「さて・・・そろそろ、この事件も終盤か・・・」
全てが、整いつつある中で、神は言う。
「そろそろ・・・この事件の最も厄介な物が目覚める。」
「本来の歴史である・・・俺等の介入の無い世界は、醜悪な化け物なんだけどね・・・」
神のいない世界。
イレギュラーがいない世界での話。
「さぁて・・・終盤は・・・こいつを降ろす時間かな・・・?」
一人の神が、取り出したもの。
龍神の咆哮で、全てが破壊できる。
そのような意味をこめて付けられた未来へと受け継がれるデバイス。
ゴルド・ドラグーン
別名、龍神咆哮零式
「頑張ってね・・・なのはママ・・・フェイトママ」
はやて・フェイト・・・脱出。
後は、燈也とすずかの二人のみ。
ここで、二人を助け出し、目の前にある闇の書の防御プログラムを破壊すれば良い。
「すずかちゃん・・・」
「大丈夫だよ。絶対に、燈也を連れ戻して・・・帰ってくる。」
プレシア・テスタロッサ・・・
ミッドチルダでは、二人の子を、その身に設けるも、一人は流産。
生まれた娘であるアリシアは、事故によって死亡。
出会うことは無いと思っていた、自分のもう一つの光に、彼女は出会った。
今、ここにいるプレシアは、全てを片付けた後に、ここに来た。
十一年後のイエス・キリストの戦乱。
おそらく、ミッドチルダ史上、最悪とも言える死傷者を出した戦い。
その後の、プレシアが、ここにいる。
今、彼女がここにいる理由は、息子である燈也を、闇から救い出すためである。
あの、戦いが終わった後、イエス・キリストはプレシアとアリシアを、戦乱の無い、優しき世界へと送り出した。
自分は、その罪を償うために、一人何処かへと向かっていった。
「プレシアさんは・・・本当に、燈也を愛していましたか?」
すずかは、助け出すために、プレシアに本当に確かためたかった。
これだけは。
「愛していたわ・・・でも、私の愛が、あの子を変えてしまった・・・純粋だったわ。」
プレシアの中では、自慢の息子だった。
二度と、巡り会うことは無いと思っていた、可愛い息子。
「助け出すべきだった・・・あの時、どのような手段を使ってでも、あの子は私とともに、アルハザードへ・・・」
向かっていた筈だった。
突如乃精神体の出現によって、全てを狂わせたが、
「でも・・・そうしなければ、私は再び巡り会うことが出来ませんでした・・・」
「私が狂わせてしまった・・・あの子の純粋な気持ちを・・・」
「燈也は・・・今でも、貴方を・・・愛してますよ。」
「・・・えぇ。解っているわ。」
そして
「今、あの子が見てる夢も・・・」
偽りである、プレシアとアリシアの夢。
「貴女は、燈也のこと・・・好きなの?」
「はい。」
躊躇いなく、すずかは言う。
「あの子と一緒に、痛みを受けなければいけない・・・」
「プレシアさん?」
燈也を守っているこの球体を破壊すれば、燈也はこの防御プログラムから、解放される。
ただ、破壊すれば、それは夢の強制的なる終わり。
故に、精神が燈也の精神が崩壊する。
「なら、私が悪役になります。あなたが、優しく燈也を包み込めば良いんです。」
嫌われても、燈也を愛し続ける覚悟がある。
だが、それをする必要は無い。仮に、それで目覚めたとしても、なのは達を許しはしないだろう。
「手はあるんですか?」
「えぇ・・・あの子の中にサルベージするの。私がいなくなった後に、あの子を優しく包むのは、貴女の役割。時間はかかるけど、白の魔導師の蟠りを消さないと・・・意味はないわ。」
自分に、言い聞かすように、プレシアはすずかに伝えた。
やることは、出来る筈だ。
自分を迎えてくれることを、祈るしかない。
自らが、子供の道を違えさせてしまったのなら、
「やっぱり・・・あの子の道を治すのは・・・私なのよ・・・」
自分は、間違いを犯した。
だが、燈也には、これ以上間違いを犯して欲しくない。
「ただ・・・速めに助け出さないと・・・多分、外ではこれは具現化しているはずです。」
燈也をコアとしている。
今は、まだ、穏やかな状態となって、とどまっているものの、敵意を感じ取れば、動き出すだろう。
出きれば、静かなるこの状態で、助け出したい。
「わかってます。本当に、終わりを迎える訳ですから・・・」
二人は、燈也を助けるために、動き出す。
プレシアは、燈也を包んでいた球体に手を差し伸ばした。
応えてくれるだろうか。
光の触手が、ゲル上となり、プレシアの両腕に纏わりつき始めた。
「ッ・・・!?」
痛みが、プレシアに走る。
「プレシアさん・・・!?」
「大丈夫・・・この痛みを受けなければいけないの・・・これは、あの子の受けた痛み・・・?」
母親の義務として。
しかし、これによって、
「介入は出来る・・・」
そして、今、燈也の夢の中にいるであろうプレシアは、すずかの隣いるプレシアが、夢の世界でのプレシアとなる。
「燈也を・・・お願いして良い?」
「はい。」
すずかは、プレシアの顔を見ずに頷いた。
そこに、迷いは無い。
ただ、まっすぐ見つめている。
すずかは、プレシアの背中に触れる。
暖かかった。
これが、燈也の愛した人の背中だということを、感じ取ることが出来た。
これが、燈也の愛した人の背中。
「燈也・・・」
「見えるんですか・・・?燈也の見ている夢・・・」
「えぇ・・・あの子の望みが、良く解るわ・・・」
燈也の望んでいた世界が、これだったのか。
望んでいたのだろう。
虚数空間に落ち、アルハザードへといった時、こうなる筈だと。
こういう世界が、自分たちを待っていたのだろうと。
「燈也・・・ごめんね・・・」
「・・・」
泣いているプレシアの背中を、すずかはただ、優しく抱きしめた。
母親として、自分が原因で、殺しを行う燈也になってしまった。
人を殺す息子の姿を、母親は見たくない。
すずかの中で、伝わってくる。
プレシア・テスタロッサの悲しみ。
感じ取ることが出来る。
本当は、優しい人であるということを。
そして、ここまで、優しい人をも、運命というのは、変えてしまう。
その残酷さを、すずかは恨んだ。
「すずかさん・・・そろそろ、あなたを・・・燈也の夢の中へ送る。」
「はい。」
「でも・・・精神の中は入り組んでる・・・迷路のように・・・」
プレシアの場合は、それを受け入れて、一本道のように介入することが出来た。
しかし・・・すずかの場合は、他人に干渉させないよう。
はっきりと、すずかは応えた。
「お腹・・・大きい・・・」
「えぇ・・・過ちの中で、授かったけど、大事にしたあの子の子供が・・・ここにいる。」
深く、追求はしなかった。
「お母さん・・・言ってきます。」
母親になるかもしれない人。
すずかは、プレシアを通して、燈也の夢の中へ。
「どうしたの?」
「他の世界で、ママたちを殺した奴を・・・僕は殺してないんだ・・・」
「もう、良いのよ。」
不満な点はある。
「でも・・・」
「私は、燈也が人を殺す姿は、見たくないな。」
プレシアは、燈也と同じ目線にたち、優しく頭を撫でる。
母が言うのなら、これでいいのだろう。
夢は、続く。燈也にとっては、幸せな夢。
夢と気付くことの無い世界。
永久へと続く。
愛されたい人に愛されているだけでよかった。
特別な力など無くても、ここで生きることが出来る。
本当に欲しかった、本当の家族があるのだから。
今までにない、穏やかな表情を見せる今の燈也こそ、本当の燈也なのだろう。
「ママが、そういうのなら・・・それで良いよ・・・でも・・・」
それでも、釈然としない。
燈也の中で、心を切り替えるということは嫌だった。
なのは達に負けることになるのではないだろうか。
暗い顔を、燈也は、落とす。
プレシアは、そんな燈也を何も言わずに抱きしめた。
「うっ・・・うっ・・・ママの・・・ママの・・・」
そこから、燈也は言葉を発することなど無かった。
理解しろなんて、強制的にいうことなど、出来はしない。
出来たとしても、それは、自分が燈也に対して押し付けているだけだから。
後悔が、少し、走った。
泣かせたくはなかった。
時間がないことなど、解っている。
ただ、それでも、プレシアは燈也の気持ちを尊重したかった。
我侭といわれるかもしれないだろう。
それでもだ。
誰よりも純粋であるが故に、燈也の心は傷つきやすいことをしっているから、プレシアはそっと、我が子を抱きしめる。
最も、愛しい人であるからこそ、泣いて欲しくなくて、傷つけたくない。
後悔は、生まれる。
泣かせてしまった。
また、傷つけてしまったのだと。
しかし、このことは、プレシアにとって、本当は嬉しいことでもある。
自分のことを、これほどまでに愛してくれていると、実感することが出来たからだ。
「ッ・・・」
「ママ・・・?」
痛みが走り出す。
人の心に介入するような物だ。
痛みも走れば、力の消費だって、激しい。
さらに、ここから、送り出さなければならない。
送り出せば、相当な力の消費が訪れる。
人の精神を、そのまま、他者の精神に送り出す。
人の心の壁を突き破るが故に、相当な力が消費されるということだ。
入り込むための代償というものが、それだ。
これによって、伝わってくる痛みも、全て人の心に触れた代償でもある。
「プレシアさん・・・」
「お願い・・・」
すずかは、プレシアを伝って、燈也の夢の中へと。
「燈也・・・」
「でも・・・あいつ等は、他の世界にいるままをたくさん殺したんだ!!ママだって、殺されちゃうよ!!」
見たくない。
母の殺される姿など、見たくない。
既に、燈也の中で、プレシアは守らなければならない一人の女性としてみていた。
「大丈夫だよ。」
「すずか・・・・・・?」
望んだのだろうか。
何故、目の前に、友人がいる。
抱きしめられているプレシアの肩の上から、かすかに見えるかつての友人の姿。
「なのはちゃん達葉、燈也の痛みに気付いてるよ。」
ゆっくりと、すずかは、燈也に近づいてくる。
「燈也の、お友達?」
アリシアが、すずかに声をかけた。
すずかは、笑顔で、頷く。
「でも・・・」
「燈也?」
プレシアは、燈也の体が震えていることに気付く。
恐怖を燈也は感じていた。
きている。
「ダメだよ・・・ママや僕たちをあいつ等は、いじめようとしてる・・・」
このときだった。
夢の世界でありながら、突如揺れが走った。
すずかとプレシアは、感じ取った。
なのは達の行動していようとしている。
「僕達を殺そうとしてる・・・皆、ママやお姉ちゃんや、すずかみたいな人間じゃない・・・あいつ等は、僕等を殺そうとしてるんだ!!」
燈也の思いが、暴走し始めている。
(消滅させるなら・・・アルカンシェルね・・・)
(アルカンシェル・・・?)
おそらく、燈也は、それを感じ取った。
自分たちごと消そうとしているのを。
外に出たくない少年と、消されるまでタイムリミットを迎える訳には行かない二人。
そして、世界の終焉は、近い。
プレシアは、すずかにそのアルカンシェルの情報を送る。
そして、革新した。
自分達は、間違いなく消滅すると。
母として、好きな人として、燈也を失いたくない感情は、無へと帰ろうとしている。
「ダメだ・・・ママを守らなきゃ・・・守らなきゃ・・・守らなきゃ・・・」
「燈也!?」
「ぐあぁぁあ!!!???寒い・・・・・・」
「燈也!!!」
予兆
外装の終焉は近い。
「すずかちゃん・・・脱出して!!」
なのはから、送られてくる、思念。
しかし、燈也は捨てられず。
「ダメ!!攻撃したら!!燈也が!!」
「でも・・・時間が!!」
すずかの声は、届かない。
「もう・・・行くぞ!!!」
「待て!!おい!!
ヴィータが、なのはと共に動き出した。
クロノは、すずかの言葉の意味を誰よりも速く理解した。
ここで、攻撃をすれば最悪だ。
クロノの言葉は既に遅く。
一斉攻撃の開始。
全てのダメージは燈也に映る。
解っていた。
この痛みを受けることを、プレシアは解っていた。
コアになっているのであれば、燈也がダメージを受けると。
本来の歴史では、皆様がご承知の通りの歴史を辿る。
「いたいのは・・・嫌だ・・・嫌だ・・・ここを破壊されるのは、もっと嫌だ・・・」
「大丈夫・・・・あなたが、戻ればいいの・・・昔みたいに、優しかった燈也に・・・」
すずかは燈也を、抱きしめた。
アリシアも燈也を落ち着かせるために、すずかのように抱きしめる。
「嫌だよ・・・壊れちゃう・・・壊れるのは嫌だ・・・」
やっと掴んだ光。
しかし、今それは、燈也の中では終わりを迎えようとしている。
「来るな・・・寒い・・・死ぬ・・・殺される・・・」
「燈也!?」
外部の衝撃は、全てコアである燈也に伝わる。
故に、今、外で起きているなのは達の攻撃に、直接燈也にダメージが来ている。
「殺すな・・・」
自分を
「殺される前に・・・殺せ!!!!!!」
夢の世界から、燈也は消えた。
「そんな!?」
「消えた・・・!?」
失敗に終わったか。
プレシアに、悪寒が走った。
「ラグナロク・・・」
「「「ブレイカァァァァァァ!!!!!!!」」」
燈也が助け出される可能性がある。
すずかとは、別の意志でなのは達は動いていた。
一種の、ショック療法と似たような手だ。
三つの巨大な閃光は、本来の闇の書の防衛プログラムの外装を粉砕した。
見事だ。
クロノは、そう思いもしたが、それ以前に悪寒が走る。
浮かび上がってくるコア。
良かった。
生きていた。
まだ、燈也は生きていたと、クロノ以外の誰もが安堵した。
かの、ように思えた。
「皆・・・死んじゃえ・・・」
全員の頭の中に入ってくる、燈也の声。
「ママたち以外の人間は・・・死んじゃえ・・・」
ラグナロクブレイカーの光を取り込み、自らの力と加えることによって、新たなる外装が構築され始めている。
一瞬、まばゆい光が、なのは達の視力を奪った。
一瞬でありながらも、どのような状況か分からず、だが、すぐに回復した。
視力が回復した後に、目の前にはあるはずの無い物が、そこにいた。
「漆黒の・・・破戒・・・天使・・・」
巨大すぎた。
天使というより、巨神のような印象を受ける。
かつての、アイン・エンゲージの比ではない大きさ。
頭に翼を持つ、金や宝石で装飾された白い顔
突如、頭部にある羽が展開され、顔が登場し、金色のベルトゥス・オプス・・・
真実の目が、なのは達を見ている。
「なんだよ・・・これ!!??」
ヴィータが、悲鳴をあげるのも、無理はないだろう。
今まで、全く体験したことのない出来事。
正に、本当に未知であることであり、誰もが、恐怖を抱く。
「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ッ!?」
「これは・・・・・・」
なのは達の聴覚を奪う咆哮。
これは、燈也の宣戦布告か。
巨神の口が開き、天を見上げ、限りない、無限に届くこの咆哮は、地球と共鳴し、大地を揺らす。
さらに、鳴海市のアスファルトが、抉れるように、建築物を破戒しながら、一本の巨大な線を描く。
「こんなのが・・・アースラに行ったら・・・・・・」
クロノは、一人恐怖する。
アルカンシェルなら、破壊することは可能であるかもしれない。
しかし、それと同時に、ここは甚大な被害を受ける。
だが、絶望的な考えが生まれる。
アルカンシェルは・・・通じるのか。
絶対的な、確信。
「皆・・・死んじゃえ・・・・・・」
ゆっくりと、両腕を上げる巨神の掌から、光が、収束される。
「不味い・・・!!!」
聴覚は戻った。
「急げ!!!アレを止めろ!!!!」
クロノは、悲鳴に近い感覚で、指示を出す。
全ては、簡単に行かない。
「うぅぅぅぅぅ・・・・・・・えぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
クロノの悲鳴より速く、既に、光は放出された。
各自が、自己の判断で、それを回避する。
「エイミイ!!!!今の光はどうなった!!!!!」
「信じられないけど・・・被害は無し・・・」
「なんだと!?」
『無駄に命を散らせてはいけない・・・』
「トウヤッ・・・!!」
聞こえてくる。
声が、聞こえてくる。
『死ぬのは・・・お前たちだけだ・・・』
時空管理局の連中を
『殺す・・・』
『見たくない・・・そんな燈也は・・・見たくないよぉ!!』
アリシアが消え、今、この、外で破戒天使と呼ばれているものの中にいるのは、プレシアとすずか、それを操る燈也のみ。
すずかは、何処にいるか解らぬ、燈也に、ただ叫ぶ。
少しでも、届けば良い。
「勝てない・・・」
絶望を悟った。
先程の形より、戦闘に適し、そして強い。
そのときだ。
成層圏を突き破り、雲を破り裂き、二つの歪曲粒子砲、アルカンシェルが、目の前にいる巨神に撃ち放たれた。
アースラ級の戦艦、二隻が、援護に駆けつけた。
しかし、巨神は、背部の翼を羽ばたかせ、それを簡単に吸収する。
絶対的勝利の確信が、絶対的敗北の確信に変わるとき。
吸収した、その翼は、虹色に輝き、その漆黒の体に似合わぬほどに美しくある。
「アルカンシェルを・・・まさか!!僕たちの勝利は・・・もう、存在しない!?」
信じられない光景が、クロノや、宇宙空間にいる時空管理局の人間の前に伝えられた。
非常識にもほどがある。
いや、それを常識だと、だれが、決めた。
時空管理局の人間だ。
常識にとらわれていたがゆえに、目の前にある存在を非常識なものだと、クロノはとらえてしまった。
現れる、複数の魔導師達。
常に、自分の常識が当たり前とは限らない。
戦車が主流だと思えば、戦闘機が出てきて壊滅的な打撃を与える。
アルカンシェルの後に、この場を収める役割についていた、魔導師達、その顔には、畏れという言葉が面白いほどに似合っていた。
巨神は、その気配を感じ、ゆっくりと、余裕を現すかのように、振り返る。
この世界の終焉を現すかのごとく、漆黒の巨神。
その、きらびやかに輝いている翼は、終焉の光を現しているかのごとく。
「てぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
一人の魔導師が攻撃命令を発した。
そこまで、怒鳴るのは、自分の気持ちを誤魔化すためといっても良い。
「やめろ!!!!」
クロノは、止めにかかろうとしたものの、既に、放たれた砲撃魔術は、巨神の前では捻じ曲げられ、望まぬ方向へと落ちる。
ギギッ・・・
その、擬音が、似合うかのように、巨神は、その魔導師達を見るように、首を上げる。
「ッ・・・うわぁぁぁぁ!!??殺すきだぁぁ!!!殺すきだぁぁぁ!!!」
何をしようとしている。
助けに着た、魔導師の一人が、恐れを抱き始め、発狂し始める。
その恐怖を感じ取ったのかのように、謳うような体制を取り、巨神の口が開いた。
「・・・・・・・・・!!!!!!」
放たれる、巨神の唄は美しく。
歌われる、神の唄。
「音・・・巨神の咆哮ッ!?うっぁぁぁ!?」
痛みが走る。
この声を聞いただけで、何故だ。
音波兵器の部類か。
「エイミイ!!!僕等を!!!早く!!!」
「あぁぁぁぁぁぁ!!!??!?!??!???????」
なのはは、発狂し始める。
気持ち悪いのだ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!?????????」
発せられる声。
恐怖
悲しみ
苦しみ
痛み
無情
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!」
「手遅れになる!!!」
『これが痛み・・・』
「燈也・・・!?」
『クロノ君・・・!?どういうこと・・・!?』
「早く!!!」
早く
巨神は見る。
何か、発している。
音を反射させている。
何か。
「うわぁぁぁぁぁ!!!!!!!!崩壊する!!!!!!!!!僕達が崩壊する!!!!!!!!!」
『壊れない・・・神の力・・・そうか・・・貴方も・・・』
叫べば、叫ぶほど、強く反射される。
「クロノ・ハラオウン・・・神・・・その力。」
感じ取ることが出来た。
クロノ・ハラオウン
クロノ・ハーヴェイとは違う。
その壁が、なのは達を保護していた。
『神の壁・・・』
しかし、中に神はいない。
神として、覚醒していない。
そのまま、守りつづければ。
死ぬ。
確実に死に至る。
故に、このまま、咆哮を上げれば、砕かれる。
それでも、音は、微弱ながらもなのは達に聞こえている。
そして、死に至る。
『僕の中に・・・・・・音が!!!!!!!!!!』
エイミイは急ぐ。
クロノの尋常じゃない叫び。
やばい事は解っている筈だ。
なのは達は、状況すら解らずに、そのままアースラへと回収される。
回収された後、クロノの背中に、悪寒が走った。
目の前にいる巨神は強く、そして、恐怖の象徴として、見事に戦意を損失させることに成功した。
あのまま、歌を聴きつづけていれば、
「クロノ達を・・・回収完了・・・」
「間一髪だった・・・」
「クロノ・・・?」
クロノが、一旦、唾を飲んだ後に、語り始める。
「あれは・・・僕の予想が正しければ・・・人間の中枢神経を破壊する・・・」
実質、感じていた。
モニターに映され、あの巨神の歌を諸に聴いた魔導師達は、海へと落下していた。
何も、何もせずに。
「解らないけど、僕達は、安全だった。」
(神の壁・・・僕の中に神はいない?)
クロノは、聞こえてきていた声の意味を理解しようとするも、理解は出来なかった。
ただ、目の前にいる映像を眺める。
あれは・・・
諸に、受ければ、瞬時に破壊される。
考えることも出来ず、そのまま海のそこへと流れ、そして落ちていく。
正に、地獄だ。
生きているのか、死んでいるのかすら、解らずに、そのまま海へと落ちて死んでいく。
「時間が無かったとは言え、もう少し・・・待つべきだったのかもしれない・・・」
「勝てるの・・・?」
誰かが、そう、呟く。
目の前にいる者に、勝てるとでも言うのか。
管理局の武装の切り札であるアルカンシェルまで封じた。
故に、不可能。
管理局側に、勝利は無い。
ちっと、クロノは舌打ちをして、モニターに移る漆黒の巨神を眺めつづけていた。
攻撃を許可した、自分の判断ミスであると。
「でも・・・まだ、中に、すずかちゃんがいる・・・」
なのはの持てる最大の希望。
「もう、希望は・・・それだけやな・・・」
はやては、呟いただけ。
既に、リィンフォースⅠの管理から、完全に抜けている防衛プログラムだった物を、今、この状況で何もすることなど、出来なかった。
「まさか・・・逃げて!!!急いで!!!」
「エイミイ!?」
突如の、エイミイの悲鳴に近い通信。
モニターに映る漆黒の巨神が、羽ばたき、飛翔し、宇宙空間へと。
「プレシアさん・・・止める手段って・・・」
「一番簡単なのは、あの子を殺すこと・・・」
「それじゃぁ・・・意味が、無いじゃないですか!!」
「そうよ。でも、この覚悟は決めておいてね。」
助けるために、ここに残った。
しかし、ここで殺すとなれば、何も、何も意味をなさなくなる。
踏み出した一歩は、無駄となる。
「解ってる・・・だから・・・」
直接、燈也のいる場所へと向かい、
「あの子を止める・・・良く漫画とかである手よ・・・」
プレシアは、すずかの手を掴み、燈也のいる場所へと、転移した。
「間に合わない・・・・・・」
向こう側にいるアースラ級巡洋艦が、簡単に破壊される。
巨神の手の甲から、刃が出現し、切り裂く。
突き刺す。
中にいる人間など、構う事無く、切り裂き、突き刺し、破壊する。
宇宙空間に存在していた巡洋艦は、全ての形を変えて、宇宙の塵となりて、元より無かった物となる。
『これが・・・僕の痛みだ。』
「なんてこと・・・」
今まで、これほどの恐怖をリンディは味わったことは無かった。
もとより、危険であることは重々承知している。
しかし、この、目の前にいる巨神は、人知を超えるほどに、恐ろしい物だった。
「桃子さん・・・」
思わず、愛している人の名前を、呟いた。
今、背を向けているのが、逆に恐いと感じる。
どれくらいで、アルカンシェルの効果も無い目の前の巨神は、自分たちを殺しに来るのだろう。
いや、この感覚はアースラにいる全クルーが、感じ取っていた。
「はやて・・・燈也が、燈也が、私たちを殺すなんて・・・ありえないよな!?」
ヴィータは、振り返る。
先に、仕掛けたのは自分だ。
それが、恐怖を与え、あのような姿になったのだと思えば。
考えられる。
全てが。
ヴィータの中で、最悪の方向へと移り出す。
はやては、そんなヴィータを無言で抱きしめた。
かつての、短いながらも、燈也の過ごした時間を。
なのはや、フェイト達を殺す。
それ以外の命を奪うことは無かった。
しかし、目の前にいるのは、自分の目標のためなら、全ての敵を破壊した。
「来る・・・・・・・・・!!!!全員、祈りは終わったわね・・・・・・・・・」
リンディは、さすがに、今回、死を覚悟した。
ただ、二度目の恋を謳歌することは、夢となったかと、心の中でそれを嘆いた。
クロノは、エイミイに近づき、ただ、後ろから優しく抱きしめた。
死ぬのであれば、愛する人と、死にたかった。
ただ、かつて自分の中にいた、あの男は、この状況に何を思うのだろう。
そして、ただ、近づいてくる巨神を睨む。
アルフは、その場にへたり込む。
ヴィータは叫び、シグナムは息を飲み、シャマルは目をそむけ、ザフィーラはこの世界の無情を感じ取る。
フェイト、はやて、そしてなのはは、中にいる、すずかに祈る。
まだ、死ぬには、早いと、この三人だけは、希望を信じていた。
絶対に、戻る。
希望は、まだ、あの巨神の中にいる。
迫り来る、恐怖は、直ぐ側に。
速い。
宇宙にいる天使は、速い。
自在に、泳ぐように、その姿は美しく、見とれてしまう。
美しく
翼は、宇宙を包み込むかのように。
両腕に展開された光の刃は、ブリッジを捕らえた。
光の刃も、美しい。
それに斬られるのであれば、本望という物か。
しかし、死ぬのは嫌だ。
もう、ここで終わるのか。
誰もが、そう、思ったときだ。
目と鼻の先にいる。
心臓の鼓動が高鳴る。
唾を飲み、自分に絶望し、全身の毛穴から、汗が吹き出た。
しかし、望んでいる物は来ない。
クロノは静かに目を閉じた。
いや、望んではいない。
諦めて、舞っていた物は来ない。
心臓の高鳴りはそのままに、クロノは目を開いた。
何も、何も来ない。
「止まっている・・・・・・?」
確かに、目の前にいる巨神は、ブリッジを捕らえ、その光の刃は、目と鼻の先にあるものの、止まっていた。
「まだ・・・望みは・・・あるのか・・・?」
クロノは、目の前に映る巨神をただ、ただ、眺めていた。
確かに、止まっている。
ビデオの一時停止ボタンを押したかのように、その存在は、動いていなかった。
「すずかちゃん・・・やったんか・・・?」
はやては、目の前にいる巨神の恐怖しながらも、呟いた。
誰もが、その巨神を見たとき、巨神の刃は塵となって、消える。
「すずか・・・・・・」
止めを刺そうとした時だった。
後ろから、暖かい感触が燈也を包み込む。
それが、誰だか、解った。
そして、正面には、好きだった人の感覚。
「ママ・・・・・・?どうして・・・・・・」
どうして、止めたの。
純粋な目をした少年は、ただ、プレシアの行動に疑問を抱くことしか、出来なかった。
「だって・・・!!目の前にいるのを、壊せば・・・僕たちの復讐は、終わるんだよ・・・・・・?」
「もう、見たくないって、言ったでしょう?」
「燈也・・・帰ろう・・・」
「だって・・・だって・・・」
「親はね・・・子供が、人を殺すのは、見たくないんだよ・・・?」
プレシアの、本心。
それを、すずかは、優しく燈也に伝える。
「でも・・・でも・・・」
燈也から、力が消えていくのが解る。
光だけが、存在し、燈也はそれを支配することによって、巨神を操っていた。
しかし、今、愛する母親から再び受けた言葉によって来ることはおろか、何もかも、力が、体全体に入る力が全て抜ける。
いつかのように。
「燈也・・・」
苦悩の表情。
この、幼い顔は何人もの人間を殺してきた。
全ては、各世界にいる殺された自分たちの為に。
「すずか・・・僕は・・・何もできなかった・・・・いっぱい、ママ達を殺した敵を殺したのに・・・」
「燈也・・・プレシアさんは、ここにいるよ。」
もう一度出会った、会いたかった人。
「この世界にいたプレシアさんは、死んだかもしれない。」
しかし、
「今、ここにいるよ。」
「ここに・・・?」
そこにいるのは、確かに、この世界のプレシアではない。
多次元宇宙に存在するプレシア・テスタロッサのうちの一人なのだ。
それでも、燈也の事を知っている。
燈也の母親だと、思っている。
そして、燈也自身も目の前にいるプレシアを本当の母親だと思っている。
「もう、母親捜しもお終い。」
「帰ろう・・・燈也。」
「帰る・・・・・・?」
でも・・・
「憎いんだ・・・恐いんだ・・・」
苦悩
本当は、恐かった。
「貴女の中で、許すことは出来ないのね・・・」
プレシアは、自分を嘆いた。
あの時の、自分を。
巻き込んでしまった自分を。時間が無かったとは言え、真実を言い、燈也に憎しみを植え付けた自分を恨んだ。
「許してあげよう・・・?簡単に・・・できることじゃないけど・・・」
「すずか?」
後ろから、すずかは囁いた。
簡単に許せることではないことくらい、わかっている。
一人の少年から、家族を奪ってしまったのだ。
普通なら、許しがたい。
プレシアは、燈也をその胸から、解放した。
すずかは、元の姿に戻り、そっと、燈也の頬に触れた。
「暖かい・・・」
「それは、僕の体が殺した人の血で暖まっているから・・・」
「違うよ・・・」
「え・・・?」
開いている。
燈也が、徐々に、復讐から身を忘れようとしている。
すずかの言葉には、暖かみが有るように、プレシアは感じることが出来た。
プレシアは、すずかに託そうと決めようとしていた。
すずかなら、燈也の良き支えになってくれるかもしれない。
良き理解者として、愛してくれる人として。
本当に、信頼できる人が、ここにいると、感じがした。
「あなたが、優しさをもう一度身に付けようと、今、しているから・・・」
「優しさ・・・?そんなの・・・僕には・・・」
「優しさがあるから・・・貴方の奥底にある優しさが、あなたを、もう一度夢で見た、純粋な貴方に戻そうとしているんだよ。」
母として、少し、嫉妬もあった。
それでも、優しく、二人を見守る。
後、もう少しで、燈也は目覚めようとしている。
純粋な頃の、燈也に。
「もう、苦しんじゃ駄目だよ・・・?」
「・・・」
「黙って、苦しみを自分の中に、押し込もうとしてる。それは、自分の中にある、痛みを広げちゃう。」
今の燈也に、すずかは、どのように映っているだろう。
うつろな目をして、何も、語ろうとしない少年の目には、
「でも・・・嫌だ・・・僕は・・・」
痛みを伝えたい。
それでも、目の前に、母がいたとしても、燈也にとって、なのは達のしたことは許せなかった。
すずかが言ったことだとしても、信念は固い。
だから、殺したかった。
この世界のなのはを。
首を絞めて、どんなに悲鳴をあげても、許さずに、例え、回りから嫌われ様とも、母だけが、プレシアだけが自分を愛してくれるのなら、例え、自分の体が、血で汚れてしまっても、プレシア・テスタロッサが自分を愛してくれるのであれば、なんだって、なんだって出来た。
プレシアでも、すずかでも良い。
許しよりも、愛が欲しかった。
二人によって、自分が満たされるのなら、自らが創った悲しみを埋めてくれる人を待っている。
虚ろな瞳が写してきた世界は、自らが無意識のうちに悲しみの溝を作り出し、埋めてくれる人にすがっていた。
しかし、渡るたびに、自らの悲しみを埋めてくれる人などいなかった。
いや、最初から、その人は死んでいたのだ。
二度と得られない物を、再び掴んで、失ってしまうことほど、辛いことは無い。
だから、歪んでしまった。
辛すぎて、辛すぎて、来た世界での自分の愛する人の存在は無かった。
この世界に戻ってきたとき、のうのうとプレシアに作られた人形は生きていた。
「殺したって・・・良いじゃないか・・・人形は・・・殺すんじゃない・・・壊すんだ・・・」
「フェイトちゃんは・・・やっぱり、人形じゃないよ。」
「・・・」
プレシアは、何も、言わなかった。
いや、言えなかった。
歪んだ、受け入れなければならない事実。
フェイトを思い出すたびに、自分の愚かさと、燈也への後悔が過ぎる。
頭の中に張り付いて、永遠に忘れることの無い、プレシアの歴史。
「フェイトちゃんは・・・燈也と話がしたいって・・・」
「受け入れられない・・・」
もう
『もう・・・消えたい・・・』
不安定な精神
『消えたら、ダメ・・・』
不安定な精神に、呼応するかのように、この空間の中で、燈也が消えていく。
「僕は・・・あいつ等と冷静に話すことなんて・・・」
出来やしない。
そう、思っている。
思い込んでいる。
「嫌だ・・・もう、嫌だ・・・」
「燈也・・・どうして!!」
「連れてってよ・・・ママが、ここにいるのは・・・」
「私は・・・」
ここで、燈也を連れて行けば、真の意味で終わることになる。
これからの戦いで、中心となって戦うはずの人間が死んでしまえば、本当に、終わることになってしまう。
「嫌だよ!!折角、会えたのに・・・こうやってやっと、まともにママと話せたのに!!」
「私がいるよ・・・?プレシアさんだって、今・・・そこにいるよ?皆が、燈也と仲良くなりたいって・・・!!」
「僕は・・・ダメだ・・・何も、何もできない・・・殺すことも、復讐も・・・」
「復讐なんて、望んでない!!プレシアさんは!!」
「でも・・・あのときのママの思いなんて・・・世界に散らばったもう一人のママや僕らの思いだって・・・かなえることは・・・!!僕は、何もできない!!何も・・・!!」
燈也は、うつむき、気付かぬ間に、涙を流していた。
「もう、いいの・・・私は・・・あなたのその言葉だけで・・・」
プレシアは、泣いてる燈也の背中を思いっきり抱きしめた。
もう、泣いて欲しくない。
あの時の歪んだ自分のために泣いて欲しくない。
「そんなこと無い・・・燈也は、フェイトちゃんを殺さないでくれた!!なのはちゃんを殺さないでくれた!!アリサちゃんを守ってくれた!!私に傷を負わせたとき、必死に治してくれようとした!!」
「うっ・・・」
すずかの必死の説得。
燈也から、また。
涙が溢れ出す。
それは、その涙の意味はなんなのだろう。
確かなのは、すずかの言葉は、ちゃんと、燈也の中で刻み込まれているということだ。
しっかりとした、すずかの言葉が。
「燈也は、皆のこと嫌いかもしれないけど・・・なのはちゃんも、フェイトちゃんも、はやてちゃんも私も、燈也のこと・・・好きだよ。私は、この世界で・・・誰よりも・・・」
「何も・・・何も・・・僕は・・・」
『私を信じて・・・』
燈也の思いは、言葉にならなかった。
涙が出て、全てが混乱して、すずかの思いに触れて、本気で自分のことを、復讐鬼で、すずかの友達たちを殺そうとしたそれゆえに、純粋で、その思いは嬉しいのだろう。
すずかは、そっと、地に付いている燈也の両手を、自らの両手で包み込んだ。
冷たい。
これが、燈也の体温。
ずっと、人肌に触れず、孤独に過ごしてきた証。
しかし、もう、その証は、必要ない。
ただ、
「まだ・・・なのはちゃん達に遭うのが、恐いなら、私が燈也に勇気をあげる。」
「・・・?」
包み込むように、今、燈也にはすずかが聖母に見えた。
知っている。
この感覚を知っている。
初めてしたときは、プレシア・テスタロッサと、この感覚を共有し、今は、自分に。
すずかは、
『僕に・・・好意・・・・・・?』
特別な形で、二人は今、体を共有している。
『そうだよ・・・私は、燈也のことが・・・好き・・・』
『僕は・・・』
『言わなくていいよ・・・思い出さないでいいよ・・・辛いだけだから・・・』
『血で汚れている・・・』
魂を共有させて、
『私が全部・・・貴方の穢れた場所を・・・消す・・・』
そのまま、すずかは、強く、燈也を抱きしめた。
『ママとの絆は・・・』
『貴方とプレシアさんの繋がりは・・・デバイスだけじゃないよ・・・』
プレシアの中に、新しい命がある。
歪んだ時に、無理に体を19にまで成長させた体と、交わって、創られたとは言え、確かなる形として、繋がっている者。
『僕は・・・』
『貴方は・・・不浄じゃ無い・・・』
『いいのか・・・他の世界の僕は・・・』
『他の世界の貴方が、不幸な運命を辿ったのだから、生きている貴方は、幸せになる権利がある。』
穢れた物は、また、洗い流せば言い。
燈也を塞いでいた自らの唇をすずかは解放した。
『穢れるかもしれない・・・』
『いいよ。私は、どんなに穢れても・・・燈也のこと・・・愛してるから。』
ずっと
『見てた。初めて、私に声をかけてくれたときも・・・』
『・・・』
『私が、泣いてた時・・・ずっと、側にいてくれた・・・』
思い出す。
『私が背戦いにでることを、止めてくれた・・・』
そこから
『もっと好きになった・・・貴方に着られたとき、貴方は私のために、力を浸かってくれた・・・』
SUZUKA
『そして、貴方は私の大事な人たちを殺さなかった・・・』
それは、
『貴方は、また、優しくなることが出来たからだよ。』
受け入れるというのか。
ここまで、血で穢れ、殺意を隠す事無く向けてきた、自分という名の、トウヤ・テスタロッサの存在を。
『僕の全てを・・・受け入れることができるのなら・・・』
『貴方が、私を望むのなら・・・好きだよ・・・?愛してる・・・』
すずかから、発せられる、眩い光。
それは、燈也の穢れを消し落とすように、穏やかな光だった。
光が、弱くなった時、燈也の顔は、前と同じ、優しさを持った、いや、優しさを再び取り戻した燈也が、そこにいた。
消えかけていた体は、全て元に戻る。
すずかの体を借りて、立ち上がり、プレシアを見た。
『ママは・・・』
プレシア・テスタロッサは、その子を、どうするつもりなのだろう。
『私は、この子を産むつもりよ。』
それは
『貴方と私が、繋がっている証だから・・・変わった、親子の証。』
だから
『全てが終わったら、すずかちゃんと一緒に・・・私のところにいらっしゃい。そこに、アリシアもいるわ。』
『え・・・?』
『私は、もう、長くここにはとどまれないわ。』
『そんな・・・』
『だから・・・すずかちゃんと仲良くね。』
『うん・・・』
プレシアは、そっと、燈也とすずかを抱きしめた。
『すずかちゃん・・・この子を、お願いします。』
『はい。』
『ママの・・・からだが・・・』
『大丈夫・・・』
まだ、プレシアには、していないことがある。
『すずかちゃん・・・私の、最後のデバイスを・・・貴方に託すわ。』
『え・・・?』
プレシアの、最後の作品が、今、すずかに、渡された。
『大事にします・・・』
『燈也のネクサスと、同じ・・・二人の絆と・・・そして、私との絆・・・』
繋がりあう。
三人の絆が、確かな物となった。
すずかは、それを、受け取った。
既に、そこに、穢れた物など、存在していないようにも思える。
『もう、戻る時間みたい・・・私は、優しさを取りもどすのに、時間がかかりすぎた・・・でも、貴方は、今取り戻した。』
だから
『もう、その優しさを・・・忘れないで・・・』
最後に、プレシアは、燈也に餞別のキスをしてから、二人に、満面の祝福の笑顔を送ってから、元の世界へと、戻った。

母が、最後にやさしさを取り戻した世界であるのなら、どのような世界であるのだろう。
『僕は・・・誰も見ていないと思ってた・・・ずっと、姉さんたちのことを・・・信じることが出来なかったんだ・・・』
だが
『ちゃんと・・・すずかは見ていてくれてたんだね・・・』
『私だけじゃないよ?ずっと、皆が、貴方を見守っていた。』
「僕を・・・受け入れてくれるのなら・・・」
『受け入れるよ・・・行こう。』
全ては、簡単だった。
誰かが、プレシアのように、燈也に接してあげればよかっただけだった。
帰ろう。
元の場所へ。
戻るべき場所へ。
『あぁ。すずかとなら・・・行けそうな気がする・・・』
『『ネクサス・・・展開・・・モード・ジュネッス・・・』』
燈也とすずかが、ネクサスを手にし、ジュネッス形態へと変化させた。
『蒼い・・・ね。すずかの、ジュネッスは・・・』
『うん・・・』
同時に、すずかは、天使となりて、燈也も、戦闘形態に入り、すずかに体格をあわせた。
もう、母から、貰うべき言葉は貰った。
隣に、母の代わりにすずかがいてくれる。
『行くよ・・・!!』
『うん!!』
燈也は、すずかの空いている手をそっと、握る。
今、こうしていないと、燈也は不安だった。
だから、すずかも、燈也の手を握り返す。
この闇を、全て払う。
『・・・オーバースペリオル・・・』
二つのネクサス・ジュネッスに収束される光が、希望へと繋がる、明日への光となる。
『『グリッターゼペリオン!!!!!!!』』
金色の光が、二人の新に結ばれた絆の光が、この、燈也を縛っていた折を破壊するために、放出された。
『さようなら・・・僕に、夢をみせてくれたものよ・・・』
『ありがとう・・・貴女がいなかったら、私は・・・燈也とこうすることが出来なかった・・・』
そして、今回の事件によって、知ることが出来た。
好きな人の、見た世界を。
光によって、抉じ開けた穴から、燈也とすずかは、脱出した。
宇宙空間に、二人は、放出され、コアを失ったそれを見た。
『形として・・・まだ、残っているのなら・・・』
『あれを破壊して、本当に最後・・・』
「すずかちゃん!?」
アースラのモニターに、突如、巨神から光が放出され、それが映し出された。
抜け出た場所にいたのは、そこにいたのは、燈也とすずか。
「奇跡が・・・起こった・・・」
しかし、
「この世界の崩壊まで・・・時間が・・・」
「さぁ・・・」
『聞こえた・・・?』
声が。
破壊しよう。
あれを、破壊しなければ、世界は終わる。
『久しぶりだ・・・おいで!!今度は、愛する人と共に!!』
宇宙に、巨大な魔法陣が現れる。
「まさか・・・」
クロノは、知っている。
いや、ここにいるはやてや、ヴォルケンリッターを除く全メンバーは知っている。
かつては、敵として、燈也が、その身に取り込んだ。
しかし、今は、あれを破壊するために。
巨神の体を突き破るように、這い出た、燈也の扱う、機動兵器・・・巨大デバイス。
今、その真の姿を、現そうとしていた。
アイン・エンゲージ・・・いや、二人を取り込むのであるのだから、アイン・ソフ・エンゲージとでも言ったほうが正しいだろう。
『悠介・・・二人に・・・』
『あぁ。いって来い・・・ゴルド・ドラグーン!!』
『燈也・・・あれ・・・』
『え・・・?』
月が、爆散するような印象を受けた。
それほどまでに、ビッグバンと共に生まれた。
すずかと、燈也は次元を貫いて、送られてきた一つの剣を手に取った。
『これ・・・』
知っている気がする。
アイン・ソフ・エンゲージ以上の大きさを誇っていた、その剣は、本来別の主がいるのだろう。
刀身が、アイン・ソフ・エンゲージの10倍はある。
『お前・・・借りるぞ!!』
『目覚めて・・・!!』
はぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・
「目覚めたか・・・こいつの存在を感じ取ったね。」
聞こえる。
燈也をコアとしているうちに、予備のコアを、その性格、人格、全てをコピーして、目の前にいる防衛プログラムは、もう一人の自分と言えるだろう。
あの、姿になったのは、自分の中にある、アイン・エンゲージの姿を読み取り、その奥にある物を読み取ったことによって、その存在が、そこにいる。
「僕の負の感情を・・・吸い取ったんだね・・・」
「燈也・・・?」
「斬るよ。あいつを・・・僕の怨念をかたどった物を・・・!!」
「燈也・・・力を貸すよ。」
二つのネクサス・・・そして、二つの懐園剣が一つの巨大な剣と融合される。
「形をかえろ・・・ネクサスも・・・懐園剣も・・・僕たちの力も、思いも!!全てを取り込んで!!!」
全ての形が、石化し・・・アイン・ソフ・エンゲージも、受け取られた巨大な刃も、新たな形として、生まれ変わる。
「「インフィニティー・・・カリバーン!!!!!」」
「ウォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!」
発する咆哮を、全てその剣は、吸収し、力へと還る。
その剣、正に、神の如き。
神の刃
全てを切り裂くことのできる、最強の刃が、今、ここにある。
もとより、全ての争いを防ぐための刃だ。刀身が金色に輝きだす。
「レイ・ディメンジョン!!!」
アイン・ソフ・エンゲージは、一瞬姿を消し、巨神をも、姿を消した。
亜空間に引きずり込むことによって、破壊したときによる衝撃波を和らげるゆえ。
その、巨大な刃を、エンゲージは、何度も巨神に突き刺した。
何度も、何度も、何度も。
「はぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
最後の一付きは、巨神の体を突き破った。
躊躇う事無く、その刃を亜空間の中で押し貫いた。
そのとき、亜空間が、別の世界へと繋ぐ、扉が、輝き開いた。
崩れる、次元の中で、最後の一撃を巨神に与える。
「アァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!」
巨神の咆哮とともに、全力を絞った時、鳴海市を焼いた光が、アイン・ソフ・エンゲージに直撃した。
あの、光を喰らいながらも、被害は軽微。
正に、真の巨神の破片から創られた物だけの事はある。
「くっ・・・」
「大丈夫・・・?」
「あぁ・・・いける。」
しかし、
「当たった場所が・・・最悪だ・・・」
全ての制御をつかさどる部分。
頭部に直撃したのだ。
顔面が、融解し始めている。
あの光とて、ただの光ではないということか。
「出力が、安定しない文・・・少々、こっちが厄介だな・・・」
「でも・・・手はあるんでしょ。」
「あぁ。」
全てを、知っている。
アイン・ソフ・エンゲージが、闇の巨神の欠片から、出来た物であるのなら、呼び出せるはずだ。
今の自分に、その資格はあるのだろうか。
これから、呼び出そうとしている、あいつを。
一瞬の不安が、燈也に過ぎった。
今までの、行動が行動だ。見限られているかもしれない。
それでもだ。
「来てくれ・・・」
その、闇の巨神の名こそ、
「エルヴェリオン・・・・・・・・・!!!!」
しかし、何も反応しない。
「僕じゃ・・・・・・駄目なのか・・・・・・」
この状態となれば、少し燈也たちが押されている。
出力が、安定しない中で、互角以上にまで演出させ、戦っているのは、流石というところか。
元の、基本的な戦闘力は、同世代の中では、トップに入るほどの実力と言える。
巨神は、燈也を表現していた。
体が、巨大でも、扱う物が未熟であれば、いや、あれほどの潜在的な怨念を身に纏い、制御したのだ。
未熟な物であれば、肉体が滅び、そして死ぬ。
しかし、ここにいる男は、全てを支配した。
正に、あの時のクロノの言葉。
非常識な存在であるといえる。
このことを考えれば、最強と呼ぶに相応しい。
しかし、アイン・ソフ・エンゲージの本来の持ち主は、今、その最強の存在を見放してしまっている。
「消えろ!!」
全ての攻撃を、剣で防ぎ、その剣で、相手を斬る。
しかし、完全に切り裂くことは出来ない。
ここで、出力の高さを、燈也は悔やんだ。
そして、今まで自分がやってきたことさえも、全てを燈也は懺悔した。
「僕が、愚かだというのなら・・・そう言え!!しかし・・・今は!!」
ここで、死ぬ訳には、まだ、行かない。
プレシア・テスタロッサは、この世界に舞い戻り、燈也に生きる道を示した。
しかし、そのレールに、燈也は恐くて乗れなかった。
だが、そのレールに乗せてくれた、人がいた。
共に、その道を進むと、言ってくれた人がいた。
目の前にいる自分が、自分に攻撃する。
一時的に、カリバーンを廃棄し、懐園剣を使い、相手の巨神と戦う。
ぎぎっっ!!
亜空間から抜けた大銀河に、二つの刃が、魔力の火花を上げてぶつかり合う。
宇宙の中では、自分たちの存在はちっぽけな存在に過ぎない。
それでも、相手の巨体に屈する事無く、アイン・ソフ・エンゲージは光の砲弾を避けながら、突き進む。
「ブレイクカリバースラッシュ!!」
雄の刃で、縦に切り裂いた瞬間に、雌の刃で左に切り裂く。
その反動で、一回転し、二つの刃で、十字に切り裂く。切り裂くと共に、自らの距離とるために、アイン・ソフ・エンゲージが、消え、元の空間に戻った時だ。
「何!!??」
光の砲弾が、燈也を襲う。
避ける隙など、そこには無い。
故に、燈也は、その攻撃を直接、その身で防ぐしかない。
この状態でのディメンジョンは、出力が安定していないがゆえに、不可能。
翼を展開するも、完全なる防御は不可能。
徐々に、崩壊し始める。
燈也は、自分の強さを悔やみながらも、まだ、ここで、全てを捨てたくは無かった。
「燈也・・・」
「すずかは・・・祈るだけでいい・・・・・・!!」
しかし、この砲弾。
防ぐ手立ては、無い。
「ぐあぁぁぁぁ!?!?!?!?」
何かが、貫いた。
「矢が・・・」
燈也の体を、貫いていた。
消え行く意識の中で、すずかを感じ、まだ、生きていることを実感している。
切り裂いた、部分は、その身に宿らせている怨念の分だけ、相手は修復される。
「ウォォォォォォォ!!!!!!!!!!」
相手の上げる咆哮が、アイン・ソフ・エンゲージの外装をはがしていく。
人間で言うのであれば、骨格と内臓が浮かび上がり、皮膚などが無い状態とでも言った方が良いか。
「ツイン・メガセリオン!!!!」
まだ、残っている、肩部の砲身を前方に展開し、宇宙の暗黒物質を取り込み、かつて、ソドムとゴモラを破壊した光へと変換させ、それを放出した。
無駄な足掻きであることくらい、わかっている。
無理して、それを放ったのだ。
左腕は、消滅し、下半身は失われ、頭部も4分の1は失われた。
まだ、残る力を、右手を前へ伸ばし、破壊出来ないことを解っていながらも、未練がましく、相手を見た。
「ここで・・・ここで・・・終わる訳には行かないんだ!!!ママが、僕のために、道を示してくれた!!!!!すずかが、僕の為に危険な道へと歩ませてしまった!!!!!!すずかが、僕の間違いを正してくれた!!!!すずかが、僕に勇気をくれた!!!!!!!これに報いたいんだ!!!!!!!!」
「お願い・・・ここで・・・全てを・・・!!」
すずかが祈り、燈也は、今までのことを叫ぶ。
「僕に応えてくれ!!!!!!!!」
「燈也を・・・助けて・・・」
矢が、燈也達に襲い掛かる。
今度こそ、本気で終わらせるつもりなのだろう。
「ごめん・・・助けること・・・出来なかった・・・」
「・・・仕方なかったのかな・・・・・・でも、死んでも、あなたと一緒なら・・・」
全てが、無駄だと、すずかは思わなかった。
ただ、愛する人といることができるのであれば。
今は、これで良い。
どの道、滅ぶのであれば、ここで、美しく二人きりで死ぬのも、一興という物か。
「でも・・・死にたくない・・・体は、正直だ・・・もっと、生きたいんだ・・・」
「え・・・?」
この願いは、届かなくても良い。
ただ、叫びたい。
「傲慢なことは良く解っている・・・すずかともっと、生きたいんだ!!!!」
「私も・・・一緒にいたいよ・・・燈也と・・・ずっと・・・」
燈也が、生きることに対して、真にもがき出した時だ。
アイン・ソフ・エンゲージの残骸から、巨大なる魔法陣が出現した。
呼び出されたのだ。
燈也とすずかが、もがき苦しむことによって、ついに、それに応えられる。
アイン・ソフ・エンゲージの残骸が、光となって取り込まれ、それ以上に大きい物が、そこに現れた。
漆黒であり、魔力と、闇を司る、最強の4体の巨神。
「貴様のもがき足掻く・・・願い・・・聞き届けた。我を使え・・・闇の巨神・・・エルヴェリオンを!!」
「ありがとう・・・・・・・・・・」
聞き届けられた。
だから、戦うことができる。
新に。
「急げ・・・世界の崩壊まで、タイムリミットは・・・後・・・30秒だ。」
エルヴェリオンから警告される。
燈也、エルヴェリオンはインフィニティ・カリバーンを手に取った。
「ディエンド・レクイエム・・・!!!!!」
燈也のエルヴェリオンが時空へと消え、巨神の前に現われ、切り裂き、そして、消えていく。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「早く!!!!!!!!」
巨神が、成すすべなく、切り失せられる番だった。
「消えろ・・・」
「さようなら・・・」
「「無限光の中へ!!!!!!!!!!!!」」
エルヴェリオンが、最後の人たちを振るった時に、そこに、紋章が現れる。
全てを司り、生命の樹と言われる物の紋章。
「ウォォォォォォォ!!!!!!!!!」
巨神も、もがき足掻くことを知った。
故に、叫ぶ。
生きたいと。
しかし、生命の樹が発動させた無限光に引きずり込まれ、消滅した。
「帰ろう・・・・・・・・・・・」
「崩壊が・・・止まりました。」
エイミイが、ほうけたように、リンディに伝えた。
目の前で、全てが元に戻った。
街に、損害が、無かったかのように。
アースラにいる、なのは達を含む全クルーは、その場に崩れるように、座り込んだ。
「そう・・・救われたのね・・・私たちの手で、復讐鬼に・・・生きる意味を取り戻した子から・・・そして、彼を導いた天使から・・・」
「燈也は、どうなるんですか?」
なのは達の残る一つの疑問。
救ったとは言え、管理局の人間と戦ったことには変わりない。
リンディは、ただ、今後の案として、呟いた。
「・・・全ては、私たちのせいでもあり、彼の人生を狂わせてしまった・・・そして・・・今回の件もあるわね・・・」
結局、助けられたのは事実だった。
彼の怨念に、囚われた者達は、全て、死んでいったのも事実だ。
「・・・今は、考えたくない」
クロノが、リンディに、そう告げた。
リンディは、ただ、頷いた。
激しい脱力感から抜け出せなかった。
今は、疲れを取ってから、全てを考えたかった。
「時空反転・・・帰ってきます。」
生命の樹の紋章が現われ、そこから、アイン・ソフ・エンゲージが、帰還した。
「急いで・・・彼等を回収して。」
「良かった・・・」
アイン・ソフ・エンゲージ・・・回収。
「良か・・・ったな・・・すずか・・・ちゃん・・・」
全ての、緊張の糸がほぐれたように、はやては、気を失った。
今回、夜天の書の呪縛を解放した功労者は、一度、眠りへと。
そして、帰還した者達は
「生命意識が・・・二人とも、危険な状態です・・・」