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ACT-ⅢⅩⅥ『完全敗北』

昆沌なる戦いへの決断。
悠介は女が大事。


「悠・・・」

差し伸べられた手は暖かい。

それに触れるだけでよかった。

触れるだけで・・・

ずっと、一緒にいた、姉のような存在と結ばれて。

「お姉ちゃん・・・?」

ただ、触れることが気持ちよかった。

誰よりも。

誰よりも触れられることが、気持ちよかった。

実の両親以上に。

「だから・・・」

欲しかった。

「どこ・・・どこにいったのさ・・・!!」

いや、

「何処にいったんだよぉ・・・・・・・」

泣きながら、悠介は叫ぶ。

今は、亡き両親に、全てを奪われたような、感覚を覚えた子供は、一日中、泣き叫んだ。

幼いころの、第一次ビブロス襲撃戦によって、親は、

「俺を捨てて逃げた・・・」

結論が、それだった。

親は、子供を置いて、逃げたのだ。

子供心に、悠介は捨てられ、そして逃げたのだと。

殺されたのだが。

その現実を受け入れたくはなかった。

「よかったわね。」

ふと、知世が、このようなことを言う。

そのよさというものが良く、解らない。

子供心に、ある程度、知世には全てを委ねていたし、意識もしていた。

それは、知世も、同様だった。

「・・・・・・悠介。大好きだよ。」

「え・・・?」

「だって、悠介の両親がいなくなって、私と一緒に暮らせるんだよ?」

愛ゆえの発言だったのだろう。

幼い心の中で、知世のその言葉に、悠介は救われた。

悠介の両親のことなど・・・

既に死すべきことが当然であるかのような発言をしたことすら、気付かずに。

いや、悠介の場合、両親など、知世の前では、どうでも良かったのかもしれない。

親戚同士・・・

3歳の頃のあどけない悠介の姿に、知世は純粋に欲しい。

悠介が、欲しい。

「悠介が、欲しいの。」

誕生日は、決まって、そう言う。

「悠介が、欲しいの。」

クリスマスも・・・

「悠介が、欲しいの。」

全部・・・

「悠介が、欲しいの。」

全部・・・

「悠介が、欲しいの。」

全部・・・

「悠介が、欲しいの。」

全部・・・

悠介が・・・

悠介が・・・

悠介が・・・

悠介が・・・

悠介が・・・

悠介が・・・

悠介が・・・

悠介が、一つ年取るごとに、知世が一つ歳をとるごとに、愛情表現は、過剰になっていく。

悠介は、知世のことがあるとは言え、両親は敵に殺された経験から、精神面でかなりの弱さを抱えながら、最高の攻撃力を誇る、戦神・・・

過剰な愛は、悠介と知世にとっては、最大の武器であり、弱点だ。

知世の過剰な愛は、日増しに過激になる。

ただ、悠介は、それが、当たり前だった。

知世と一緒にいて、友達と一緒にいて、そして、迎え撃つ敵を殺す。

それだけだった。

「悠が、他の女に童貞を奪われちゃうんだったら・・・」

悠介が、14のとき・・・

知世が、それなりの年のころ、二人は、交わった。

「お姉ちゃんだよ・・・これが、お姉ちゃんの膣なんだよ!?」

そう、良いながら、腰を振りつづける知世が淫靡であり、その日から悠介は、より、知世に依存した。

そして、そんな、二人のつながりが、ある程度は、戦闘の緊張感が全てを麻痺させていた。

しかし、今の、この状況はどうなのだろう。

「好き・・・?」

「愛してる・・・」

「愛しているわ・・・」

「俺も・・・」

悪くない。

心の底から愛せる人だった。

失ったと実感した、最終決戦。

いや、事実、目の前で愛する人が完全に消滅する最後を見た記憶もある。

「悠介・・・!!」

「解ってるよ。知世。」

常に、二人が、同じ戦場にいるときは、二人同時にいるのが当たり前だ。

こうして、手を繋いでいると、強くなれる。

いや、実際、戦いにくい、この、二人の、時折行う手を繋ぎながらの戦い方は、一見、不利な戦い方には見えるが。

「甘い・・・」

「俺たちは、倒せない・・・!!」

そこに、隙というものは存在しなかった。

隣に、お互いがいるが故に、安心できる。

精神的な意味では、ある種、最高の戦い方だった。

常に繋がっている事によって・・・

「月龍・・・」

「陽龍・・・!!」

最強・・・

その言葉を、ほしいままにしていたかもしれない。

特に、二人揃えば、負ける事はなかった。

あの日までは・・・

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」

それは

「嘘だ・・・・嘘だ・・・嘘だ・・・嘘だ・・・嘘だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!ありえない!!そんなこと、あるわけがない!!!!だって、さっきまで・・・さっきまで、そこにいたじゃないかよ!!!!そこに・・・!!!!そこに、存在してた!!!!いたんだ!!!!」

誰もいない空間の中で、ただ、叫ぶ。

「・・・嘘だ!!!」

何回、そう、叫んだことだろう。

怒りのままに全ての力をその身に受け、逃げるように、別次元へと移動した。

それと同時に、ミッドチルダに来訪・・・

人の愚かさ、そして、守れなかった自分の不甲斐なさ、そして・・・

本能が命じるままに、暴れた・・・

悲しみをぶつけるかのごとく。

破壊神のように。

いや、事実、その姿は破壊神だった。

全てを切り裂き、全てを殺す。

全てを、許さない。

戦う人間も、何もかも。

どうせなら・・・

全て消してしまえ。

そう思ったときに、現れたのが、アマテラスであるヴィヴィオ・・・

「忘れてた・・・あいつに、借りがあったんだな・・・」

ただ、思い出す中で、ヴィヴィオは優しく迫ろうと思いながら、自然と、うざい子供だと思ってしまった。

いや、現在進行形だ。

現在進行形で、うざい子供だと思ってしまっている。

ただ、そういうことを解る子供など、子供ではなく、良く、テレビに出てくるような、大人びた生意気なガキとなるが。

「嫌なんだよ。知世じゃなきゃ・・嫌だ。」

それが、最終的な悠介の答えだ。

だから、目の前にある物にかつての希望を・・・












「ティア・・・」

それは、大切なこと。

瑠璃が人間になるための、夜伽の時間が、ここにある。

同じ場所で、繭に包まれるかのように、ウリエルと闘った時に生まれた、傷を癒していた。

時と場所を選ぶ間も無く、二人は、交わり始めた。

ヴィヴィオとアルフは、そのまま、二人の様子を見ていた。

そして、交わりながら、思い出すのは、始めてあったときの話。

「あの時・・・交わった理由って、何だっけ・・・?」

「私が・・・誘ったんですよ?」

「そうだったっけ?」

「疑うの?」

「うそ・・・ちゃんと、覚えてるわ。」

月村瑠璃・・・

ティアナ・ランスター・・・

二人は、月村家の養子である。

元より、すべてを失うことを運命付けられていたはずの少女と、大事なたった一人の家族である、兄を失ってしまった一人の少女。

この二人が、10歳のときに、二人は、出会った。

瑠璃は、突然、舞い降りて、レイディーンの暴走を止めた。

ティアナは一人の男の親友から、頼まれた。

「あの・・・その・・・初めまして・・・」

ティアナが、はじめてみた、その女の子は、着物が似合う長い黒髪の女の子。

そして、少し、臆病そうな女の子。

自分の朱色の神と、全てが、まったく違う。

絵に描いた、どこか、病弱そうな、女の子。

ただ、見惚れていた。

考えたら、

「このときからかな・・・」

「そう・・・ですか?」

「そうよ・・・」

見ていたのは、瑠璃。

絵に描いたような、美少女は、部屋の中で、荷物の整理をする自分を手伝っている。

「月村・・・瑠璃と、申します。」

「あぁ・・・瑠璃・・・」

月村瑠璃。

「瑠璃・・・」

「はい。瑠璃と・・・申します。」

ただ、少女は、健気に、ティアナの手伝いをしていた。

「はい・・・」

「・・・?あぁ・・・初めまして・・・」

最初は、ぎこちなかった。

最初だけは・・・

いつから、ひとつになり始めたのか。

きっかけは、曖昧な物だったと思う。

自然と、同年代の女性である分、仲良くなるのも、自然な流れだっただろう。

「私、ティアナ・・・ティアナ・ランスター。」

「ティアナ・・・様・・・?」

「そう・・・最初は、あんた・・・私のこと、様付けだった。」

「そうだったね・・・だから、言われたこと、覚えてる。」

「何?」

「様付けは、禁止・・・」

「その、一緒に、お話・・・」

「うん?」

最初は、内気だった気がした。

「お母様・・・?」

最初の挨拶以来、中々、話しかけてこない。

ただ、ティアナを見ていただけ。

ティアナを見つめて、ティアナはいつ、話しかけてくるのか。

お互いに、動かない。

ティアナ自体、視られていることに、嫌な気はしなかった。

ただ、本を読んで、すずか達に構うだけ。

ただ、さすがに、苛立ちは覚えてくる。

だから、声をかけた。

「こっちに、来たら?」

「良いの・・・?ティアナ・・・ちゃん・・・」

「うん。」

「泣きそうな顔してたわね・・・」

「そうだったかな・・・」

「ま、今は、私が瑠璃を泣かしてるけど・・・」

「そんな・・・」

ある種の、一目ぼれ。

ただ、どこか、薄幸的なイメージもあったし、それが、ティアナは瑠璃を捕らえてならなかった。

「愛していました・・・ティアの心を・・・癒したくなる・・・」

「現に、貴方に、癒された。」

一目ぼれ。

ただ、それは、全てを、彼女の全てを読み取ったガゆえのことだ。

そこに、同情も何も無い。

優しかった。

一度、触れたとき、ティアナの悲しみを感じ取った。

あまり、彼女を傷つけないようにと。

できるのならば、自分が癒そうと。

触れた。

「あんた・・・両親いないんでしょ・・・?」

「でも・・・今は、お父様とお母様がいましすし・・・」

初めて交わした、まともな会話。

「ティアもいますから・・・」

「え・・・?」

「あの・・・その・・・」

慌てる瑠璃の仕草が可愛かったことを思い出す。

「ティア・・・?」

ふと、目覚めた時に、ティアナがそう言うことを言った。

京都にいたときだ。

この、竹林の中で、本調子は完全に取り戻したものの、それを行うと、自分の中で力が、月の力の侵攻が早まっている。

珍しい、あのときの夢を見たものだと、ティアはそのとき、呟き、瑠璃を抱きしめた。

それは、知世として、ある種、語りかけてきている。

ただ、今は、ゲームで言うレベル1の状態であるという。

「やばいわね・・・」

そして、自在に人格を変えられるようになれば、それは、完全に、レベル2の状態。

力を使わなくとも、状態は進行する。

力を使えば、同化を早めてしまうということだけだ。

「え・・・?」

「私の中に知世がいることは知っているでしょ?」

「えぇ・・・お兄様の・・・彼女が・・・」

瑠璃が傍にいたが故に、かなりの安定した戦闘力を誇る。

ここで、ある種、二人が似ていると感じる瞬間だった。

悠介と・・・

「瑠璃・・・?」

あれ以降の戦闘能力は、全てを超えることができる。

知世の力だって使える。

しかし、それは、強大になれば、強大になる分だけ、二人の同化が進む。

それは、ティアナであり知世であり、知世であり瑠璃であるというものだ。

「嫌では・・・無いのですか・・・?」

「そうね・・・恐いわ。勝手に、入ってこんなことしたんだもの。」

全ては、JS事件・・・

ヴィヴィオを助ける時に起こった、一つの出来事だ。

「月の光は・・・双子の姉であるアマテラスを助けた、ティアナ・ランスターを選んだ・・・」

破壊神へとなりかけていた、ヴィヴィオを救ったのは、ティアナ・ランスターだった。

それを、一人の女が見ていた。

「ツクヨミ・・・」

「ん・・・?」

「彼女に力を譲渡する・・・貴女の精神も・・・」

それは、スサノオ、アマテラスに並ぶ、もう一つの神のテスタメントの精神体・・・

肉体は、滅んだ存在。

「うん・・・」

ツクヨミの、中にいる神は知世に、彼女に力を与えると宣言した。

しかし、知世は、それが嫌だった。

自分の精神が、死ぬ事は、完全に死を意味するから・・・

だから・・・

だから・・・

だから・・・

「母親は・・・敵だった・・・」

ママを捜そう。

そう言った矢先に、現れたなのはは、フェイトは敵だった・・・

そして・・・

今は・・・

そこにはいない。

止めるべきだったのに、止められなかった。

「こんな、私でも・・・?」

「私は、能力だけでティアを好きになったのでありません。ティアの全てが好きだから。だから、何があろうとも私は貴方を愛します。」

それは、如何なる姿に・・・ティアナが知世に、知世がティアナになろうとも。

「解ってるわよ・・・」

目の前にある物。

かつての記憶がすべて、呼び戻されてしまった。

それは、知世の体。










「母さん・・・!!まさかとは思うけど・・・兄さんを見殺しにするの・・・・・・?」

「それは・・・あるわけ無いでしょう・・・?」

既に、数千・・・

いや、数億位来たかもしれない、母は、黒い猫となり、今を生きている。

「どの道、兄さんには、此れが無いとダメだろ?」

「貴方が、持っていたの・・・!?」

「僕は、剣を創る事ができる。」

「行くの・・・・・・?」

「行きたいんだ。助けるために。」

「母親としては・・・貴方を戦わせたくないけど・・・」

「それが、当然だよ・・・平和から、戦争へと送り出す母親なんて・・・いないからね。解って入る・・・故に・・・!」

「解っているのなら・・・」

「それを、許さない・・・」

「何故・・・?」

「貴方が死んだら・・・私は・・・もう・・・!!」

「だったら・・・母さん・・・僕は・・・!!」

「それしかないの・・・・・・?」

「悪いけど・・・兄さんを助けるためになら。」

久しぶりな気がする。

悠矢はオルクスの神気を纏いながら、黒の世界はセピア調になった、ネオ・ヴェネツィアの世界になる。

「俺だけが兄さんにできることだから・・・」

その世界に、皹が入りだした。そして、オルクスが超巨大機神と変化し、さらに、その背後に、朱雀、白虎、玄武の超巨大機神獣が出現する。

「悠矢よ・・・!!」

「やっぱり、お前達が、この世界を護ってくれてたんだね。」

「いや・・・我々は護っていない。」

ある意味で、

「悠矢の中にいたのと同じなのだからな。」

では、

「母さん・・・敵は、此処を狙わないって言う事なの・・・?」

「そうよ・・・だから、貴方を此処に、止めておきたかった・・・」

「まさか・・・この世界が、優しさで出来ているから・・・?まさか・・・そんな・・・」

「あくまでも、仮説だけど、大体あっていると思うわ。」

もう・・・

「僕は、我慢出来ない。」

「止められるの・・・?」

「止めて見せる・・・」

故に

「行って来る・・・」

「貴方が死にそうになった時・・・迎えに行くわよ?」

「解った。母さん・・・」

悠矢は、機神を連れながら・・・

落ちる。

それは、永遠の戦いの地獄の中へと・・・













「これは・・・」

「マキシマム・・・単純ね・・・私ながらの、ネーミングセンスじゃないわ。」

「母さんの最新型って奴?」

「いえ・・・最終モデルよ。」

「最終モデル・・・」

母、プレシア最後の作品であるという事自体、わかっている。

「マキシマム・・・二つか・・・」

「貴方と、すずかさんの・・・」

「これ・・・気付かれるよ?」

「零が抑えているわ。」

「零・・・僕の本当の父親か。」

ある種、アリシアと燈也は、それが、事実であれば、神の子と同等である。

さらに、プレシアの優秀な、ほぼ、全ての部分を受け継いだといっても良い。

アリシアは、燈也以上の神の力を得ている。

ただ、彼女の場合、一度、死に瀕して今、此処に蘇ったということだが。

「誰もが、このことに反対なの・・・?」

「誰もが・・・じゃないわね。」

少なくとも、

「零は信用できる。そして・・・アリシアも。」

「お姉ちゃんが・・・?」

「えぇ。ただし、あの子の場合は条件付・・・」

「それは?」

「あの子が、第3勢力になるという事よ。」

「第3勢力・・・・・・ただ、それか、敵に着いたままになるか。」

「なるほど・・・その線は無かったわ。」

「母さんらしくない。ただ、これは机上の空論だよ。杞憂になれば良い。」

「そうね・・・燈也・・・」

プレシアは、そっと、燈也を抱きしめていた。

二人の忘れていた、親子の時間・・・

母の温もりを感じながら、今は、ただ、その身に寄せる。

全てを・・・

暖かさを・・・

「久しぶりだね・・・こう・・・するのは・・・」

「そうね・・・あの時は、歪んでいたわ・・・」

「それでも、僕を愛してくれるのは、嬉しかった・・・」

ただ

「あのときの感情は、偽りじゃないのかって・・・言われた時・・・僕は揺らいだ・・・」

そうでないと

「解っていたのに・・・」

「愛して・・・くれていたの・・・?私を・・・」

「母さんは・・・?」

「愛していたわ。ずっと。会いたかった。」

「そう・・・僕も・・・愛してた・・・母さんが、生きがいだったから・・・」

「そう・・・ありがとう。」

純粋に、二人が一緒でいることは当たり前になってほしい。

「お母様・・・」

「すずかちゃんなのね。」

「はい。貴方の義娘となる、月村すずかと申します。」

そして、

「娘である、月村イクスと、月村リオ・・・」

「そう・・・貴方達が・・・」

「もう一人・・・いるんだ。」

「その子は・・・?」

「ミッドチルダに・・・いる・・・!」














「来ちまったか・・・」

「アルフ・・・ごめんね・・・」

「良いんだよ。フェイト・・・そして、なのは・・・」

アルフを借りながら真剣な眼差しでこの光景を見ていた。

直前に、リンカーコアを回収したアルフの中には、リンカーコアを魂のよりどころにした、二つの全てがある。

「ヴィヴィオと悠介の戦いを見ていたようにも思えるけど・・・」

「それは無いよ。あいつは、ほぼ同時に、この世界に着たんだ。あいつの力は、押し殺そうとしても、押し殺せる門じゃないよ。」

「そう・・・だね・・・」

戦闘神バラバの恐怖と言うのは、気配で味わっている。

そして、今も、あの姿を見るだけで、恐怖を感じ取る事ができる。

その武力であれば、全てを牛耳る事が出来るであろう。

しかし、そうしないのは、かつての師・・・

イエス・キリストに改心し、熱心にキリストの教えを述べ伝えて殉教したバラバと言う、この人間。

ただ、復活の時、彼と共に歩むことを志し、殉教した理由は、ただ一つ・・・

イエスについていくためだけである。

そして、イエスと同じ、無限の時間を味わい、無限に近い時間の眠りにつき、そして、今、イエスの計画のためだけに、彼は動いている。

イエスを信じているのだ。

そして、計画のためなら、必要悪となる事の男は、どれほど、恐ろしい奴なのだろうかと。

悠介を戦慄させる。

「バラバ・・・」

バラバと言う男は、神である。

人が、数億年生きた証・・・

「あの中には・・・」

「ティーダ、クロノ。もう、良いよ。戦いは、終わる。」

優しく、そう、呟いた後にバラバは笑顔を向けた。

「あら・・・どうかしらっ!!」

「また、君か・・・アヌビス。」

「デッドリーウィップ!!!!」

凄まじいほどの鞭の乱舞がバラバに襲い掛かる。

「あんたふざけすぎよ!!!」

しかし、全てが避けられている。

紙一重であるというのに、切り傷もできなかった。

憐の行動は、全て読まれている。

それを証明するかのように、

「ガッ・・・・・・!?」

「ワンパターンなんだよ。君は。」

全て、突き落とされた。

バラバの拳が、何発か入り込んだ。

それで、あばら骨含み、何本か、もっていかれたような感覚に陥り、バランスを崩しながら、着地できた物の、バラバの拳から受けたダメージに経っている事すら出来ず、その場に倒れこんだ。

「憐・・・」

「あいつ、私じゃ勝てないって言うの・・・?」

クロノの心配もよそに、周りは、破邪無限斬で切り裂かれた敵を見る。

全員が、それを見て、引き込まれた。

「君は、私と同じ、アルハザードのテスタメントだ。戦う理由が、何処にあるというのだ?」

「あんたが、気に入らないだけ。あんたの壊した女は、私の元カノなのよ。」

「それは、悪いことをしたなぁ・・・」

「向こうに行けば、あの子は、私のものになるのかしら?」

「それは、君次第だ。」

「そんな、ことよりだ・・・!!」

空を割るかのような、悠介の怒号が響く。

何故、そこにある。

それが、そこに存在しているのか。

「気になるか。それは、そうだろうなぁ・・・」

バラバは、顎に指を当て撫でながら悠介の目を見て言う。

動揺しているのは全てバラバにとっては見越していた事実であろう。

これで、悠介が揺らがない筈が無いと確証はあった。

この体の本来の持ち主が悠介の彼女の体であるという事。

そして、この体と魂を引き合わせると、ティアナの体はより、知世が表に出るようになり、反発しあう二つの魂は融合し同化する。

しかし、それを良しとしない場合は二つの魂が消滅するという。

それを全て見越して、バラバは悠介に一時の感情で動かさないために。

無駄な戦いをしないために。

何故だ・・・!!

そこに存在しているというのか。

確かな肉体の崩壊まで確認した筈の悠介にとっては、訳がわからなくなっていた。

もう、何もかもが・・・

全てが・・・

狂っている。

この世界も、何もかも。

奇跡を簡単に行うイエス・キリスト。

そして、目の前にいるバラバが、自分の彼女の新鮮な、まだ、生きていると解る程の体を持ってきたという。

何故、お前が、底にあるのか。

「何でだよ!!!!!」

悠介が、力の限り、叫び、途中で声がかすれた。

「偶然だった。私が、彼女の死体を得たのは。」

「得た・・・だとぉ!?」

「その通りだ。」

「この体は、焼いても焼いても、生き続けてね。」

バラバは、この、知世の体はいくらでも、いくらでも再生する。

「正に。。。奇跡だった。私は、この死体が、全て回復する。しかし、それと同時に異変が起きているようだ。」

「まさか・・・」

「そうか・・・私の体は、生きていたのか・・・」

瑠璃が分離し、ティアナと知世がかわるがわるになる。

「何をする・・・?」

「同化が、進んでいるな?」

今のこの体は、

「天使と直結している。君達が、この天使を傷つけるほど、それは、彼女の再生能力を酷使する事になる。」

それは・・・

「私たちの同化を早めるということか・・・!!」

「バラバァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!」

その、悠介にとっては非情な手段に、怒りを覚えるも、悠介は、叫ぶ事しかできない。

今、目の前二いる深いな男を攻撃すれば、何を意味するのか解っているからだ。

知世の体を傷つける。

しかし、

「もとより、ティアナとの同化をも、私は・・・視野に・・・」

「いれてきてあげたけど・・・」

人と言うのは、贅沢な物だ。

絶対手に入らない物が、目の前にあるとすれば、絶対的な欲望が前に出てしまう。

「そんな・・・」

流石に、ヴィヴィオも、この事態には戦意も悠介の憎しみすら忘れてしまった。

「知世・・・?」

悠介は、その体を見て驚愕してしまった。

徐々に劣化してきているかのような音が悠介に聞こえた。

また、奇跡を受け入れられなかった。

それが、此処にあるのは、本来、ありえないことであるからだ。

なぜなら、悠介は、あの体が、最終的にどうなったのか、自分が、この眼で見ているから。

「何故・・・?私の体は・・・あれで・・・」

知世自身も信じられなかった。

自分の体は、あの時、旗艦と共に悠介を送り出すために、灰になった筈だった。

「これって・・・相当やばい・・・・・・」

ティアナは、解っていた。

時折、消えたり、生きたりするような、訳のわからないような、現象。

自分の中に入り込んでくる現象。

しかし、過去は微力ながら、それを感じていた物の、今は、それが、はっきりと感じることができる。

「それも、今、凄い強くなってる・・・」

やはり、信じられなかった。

ティアナと瑠璃が、そのまま、分離した。

嘘だ・・・!!

「嘘だ!」

わかっている。

目の前にあるのは知世の体であると。

しかし、信じたくない。

アレはダミーだと悠介は憎い敵が用意したダミーだと思っていた。

信じたくない感情がそのまま、悠介の言葉になって出ようとしている。

失いたくないその気持ちを理解すると同時に、敵の自分への配慮に、ただ、彼は叫ぶだけであった。

それしか出来ない。

それを止めるには、どうにかしなければならない。

しかし、考えることすら愚かだと思えるこのとき、もう、戦う理由など、空っぽの悠介には・・・

ただ、相手条件を飲むことが確かな、恋人との生活を取り戻すための一つの方法となっていることは、揺らぎ様の無い事実として存在している。

認めたくはない。

しかし、バラバに屈する事で、知世が自分の生き甲斐が助かるというのなら、どうだろう。

相手の条件をけってまで、敵対しつづける存在か。

ただ、自分の一時の感情で敵に回すには余りにも強大すぎる敵。

故に問うのだ。

自分自身に。

今、自分は人間と言う生き物に絶望し、信頼している仲間だけ。

その仲間も助かり、恋人すら助かり、目の上のたんこぶだった自分達が敵の組織に入り込むという、その条件を・・・

ただ、それでも。

偽りかどうかより、嘘でも・・・

知世が帰ってきて欲しい・・・

その感情が芽生えた。

常だった戦う理由が目の前に。

「事実だよ。」

バラバは、静かに、そう、言い放つ。

「今、欲しいんだろ?この体が。」

此れを渡す。

その代わりに、

「我等の所に来い。」

バラバは、手を差し伸べるのと同時に、真剣な眼差しで悠介を見た。

「悠介・・・!!ダメだよ!!」

ヴィヴィオは、反対意見を言う。

非常なまでに、相手と戦う。

「子供は、黙ってろ・・・!!」

今、悠介の中にある選択肢は、一つしかない。

それが、悠介が全てを救う手立てである。

「にいさま・・・」

瑠璃・・・

生まれたばかりの、少女と同意。

それは、ティアナと恋をした。

今、ティアナが知世と同化すればどうなる。

覚悟を決めているからとは言え、それは、余りにも、酷ではないのか。

「この期に及んで・・・!!何故、反対するのか!?アマテラス!!!」

「貴方達は・・・お母さんを・・・!!」

「彼女達が、望んだことだ!!!裏で、何度も、聞いた!!!力が、ほしいと!!!神に値する力が欲しいと!!だから、くれてやった!!!」

それは、

「フェイト・テスタロッサ・ハラオウンと言う、人形も、望んだ!!故に!!」

「フェイトは、人形ではありません。私の妹です。」

「アリシア・・・今は、貴様と全てを議論している場合ではない。」

アリシア・テスタロッサ・・・

突然の来訪はフェイトとなのはを見届けるためか。

生きていると、まだ、感じている。

そして、悠介に投降を呼びかけるため・・・

「フェイト、なのは・・・良かった・・・」

「あんたは・・・!?」

ただ

「私も、此れを好機と見ます。浦島悠介・・・そして、皆様、投降してください。」

このままでは、

「私が、死の女神・・・ヘルのテスタメントとして、貴方方を相手することになります。」

「ちっ・・・!!」

北欧神話の中で唯一、死者を生者に戻すことができる神・・・

ヘルは、北欧神話における老衰、疾病による死者の国を支配する女神。

「私のデバイス・・・エーリューズニルが・・・お相手をいたします。」

北欧神話に登場する死者の国の女王ヘルの住居である。

ヘルの使う皿はフング、ナイフはスルトという。

下男はガングラティ、下女はガングレトという。

入り口の敷居はファランダ・フォラズという。

ベッドはケル、ベッドのカーテンはブリーキンダ・ベルという。

それを模したデバイスであると言って良いだろう。

いつの間にか殺されそうになったり、舌で舐められた後に毒が仕込まれていたり、デバイスを投げ捨てたと思ったら、既にナイフで心臓は捕らわれていたり、魔力で蛇のように自在に動く髪に首を絞められて絞め殺されそうになったり、色々なことをやられそうな気がした。

「さぁ・・・!!いらっしゃい。私たちの世界へ・・・」

「ダメだよ・・・お母さん達を操って、ある種の、悠介の町を焼いた、張本人なんだよ!?」

しかし、今、奴らの所に行かなければ、死ぬ。

知世の肉体が死んでしまう。

本当の意味で・・・

「殺したくはない・・・・・・!!!」

でなければ、死ぬ・・・

「もうひとつ言おう。ここで、完全に、同化し・・・さらに、この肉体が消滅すれば・・・二人は死ぬ。」

「・・・!」

瑠璃にも、ティアナにも、その言葉がずしりと来た。

消える・・・

消えてしまう。

消えるのは嫌だ。

もう、

「私達・・・どっちも見てきたわよね・・・?」

「えぇ・・・にいさまについていって・・・」

「全てを見た・・・」

人の正義、世界の正義、全てを見てきた。

醜いものまで全て。

それは、信じられないことも多かった。

信じられる人間はお互いと仲間達のみである。

空っぽの悠介の戦いを支えながら。

そして、今は変わるとき。

「折角、瑠璃に再会できたのに・・・・・・?」

「ティア・・・」

「まだ、再会して、こんなに、間もないのに・・・・・・!?」

ティアナの精神が、取り乱される。

ティアナの精神が、乱れて、全てが、頭を痛める。

「ちぃ・・・・・・・・・」

その状況を聞いてでも、

「所詮は・・・嘘だよ!嘘に決まってる!」

「黙っていろ!!ヴィヴィオ!!!お前には、解るまい!!!今の、ティアナを見れば・・・」

ティアナの命と、知世の命。

両方とも消えてしまう。

消えるとなれば・・・。

悠介も瑠璃も自滅する。

このまま、あえて、敵の捕虜となることも考え手も良い選択肢だろう。

「それよりも・・・君も思っているんじゃないのか?」

「何が?」

「この星の人間が・・・守る価値もない存在であると。」

「・・・・・・」

「君は、見たはずだよ?」

管理局の現状。

守るべきなのかと疑問に思う人間がいた。

ここにきて、敵であるバラバの言葉に余計に突き動かされる。

バラバの言葉・・・

それは、とてつもなく、重く感じる言葉だった。

何故、重い。

その言葉の意味は一番よく知っているのではないのか。

救いようのない人間よりも、姉である、あの女を知世を取り戻した方が、良いのではないのかと。

「君の故郷の人間は・・・主が蘇らせた。」

「何・・・・・・!?」

「あれは、我々の不始末だ・・・」

「でも、その中で・・・その中で・・・貴方達に選ばれなかった人たちは・・・」

「当然のことだ。選別した。」

しかし、それでも・・・

「世界のため・・・何だろ・・・」

「そう。世界の理・・・増えすぎた世界と、増えすぎた身勝手な人間を粛正するために・・・」

「やっぱ・・・故郷でも多かったんだな・・・」

「あぁ。その通りだ。」

純粋に受け入れ、故郷のために戦っていたと思っていた悠介には違和感など無く、空っぽだという言葉、そのものであると、やっと、自覚した。

攻撃することはない。

ただ、決断するだけ。

ただ、その決断が重い。

悠介は、決断するだけでいいが、その決断は重すぎる。

この世界を見捨て、大事な二人を助けるために動くか。

人の情を捨てるか、情を取るか。

知世を殺し、世界を救う確証があるとは限らない。

「絶対的な確信など、そこに、存在していないんだよ。」

「絶対的な確信・・・それは・・・」

二人を助け、全てを捨てる。

全てを捨てる事ができる。

ある種、それは、重荷になっていただろう。

こいつらとまともに戦えるのは、

「君達しかいないからなぁ・・・」

さらに、

「それを・・・失うとなるのは・・・最も・・・それに・・・瑠璃の事だって・・・」

瑠璃とティアナは繋がっている。

その明確的な絆は散々、教えられてきた。

瑠璃に触れて、過去の自分と知世と同じであると。

「待って・・・!悠介・・・!!」

「消えるんだぞ・・・?知世と、ティアナが・・・・・・!!二つ一緒になるんじゃ無くて・・・今回は、消えるんだぞ!?」

解っているのか・・・!!

この状況が。

愛する二人をほうっておいて、全てを助ける。

「そこまで、善人じゃないんだ・・・!!」

それは、悠介が、ヴィヴィオに伝えるのと同時に、自分の覚悟を決める一つの言葉。

「大好きな人を失うんだったら・・・・・・・・・」

言い出せそうで、言い出せない。

しかし、言葉は確実に発せられようとしている。

失うと、言うのなら。

「俺は・・・俺は・・・・・・!!!」

「悠介・・・それしか、無いよな・・・」

クロノは、悠介の言葉を甘んじて受け入れるつもりだった。

そして、憐もだ。

「あんたたちに・・・・・・」

「そうだ・・・それが、正しい答えだ。」

「投降する・・・・・・・・・」

愛する者を失う前に・・・

「俺は・・・・・・全てを守るなんて・・・無理だ・・・」

俺は・・・

テスタメントとは言え・・・

それは、不可能だ。

神とは言え、万能ではない。

ミッドチルダ・・・

ある種の完全敗北を迎えた瞬間だった。。

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