
この作品のテーマは……
「依存関係からの脱却からの「愛」による成長と昇華」だと、自分は思いました。
全体的な感想としては、もう、この全体的な感想が長いんですけどね。これがもうね。とりあえず、何が言いたいか。
って、まず、私は、これを先に言いたい!
今年、これ以上に繊細な百合作品って出ないんじゃないか?と、思えるほどの凄さ。
大袈裟じゃないよ。
いや、マジでだよ。
いつもと同じくらい映画作品で、クッソ長いです。凄い映画を見たような気がした。
まぁ、粗筋は公式HPで確認してほしいんですがね。
簡単に言うと、これです。
北宇治吹部3年のオーボエ担当・みぞれは自身を吹部へ誘ってくれたフルート担当・希美に依存し、希美が自身の元から去る可能性を恐れていた。
最後のコンクール曲のモチーフたる同名童話「リズと青い鳥」のキャラに自身らをダブらせる内、自身らのパートの演奏が難航し始める…。
この映画の何が凄いってさ。二人とも何処か依存していて、
リズと青い鳥と言う話の登場人物に重ね合わせる中で何処か二人に確実な別離があるような、そういう世界。
繊細な描写の中にある二人しかできないスキンシップと距離と音楽の描写で二人の関係性が良く解る。
独占欲と言う名の依存症が前に出てるみぞれ。無自覚に依存していた希美。
所謂、現代的な百合なわけですよ。
瑞々しさのような女同士の関係の奥深くにある誰にも言えない人には小さくても自分や大切な人には物凄く大きな問題と言う名の人の心にある負の感情。
希美が実は、みぞれと距離を詰めることで己に安心感を与えていたけど、実は全体で見れば、それがブレーキをかけて。
でも、みぞれには、希美が自分から距離を詰めて接してくれることが物凄い大事な己の精神を安定させることで。希美の罪悪感が、本の内容の様に彼女を解き放とうとするけど人間関係は本のように単純な束縛ではない、もっと複雑に絡み合った女同士の余りにも壊れやすい程繊細で甘い関係。
リズと青い鳥の本の登場人物と彼女たちは違う。
本は、そこにあることしかない。
ある種、二人は、あの90分の繊細な映画の世界のラストシーンで本当のスタートラインに立ったと言えると思うのです。
巣立つことは別れではなく、二人でスタートラインに立つこと。
これからの進路で別れの時は来るかもしれない。
でも、希美が
「青い鳥が戻ってきても良い。」と口にしたように。思えば、この台詞が本の登場人物と、のぞみと、みぞれの決定的な違いであり、二人のきずなの強さでもあると思うんです。
彼女たちは再度、惹かれ合うと思うんですよね。
別の世界を歩んでも、それこそ「やがて君になる」の教師のカップルの様に結ばれると思う。
これは自然と自分とみぞれの関係を言っていたんだと思うんだよね。そうなった内に一つになって、また情熱的な関係になってさ。
ある種の二人の関係性で、この言葉が、みぞれはリズであり青い鳥でもあり、希美は青い鳥でありリズであるという象徴的な言葉だと。
最後に、スタッフロールに入る前の「赤」と「青」が混じり合い「紫」になったと意味と最初の文字が「JOINT」になるでしょ?
音楽的な意味もあるでしょう。
あのラストシーンの希美の言葉を言えば、あの二人の未来を明るさを示す暗示であるのは言うまでも無いと思うんです。
そして、あの二人はもう絶対に二人は結ばれるという、そういう意味があると思いました。
出ていくときは誰かを残して……ではなく、二人で一緒に手を繋いで。
って、もう、ここまでが本当にね。
全てにおいて効果的に使われているんですよ。
此処までのドラマを作り出すための要所が心に訴えてくる!
この作品の全てを訴えるための演出が物凄い!
そこまでの展開を言葉少なく小さなアクションだけで盛り込んだ作品の要所要所にあるスリルと言うものが、また視聴者である自分達を映画の世界に夢中にさせる要素で、この作品の凄さは現代百合作品の教科書になるべきと思いました。
全く違う二人、依存から二人とも対等な関係になることで繊細で崩れやすい砂糖菓子のような二人の関係は強固なものに変わっていったんだと思う。結局、どっちかが欠けたら、あの二人の関係っていうのは、それで終わってしまうのが一目で解るからこそ、その二人が織り成す感情の機微のドラマが切ない。
そういうのが良いよね。
彼女達が楽器で奏でる音の中に彼女達の感情そのものが詰め込まれている訳で。
音楽による登場人物の感情の変化と言うモノを良く動かしています。
ミュージカルとは違う、BGMが彼女たちの心境の変化を描く。
それが楽曲である「リズと青い鳥」の最後の演奏を見れば良く解ると思います。
どことなく意味のなさそうな背景の中で、あの二人の未来がどうなったのか。音楽の強弱で解る感情の機微の変化と言うものが上手く描かれています。
もう、ホント、ラストにつなげるための、この一つ一つを真面目に瞬きしないで見ていただきたい!

思えば希美は、みぞれの親友でありながら、みぞれのことを良く解らないまま物語に酔って突き放そうとしたんよなー……思い込みが激しい性格なんだろうな―とか思う。
まぁ、みぞれ自身が、あの性格だから思い込むことでしかどうしようもなかったから、みぞれは己に従うから解った気になってただけで。
それは努力する理解が足りてなくて、他のことの忙しさを言い訳に、みぞれのことを解ったつもりになっていたから招いてしまったとも言える、今回の物語。
随所に見受けられる、その部分、そして、みぞれが希美のことをどれだけ思い、そして、なお突き放そうとしても自分の傍を離れない、みぞれの存在。
それでも、なお、自分を慕うどころか抱きしめて己の醜さや身勝手な部分を抱きしめて受け止めてくれる。
解っているからこそ、みぞれには、それが出来る訳で。
音楽を続ける理由の何もかもが、彼女の為にあるという部分、みぞれの全てを希美に告白して抱きしめる、あのシーンはプロポーズに等しいのよ。
勝手に部活を辞めたことに対しても憎悪に近い感情を抱きながらも音楽を続けて希美の復帰を待っていたのは、愛憎の感情だよね。
愛憎のシーンを思い出すたびに、みぞれの顔が暗くなる描写を入れたのは、その時期、みぞれには原作を知らないから何とも言えないけど、とても辛いことだったのだろうと。
自分に告げずに辞めてしまったことに対して思う感情は相当な憎悪だったのだろうと。自分には、そこまで報告するほどの価値が無い存在なのだろうか?とかも思ったのかもしれない。
みぞれから出た「希美は勝手」と言い詰め寄るシーンに激情が見えるのは、そういう恨みもあるのだろうと私は思う訳で。
そして和解した後の幸福感から来る卒業の時期から伝わる別離の不快感。
「来なければ良い」と強い感情で言い放つのは希美との時間が何よりも大切だから終わる現実を受け入れたくない。
でも希美は、それを解らずに身勝手に考え、みぞれを理解する努力を怠ってしまったがゆえに起きるドラマがある訳で。
みぞれは、みぞれで希美と離れたくないから希美に従い続けるという甘え。
希美は、みぞれを理解しようということを怠り深く探ろうとせず自分なら解っていると思い込んでいる甘え。
この二つの負の感情に近い甘えに「リズと青い鳥」という童話が入り込んで極上の百合ドラマを作り出す訳ですね。
そして互いに、ぶつかり合うことによって本音を理解し合い、そして思いを伝えあう、あの理科室。
理科室と言えば実験であり、一つ間違えれば大変なことになる決断を行う場所と言っても良いかもです。彼女達が重大な決断を下すときに理科室を使う理由というのは本心を曝け出す為の装置なのかもね。
そして、みぞれは大切な親友なのに、いや、大切な親友だからこそ本心を隠して自分から巣立たなきゃいけないと思った時だけは本心を曝け出す。
みぞれを恐れているのか、希美は狡いんだよね。
でも、そこにあるのは音楽に対する思いとか色々とあるんだろうと思うし。
だからこそ、そういう時だけ弱く本心を曝け出す希美が許せないから、みぞれは、あそこで感情を露にして希美に全てを吐き出して、そして、抱きしめて希美の全てを受け入れたという。
終わることのない時間を求めていた、みぞれが成長して希美と一緒に巣立とうとした瞬間が泣けるんですよ。
そしてスタッフロール前の混ざり合う青と赤と「JOINT」。
意味は、ね?言わなくても良いかなと思いますけどね。
もしかしたら互いに解釈違いをしていることだってあると思います。でも、それが人間であり、夫婦や親友、恋人って言うのは常に互いのことを完全に理解し来てないと思うんですよ。
でも、希美は、解ったような気がするんですよね。
だから、さっきもスタートラインに二人が一緒に立ったばかり。っていうのは、こういうことなんだよなーと言うのをね。
改めて思うんですよね。
ああやってすべてを受け入れてスタートラインに立つ。
そして、二人の関係の中に随所に挿入される「リズと青い鳥」例えば二人の前を通り過ぎる青い鳥の意味とかね。
あれは、青い鳥は幸せの象徴であるように、あの二人に線を繋ぐように飛んでいくのは、二人の未来は幸福であるという象徴だと思うんです。
依存しあっているから互いの好きなこと、互いがいなくなったらどうなるか解ってしまう。
完全に別離したり男と結ばれたりしてしまえば二人の輝きは失われてしまう、そういう危うさと言うのが、あの作品の中にあるんだよね。彼女達は常に二人だから輝くことを誰よりも互いを愛しているから知ってる。
だからこそ不安になったときの、あの二人の夕方の理科室のラストシーンがね?!
あのシーンが泣いてしまう訳ですよ。
エンディングのスタッフロールの前にさ、例の二つの一見、意味なさげで意味が物凄いあるシーンを見て、んでスタッフロールの歌のシーンで、ボロボロにすすり泣いてるの私は一人だけ。
共依存から一歩進んだ関係になる。
一方は物凄く引っ込み思案で希美に救われ希美に依存している、みぞれ。
彼女は音楽が上手くなりたいとかじゃなくて希美と一緒にいれれば、それで良かったから、とある事件のことを根に持ったりして、それでも音楽を続けたのは絶対に希美が戻ってくると思ったからでさ。
希美がいればそれで良くて、だから希美が、いつ戻ってきても良いように彼女は音楽を続けていたのだと。
実は、その自分に対する、みぞれの思いに自然と甘えてしまっていたという希美。
リズが、みぞれだと思っていたけど、実は希美がリズで、青い鳥はずっと、みぞれだったと私はね、思う訳ですよ。
だから希美が、みぞれを巣立つように優しい言葉で突き放そうとするけど、それは望むことじゃないし、みぞれは、希美でければダメで。
所詮、本に書いてあることは、それだけ。
二人は自分と本を重ね合わせながらも自分は自分であるという証であるのが、あの理科室の1シーンに全て込められてるの!!
絵本だと二人は愛し合い巣立って言ったけど、でも本の世界からの感情移入と言う部分からの成長を表すのがね!?みぞれと希美が互いに支え合うように、これから頑張ると誓う理科室の後の下校のシーンでね?!スタートラインに立ったばかりだからこそ心の受難と言うか本当の意味で分かり合う為の二人の問題は続くんだよね。
切なくもあり儚くもあり美しくある。夫婦だって親友だって、心の共有は完璧じゃない。だからこそ最後で解り合っているようで何処か擦れ違っている二人。でも、本質はそこじゃない。
何故かって二人を繋ぐように青い鳥が飛びだっていったように、赤と青、JOINTの意味、あの何処か明るい二人のドラマが締めたように、あの話はハッピーエンドなのよ。
何処か二人の心が救われたような表情を浮かべる、あの最後の理科室のシーン。
そして、あそこは映画の全てにおける集大成であり、そして新たなスタートラインでもあるんですよね。
それは、二人に纏わりついていた柵からの脱却だと思うのです。
みぞれも、希美も依存から脱却した一歩先を表す、あのラストシーンがさぁ!
泣くんだよ!!!だから現実世界で青い鳥が羽ばたくシーンとか凄い不安だったんだけどさ。
あのラストシーンを見たら、もう泣いちゃったんだよ!!!
さっきも言ったけどね?
あの二人は、まだスタートラインに立ったばっかなんですよ。
だからこそ、これから色々と、あの二人には試練が訪れると思いますよ。
でもね?
それは、あの二人なら乗り越えられるという意味での青い鳥なんですよ。あの青い鳥が二人の視線の中に入りこんだのは、これから二人が幸福になるという、その意味だと私は思うんですよ。
これは、あの二人に、どんな試練があったとしても乗り越えられるという、そういう暗示だと思いました。
巣立つなら二人一緒に、二人一緒に別の世界に。
進路で別れることがあったとしても、常に二人の心は共にある。
互いが互いを最上級に思いあっている限り。
だからこそ、裏を返せばですよ。
希美は、みぞれのことを最上級に思いあっていなかったからこそ、今回の物語が生まれたと思うのです。
みぞれは、常に希美のことを一番に。
でも希美は、みぞれのことを一番に見ていなかったことが招く絡み合わない歯車のような関係。
そうやって、最後の二人が、思いをぶつけ合うことで絡み合い、そして最高のハーモニーと最高の関係が生まれて約束されるという、この世界がある訳でさ。
尊い百合なんだよ・……

んで、もう、いつもの口癖だけどさ。
この映画は強い。
強いよね。
いやさ。
最初から終盤まで互いに抱く羨望と絶望で訪れる筈だった別離を匂わせる展開を入れてさ。
最後に二人が本音をぶつけて愛を確認して依存しあう関係から昇華されたことで本の中で感情移入しあい絡み合わない歯車になってた関係が自分達は二人で高め合い一緒に巣立つ関係への昇華ってさ凄い百合だなって。
羨望と絶望が呪詛のように響き絡みあう関係からですよ。
互いの抱く羨望と絶望が「リズと青い鳥」と言う絵本によって、自分達を重ねて別離を思わせる。それが、みぞれの「来なければいい」と言う台詞であり、希美の「音大を受験するの辞める。」って言葉で。
でも二人にとって別れるはあり得ないんよ。
本の物語と自分達の”これから”が怖いくらいに重なってしまったからこそ酔ってしまったんだよね。
だから別離するモノだと思い込んでいた二人の関係。
でも本の世界の別離を成長と感じ取ったからこそ、みぞれは希美に初めて本音を曝け出し、希美も引っ張られるように、みぞれに本音を曝け出す。
あの本を促す者は自分達の成長なんだろうと思うんですよ。
別れるのは本の物語であって彼女達にとっての本のテーマは別離ではなく成長。自分達は別れずに支え合い成長しよう、関係を前に進めようと言う意味での理解。
だから、みぞれは希美の別れるという言葉に反論して希美の好きをいっぱい口にして。
本とは違う結末であるからこそ意味があり、それこそが、みぞれと希美が決別した「リズと青い鳥」と言う本の鳥籠に閉じ込められた「みぞれ」と「希美」のの世界から鍵を開けて成長した姿を表していたのだろうと。
本と言う鳥籠の世界の中で自分達を重ね合わせて成長し、ぶつかり合い、本という鳥籠から二人一緒に出ることで成長を表す。
成長したからこそ対等でいたいと思いあう、あの二人の関係のスタートラインが作品のゴールってのが好き。
自分はそう思います。
はい。
あの理科室でのラストシーンを本と感情移入させていた「リズと青い鳥」の関係から自分達の脱却を成長として描く、それが二人の関係性の昇華として描かれるスリルを効果的に描いた山田監督の手腕、凄すぎるね。
それまでの流れが非常に効果的。
泣くな。っていう方が自分としては無理ですわ。
この作品の全てが、あの理科室のラストシーンに詰まっていると言っても過言ではないですよ。
あそこで、過呼吸起こすレベルで声を出して泣きそうになっちゃったもんよ。
90分らしいけど、私、あの映画の体感時間が一時間ほどで、もっと、もっと、二人の世界を見たい!!っていう欲求が溢れ出ました。
そんな感じで、あの、見てください。いや、マジで。はい。
映画館で、絶対に見てください!!
映画館で見ないと勿体ない映画です!!
是非とも!!
この、今年最上級の映画を百合作品を、是非とも、映画館で感じて少女達の感情に身を震わせていただきたい!!!
そしたら、一緒に語り合いましょう。
幸福な時間がある筈です。