子、明けの明星よ。どうしてあなたは天から落ちたのか。国々を打ち破った者よ。どうしてあなたは地に切り倒されたのか。」

夢の中で、聞かされる一つの台詞。

「さぁ・・・?俺には・・・良くわからない。」

ある種、神の反逆を最初に行った損座衣であると言っても良いだろう。

神に反逆する、天使の名前・・・

それは、ルシファー・・・

ルシファーとは、キリスト教の伝統で、サタンの別名とされる。

ルシファーはもともと、ラテン語で「光を帯びたもの」を意味し、キリスト教以前から「明けの明星」を指すものとして用いられ、オウィディウスやウェルギリウスなどの詩歌にも見られる語である。

教父はサタン、堕天使、悪魔と結び付けており、今日でもキリスト教会で採用される理解であるが、サタンや堕天使を伝説とする考えもある。

キリスト教の伝統的解釈によれば、ルシファーは元々全天使の長であったが、土から作られたアダムとイブに仕えろという命令に不満を感じて反発したのがきっかけで神と対立し、天を追放されて神の敵対者となったとされる。

まだ、欲望に塗れていなかった頃の、聖人君子のような人間・・・

しかし、彼の愛する欲望に塗れた人間を、いざ、神が人を滅ぼすと言った瞬間、誰よりも最初にルシファーは神にたてついた。

そのとき、神に叛逆するルシファーを中心に据えて人々は歌い上げ、その後のルシファーにまつわる逸話に多く寄与することになる。

それが、第一次神滅大戦での、戦いである。

しかし、神・・・

創造主ヤハウェの力は、ルシファーとそれに従った者達では倒せないほどの強大な力だった。

彼との戦いで、ルシファーは確実的な死を予感した時、時を大きく遡り、自分の命と力を殆ど消費した状態で、生まれたばかりのいや、胎児の状態であるティーダ・ランスターに取り付いた。

実際、サマエルの力は弱くなっている。

それは、ルシファーが、ティーダの中に入ったのと同時に、ルシファーがサマエルの一部を取り込み、ベルフェゴールを生み出したからだ。

それを恐いと感じるのは何故だろう。

自分の中にある恐怖・・・

力を得て、恐いと思ったのは、初めてのことだ。

「そうか・・・俺が、ルシファー・・・」

「恐れる事は無い。」

「バラバ様・・・」

「君は、君なのだろう?」

「はい・・・」

「それを強くもつといい。君は強いのだから。」

「はい・・・!」

強く・・・

ただ、強く保つ。

ティーダはそれを誓う。

「兄さん・・・」

「ティア・・・それに、瑠璃ちゃん。」

二人の妹と接する時は普通の兄として、そこに存在している。

「流石に、此処から、脱走しようっていう気配はないか。」

「それは・・・もう、にいさまが戦うことを辞めましたから。」

悠介が戦うことを辞めた。

そして、悠介が戦わないのならそうするだけである。

悠介側から見てイエス・キリストをどう見るかの目的の中で、ある程度は決まっていたが、悠介が付くというから、ミッドを簡単に裏切った。

人間に魅力は無い。

それは、ある種、本来の目的を持ったからだ。

「君は?ティアとどうしたいの?」

「好きな者同士の事です。私は、ティアの子供を産み、そして、育て、ティアと一緒に死にたい。」

「正直だ・・・ただ、君なら、それは、出来るんだろうね。」

「兄さん、無理してない?」

「え・・・?」

ティアナに、言われた一言で、一瞬、ティーダの顔が引きつり一瞬で戻した。

いつもの、優しいティーダに戻った。

「俺は・・・大丈夫だよ。」

「そう?なら・・・いいけど。」

大丈夫な訳が無い。

ティアナは、振り向き様にティーダの顔を見た。

やはり、無理をしている。

何か、恐れているような。

ただ、あれ以上は実の肉親であろうとも、関わってはならないと思った。












「ほう・・・私に・・・抗うか?」

「黙れ・・・」

「私は、お前なのだよ?お前は、ルシファーでもある。」

ティーダにしか聞こえない、ティーダの声。

ルシファーの声はティーダと同じである。

「何を・・・するつもりだ・・・」

変わり始める。

頭髪も特徴的な朱色から漆黒の色に・・・

「違う・・・俺じゃない・・・!!辞めろ!!」

俺を

「支配するな!!俺から、出て行け!!」

「それは、無理だ。私は、お前としてまた覚醒したのだからな。生まれたばかりで制御も出来んのだ。」

意地悪のような、からかっているかのような言い方。

それに、

「半分、力を化してやっただろう?」

「あの時・・・!?」

「貴様が、無様に月に押し潰されそうになった時さ。」

あの時は、

「サマエルが・・・俺の中の・・・」

「そう。お前の、俺の中の力を私が解放したに過ぎない。」

眠らせていた、

「力をな。」

「何をするつもりだ?」

「イエスを殺す。」

「!?」

「ふ・・・それも、アリだろ?」

「お前は・・・!」

「欲望が人間の本質。それが薄い人間達を集め、全ての人間を滅ぼすだと?私が、それをさせない。人は、醜く殺しあう物さ!」

「それが、見たかったのか!?生き残らせるために!!そんな、物を見るために・・・!!」

「そうだ。私だけだよ。あの戦いだけで、そのような理由で、お互いに滅ぼしあう人間を見たいが為に、私は、反乱した。」

「俺を選んだのは!?」

「選んだ?馬鹿を言っちゃいけない。正直、中にいる神が私と同じ属性に近かったのでね。」

「サマエルか・・・!」

「そう。神の悪意を意味する者。私と同じ。」

十二の翼をもっていたと言われ、ルシファーと同一とも言われるその存在。

「私が、それを取り込んでもおかしくは無いだろう?」

言わば、ルシファーが二人もいるような物・・・

徐々にそれは一つになろうと・・・

「私を受け入れろ。お前の人格を私に。」

「断る・・・!」

「それが・・・出きるかな?」

既に、

「体のコントロールは私が乗っ取ったような者だぞ?」

「貴様ぁぁぁぁ!!!!」

ティーダは抗うように体を動かす。

しかし・・・

それは・・・













「よう。クロノ・ハラオウン?憐・ヴィオラ。」

「あぁ・・・」

「エイミィ・ハラオウンは悪いけど、今、寝かしつけてる状態でね。」

「そう・・・か。」

「それで、ここにきたってことは仲間になるってことでOK?」

「あくまでも、仲間に・・・」

「そう。私の生活を保証してくれるなら、仲間になってあげる。」

「良いよ。憐は、話がわかるようだ。」

憐・ヴィオラはその境遇を受け入れる。

此処に来て、毒気に当たったのか。

別に、

「ドゥーエが死んだのは管理局の連中のせいだし。」

憐は、此処に別段、恨みでもあるわけではない。

ただ、殺して見たいから戦っていただけ。

勝てないと悟れば、敵につく。

生き残り、殺しを続けるための手段であるとでも言った所か。

「全く・・・君達二人には勝てないからね。」

「単独なら、勝てると?」

「多分。」

「多分・・・ね。」

とはいえ、

「実力は五分五分だろうな。俺たちは。」

クロノ・ハーヴェイは、ただ、部屋で雑誌を読みながら、ねっころがり憐も、そうする。

どうせ、広い部屋だ。

何をやっても良いだろう。

どの道、こいつ等と戦う気も起きない。

奥から強大な力を感じることもできる。

「んで、あんたは、どうするの?クロノ・ハラオウンは。」

「俺は・・・・・・俺は・・・・・・!」

「良い?エイミィ達は人質にとられているのと同じ。」

「人質・・・・・・」

「私達が戦えば、エイミィなど完全に殺すことだって敵は出来るのよ。」

「待てよ・・・!それは、奴等が・・・!」

「私たちを、見方につけるだけの人質よ。」

「お前は、何で・・・」

「敵に勝てないから。」

「それでも・・・ミッドにいる仲間たちを・・・」

「仲間って、はやてお嬢ちゃん達?どの道、死ぬんだから・・・」

無駄よ。

無駄・・・

ただ、その一言がクロノ・ハラオウンに突き刺さる。

「それじゃぁ、奴等を迎えに・・・!」

「何人、制裁されるかしらね?」

「制裁だと・・・?」

「そうでしょ?戦闘機人だっているわけでだし。」

初期タイプ・・・

全て・・・

敵・・・

「此処の連中に取っちゃ、あんな、奴等は忌むべき存在の筈よ。」

「しかし・・・生きてる・・・」

「生きてるんじゃないわ。生きてる振りをしているの。」

「そうだ。」

「そして、私もね。」

「お前はテスタメントだから特別だそうだ。」

「あら、嬉しい。」

既に、自分達が何かできる状態ではない。

ここの人間達は、それ以上の強さ。

集まっても、

「勝利は出来ない。」

「だからって、諦めるのか!?世の中・・・」

「奇跡は人の手で起こそうと思っても起きないから、奇跡って言うの。御存知?」

「解ってる・・・だが・・・!!」

まだ、希望はある。

スサノオ・・・

「スサノオは、もう、戦わないだろ。」

「何で!?」

なんで、そういえる。

キッっと、クロノがクロノに言う。

「もう、戦う意義が完全にそがれたからな。」

「人の復活か・・・」

「まさに、主の側近であるバラバ様の・・・奇跡のお力だ。」

「奇跡・・・」

「奇跡の大安売りは、彼等ができること。お分かり?」

「っ・・・・・・!!」

だから、

「勝ち目はないのよ。私達はね。」

「・・・」

「世の中、精神論で通じる訳がないでしょ?」

「そうそ。諦めろよ。」

堕落しきっている。

どこか・・・

解せないクロノ・ハラオウンは、抑えられない怒りの感情をぶつけられずにいた。













「戦いを止めてくれて、助かったよ。」

もう、知世が隣にいる。

力の暴走によって、全ての仲間が目の前にいる、神名飛鳥によって命を落とした。

何故、そうなったのか。

それは、イエスの力の暴走として片付けられた。

そして、飛鳥は・・・

「すまない。」

悠介に深く頭を下げた。

そうして、許してもらおうと思った。

その姿に何もいえなくなってしまった。

ただ、

「もう・・・此処で・・・ねっころがるしかやる事無くなったな・・・」

「そうね。悠介・・・」

知世の体にも、魂にも、何もされていない。

こうする事によって、此方は、何もする気は無いというアピールをしているのだろう。

ある種の無気力状態な位置に入った悠介は、用意された部屋でただ、掌を開いたり握ったりしている。

隣にいる、知世の温もりを確かめながら。

「何か・・・平和だ・・・」

「そうね・・・」

求めていた生活が今、此処にある。

もう、このまま、何もする気は起きない。

「悠介。客が来た。君にね。」

「誰・・・?」

飛鳥に向かって、二人の時間を邪魔された、悠介は嫌そうな顔をしながら、飛鳥を見た。

「悠矢。」

「あいつが・・・・・・?死んだんじゃ・・・・・・」

「悠矢は生きてたよ。」

ずっと・・・

遥か未来。

イエスの望むべき世界の向こうの住人として、悠矢は暮らしているはずだった。

そこで、心すら浄化されていたと思われていたが、今、こうして、結界を破り、悠矢は悠介の前に現れようとしている。

「何故・・・」

あいつが・・・

「おそらく、私たちのことを見に着たか。場合によっては、破壊しにきたか。」

「・・・・・・」

しかし、

「あいつが、そうする理由・・・」

「解るけどね・・・私にも。」

「飛鳥、何故、貴方が・・・」

「私はテスタメントだと思っていたんだけどね・・・」

該当する神は全ていなかった。

ただ、それでも、強大な力を持ち新種の神人であるとも言われた。

「お前達が旅立った後、俺は全てを見てしまってね。」

それによって

「力が暴走したのかもしれない。」

「何を?」

「人間の薄汚さ・・・」

奥の瞳の中にある物を全て見たとでも、いいたそうな口ぶりであったといえるだろう。

だが、この男は、そう言う部分において嘘をつくということは一番、ありえないことであると、良く知っているのは、長年付き合ってきた、悠介であるからといえる。

悠介であるから・・・

全てを知っている。

嘘は言わない。

「悠矢に会いたい?」

「会いたいよ。会って、これは、無謀な戦いと伝えなきゃいけない・・・」

その奥にある物を、恐怖と言う物をわかってしまっているから。

「恐怖か・・・」

「事実、知世を蘇らせた、あんた達に勝てるとは思えない。」

「そう・・・」

「うん。」

それを聞いて、安心した。

どの道、戦いは終わったのだから、戻れと。

言いたかった。

悠介と知世は手を繋いだまま、飛鳥に案内される場所へと向かった。

「アルフ・・・いないのか・・・?」

ズット、放っておいた、自分が悪いわけでもあるのだが、アルフがいないことに今更気付く。

ただ、知世といた日々が充実していた。

故に、パートナーとなった、彼女の存在は忘れている。

ただ、燈也と一緒にいるのだろうと、勝手に、そう思った。

もう、本当に欲しい者は、こうして手に入れたのだから。

「知世・・・」

「何?」

「俺は・・・」

「このままで言い。悠は私と一緒にいればね。」

「ん・・・」

こうして、手を繋ぐだけで戻ってきたと思う。












「兄さん、戦う気が無いというのか・・・?」

「悠矢さん・・・?」

「兄さん・・・戦う気が・・・」

このまま、退くべきか。

「完全に、戻るべき人が戻ってきたし・・・完全に、兄さんを骨抜きにするための手段か・・・・・・」

得る者を得てしまえば、既に、

「兄さんは動かない・・・もう、やることを果せば・・・醜い人を見てしまえば・・・」

全て、動かなくなる。

義弟であるからこそ、解る事がある。

正に、此れは、それである。

一度消えた、知世の気配が、完全に、此処で、蘇ったのだから。

「偽者か本物かくらい・・・何か、仕掛けてあることだって、どんな者でも、兄さんは見破られる・・・でも、まだ、生きているって言う事は・・・そう言うことなんだ・・・」

それをできる敵がいることに、一瞬の恐怖を覚える。

「生きている・・・いや、復活させている・・・」

そこまでできる力がある。

死者を蘇らせる事など、容易なことである人間が、何人でもいる。

人を蘇らせる力がるというのは、力としてはかなり強い。

人として。命を操る事が出切ると言うことが、死をも簡単に操る事が出来る。

それが、神の子と呼ばれた存在であるのなら。

生きている。

完全に、悠介の戦意を削ぎ取った。

そうなれば、敵に寝返っても、おかしくは無い。

それか、戦わずに、あの中にいるか。

そう言う人間だ。

敵の本拠地にいて、敵が虐殺を行っても、気にせず、そこにいる男が悠介であり、そして、知世である。

ある種、二人が結ばれたのは、そう言う部分で気があったからでもあるといっても良いかもしれない。

しかし、戦いの呪縛から逃れるためには、ある種、相手のやることは救いであると言っても良いだろう。

冷静に考えるのであれば、ここで、撤退をするべきだろうと考える。

しかし、それをさせない相手が、目の前にいる。

確実に、此処で死ぬというのに。奴を殺す事は出来ない。

アマテラスの力は、オルクスを少し、凌駕しているからだ。

ここで、アマテラスを殺す役割は自分であると思っていた。

戦闘経験の差と言うわけでもなく、ヴィヴィオも、此処のオルクスの恩恵を受けてしまっているということだ。

一応の、ヴィヴィオのブースターとなっている。

アマテラス+オルクス・・・

そして、オルクス一体分・・・

勝手に、力を乗っ取ってる。

ヴィヴィオをここで、実力で差を見せ付けて殺すべきか。

それも、考えておくべきだろう。

「解った・・・」

「行って。」

「気が進まない。もう、兄さんも、戦う気は無いだろ。それに、恐い。」

「仲間だったんでしょ!?」

「そうだよ。でも、兄さんは戦う気は無いようだ。」

それならば・・・

もう・・・

「必要ない。それに、恐い。」

「恐がってるの?」

「恐いよ。それに、敵地に乗り込もうとしているのに、君が何も思わないことに、恐怖を感じるよ。俺は・・・」

だから、

「いかないけど・・・」

自分の命を人質に取られてしまっているような物だ。

「行くの?」

「行く・・・」

「何しに?」

「戦うために・・・」

「本当は、目的も糞も無いんだろ?」

「っ・・・ある!」

図星をついたか。

所詮は、アマテラスとは言え、子供・・・

10にもなっていない、子供が考える事には、矛盾と言う者がある。

それなりに、必死に理由も探しているのだろう。

そこに、隙というものが存在している。

ただ、攻め込むだけでは、勝利する事は出来ないだろう。

腐っても、アマテラス。

その、手に持つ武器は厄介だ。

「悠矢。」

「っ・・・!?」

声が、聞こえた。

そこにいるのは、スサノオたる、悠介。

顔色など、体調面には問題は見当たらない。

骨抜きにされたのは、精神的な部分。

全てが的中した。

「兄さん・・・」

「悠介・・・・・・?」

「こっちにおいで。悠矢。」

静寂な中に、恐怖と言う者がある。

静かな死神とでも言うべきだろうか。

悠矢の背中に悪寒のような物が走る。

ただ、オルクスを、悠介のいる場所の近くまで、連れて行き、そこで、自分の力を封印する。

改めて、感じる事ができるのは、この土地・・・

アルハザードの奥にある、言葉に出来ない、何とも言えない、何か、強大な力に怯えている自分がいる。

そこまで、自分が弱いというつもりはないが、此れは、自分の弱さを気付かせるほどの、強大な力だった。

「兄さん・・・此れは、何・・・!?」

「敵だったものだよ。」

「敵だったもの!?此れが!?」

強大すぎて、気持ち悪くなる。

センサーのような物を最大まで張っているとは言え、それでも、微量ナチからを感じれば、此れの恐ろしさの本質に気付く筈だ。

何故、気付かない。

何故、貴様は、気付かないのかと。

悠矢は、このヴィヴィオに訪ねたくなるほどだ。

しかし、馬鹿になっているのだと思えば、その答えに全て正解がつく。

目の前にいる、悠介を見れば。

しかし、ヴィヴィオは、その悠介の姿を見て、酷く、落胆しそうになった。

此れが、倒そうとした、母を殺した、高町なのはとフェイト・テスタロッサ・ハラオウンを殺した、浦島悠介であるのかと。

いつでも殺せる。

いつでも・・・いつでも・・・いつでも・・・いつでも・・・いつでも・・・いつでも・・・いつでも・・・いつでも・・・その欲望が、ヴィヴィオを掻き立てる。

殺せる力が・・・殺せると、ヴィヴィオは踏んだ。

母の仇が討てると。

ヴィヴィオは、急ぎ、そこから、飛び出そうとする。

しかし、それを止めるかのように、紅い獣が割って入る。

すっと・・・

彼女が入り込んだ。

「待って・・・!ヴィヴィオ!!」

「アルフ・・・!?」

ヴィヴィオと悠介の間に入るかのように、そこにアルフが入る。

「アルフか・・・」

「悠介、解っているのかい?ヴィヴィオはあんたを・・・」

「あぁ・・・そうだな。でも、殺されるつもりも無いしな。」

寄らば斬る。

と、でも、言いたいかのように、悠介は言う。

「アルフ・・・どいて・・・って、言っても、どかないんだよね?」

「どかないよ。」

「無駄だ。ヴィヴィオにアルフは、殺せない。」

逆に、殺される。

「悠介は、随分、充実しているようだね・・・!」

「あぁ。帰ってくる人が、帰ってきたからな。」

出きれば、静観しているつもりだった。

それでも、やはり、必要となるのだろう。

悠介が、少し不安な顔をしているのは、自分が、いないと情緒不安定になるから。

情緒不安定になっている。

依存しなければ、ある種、何も出来ないのと同じだ。

悠介に依存している知世に、知世に依存している悠介。

似た者同士である二人がかける言葉など、単なる傷の舐めあいと同じとヴィヴィオは捉えた。

しかし、それが、二人を強くした。

お互いにお互いを舐めあう関係。

ある種、夫婦の形としては、アル意味で、最も理想と考えても良いだろう。

どんなに、哀れに見えても、二人は誰よりも、愛し合っているのだから。

愛し合って・・・

愛し合って・・・

何度も、体を重ねあった。

それが、この二人。

知らず知らずに依存している、二人が此処にいる。

「ママたちを殺したのに・・・・・・どうして・・・・・・」

「お前の母は、策略や洗脳があったからといっても・・・俺の故郷の人間を殺した。いや、俺に刃を向けてきたからか。」

だから

「殺した。」

それに、仲間が、身内が殆ど死んだ今、

「好きな人と一緒にいて、何が悪いんだよ・・・?」

本来、果す事は、

「俺たちが一緒に安全に暮らせる事。」

「そんな・・・それで、人を殺して良いと思っているの・・・?」

「あのさ・・・何で、そこまで必死なの?」

「それは・・・今までの悠介に言いたいよ・・・でも、私が必死なのは、ママたちのこともあるから!」

「ママね・・・」

単に、まだ、

「生きてんだろ?なのはの方は、知らないけど、フェイトのほうはさ。」

アルフが、

「肉体を崩壊させる前に、リンカーコアを回収したからな。」

「え・・・・・・?」

「俺は、心ごと、二人を消すつもりだった。」

でも、

「肉体の破壊によって、やっと、フェイトとなのはの心は解放されたんだ・・・」

「解放?」

「そして、そのリンカーコアは、今でも、アルフの中で生きている。」

悠介は、それが、気に入らないようだった。

「今は、まだ・・・中で眠ってるよ。だから、悠介と戦うことを・・・」

「じゃぁ、私・・・何のために・・・」

「全部、無駄。俺のやったことも、無駄。」

やっぱり、

「投降しておけばよかった。予めね。」

人の性質がわかったときから、そうしていればよかったかもしれないと思うことがある。

「悠介は・・・いつも・・・!」

「敵は倒してたーとか、言うなよ?倒してたのは事実だけど、今にして思えば、馬鹿なことやったって思ってるくらいだし。」

「どうして・・・そんなに・・・」

「好きな人が戻ったから。それだけ。俺は、お前の思っているような人間じゃないし。」

全てが、撃ち砕かれた気分だった。

「俺の目的ってさ。好きな人がいなかったから、結構、迷走してた。でも、知世が戻ってきたとき・・・自分の目的がわかった。ただ、平和に、ずっと一緒にいたいだけ。」

「そう。あのころから、悠はそのために戦っていたの。」

そっと、知世は悠介をそっと、抱きしめながら言った。

ふつふつと、湧き上がる、ヴィヴィオの怒りの感情が、中で、中で渦巻いている。

それは、何の怒りなのだろうか。

今までと違うから?

ある種、感謝すべき存在じゃないのか?

「だからさ・・・ヴィヴィオ。兄さんは、そう言う人だよ。本質が叶えばいいのさ。好きな人と、一緒にいられれば。」

それを脅かす奴等と戦うのが

「本来の俺の目的。此処に、知世がいて思い出すことが出来た。」

「目的・・・・・・?じゃぁ、今、人が沢山死んでるかもしれないんだよ?それでも・・・」

「でも、それって・・・自業自得じゃないのか?」

人は、

「壊しすぎちゃったんだよ。」

だから、

「これも、起こるべき、破滅と言うのなら、そうなんだろ?」

「死んでるんだよ?人が、死んでるんだよ?」

「だから?」

生きてちゃいけない人間が、多い。

そして、

「兄さんが戦わないのなら・・・僕は、戦わない。」

「そうか・・・」

「ただ、聞きたいことがあるだけだから。」

「聞きたいこと?」

「うん。どうして、僕の世界は、攻撃を仕掛けにこないのか。」

自分の世界だけには、その兆候も何も無い。

神人たる、自分の力が必要ではないのかと疑問に思う瞬間でもあるが、ただ、攻めてこないことに不信がある。

「お前の世界は、破壊する必要の無いほど、優しい世界なんじゃないのか?」

ただ、そう、言いながら、悠介の目を離すことはしなかった。

「あぁ。」

「良いじゃん。それなら。」

「そう・・・なんだけどね。」

「悠介・・・本当に・・・何も、思わないの?」

「あぁ。割り切った。もう、知世がいれば良い。」

ただ、何故・・・

貴方が・・・

今まで、戦っていた貴方が。

「ヴィヴィオ・・・悠介は、今・・・」

全てが、戻ってきた状態。

全てが・・・

「悪いけど。俺は、知世を手に入れた時点で、もう、何もするつもりは無い。」

そして、

「此処には、恩義があるからな。」

「知世さんのこと?」

「うん。」

「俺は・・・」

知世を

「よみがえらせてもらったら、もう・・・何も出来ないからね。」

何も出来ない。

ここで、何も、出来ない。

此処まで来て・・・

既に、知世という人間が、悠介に足枷になっている。

なら、知世を殺せば良いのではないのだろうか。

そうすれば、また、悠介が動く。

何故、此処で、悠介を動かしたいのか。

ただ、ヴィヴィオの中に走る、感情が・・・

感情が・・・感情が・・・感情が・・・走る。

ただ、速めて、極めて愚かな感情が、ヴィヴィオの中に走る。

ただ、それをやれば、自分が死ぬ。

「馬鹿なことは考えない方が良いよ?じゃないと、あんた・・・死ぬよ。」

悠矢は、ヴィヴィオを片手で制す。

知世を殺せば・・・

殺せば・・・

「逆に、殺せないよ?あの人は、悠介と同じ。」

動けない・・・

ヴィヴィオは、ここで、動きを止めた。

そして・・・

何もできない自分に、涙を流す。

その姿は、また、子供の姿に戻った。

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