2009.10.01 Thu
ジェイルの描いた世界
もし・・・ジェイル・スカリエッティが、うちの作品で変わった理由。
ジェイル・スカリエッティから、渡された手紙。
アヤさんの記憶が、あの人と詰まった記憶の手紙。
今回は、私が、その手紙を受け取った事と、その一部の文章を紹介します。
本来は、かなりの枚数なのですが、その中の文章を飛ばし飛ばし、私、ルーテシア・アルピーノが紹介させていただきます。
科学は人の力。
このようなことを言った人間がいたが、それは人間の傲慢であると感じたのは、いつの事だったのだろう。
ジェイル・スカリエッティ、考えるは、今までの自分を否定するような事だ。
傲慢な考え。
考えれば、私の今までしてきたこと、それを、全てを罪と称するのであれば、償いは、最愛の子供が死んでしまったと言う事なのだろうか。
いや、アレは、自惚れすぎた、私へのとばっちりなのだろうか。
もう、考える気力など、私にはなくなっていた。
今、ここで、考えるのは、私の子供である、アヤの事だけだ。
アヤ・スカリエッティ。
私の最愛の息子だ。
もてる、全ての技術を使い、私は、彼を作り出した。
私の傑作である、ナンバーズ達以上の性能を誇り、融合騎、アギトとの融合も可能。
最後は、私を罵り、この世界からいなくなってしまった。
私が命を弄びすぎた結果が、アヤの死だったとでも、言うのだろうか。
そうか。
子供を利用する事を、アヤは、やりすぎだと怒っていたな。
私の中では、あの計画も全て、アヤの世界を創る為だった。
壊れてしまった、私。
今までの全てを捨ててまで、私は、何故、アヤの為に、アヤの世界を創ろうとした。
いや、ソレは、簡単な事だ。
しかし、私は、結果的に、アヤの手を血で染めてしまった。
しかし、そうしなければ、勝てなかったのだ。
「重要なサンプルだ。」
「サンプルと言えども・・・私の子供よ?」
送られてきた物は、胎児のデータのみ。
しかし、その胎児は、異常だった。
何故って、男性染色体が、一つも見当たらないからだ。
もう一つの胎児には、それが、存在していたと言うのに、何故、存在しない。
そして、何故、未だに遺伝子が異常をきたさない。
何れ、遺伝子は異常に来たし、消滅する筈だ。
私は、それを危惧して、そして、それの生体機能を調べ、ついでに、複製品を作りたいがゆえに、プレシア・テスタロッサに伝えた。
しかし、プレシア・テスタロッサの胎内には、決まろうとした時には、私の検査したかった、しかし、胎児は存在していなかった。
彼女の子供は、消えたのだった。
私なりに、彼女の事を心配していたのだが、まぁ、研究に利用するつもりではいたが、それが叶う事は無かった。
欲しい物を手に入れられなかった、私は、欲望をかなえられなかった事に、非情に苛立った。
故に、私は、思った。
人は、禁忌と言う物を破り、犯したくなるものだ。
嫌な事があったから、禁忌を破り、快楽を得たいという、子供の感情が芽生えた。
どうやら、私は、その手のプログラムが、人一倍、強いらしい。
だから、如何なる犠牲を払ってでも、私は、それを創ろうとしていた。
何であろうと、神であろうとだ。
新たに、私は、自分の手で、世界を創ろうとした。
しかし、それ以前に、造りたいものが存在していた。
神・・・テスタメントと呼べるものだ。
人は、既に作った。
私の作品である、戦闘機人と言う未だに、不完全な人造人間だ。
私が、それを、テスタメントを知ったのは、大分、前の事だ。
かつて、訪れた、一つの世界。
管理局の人間には、それを禁忌、触れえざる世界と、言われてきたのだ。
しかし、私は、その世界に飛び込んだ。
欲望が、そうさせた。
私の意思以前に、私の欲望が、それを望んでいたのだ。
禁忌に、自ら触れようと、していたのだ。
天使・・・私は、それを拾った事がある。
それは、おぞましい世界だった。
神話の悪魔、天使、神、鬼、龍、神獣、聖獣、怪獣、英雄、妖怪の名を持った人間、殺戮兵器達が、世界の存亡を駆けて、殺し合い、神を呼び出し、敵を殺す。
あぁ、確かに、管理局の人間が触れえざる世界にしたがるのも、解る。
私は、おぞましいほどの神々の洗礼を受けた。
一瞬にして、恐怖が、私の体を蝕み、呼吸する隙でさえ、与えようとしないほど、我々の世界が、如何に子供じみた世界であると、わかるほどだ。
喉が詰まりそうになるほどの感覚に、自分が血を流していると言う、痛覚さえ、忘れそうになる、おぞましい世界であり、神の戦いに巻き込まれてしまった世界。
人は、神の生まれ変わりになり、神と進化して、戦い、神と同化して戦う。
私達の魔法と呼べるものは、実に、子供児見た物だった。
俗な魔術の名前を言おう。
スターライトブレイカー。
確かに、見てみれば、おぞましいほどの破壊力をしているかもしれない。
しかし、私の見た世界では、スターライトブレイカーなど、正に、子供が最初に覚える、単なる技なのだ。
神々の前では、全てが無意味で、意味の無い技であると言える。
戦慄した。
あの、威力は、牽制にしか使えない、単なる魔術の一つであるのだから。
おぞましいほどの力に、欲しいと言う欲望よりも、生き残りたいと言う、欲望が私の中には生まれていたのだ。
そして、私の目の前に、一体の天使が堕ちた。
それこそ、私の最高傑作・・・いや、私の溺愛した息子である、アヤ・スカリエッティの母体となった天使、アンゲルスノイドだった。
この時、アリシア・テスタロッサが生まれたばかりのことだった。
これを元に、この日から、私の研究が、新たな一歩を踏み出す事になったのだ。
そして、プロジェクトFが・・・いや、まだ、このころは人造人間計画と呼ばれていた。
人の手で、人を作る。
キリスト教の天使や、人間、イエス・キリストが、それを禁じたことを、私達はする事となった。
私自身も、そのことに関しては、興味があった。
また、その過程として、不完全だった戦闘機人を新たに、造り直す礎となっていった。
憐・ヴィオラと言う、不完全な人造遺伝子。
しかし、この男の遺伝子は、人造的なものを作るのには、適さない遺伝子であり、作ったものは暴走し、自爆するか、運がよければ、生き残ると言う、代物だった。
強すぎる、いや、癖のありすぎる魔力を持った人間の弊害と呼べるものが、此処にはあった。
また、人造人間計画であるが、最初は、人間の臓器や、腕、つまり、人間のパーツのスペアを研究していた。
しかし、スペアを簡単に作れるわけが無かった。
研究家庭で生まれたものは、人と呼べるものではなく、人の遺伝子を使って創った、醜い物だった。
中には、人間に近づいていた物も、有ったが、過酷な実検に耐え切れず、緑の血を吐き、死んでしまった。
何一つ、研究は上手くいくことは無かった。
私の拾った天使を使った実検も、戦闘機人の実検も上手くはいかなかった。
しかし、とある事件で、突如、名称はプロジェクトFと変化した。
それは、アリシア・テスタロッサが死んだことだ。
愛する子供を失った、プレシアは、人間のスペアを創る事ができないのなら、クローン人間を作り出す、計画を打ち立てた。
私が、計画の礎を、今までの試作戦闘機人、落ちた天使の研究で、そのプロジェクトFの礎を作り、打ち立てた。
これらの過程から、プレシアの理論と融合させ、戦闘機人の製作に成功し、第一号である、ウーノを影で完成させ、ドゥーエ、トーレ、クアットロ、チンクの開発に私は取り掛かった。
一方、プロジェクトFの作り出したものは、外見こそ、オリジナルに近いものの、中身はオリジナルと程遠い物であり、人を落胆させる。
"フェイト"と名付けられた、プロジェクトFの残り滓を持ち出した、プレシアは、その日から、消えた。
私は、刷り込まれた夢の実現に、映し出す。
それも、それで、面白い計画であったからだ。
人が、人を作る計画も、面白くて、仕方が無かったと言える。
そう、私は、研究している事が、楽しかったのだ。
如何なる、人命の犠牲を払おうともだ。
作り出した、戦闘機人達は、順調に稼動し、ゼスト隊を打ち破るまでに、成長していた。
そして、私の作り出す、人工テスタメント。
私の作り出す、世界の神は、未だ、作られていなかった。
全てを利用した。
ゼスト隊の人間の複製も全て、上手く行った。
メガーヌ・アルピーノ・・・彼女のは、素体としては優秀だったのを覚えている。
プロジェクトFの中での、生命操作技術。
神に、禁忌と言われようとも、私には、そのような事は、関係無い。
あの世界いれば、私は、間違いなく殺されていただろう。
使い魔を作る人とて、それは同じなのだ。
この時期に、私は驚いた事が有った。
久しぶりに、プレシア・テスタロッサが、姿を見せたのだ。
与えられた、揺り篭の中で、私はその光景をまじまじと見ていた物だ。
そして、驚かされた物だ。
テスタメントが、そこにいたのだから。
そして、顔を見て、一瞬でわかった。
プレシア・テスタロッサの子供であり、恐らくは、あの時のプレシアの胎児であると、私は、解った。
これは、チャンスだった。
是非とも、彼が、欲しかった。
死ぬ前にだ。
彼の体は、既に、もたないであろうと、私は読んでいた。
此処から、消える前に、私が、第二の彼を作り出す。
しかし、上手くはいかなかった。
彼は、プレシアと共に、死を選んだ。
虚数空間に落ちると言う、行為を、選んでしまったのだった。
「愚かな・・・」
ただ、一言、私は、呟いた。
あぁ、やはり、人間は、人間であると、私は思ったのだった。
極秘調査で、私が、彼女の残した、時の庭園に向かった時、そこに、奇跡は存在した。
あまりの喜びに、胸が、喜び、全身に電流が走ったような感覚に襲われた。
そこに、望む物が、存在していた。
先ほどの戦闘で、クロノ・ハラオウンが傷つけた、トウヤ・テスタロッサから吹き出た、鮮血が、そこに存在していたのだ。
歓喜に震えた。
調べれば、調べるほど、面白い物がデータとして、私に教えてくれる。
これほどに、強い遺伝子であるのなら、全ての用意が整った。
プレシアは、いい物を残してくれたようだ。
興味深い。
戦闘機人の数を揃え、なおかつ、一から、生命を作ると言う快感に、私は、震えた。まだ、血液の中にある遺伝子は、生きると言う活力を持っていた。
元より、女性の染色体しかもっていなかった、彼の血と、私の血をハイブリットさせ、新たに、作り出す。
ここで、私の長年に渡る、全ての理論、全ての実験データ、全ての実験材料を使い、人工テスタメントを私は作り出した。
まだ、カプセルの中にあるのは、胎児の状態だ。
しかし、死んだ魔導師のリンカーコアを食わせ、成長速度を速める。
死人にも、こういうところでは、ちゃんとした使い道があると、私は知ったものだ。
無理矢理成長させ、目の前にいる、少年は、僅かな時間で、九歳と同じ容姿となった。
その間に、詰め込める分だけの、物を、頭の中に叩き込み、護身用の戦闘技術も刷り込ませた。
実戦の経験も必要あるかもしれないが、単なる護身用だ。
実戦に出す機など、私には無かった。
貯蔵魔力も、従来の人造魔導師など、比べ物にならないほどの力を秘めていたし、戦闘に出せば、敵う物など、存在しないだろう。
データ上では、全てを上回っている筈だ。
人工テスタメントは、確実に成功した。
あの、天使、アンゲルスノイドの体を遺伝子レベルまで、還元させ、この少年と融合させたのだから、何れ、覚醒する時、それは、正に、神となるだろう。
覚醒していない、テスタメントではあるが、覚醒すれば、その力は、正に、神の如く、渡り合えるのは、テスタメントのみだろう。
神になった気分だった。
生命を、私が、この手で作り出し、さらには、神に相応しい器まで作る。
人間を作るというのは、簡単な物であり、神は、私であると自負する事が出来た。
生命を解読し、生命を改造し、生命を作る。
そして、神の器までも・・・今の私に、できない物は無かった、そう、自惚れていた。
後は、その神の君臨する世界を造れば言いだけだ。
そうすれば、この世界は、皆、私の作った神によって、統治される。
そして、私は、新たな欲望で、また、何かを造る。
「ドクター、随分、お喜びねぇ・・・?」
「そうだね。お前達とは違う、新たなる生命体の誕生だ。」
近くにいた、クアットロと言う四体目の戦闘機人と共に、彼を、そう、人工テスタメントである、アヤを見た。
カプセルから、彼を解放したときだ。
遺伝子、全てにおいて、異常は無い。
私の望む形で、彼は、此処に、君臨した。
完成した。
全てが、成功した瞬間だった。
「ふふふ・・・」
成功した、ましてや、神の器を創る行為が成功したと言う事に、笑いを堪える事が出来なかったのだ。
クアットロが、その子供を抱き上げ、私に見せた。
「パパ・・・・・・?」
彼は、私を見て、最初に、そのように呟いた。
彼が、私に最初にはなった言葉が、それだった。
何かが、抜けたような感覚が、私を襲った。
痛み、ある程度の痛みなら堪える事は出来た筈だった。
しかし、この感覚は何だ。
気持ち悪い。
私の体から、何かが抜けていくような感覚は、私を恐怖させるには、充分だったのだ。
「パパ・・・・・・僕の・・・・・・パパ?」
私を、父親として認識した。
何かが、何かが、壊れるような音がした。
私の中で、何かが、壊れるような、音がしたのだ。
たった、一言の言葉で、有り得ない。
しかし、それこそ、ありえないものとなっていた。
恐かった。
私自身が、私を恐れた。
有り得ない事は、有り得ないのだ。
私の欲望が、無限の欲望が、音を立てて崩れていくのを、私自身が、実感した瞬間だった。
「アヤ・・・・・・」
「アヤ・・・・・・?僕の・・・・・・名前・・・・・・?」
無限の欲望が、崩れていく。
私の体から、欲望が逃げ出そうとする。
「パパ?」
パパと、呼ばれるたびに、欲望が逃げる。
「ドクター?」
「やめろ!!」
やめろ!!
「パパ?」
やめろ!!
「アヤ!!!!!!!」
叫ぶ。
私は、アヤを恐れた。
私を父と呼ぶな。
私は、怖かったのだ。
欲望が逃げ出そうとする感覚は、私自身が、私自身でいられなくなるような、大袈裟だが、人格の崩壊を招きそうになったからだ。
純真な子供の瞳に、全てが、私の全てが破壊されそうになった。
アヤを、恐れた。
目の前にいる、少年を、私は、恐れてしまった。
懇願しても、彼は、私を父と呼んだ。
それは、そうだろう。
彼にとって、父親が、このような事態になったと言う事は、心配すると言う、他人を気遣うと言う、感情が、生まれたからだ。
「私が・・・壊れる・・・私が!!私が!!」
殺そうとも考えた。
しかし、私の中に残っていた欲望が、彼を生かそうとする。
いや、それは、欲望なのだろうか。
私の、親心のような気もしていた。
欲望は、吐き出され、親心というものが、私の中で生まれていたのなら、それほど、面白い事は無い。
自分で、自分を笑った。
ジェイル・スカリエッティという人間が、ジェイル・スカリエッティではなくなってしまった。
「ふふふ・・・ははは・・・!!!」
自分が、崩壊してしまった感覚に、笑ってしまう。
おかしくなっている、私が、おかしくなっている。
目の前にいるのは、ただの、まだ、力さえ、身につけさせていない、人間ではないか。
何故、私は、それを恐れる。
あまりに、純粋すぎたのだ。
私の、触れたことの無い人間が、目の前にいる。
純粋すぎる。
私の見てきた人間たちはどうだ。
この、このように、すんだ瞳をした人間など、いなかった。
いや、いるとすれば、アリシア・テスタロッサぐらいか。
それ以外には、見た事も無かった。
そうだ。
考えてみろ。
私の見てきた人間達を。
醜い。
私以上に醜い人間など、何人もいる。
誰のせいで、誰のせいで、私は生まれてしまったのだ。
奴等の、欲望のせいではないのか。
そう、人のせいにしている私も、よっぽど、醜い存在ではあったが。
「パパ・・・?大丈夫?」
私の中の全ての穢れが、崩壊したような気がした。
崩壊するきっかけは、本当に簡単な物だ。
人間と言うのは、本当に、私のような作られた人間を含めても、解らない物が有る。
本当に、こんな些細な事で、私の中の無限の欲望が崩壊してしまうのだから。
しかし、ある意味では、感謝はしている。
守る。
ただ、この子が、優しい世界であれば、私は、それで良い。
如何に、犠牲を払おうとしても、私は、それでいいのだ。
私の欲望は、アヤの世界のために存在している。
破壊。
破壊。
破壊。
今ある世界を破壊するだけの物はある。
後は、起動キーだけだ。
それゆえに、それだけのために、聖王を必要とした。
「私は・・・大丈夫だ。アヤ・・・」
「うん!良かった。」
管理局の人間の為に、一応はのってやる事にした。
空間の開発。
奴等と言う名の犠牲を払い、私は、アヤの為の、アヤだけの優しい世界を創る為に、動き出した。
まだ、時間はかかる。
表向きでは、管理局の人間どもに、いつもの狡猾な顔を見せ、裏では、アヤの為に計画を遂行し始める。
計画は、順調だった。
私の、推奨してきた計画は、全て、全て上手く行っていた。
「パパ・・・」
「どうした?」
「俺も、戦いたい。」
「どうした・・・?お前は、戦わなくていいんだぞ?」
アヤが、このようなことを、私に言う。
私は、戦わせる事が出来なかった。
いくら、体の中に、如何なる傷をも瞬時に治療する、ナノマシンを持っていたとしても、死なないとは限らないからだ。
「だって、ウーノお姉さまや、ドゥーエお姉さま、トーレお姉さま、クアットロや、チンクが戦ってるのに・・・俺は、何も出来てない。」
子供ながら、自分が役立たずと思ってしまったのかもしれない。
子供だから、自分は、何も出来ないと、アヤは、このとき、嘆いていた。
「護衛術だけでも良いでしょ?俺も、パパを守りたいんだ。」
私の白衣の袖を引っ張りながら、涙目で、訴えてくる少年に、私は、流石に弱ってしまった。
そのようなことは、どうでも良かった。
目の前にある問題は、アヤの我侭をどう、言い訳して止めさせるか、どうかだった。
「クアットロ・・・」
「どうだった?」
「わかんない。」
「ドクター。いくら、彼に格闘術を刷り込ませたとは言え、実際、ちゃんと使えるか、解らなければ意味が無いだろう。」
「トーレお姉さま!」
一応、アヤは、ナンバーズのトーレから、ウーノを自分の姉のように、思っている。
「なら、私としてみる?」
「ドゥーエお姉さま!!帰ってきたの?!」
「えぇ。アヤ。」
このとき、ドゥーエは私に渡した物は、此処にある物を浮かばす為に、必要な事。
一応、理論上では、この揺り篭を飛ばすには、アヤの力でも、充分可能だ。
テスタメント、アンゲルスノイドと言うのは、古代ベルカ王族の人間達と、ほぼ同じ、遺伝子配列であり、誰にでも動かせる。
ただし、未完成なテスタメントが動かす場合は激痛を伴う事にはなるが。
しかし、アヤに、そのような痛い思いを、私は、させたくなかった。
故に、私は、それを必要とした、アヤの世界を創る為にだ。
「それで、パパ・・・俺のは?」
「ふぅ・・・怪我をさせるんじゃないぞ。」
自分の柄じゃない、父親的な部分を出している自分に、違和感を覚える。
「了解した。アヤ、こっちだ。」
「うん!ドゥーエお姉さま、トーレお姉さま!」
その間にも、他の10番目の戦闘機人を造り、来るべき時を待つ。
まだ、アヤを戦わせる気にはならなかった。
いや、彼は戦う必要など、無かった。
ただ、そのうち飽きるだろう。
私は、ただ、そう思ったから、アヤをドゥーエ達に、つかせた。
それだけだ。
そのうち、痛い思いをして帰ってくるかもしれない。
泣きながら帰ってくれば、私が介抱でもしてやろう。
私の中に、まだ、残っている一部の醜い感情。
そして、消えていった、罪悪感的なもの。
それが、消滅したのは、アヤのお陰であると言える。
今の私を形成する事ができたのは、アヤのお陰なのだ。
暫くして、人造魔導師である、ゼスト、そして、メガーヌの子供であるルーテシア・アルピーノを利用。
教育的なものは、アヤに任せていた。
「じゃぁね。るーちゃん。」
「うん!」
自然と心を、開いていた事に、少し私は嫉妬していたのを覚えている。
「うぉ!?」
訓練を始めて、数ヶ月で、トーレを格闘で、圧倒するようになっていた。
戦闘能力の上昇は、恐ろしかった。
鳥肌が立つほどだ。
流石は、神の器と呼べるものだった。
暫くの時間の経過。
「はぁ!!」
「ちっ・・・!?」
「速い・・・!!私より!?」
「アヤ・・・」
ナンバーズで最高の戦力を誇る三人を相手に、勝利。
流石は、私の息子であり、私の最高傑作である、アヤ・スカリエッティだ。
純真であり、まさに、その姿は神々しかった。
あぁ、私は、本当に自分で、最高傑作と呼べるものを造ったのだなと、内心確信し、アヤ一人で、時空管理局に勝利する事ができると、下らないおごりを抱いていたが、あそこまでの力を見れば、そう、思わずに入られなかった。
重傷を負わせるとは思わなかった。
管理局にちょっとした、嫌がらせをした。
ガジェットⅢ型。
それを、わなだと解っていた者も、いたようだが、彼女は、愚かにも戦いを挑んだ。
ガジェットⅢに仕込んだ、カメラで、高町なのはの観察を私はしていた。
まぁ、所詮はその程度の魔術師だったと言う事だろう。
無理が祟り、一瞬、バランスを崩した物の、彼女は、Ⅲを破壊した。
しかし、この後起こった、事だけは、予想外だった。
私に似た、何かが、アヤでも、私でもない、何かが、高町なのはを切り裂いた。
「ふふふ・・・あははははははは!!!!!!」
斬られた、高町なのはを見て、絶望に染めた快楽の顔と言うのを、私は見たような気がした。
悪魔が、私と同じ顔をした悪魔が、笑っていたのだった。
無限なる闘争心を持つ、男だった。
調べて、解った事は、彼は私の弟であり、ドゥーエを落とした人間であると言う。
そして、私の弟。
憐・ヴィオラ・・・反管理局の思想を持つ人間だと言う事が、伝えられた。
あぁ、時間は完全に私に味方したと思った瞬間だった。
誰が、そこに異様が、いかほどの物ではない。
所詮は、雑魚だ。
アヤ、そして、憐がいれば、管理局など、簡単に滅ぶ。
何年か、経ったのち、別世界が全て引き寄せられ、崩壊の一途を辿る物に成る程、酷い事態がおきたらしい。
大して、興味は無かった。
しかし、それを引き起こしたのが、失われた筈の血の持ち主であると、確信したのは、アヤの最終調整を行う、施設に、その身を置いてからだった。
「クアットロ・・・」
「アヤ!?」
「ごめん・・・ただ、こうしていたい・・・」
思春期と言う世代に入り、求めたのは、女と言う生き物だった。
ナンバーズから選ばれたのは、クアットロだった。
特性的なものとして、年上を選んだのだ。
彼の性格上、いや、彼の血の影響なのだろうか。
私に見せることの無い、クアットロをアヤは作り出した。
戦力として、作り出した、ナンバーズ、ガジェット達の大量生産。
さぁ・・・行こうか。
レリックの回収、そして、一部ジュエルシードの回収。
全てが、上手くいった。
そして、今回の事に、フェイト・テスタロッサが首を突っ込んだが、首を突っ込んだら、突っ込んだで、実験材料として、扱うだけだ。
プロジェクトFの遺産など、所詮は、ただの実験材料にしかすぎないのだ。
必要ない。
アヤさえいれば、アヤさえいれば、それでいい。
そして、後にJS事件と呼ばれる事件の中で、アヤは、ライバルと呼べる人間に出会うこととなった。
生きるために、手に血を染め、戦うこととなった。
その男の部下を殺し、現場に居合わせた。
アヤの全ての調整が終わり、迎えに着た、クアットロと共にその男と闘い、初めての戦闘にアヤは興奮していたようだ。
多少也とも、戦いを好む性格の片鱗を見る事が出来た。
一度目は、引き分け。
「どうかな?親父・・・あいつ、強いよ。」
初めて、戦った敵。
ソレは、アヤを成長させる。
このときから、アヤは、私を二つの固有名詞で呼ぶようになった。
”パパ”そして、”親父”だ。
アヤが、真剣になると、私を親父と呼ぶようになった。
強かった。
性格は悪くとも、彼の戦ったライバルの部下は、管理局の中で、”強い”部類に入る人間だったようだ。
戦場で人が死ぬのは当たり前だ。
ある種、家族のような存在であったと、後にアヤは語っていたそうだ。
管理局にも、優秀な人間がいたものだ。
第二は、ホテルアグスタでの対決。
ここで、一つのゲームを、私は与えた。
駄目だといっても、アヤは私の願いの為なら、手を血で染める事を自ら、受け入れていた。
「ユーノ・スクライア?」
「そうだ。後に、弊害になるだろう。」
「良いよ?」
この任務は、久しぶりのルーテシア・アルピーノとの共同作業。
どうやら、感情が、上方面にあった。
アヤは、会場へと、潜り込んでいた。
そうだ。
そこに、
「僕の殺すターゲットがいたんだったよね。彼女達は、既に回収したかな。」
入るナレーション。
「誰が来るんだっけ・・・名前、覚えてないんだよな。」
「無限書庫の司書長・・・ユーノ・スクライア先生です。」
「あ、どうも。こんにちは。ユーノ・スクライアです。」
「み・つ・け・た・・・はぁっ!!!!!」
獣のような、オーラを漂わせながら、アヤは、壇上に向かって、突き進む。
「なっ・・・!?」
「クス・・・もう、前に出た・・・」
ライバルにばれた。
しかし、もう、それも遅い。
「ユーノ・スクライア!!生き抜きたければ、防御シールドを速く張れ!!!」
「え・・・!?」
会場が、ざわめき始める。
突然の事で、何をすれば、良いのか解らない。
「抜けた!?」
「ユーノ君・・・!?」
「あいつ、速い!」
なのはとフェイトが、対応に向かっても、遅い。
速度は、
「・・・レベル!?」
ユーノは、まだ、それの存在を確認できなかった。
「あっ!!」
飛び上がった。
黒いタキシードの男。
「シャァァッッ!!!!」
「ここに!?」
アヤは、刃を抜いて、両逆手に持ち替えて、その、男に迫り、
「ば・い・ば・い♪」
「ぐっ!!」
此処で、やられるか。
意地が、通るか。
ユーノは、防御フィールドを張り、事なきをえるが、
「へー・・・やるじゃん。」
「こいつ・・・似てる・・・」
どうやら、防御にかなりの定評があるらしいが、アヤの前では、無意味だ。
全て、無意味に過ぎない。
「ははっ!!でもさ、その防御・・・こうすれば、溶けるよ。」
「何!?」
バリアが消えていく。
徐々に、中和され、逆に、隙が生まれる。
「くっ!!」
さらに、何階層もシールドを張るが、
「あ・ま・い!!」
全力を込め、シールドを突き刺し、破壊。
ガラスが、割れるような音ともに、
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!」
スクライアの、叫び声が、会場内に響く。
絶対的な防御。
しかし、貫いた肩から、本人の意思も関係なく、鮮血が飛び散った。
「ちっ・・・」
「ははは!!!」
右肩から、突き刺さり、柄の部分まで、刃は全て入り込む。
「アァァァァァァァァァぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
「ミッション完了・・・だね。ふふ・・・じゃぁネ。ごめんね。パパが、やれって言ったからさ。」
「アァァァァァァァァァぁぁぁ!!!!!!!!!!!肩が!!肩がぁぁぁぁぁ!!!!体がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「煩いよ。ほら、静かにしなきゃ、皆、びっくりするじゃないか。」
笑顔と、その口調に合わない、無邪気な顔と残酷な行為に、誰もが、言葉を失った。
「ねー、パパ。あいつ、弱かったよ?本当に、障害になるの?」
「冗談だよ。障害になるというのはね。ただ・・・お遊び気分でやってほしかったんだ。」
「なーるほど。」
所詮はゲーム。
しかし、あの中を駆け抜け、ユーノ・スクライアに重症を負わせるにまで至った。
どの状態であろうとも、任務は継続できる。
そのポテンシャルの高さを改めて、思い知った。
しかし、次の対決は、敗北に終わった。
地雷王を防壁として、ルーテシア・アルピーノが使い、アヤは冥府の神と呼んでいた人間達に、いや、神に敗北した。
神に敗北。
まだ、覚醒していない、アヤのテスタメントとしての機能。
強制的に、別の何かを、宿す事は出きる。
そして、アヤは帰還した。
助かった物の、ナノマシンは機能せずに、生きているのか、死んでいるのか、その境目にいるだけで、此処にいる私は動揺する。
「ドクター・・・?」
「早く!!アヤ専用のカプセルを用意しろ!!」
取り乱す、この男。
これが、私である。
受けた、強大な技は、後遺症はジェイルが思うほど強大な力だった。
アヤの両腕再生、剣圧による大量の切り傷も消えることは無かった。
そして、私はやるべき事など、全てを無視し、ここに、アヤを完全再生させた。
アヤを、傷つけた。
アヤを、此処まで傷つけてしまった。
久しぶりに、殺意と言う物を抱いた。
元より、部下達の失敗だ。
ルーテシア・アルピーノが、捕獲されたが故に、いらない傷を負った結果が、これだった。
戦場において、絶対に死なないように、アヤを私は創造したつもりだった。
しかし、そうはならなかったのだ。
このように、傷ついて帰ってきたのだ。
「るーちゃんを攻めるよ・・・?」
「解っている・・・」
本当は、攻めたかった。
貴様のせいで、アヤが、此処まで、重傷を負ったのだと。
「キメラの・・・遺伝子を・・・」
アヤを強化する為の物。
しかし、私は、それを使いたくなかった。
そうなれば、アヤはまた、戦場へ向かう。
また、今日のような敵に会えば、アヤは、死に至るかもしれない。
「駄目だ・・・!!其れを、お前に・・・」
「どうしたんだよ・・・親父は、最強の科学者だろ?」
ジェイルを呼ぶ言葉が変わる。
これは、本来、ちゃんとした形で要求を頼む時だ。
修復がてら、
「強化してくれよ・・・キメラになってさ・・・」
いつもの、人間であるのなら、此処でキメラの遺伝子を打ち込んでいるだろう。
しかし、何故、いつもの非常な私の姿は見られることは無い。
何故か、アヤに対して特別な感情を抱いてしまっていることは、やはり、親心なのだろうと、自分で自覚していた。
「あいつらを・・・消滅させるためなら、おれは、なんだって…やってやるさ。」
覚悟は、アヤ・スカリエッティは決めている。
しかし、何をそこまで、拒否する必要があるというのか。
私は、その覚悟を決められずにいた。
親心・・・愛しているからだ。
修復、強化、改造など、私ならすぐにそれを行うはずだ。
しかし、修復だけ。
強化以前に、改良さえされることはなかった。
アヤ自身とて、それを不審に思う。
なぜ、何故なのか。
「あんた!!ジェイル・スカリエッティだろ・・・!!親父の願うことを叶えるために!!俺は、動いているんだ!!」
「暫く・・・考えさせてくれ・・・」
私のためではないのだ。
アヤ、お前の為なのだ。
アヤ・・・誰にも見せぬ、弱気な私にアヤは、少し俯いた。
「頼むよ・・・親父・・・」
それでも、私を信じようとした。
今は、まだ。
「すまない・・・」
信じられる事など、そこには出来ず、アヤ自身も、この自分に対する私の、態度は解らない。
唯一、アヤにのみ見せるその笑顔。
いつもの、狂気を含んだような笑みをアヤの前では、見せる事は無い。
「失うのか・・・」キ
メラとなる事によって、アヤの力は相当な力を身に付けることができる。
そして、元よりテスタメントのクローンであるこのアヤならば、
「キメラの遺伝子を打ち込めば・・・俺は!!」
「まだだ!!私が、其れを判断する・・・」
「わかった・・・」
不満では有るだろう。
私の陣営の中で、最強に相応しい、私の息子は、神を目の前にして、完全に敗北し、今の状態に至るのだから、強化してでも、奴等に勝たなければ、アヤの中にあるプライドは、ずたずたになったままだった。
そして、私も、科学者として、最強の物を作ったつもりだった。
いや、科学者のプライドよりも、子供を、此処までさせなければならない環境に追いやった事、そして、傷つけたことを許さなかった。
しかし、アヤの中で、確かにこれは正しい選択の一つなのだと言う事も解っていた。
「ドクター・・・?何を・・・そんなに・・・」
誰もが、私らしくないと思うだろう。
本当に、目の前にいる人間が、私がジェイル・スカリエッティなのかと思ってしまうほどだ。
アヤと接する前までは、必ず違う、いつもとは180度違った性格となり、誰もが錯覚を覚えてしまうほどだった。
アヤ・スカリエッティ。
スカリエッティの名を持ちながら、父と慕う私とは、全く違う存在である。
それでも、親心以前に、子供の欲望、私達が生き残る事、夢のことを考えて、私はアヤを強化をしてしまった。
我々が、生き残る為だった。
予想以上に、強い敵が、目の前にいるのだ。
我慢しなければ、なるまい。
勝つためにだ。
目の前にいる敵に、勝利する為に、アヤを強化しなければならなかった。
そして、私は、彼に魔力刀と言う名のデバイスを与えた。
それでも、二度目の戦闘は、引き分けだった。
「ほらほら!!速くしろー・・・止めるなら、今のうちのほうがいいぞ。」
向かって来るモブとも呼べる魔導師達を簡単に殺す。
「なんセ・・・俺は、中に入って・・・お偉いさん方を殺さなきゃいけないからなぁ。」
「お前はぁぁぁぁぁ!!」
「後ろから狙うか。ま、卑怯じゃないよな。立派な戦略!」
刀身を限界に伸ばし、届く所は魔導師の心臓。
そこから、突き刺すだけで、アヤは簡単に殺す。
行く先々で、喧嘩を売られるというのは、こういうことだろうか。
アヤに勝負を仕掛ける魔導師は、大抵殺される。
辺り一面が、屍の山と化していた。
何故だ。
何故、これほどにまで魔導師が集まっているのに、アヤという一人の存在は、神に勝利する事がてない。
「そんな!?」
「おい・・・これで、世界護ろうって言うんだから・・・お笑いだよな。」
アヤが、突破口のような物になった。
他のガーディアンは、全て、突如現れたガジェットの排除に当たっている。
「もっと、骨のある奴は、いないのか。一斉に、機動六課の人間達も動いている頃だろう?」
強い人間
「月村燈也、月村すずか、ティアナ・ランスターは強いね・・・」
ティアナ・ランスターと引き分けた。
管理局の開発した、二足歩行兵器など、興味は湧かない。
ソレより、アヤの方がポテンシャルの方が高く、そして、不完全な機能でありながらも、真のテスタメントと張り合えるほどの力を有していた。
「アヤ・・・もう、戦うな。」
戦いに行くたびに、誰かと戦い、傷つき、そして、帰ってくる。
今回だって、そうだ。
何れ、殺される、私の前から、いなくなるような感覚が、私を支配し、襲う。
「でもさ・・・いかないと・・・親父は、死ぬ。」
実質、テスタメントはアヤ一人で抑えているような物だ。
テスタメントが、三人も揃っている。
そんな連中を敵に回すのは、愚かな人間のする事だ。
しかし、対抗策が無い。
今回の私のすべき事は、失敗だったのだろうか。
「行くな・・・!!」
「どうしてだよ・・・改造する時だって・・・躊躇っただろ・・・?どうしてだよ・・・」
「私は、科学者である前に・・・お前の父親だ!!」
初めて、父親として、アヤに叱った瞬間だった。
しかし、
「父親か・・・だったら、俺より下の子供達を・・・」
「アヤ・・・」
「子供ってさ、小さくてさ・・・自由を許される存在なんだよ?でも・・・親父は!!自由を奪ってるじゃん!!」
「アヤ・・・私を許せとはいわない・・・しかし、全ては・・・夢のためだ・・・別れとはいわない。今、此処で・・・お前が出て行くというのなら・・・」
「考えすぎだよ・・・ここは、俺の家だよ・・・?皆を、裏切りたくない・・・」
戦場に、子供を出すことに、計画に子供を使う事を、否定していた。
聖王の器だって、そうだ。
アヤは反対していた。
しかし、それでも、私に従ってくれる。
このとばっちりを、私は受けてしまったのだろうか。
苦悩
本来、アヤを死なないようにすることが、私のする事なのかもしれない。
この後、アヤに全てを話した。
強制的にテスタメントとしての力を覚醒させる、オーバードライヴ・・・そこから、最後の戦いが始り、私は、最後の処置として、アヤと痛みを共有するようにした。
あの子の痛みを、私自身が体感する為であり、それを、私はあの子の不快な事に対する償いだと、思っていた。
あの子が、起きないうちに。
戦いが始る中、アヤの痛みが、私の体に刻まれていく。
オーバードライヴを発動させて、超越的な力を手に入れたのも、痛みで、私は解った。
倒され、捕まるナンバーズのメンバー。
増えつづける痛み。
ティアナ・ランスターを倒したと見て、一人でナンバーズ以上の動きと、力を見せた。
高町なのは、フェイト・テスタロッサ、闇の書のプログラムである、ヴィータを三人相手にしても、それ以上の働きを、見せていた。
さらには、その内の一人は戦線離脱。
アヤの実力は、本物だ。
アンゲルスノイドを、完全に支配したアヤは、強かった。
異様なまでの姿で、最強の天使が、ミッドチルダに降臨し、ありとあらゆる魔導師達を砕き、破壊し、全てを打ち壊す。
アンゲルスノイドの威力が、あれほどのものとは思わなかった。
12枚の翼を持つ、美しき神の天使。
このとき、最も、アヤを信頼していたが、一瞬、アヤを私は疑ってしまうほどだった。
この世で、最悪の敵を生み出してしまったのではないのだろうかと。
「親父!?このまま、護衛につく!!この中に入った・・・燈也と決着をつける!!その後は、晴れて俺たちの世界だ!!」
「油断・・・するなよ・・・・・・?」
「当たり前だ・・・誰の息子だと思ってる・・・ジェイル・スカリエッティ・・・天才の息子だ!!」
私のために、絶大な力を手に入れたと言うのに、迷いと言う物を持っていなかった。
迷いの無い笑顔を私達に向けた、アヤは、揺り篭の中にいる、最大の敵と対峙する。
「アヤじゃないみたい・・・」
「いや、ああしなければ・・・アヤは、私達の為に、望んで、あの姿になった。」
さらに、この戦いで、ファントムが降りてきた事によって、私達に時は傾いたと思った。
さらに、続く戦いの中で、
「うぉっ!?」
揺れる、揺り篭の中。
メイン動力炉が外部から破壊された。
さらに、テスタメントとして完全に力を使用した、月村すずかによって、持てる戦力の7割は消滅した。
さらに、傷が深くなり、ゆりかごの中に侵入した、管理局の人間達。
敗北は、必須だったと言えるだろう。
まだ、残る量産型戦闘機人達を動かす為に、私はクアットロに、全てを任せ、別室に向かう時だった。
二つの光が、揺り篭に落ちる。
それは、私の真上に落ち、さらに、量産型戦闘機人の全てを破壊した。
あぁ、失ったのだ。
私も、ここで、命を終わらせる。
これは、罰なのか。
命を弄んだ結果が、今の私の姿なのだろうか。
辛うじて、まだ、私は生きていた。
死ぬほど、いや、極限までに、死に近い、辛い痛みを、私は体感していたのだ。
たった、一つの、歩く音・・・その足音と共に、何か、液体が落ちるような音がした。
何が、ある。
何が、あった。
いや、此処に残っている人間は、後・・・
一人
「ア・・・ヤ・・・・・・?」
「ん?」
現れたのは、全身が、血液で赤く染まっているジェイル・スカリエッティだった。
何故、
「オヤジ・・・?なんだよ・・・?ソレ・・・」
その、格好に、驚かずに入られなかった。
自分の父親が、何故、
「私は・・・お前の父親だ・・・この痛みくらい、耐えないでどうする・・・」
息子の痛みを共有する。
「何で・・・何でだ・・・何で、俺に・・・そこまでする?」
アヤの隣に、プレシアがいたような気がした。
あぁ、プレシア・テスタロッサの息子である、燈也だと、このとき、確証を持った。
プレシアに、よく、似ていたのだ。
「ソレについては、僕も聞きたい・・・何故、貴方は、アヤに対しては、異様なまでの保護欲が見えた。アヤと戦っている中で・・・何故・・・」
簡単な質問だった。
応えなど、そんなものは私にとっては、愚かしい事だ。
しかし、目の前にいる人間に問いかけは、確かに、自然な事であるかもしれない。
私自身さえ、今の私は、どこか、違うような気がしてならない。
それでも、私は、私だ。
「ふふ・・・簡単な答えだよ・・・」
それは、
「アヤは覚えていないだろう・・・・・・お前が、心・・・いや、人格を形成し始めた時・・・お前は、私を初めて「パパ」と・・・・・・呼んだ・・・」
「まさか・・・それで、お前に施されているプログラムが破壊されたというのか・・・?無限なる欲望である貴方に、親心が生まれたとでも言うのか・・・?!」
「そのとおりだよ・・・単純な言葉で・・・壊れる物だ・・・」
「ありえない・・・」
「その言葉こそ、ありえないものだよ。私は、人間なのだからね・・・」
だが
「私は怖かった・・・自分が、壊れるような感触が・・・」
アヤは、黙ってそれを聞く。
「覚えてる・・・」
ふと、アヤがそう、呟いたような気がした。
この言葉を聞いたとき、私の瞳から、涙が流れそうになった。
そして、泣くと言う感覚を、私は始めて・・・知ったのだった。
「お前を見るときだけは、いつもと違う自分でいられるような気がした・・・」
ソレを実感し始めたときに、事実上の恐怖。
まだ、完全なる調整が終わっていなかったアヤを眠らせ、全てが解決した後に、迎えに行くつれていこうとした。
その間にも、色々と調整し、人間と同じような知識を持ち、支障が無いようになったとき、六課の情報を知り
「君がいた・・・」
月村燈也
「燈也という人間が、管理局にいた事はしっていたさ・・・」
全てはクロノによって、燈也がガフを使い、自分を隠蔽していた事。
そこにいたのは、
「プレシア・・・君は、プレシアに良く似ている。アヤは、君のクローンだよ・・・」
「やはり・・・」
アヤも、ソレを知っている。
本来、訪れるべきだった、運命を、私は、燈也に話した。
「君は・・・17の歳に死ぬ筈だった!!!」
全て、消える筈だった。
異常なまでの魔力消費によって、あのままなら、九歳の時に、消えて、死ぬ筈だった。
生きていたとしても、ありえない方式で生まれたのだ。
遺伝子に異常が出て、死ぬのは必須だと、私は思っていた。
「ん・・・?」
何故、生きている。
「君には・・・男性染色体が、無かった!!」
ソレは、
「君は、プレシアの遺伝子だけで、構成されている・・・単相生命体だ・・・」
普通なら、どれだけ長くても、17で死ぬ。
しかし、19まで、燈也は生きた。
プレシアのリンカーコアから出来た代用の男性染色体であろうともだ。
「何か・・・変わることがあったはずだ・・・」
「虚数空間に・・・落ちたときか・・・其れか、僕がテスタメントだからか・・・」
「なるほど・・・それで、変わったわけだな・・・僕は・・・」
虚数空間、落ちてみたいものだ。
だから、アヤを燈也の遺伝子のみで作り出すことは出来なかった。
「ずっと、傍にいて欲しくて・・・私は、アヤの細胞を強化した・・・しかし、終了と同時に、燈也が入り込んできた。」
「あんたは、俺を愛したから・・・」
「キメラにするのも・・・あの形態にさせる事も・・・反対したんだ・・・」
スカリエッティは、立てなくなり、アヤの横に倒れた。
「アヤ・・・いっしょに・・・」
アヤと生きる事ができると言うのであれば、それで良いと思った。
「バーカ・・・親父は、生きろよ。俺は、確実に死ぬ・・・まだ、親父は、生きる事ができるじゃん・・・燈也・・・俺の手を・・・さ、オヤジに・・・」
言われた通り、燈也はアヤの腕を私に触れさせた。
スカリエッティに触れ、徐々に、傷が癒え始めた。
アンゲルスノイドの再生能力を、私のために使う。
いや、アンゲルスノイドの力ではなく、元より、アヤのナノマシンを私に移植していると言う事か?
「なんだよ・・・心配してくれてたんだ・・・」
「当たり前だ。父として・・・」
あぁ、そうか。
そういうことなのか。
そこまで、私を生かしたいと言う事か。
心配していると言う事なのか。
「そーかい・・・じゃ、親不孝な俺を・・・許してくれよ・・・」
「アヤ・・・!?」
薄れていく、アヤの言葉。
「俺に・・・」
「おい・・・」
傷は癒えて。
「とっては・・・さ・・・・・・・」
ジェイルは、アヤに触れ、体を揺らした。
まだ、まだ、
「消えるな!!アヤ!!アヤ・・・!!」
「最高の・・・・・・」
まだ、
「私は・・・お前に、父親らしいことを、何一つしてはいない・・・!!!」
「オヤジ・・・・・・だっ・・・た、なんて、言うか…馬鹿・・・よけいなこと・・・しやがって!!!るーちゃんに、謝ってもいないだろうが・・・」
言葉は、途切れる。
最後に聞いた言葉は私を叱っていた。
アヤ・・・余計な事・・・
私は・・・
最後の言葉の意味が解らなかった。
「アヤ・・・?冗談はよせ・・・」
瞼が、自然と閉じる。
アヤの瞼が、閉じ始め、体が、徐々に、灰になり始める。
アンゲルスノイドの遺伝子が、死んだ人間の体を腐食していた。
「アヤ・・・アヤ!!」
「もう、やめろ・・・アヤは、死んだよ。」
死んだ。
アヤは、私の前で、消えてしまった。
今でも、私の中では、アヤのナノマシンが、私の中で蠢き、共に生きている。
アヤは、私や、アヤの愛した人達の血や肉となり、生きていると、燈也が言っていたな。
これは、そう言うことだったのか。
そのご、私は、逮捕され、軌道拘置所にいる。
許されない罪の中で、私は、ただ、一人の希望だった、アヤを思い浮かべている。
私の中にアヤがいると思えば、此処の生活も悪くない物だ。
しかし、私以上に愛していただろう、クアットロは、まだ、そこから、抜け出す事が出来ていない。
精神的に、彼女が回復するのは、相当な時間がかかる。
私達の、アヤの行っていた、罪を払拭できると言うのなら、私は喜んで、それを受け入れた。
まぁ、子供を欲しがっていたくらいだから、仕方が無いといえるが、私も、その子供の顔は、見てみたかった物だ。
そうだ、最後に言っていた
「アヤの余計な事・・・君にはわかるか?」
「いえ・・・わかりません。」
「君は、行くのか?」
「はい。」
「これを・・・もって行ってくれないか・・・?」
結局、余計な事とはなんだったのだろう。
私には、それが、よく解らなかった。
私の書いた、この手紙を誰かに呼んでいて欲しくて、私が、選んだのは、彼を慕っていてくれた、女の子だった。
「ルーテシア・アルピーノ・・・」
「何か?」
「息子を慕ってくれて・・・ありがとう・・・」
「いえ・・・」
軌道拘置所から、海上拘置所に出ることとなった、ルーテシア・アルピーノ。
燈也の尽力によって、彼女の釈放は思いのほか、速くすむ事になった。
彼女の母親であるメガーヌ・アルピーノも、どうやら、目覚めたようだ。
どうやら、一人の少女の事など、今の管理局の再建に比べれば、大した事は無いようだ。
私が、彼女に手紙を与えた理由だが、彼女の思い出はアヤと共にあった。
精神的に、喋る事をしようとしない、クアットロより、今は、彼女の方が、アヤの生きた記憶を持っていって欲しかった。
「いえ・・・」
私が、今、一瞬でも、外の空気を据えるのは、月村燈也のお陰でもある。
私は、彼女に、この手紙を渡し、再び、軌道拘置所に戻される事となった。
そして、この日・・・武神・・・いや、破壊神スサノオが、目覚めた。
そして、戦いは始った。
「さぁ・・・ジェイル・スカリエッティ!!僕に、手を貸せ!!」
「断る!!此処で、また、貴様に手を貸せば・・・アヤが悲しむ!!」
何より、
「アヤが、私にそのような事をする事を・・・望んではいない!!」
軌道拘置所に、どうやって入ったかは解らないが、一人の男がいる。
黒い影の、ヴォイスチェンジャーを使い、マスクを何十にも被り、黒いタキシードを来た男が、私の目の前に、存在している。
私に、テロをしろと、持ちかけてきた。
「ふ抜け目・・・」
「どう言われ様が・・・アヤが望まない事を、私はする気は無い。子供を殺すような事は、もう、する気は無い。」
目の前にいる男は、液体の入ったカプセルを取り出した。
「それは・・・ふっ・・・ソレくらい、お前にくれてやる。」
「なら、好きにさせてもらうさ。」
男は、此処から、消えた。
この、今の世界、私は・・・何を見る。
アヤさんの記憶が、あの人と詰まった記憶の手紙。
今回は、私が、その手紙を受け取った事と、その一部の文章を紹介します。
本来は、かなりの枚数なのですが、その中の文章を飛ばし飛ばし、私、ルーテシア・アルピーノが紹介させていただきます。
科学は人の力。
このようなことを言った人間がいたが、それは人間の傲慢であると感じたのは、いつの事だったのだろう。
ジェイル・スカリエッティ、考えるは、今までの自分を否定するような事だ。
傲慢な考え。
考えれば、私の今までしてきたこと、それを、全てを罪と称するのであれば、償いは、最愛の子供が死んでしまったと言う事なのだろうか。
いや、アレは、自惚れすぎた、私へのとばっちりなのだろうか。
もう、考える気力など、私にはなくなっていた。
今、ここで、考えるのは、私の子供である、アヤの事だけだ。
アヤ・スカリエッティ。
私の最愛の息子だ。
もてる、全ての技術を使い、私は、彼を作り出した。
私の傑作である、ナンバーズ達以上の性能を誇り、融合騎、アギトとの融合も可能。
最後は、私を罵り、この世界からいなくなってしまった。
私が命を弄びすぎた結果が、アヤの死だったとでも、言うのだろうか。
そうか。
子供を利用する事を、アヤは、やりすぎだと怒っていたな。
私の中では、あの計画も全て、アヤの世界を創る為だった。
壊れてしまった、私。
今までの全てを捨ててまで、私は、何故、アヤの為に、アヤの世界を創ろうとした。
いや、ソレは、簡単な事だ。
しかし、私は、結果的に、アヤの手を血で染めてしまった。
しかし、そうしなければ、勝てなかったのだ。
「重要なサンプルだ。」
「サンプルと言えども・・・私の子供よ?」
送られてきた物は、胎児のデータのみ。
しかし、その胎児は、異常だった。
何故って、男性染色体が、一つも見当たらないからだ。
もう一つの胎児には、それが、存在していたと言うのに、何故、存在しない。
そして、何故、未だに遺伝子が異常をきたさない。
何れ、遺伝子は異常に来たし、消滅する筈だ。
私は、それを危惧して、そして、それの生体機能を調べ、ついでに、複製品を作りたいがゆえに、プレシア・テスタロッサに伝えた。
しかし、プレシア・テスタロッサの胎内には、決まろうとした時には、私の検査したかった、しかし、胎児は存在していなかった。
彼女の子供は、消えたのだった。
私なりに、彼女の事を心配していたのだが、まぁ、研究に利用するつもりではいたが、それが叶う事は無かった。
欲しい物を手に入れられなかった、私は、欲望をかなえられなかった事に、非情に苛立った。
故に、私は、思った。
人は、禁忌と言う物を破り、犯したくなるものだ。
嫌な事があったから、禁忌を破り、快楽を得たいという、子供の感情が芽生えた。
どうやら、私は、その手のプログラムが、人一倍、強いらしい。
だから、如何なる犠牲を払ってでも、私は、それを創ろうとしていた。
何であろうと、神であろうとだ。
新たに、私は、自分の手で、世界を創ろうとした。
しかし、それ以前に、造りたいものが存在していた。
神・・・テスタメントと呼べるものだ。
人は、既に作った。
私の作品である、戦闘機人と言う未だに、不完全な人造人間だ。
私が、それを、テスタメントを知ったのは、大分、前の事だ。
かつて、訪れた、一つの世界。
管理局の人間には、それを禁忌、触れえざる世界と、言われてきたのだ。
しかし、私は、その世界に飛び込んだ。
欲望が、そうさせた。
私の意思以前に、私の欲望が、それを望んでいたのだ。
禁忌に、自ら触れようと、していたのだ。
天使・・・私は、それを拾った事がある。
それは、おぞましい世界だった。
神話の悪魔、天使、神、鬼、龍、神獣、聖獣、怪獣、英雄、妖怪の名を持った人間、殺戮兵器達が、世界の存亡を駆けて、殺し合い、神を呼び出し、敵を殺す。
あぁ、確かに、管理局の人間が触れえざる世界にしたがるのも、解る。
私は、おぞましいほどの神々の洗礼を受けた。
一瞬にして、恐怖が、私の体を蝕み、呼吸する隙でさえ、与えようとしないほど、我々の世界が、如何に子供じみた世界であると、わかるほどだ。
喉が詰まりそうになるほどの感覚に、自分が血を流していると言う、痛覚さえ、忘れそうになる、おぞましい世界であり、神の戦いに巻き込まれてしまった世界。
人は、神の生まれ変わりになり、神と進化して、戦い、神と同化して戦う。
私達の魔法と呼べるものは、実に、子供児見た物だった。
俗な魔術の名前を言おう。
スターライトブレイカー。
確かに、見てみれば、おぞましいほどの破壊力をしているかもしれない。
しかし、私の見た世界では、スターライトブレイカーなど、正に、子供が最初に覚える、単なる技なのだ。
神々の前では、全てが無意味で、意味の無い技であると言える。
戦慄した。
あの、威力は、牽制にしか使えない、単なる魔術の一つであるのだから。
おぞましいほどの力に、欲しいと言う欲望よりも、生き残りたいと言う、欲望が私の中には生まれていたのだ。
そして、私の目の前に、一体の天使が堕ちた。
それこそ、私の最高傑作・・・いや、私の溺愛した息子である、アヤ・スカリエッティの母体となった天使、アンゲルスノイドだった。
この時、アリシア・テスタロッサが生まれたばかりのことだった。
これを元に、この日から、私の研究が、新たな一歩を踏み出す事になったのだ。
そして、プロジェクトFが・・・いや、まだ、このころは人造人間計画と呼ばれていた。
人の手で、人を作る。
キリスト教の天使や、人間、イエス・キリストが、それを禁じたことを、私達はする事となった。
私自身も、そのことに関しては、興味があった。
また、その過程として、不完全だった戦闘機人を新たに、造り直す礎となっていった。
憐・ヴィオラと言う、不完全な人造遺伝子。
しかし、この男の遺伝子は、人造的なものを作るのには、適さない遺伝子であり、作ったものは暴走し、自爆するか、運がよければ、生き残ると言う、代物だった。
強すぎる、いや、癖のありすぎる魔力を持った人間の弊害と呼べるものが、此処にはあった。
また、人造人間計画であるが、最初は、人間の臓器や、腕、つまり、人間のパーツのスペアを研究していた。
しかし、スペアを簡単に作れるわけが無かった。
研究家庭で生まれたものは、人と呼べるものではなく、人の遺伝子を使って創った、醜い物だった。
中には、人間に近づいていた物も、有ったが、過酷な実検に耐え切れず、緑の血を吐き、死んでしまった。
何一つ、研究は上手くいくことは無かった。
私の拾った天使を使った実検も、戦闘機人の実検も上手くはいかなかった。
しかし、とある事件で、突如、名称はプロジェクトFと変化した。
それは、アリシア・テスタロッサが死んだことだ。
愛する子供を失った、プレシアは、人間のスペアを創る事ができないのなら、クローン人間を作り出す、計画を打ち立てた。
私が、計画の礎を、今までの試作戦闘機人、落ちた天使の研究で、そのプロジェクトFの礎を作り、打ち立てた。
これらの過程から、プレシアの理論と融合させ、戦闘機人の製作に成功し、第一号である、ウーノを影で完成させ、ドゥーエ、トーレ、クアットロ、チンクの開発に私は取り掛かった。
一方、プロジェクトFの作り出したものは、外見こそ、オリジナルに近いものの、中身はオリジナルと程遠い物であり、人を落胆させる。
"フェイト"と名付けられた、プロジェクトFの残り滓を持ち出した、プレシアは、その日から、消えた。
私は、刷り込まれた夢の実現に、映し出す。
それも、それで、面白い計画であったからだ。
人が、人を作る計画も、面白くて、仕方が無かったと言える。
そう、私は、研究している事が、楽しかったのだ。
如何なる、人命の犠牲を払おうともだ。
作り出した、戦闘機人達は、順調に稼動し、ゼスト隊を打ち破るまでに、成長していた。
そして、私の作り出す、人工テスタメント。
私の作り出す、世界の神は、未だ、作られていなかった。
全てを利用した。
ゼスト隊の人間の複製も全て、上手く行った。
メガーヌ・アルピーノ・・・彼女のは、素体としては優秀だったのを覚えている。
プロジェクトFの中での、生命操作技術。
神に、禁忌と言われようとも、私には、そのような事は、関係無い。
あの世界いれば、私は、間違いなく殺されていただろう。
使い魔を作る人とて、それは同じなのだ。
この時期に、私は驚いた事が有った。
久しぶりに、プレシア・テスタロッサが、姿を見せたのだ。
与えられた、揺り篭の中で、私はその光景をまじまじと見ていた物だ。
そして、驚かされた物だ。
テスタメントが、そこにいたのだから。
そして、顔を見て、一瞬でわかった。
プレシア・テスタロッサの子供であり、恐らくは、あの時のプレシアの胎児であると、私は、解った。
これは、チャンスだった。
是非とも、彼が、欲しかった。
死ぬ前にだ。
彼の体は、既に、もたないであろうと、私は読んでいた。
此処から、消える前に、私が、第二の彼を作り出す。
しかし、上手くはいかなかった。
彼は、プレシアと共に、死を選んだ。
虚数空間に落ちると言う、行為を、選んでしまったのだった。
「愚かな・・・」
ただ、一言、私は、呟いた。
あぁ、やはり、人間は、人間であると、私は思ったのだった。
極秘調査で、私が、彼女の残した、時の庭園に向かった時、そこに、奇跡は存在した。
あまりの喜びに、胸が、喜び、全身に電流が走ったような感覚に襲われた。
そこに、望む物が、存在していた。
先ほどの戦闘で、クロノ・ハラオウンが傷つけた、トウヤ・テスタロッサから吹き出た、鮮血が、そこに存在していたのだ。
歓喜に震えた。
調べれば、調べるほど、面白い物がデータとして、私に教えてくれる。
これほどに、強い遺伝子であるのなら、全ての用意が整った。
プレシアは、いい物を残してくれたようだ。
興味深い。
戦闘機人の数を揃え、なおかつ、一から、生命を作ると言う快感に、私は、震えた。まだ、血液の中にある遺伝子は、生きると言う活力を持っていた。
元より、女性の染色体しかもっていなかった、彼の血と、私の血をハイブリットさせ、新たに、作り出す。
ここで、私の長年に渡る、全ての理論、全ての実験データ、全ての実験材料を使い、人工テスタメントを私は作り出した。
まだ、カプセルの中にあるのは、胎児の状態だ。
しかし、死んだ魔導師のリンカーコアを食わせ、成長速度を速める。
死人にも、こういうところでは、ちゃんとした使い道があると、私は知ったものだ。
無理矢理成長させ、目の前にいる、少年は、僅かな時間で、九歳と同じ容姿となった。
その間に、詰め込める分だけの、物を、頭の中に叩き込み、護身用の戦闘技術も刷り込ませた。
実戦の経験も必要あるかもしれないが、単なる護身用だ。
実戦に出す機など、私には無かった。
貯蔵魔力も、従来の人造魔導師など、比べ物にならないほどの力を秘めていたし、戦闘に出せば、敵う物など、存在しないだろう。
データ上では、全てを上回っている筈だ。
人工テスタメントは、確実に成功した。
あの、天使、アンゲルスノイドの体を遺伝子レベルまで、還元させ、この少年と融合させたのだから、何れ、覚醒する時、それは、正に、神となるだろう。
覚醒していない、テスタメントではあるが、覚醒すれば、その力は、正に、神の如く、渡り合えるのは、テスタメントのみだろう。
神になった気分だった。
生命を、私が、この手で作り出し、さらには、神に相応しい器まで作る。
人間を作るというのは、簡単な物であり、神は、私であると自負する事が出来た。
生命を解読し、生命を改造し、生命を作る。
そして、神の器までも・・・今の私に、できない物は無かった、そう、自惚れていた。
後は、その神の君臨する世界を造れば言いだけだ。
そうすれば、この世界は、皆、私の作った神によって、統治される。
そして、私は、新たな欲望で、また、何かを造る。
「ドクター、随分、お喜びねぇ・・・?」
「そうだね。お前達とは違う、新たなる生命体の誕生だ。」
近くにいた、クアットロと言う四体目の戦闘機人と共に、彼を、そう、人工テスタメントである、アヤを見た。
カプセルから、彼を解放したときだ。
遺伝子、全てにおいて、異常は無い。
私の望む形で、彼は、此処に、君臨した。
完成した。
全てが、成功した瞬間だった。
「ふふふ・・・」
成功した、ましてや、神の器を創る行為が成功したと言う事に、笑いを堪える事が出来なかったのだ。
クアットロが、その子供を抱き上げ、私に見せた。
「パパ・・・・・・?」
彼は、私を見て、最初に、そのように呟いた。
彼が、私に最初にはなった言葉が、それだった。
何かが、抜けたような感覚が、私を襲った。
痛み、ある程度の痛みなら堪える事は出来た筈だった。
しかし、この感覚は何だ。
気持ち悪い。
私の体から、何かが抜けていくような感覚は、私を恐怖させるには、充分だったのだ。
「パパ・・・・・・僕の・・・・・・パパ?」
私を、父親として認識した。
何かが、何かが、壊れるような音がした。
私の中で、何かが、壊れるような、音がしたのだ。
たった、一言の言葉で、有り得ない。
しかし、それこそ、ありえないものとなっていた。
恐かった。
私自身が、私を恐れた。
有り得ない事は、有り得ないのだ。
私の欲望が、無限の欲望が、音を立てて崩れていくのを、私自身が、実感した瞬間だった。
「アヤ・・・・・・」
「アヤ・・・・・・?僕の・・・・・・名前・・・・・・?」
無限の欲望が、崩れていく。
私の体から、欲望が逃げ出そうとする。
「パパ?」
パパと、呼ばれるたびに、欲望が逃げる。
「ドクター?」
「やめろ!!」
やめろ!!
「パパ?」
やめろ!!
「アヤ!!!!!!!」
叫ぶ。
私は、アヤを恐れた。
私を父と呼ぶな。
私は、怖かったのだ。
欲望が逃げ出そうとする感覚は、私自身が、私自身でいられなくなるような、大袈裟だが、人格の崩壊を招きそうになったからだ。
純真な子供の瞳に、全てが、私の全てが破壊されそうになった。
アヤを、恐れた。
目の前にいる、少年を、私は、恐れてしまった。
懇願しても、彼は、私を父と呼んだ。
それは、そうだろう。
彼にとって、父親が、このような事態になったと言う事は、心配すると言う、他人を気遣うと言う、感情が、生まれたからだ。
「私が・・・壊れる・・・私が!!私が!!」
殺そうとも考えた。
しかし、私の中に残っていた欲望が、彼を生かそうとする。
いや、それは、欲望なのだろうか。
私の、親心のような気もしていた。
欲望は、吐き出され、親心というものが、私の中で生まれていたのなら、それほど、面白い事は無い。
自分で、自分を笑った。
ジェイル・スカリエッティという人間が、ジェイル・スカリエッティではなくなってしまった。
「ふふふ・・・ははは・・・!!!」
自分が、崩壊してしまった感覚に、笑ってしまう。
おかしくなっている、私が、おかしくなっている。
目の前にいるのは、ただの、まだ、力さえ、身につけさせていない、人間ではないか。
何故、私は、それを恐れる。
あまりに、純粋すぎたのだ。
私の、触れたことの無い人間が、目の前にいる。
純粋すぎる。
私の見てきた人間たちはどうだ。
この、このように、すんだ瞳をした人間など、いなかった。
いや、いるとすれば、アリシア・テスタロッサぐらいか。
それ以外には、見た事も無かった。
そうだ。
考えてみろ。
私の見てきた人間達を。
醜い。
私以上に醜い人間など、何人もいる。
誰のせいで、誰のせいで、私は生まれてしまったのだ。
奴等の、欲望のせいではないのか。
そう、人のせいにしている私も、よっぽど、醜い存在ではあったが。
「パパ・・・?大丈夫?」
私の中の全ての穢れが、崩壊したような気がした。
崩壊するきっかけは、本当に簡単な物だ。
人間と言うのは、本当に、私のような作られた人間を含めても、解らない物が有る。
本当に、こんな些細な事で、私の中の無限の欲望が崩壊してしまうのだから。
しかし、ある意味では、感謝はしている。
守る。
ただ、この子が、優しい世界であれば、私は、それで良い。
如何に、犠牲を払おうとしても、私は、それでいいのだ。
私の欲望は、アヤの世界のために存在している。
破壊。
破壊。
破壊。
今ある世界を破壊するだけの物はある。
後は、起動キーだけだ。
それゆえに、それだけのために、聖王を必要とした。
「私は・・・大丈夫だ。アヤ・・・」
「うん!良かった。」
管理局の人間の為に、一応はのってやる事にした。
空間の開発。
奴等と言う名の犠牲を払い、私は、アヤの為の、アヤだけの優しい世界を創る為に、動き出した。
まだ、時間はかかる。
表向きでは、管理局の人間どもに、いつもの狡猾な顔を見せ、裏では、アヤの為に計画を遂行し始める。
計画は、順調だった。
私の、推奨してきた計画は、全て、全て上手く行っていた。
「パパ・・・」
「どうした?」
「俺も、戦いたい。」
「どうした・・・?お前は、戦わなくていいんだぞ?」
アヤが、このようなことを、私に言う。
私は、戦わせる事が出来なかった。
いくら、体の中に、如何なる傷をも瞬時に治療する、ナノマシンを持っていたとしても、死なないとは限らないからだ。
「だって、ウーノお姉さまや、ドゥーエお姉さま、トーレお姉さま、クアットロや、チンクが戦ってるのに・・・俺は、何も出来てない。」
子供ながら、自分が役立たずと思ってしまったのかもしれない。
子供だから、自分は、何も出来ないと、アヤは、このとき、嘆いていた。
「護衛術だけでも良いでしょ?俺も、パパを守りたいんだ。」
私の白衣の袖を引っ張りながら、涙目で、訴えてくる少年に、私は、流石に弱ってしまった。
そのようなことは、どうでも良かった。
目の前にある問題は、アヤの我侭をどう、言い訳して止めさせるか、どうかだった。
「クアットロ・・・」
「どうだった?」
「わかんない。」
「ドクター。いくら、彼に格闘術を刷り込ませたとは言え、実際、ちゃんと使えるか、解らなければ意味が無いだろう。」
「トーレお姉さま!」
一応、アヤは、ナンバーズのトーレから、ウーノを自分の姉のように、思っている。
「なら、私としてみる?」
「ドゥーエお姉さま!!帰ってきたの?!」
「えぇ。アヤ。」
このとき、ドゥーエは私に渡した物は、此処にある物を浮かばす為に、必要な事。
一応、理論上では、この揺り篭を飛ばすには、アヤの力でも、充分可能だ。
テスタメント、アンゲルスノイドと言うのは、古代ベルカ王族の人間達と、ほぼ同じ、遺伝子配列であり、誰にでも動かせる。
ただし、未完成なテスタメントが動かす場合は激痛を伴う事にはなるが。
しかし、アヤに、そのような痛い思いを、私は、させたくなかった。
故に、私は、それを必要とした、アヤの世界を創る為にだ。
「それで、パパ・・・俺のは?」
「ふぅ・・・怪我をさせるんじゃないぞ。」
自分の柄じゃない、父親的な部分を出している自分に、違和感を覚える。
「了解した。アヤ、こっちだ。」
「うん!ドゥーエお姉さま、トーレお姉さま!」
その間にも、他の10番目の戦闘機人を造り、来るべき時を待つ。
まだ、アヤを戦わせる気にはならなかった。
いや、彼は戦う必要など、無かった。
ただ、そのうち飽きるだろう。
私は、ただ、そう思ったから、アヤをドゥーエ達に、つかせた。
それだけだ。
そのうち、痛い思いをして帰ってくるかもしれない。
泣きながら帰ってくれば、私が介抱でもしてやろう。
私の中に、まだ、残っている一部の醜い感情。
そして、消えていった、罪悪感的なもの。
それが、消滅したのは、アヤのお陰であると言える。
今の私を形成する事ができたのは、アヤのお陰なのだ。
暫くして、人造魔導師である、ゼスト、そして、メガーヌの子供であるルーテシア・アルピーノを利用。
教育的なものは、アヤに任せていた。
「じゃぁね。るーちゃん。」
「うん!」
自然と心を、開いていた事に、少し私は嫉妬していたのを覚えている。
「うぉ!?」
訓練を始めて、数ヶ月で、トーレを格闘で、圧倒するようになっていた。
戦闘能力の上昇は、恐ろしかった。
鳥肌が立つほどだ。
流石は、神の器と呼べるものだった。
暫くの時間の経過。
「はぁ!!」
「ちっ・・・!?」
「速い・・・!!私より!?」
「アヤ・・・」
ナンバーズで最高の戦力を誇る三人を相手に、勝利。
流石は、私の息子であり、私の最高傑作である、アヤ・スカリエッティだ。
純真であり、まさに、その姿は神々しかった。
あぁ、私は、本当に自分で、最高傑作と呼べるものを造ったのだなと、内心確信し、アヤ一人で、時空管理局に勝利する事ができると、下らないおごりを抱いていたが、あそこまでの力を見れば、そう、思わずに入られなかった。
重傷を負わせるとは思わなかった。
管理局にちょっとした、嫌がらせをした。
ガジェットⅢ型。
それを、わなだと解っていた者も、いたようだが、彼女は、愚かにも戦いを挑んだ。
ガジェットⅢに仕込んだ、カメラで、高町なのはの観察を私はしていた。
まぁ、所詮はその程度の魔術師だったと言う事だろう。
無理が祟り、一瞬、バランスを崩した物の、彼女は、Ⅲを破壊した。
しかし、この後起こった、事だけは、予想外だった。
私に似た、何かが、アヤでも、私でもない、何かが、高町なのはを切り裂いた。
「ふふふ・・・あははははははは!!!!!!」
斬られた、高町なのはを見て、絶望に染めた快楽の顔と言うのを、私は見たような気がした。
悪魔が、私と同じ顔をした悪魔が、笑っていたのだった。
無限なる闘争心を持つ、男だった。
調べて、解った事は、彼は私の弟であり、ドゥーエを落とした人間であると言う。
そして、私の弟。
憐・ヴィオラ・・・反管理局の思想を持つ人間だと言う事が、伝えられた。
あぁ、時間は完全に私に味方したと思った瞬間だった。
誰が、そこに異様が、いかほどの物ではない。
所詮は、雑魚だ。
アヤ、そして、憐がいれば、管理局など、簡単に滅ぶ。
何年か、経ったのち、別世界が全て引き寄せられ、崩壊の一途を辿る物に成る程、酷い事態がおきたらしい。
大して、興味は無かった。
しかし、それを引き起こしたのが、失われた筈の血の持ち主であると、確信したのは、アヤの最終調整を行う、施設に、その身を置いてからだった。
「クアットロ・・・」
「アヤ!?」
「ごめん・・・ただ、こうしていたい・・・」
思春期と言う世代に入り、求めたのは、女と言う生き物だった。
ナンバーズから選ばれたのは、クアットロだった。
特性的なものとして、年上を選んだのだ。
彼の性格上、いや、彼の血の影響なのだろうか。
私に見せることの無い、クアットロをアヤは作り出した。
戦力として、作り出した、ナンバーズ、ガジェット達の大量生産。
さぁ・・・行こうか。
レリックの回収、そして、一部ジュエルシードの回収。
全てが、上手くいった。
そして、今回の事に、フェイト・テスタロッサが首を突っ込んだが、首を突っ込んだら、突っ込んだで、実験材料として、扱うだけだ。
プロジェクトFの遺産など、所詮は、ただの実験材料にしかすぎないのだ。
必要ない。
アヤさえいれば、アヤさえいれば、それでいい。
そして、後にJS事件と呼ばれる事件の中で、アヤは、ライバルと呼べる人間に出会うこととなった。
生きるために、手に血を染め、戦うこととなった。
その男の部下を殺し、現場に居合わせた。
アヤの全ての調整が終わり、迎えに着た、クアットロと共にその男と闘い、初めての戦闘にアヤは興奮していたようだ。
多少也とも、戦いを好む性格の片鱗を見る事が出来た。
一度目は、引き分け。
「どうかな?親父・・・あいつ、強いよ。」
初めて、戦った敵。
ソレは、アヤを成長させる。
このときから、アヤは、私を二つの固有名詞で呼ぶようになった。
”パパ”そして、”親父”だ。
アヤが、真剣になると、私を親父と呼ぶようになった。
強かった。
性格は悪くとも、彼の戦ったライバルの部下は、管理局の中で、”強い”部類に入る人間だったようだ。
戦場で人が死ぬのは当たり前だ。
ある種、家族のような存在であったと、後にアヤは語っていたそうだ。
管理局にも、優秀な人間がいたものだ。
第二は、ホテルアグスタでの対決。
ここで、一つのゲームを、私は与えた。
駄目だといっても、アヤは私の願いの為なら、手を血で染める事を自ら、受け入れていた。
「ユーノ・スクライア?」
「そうだ。後に、弊害になるだろう。」
「良いよ?」
この任務は、久しぶりのルーテシア・アルピーノとの共同作業。
どうやら、感情が、上方面にあった。
アヤは、会場へと、潜り込んでいた。
そうだ。
そこに、
「僕の殺すターゲットがいたんだったよね。彼女達は、既に回収したかな。」
入るナレーション。
「誰が来るんだっけ・・・名前、覚えてないんだよな。」
「無限書庫の司書長・・・ユーノ・スクライア先生です。」
「あ、どうも。こんにちは。ユーノ・スクライアです。」
「み・つ・け・た・・・はぁっ!!!!!」
獣のような、オーラを漂わせながら、アヤは、壇上に向かって、突き進む。
「なっ・・・!?」
「クス・・・もう、前に出た・・・」
ライバルにばれた。
しかし、もう、それも遅い。
「ユーノ・スクライア!!生き抜きたければ、防御シールドを速く張れ!!!」
「え・・・!?」
会場が、ざわめき始める。
突然の事で、何をすれば、良いのか解らない。
「抜けた!?」
「ユーノ君・・・!?」
「あいつ、速い!」
なのはとフェイトが、対応に向かっても、遅い。
速度は、
「・・・レベル!?」
ユーノは、まだ、それの存在を確認できなかった。
「あっ!!」
飛び上がった。
黒いタキシードの男。
「シャァァッッ!!!!」
「ここに!?」
アヤは、刃を抜いて、両逆手に持ち替えて、その、男に迫り、
「ば・い・ば・い♪」
「ぐっ!!」
此処で、やられるか。
意地が、通るか。
ユーノは、防御フィールドを張り、事なきをえるが、
「へー・・・やるじゃん。」
「こいつ・・・似てる・・・」
どうやら、防御にかなりの定評があるらしいが、アヤの前では、無意味だ。
全て、無意味に過ぎない。
「ははっ!!でもさ、その防御・・・こうすれば、溶けるよ。」
「何!?」
バリアが消えていく。
徐々に、中和され、逆に、隙が生まれる。
「くっ!!」
さらに、何階層もシールドを張るが、
「あ・ま・い!!」
全力を込め、シールドを突き刺し、破壊。
ガラスが、割れるような音ともに、
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!」
スクライアの、叫び声が、会場内に響く。
絶対的な防御。
しかし、貫いた肩から、本人の意思も関係なく、鮮血が飛び散った。
「ちっ・・・」
「ははは!!!」
右肩から、突き刺さり、柄の部分まで、刃は全て入り込む。
「アァァァァァァァァァぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
「ミッション完了・・・だね。ふふ・・・じゃぁネ。ごめんね。パパが、やれって言ったからさ。」
「アァァァァァァァァァぁぁぁ!!!!!!!!!!!肩が!!肩がぁぁぁぁぁ!!!!体がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「煩いよ。ほら、静かにしなきゃ、皆、びっくりするじゃないか。」
笑顔と、その口調に合わない、無邪気な顔と残酷な行為に、誰もが、言葉を失った。
「ねー、パパ。あいつ、弱かったよ?本当に、障害になるの?」
「冗談だよ。障害になるというのはね。ただ・・・お遊び気分でやってほしかったんだ。」
「なーるほど。」
所詮はゲーム。
しかし、あの中を駆け抜け、ユーノ・スクライアに重症を負わせるにまで至った。
どの状態であろうとも、任務は継続できる。
そのポテンシャルの高さを改めて、思い知った。
しかし、次の対決は、敗北に終わった。
地雷王を防壁として、ルーテシア・アルピーノが使い、アヤは冥府の神と呼んでいた人間達に、いや、神に敗北した。
神に敗北。
まだ、覚醒していない、アヤのテスタメントとしての機能。
強制的に、別の何かを、宿す事は出きる。
そして、アヤは帰還した。
助かった物の、ナノマシンは機能せずに、生きているのか、死んでいるのか、その境目にいるだけで、此処にいる私は動揺する。
「ドクター・・・?」
「早く!!アヤ専用のカプセルを用意しろ!!」
取り乱す、この男。
これが、私である。
受けた、強大な技は、後遺症はジェイルが思うほど強大な力だった。
アヤの両腕再生、剣圧による大量の切り傷も消えることは無かった。
そして、私はやるべき事など、全てを無視し、ここに、アヤを完全再生させた。
アヤを、傷つけた。
アヤを、此処まで傷つけてしまった。
久しぶりに、殺意と言う物を抱いた。
元より、部下達の失敗だ。
ルーテシア・アルピーノが、捕獲されたが故に、いらない傷を負った結果が、これだった。
戦場において、絶対に死なないように、アヤを私は創造したつもりだった。
しかし、そうはならなかったのだ。
このように、傷ついて帰ってきたのだ。
「るーちゃんを攻めるよ・・・?」
「解っている・・・」
本当は、攻めたかった。
貴様のせいで、アヤが、此処まで、重傷を負ったのだと。
「キメラの・・・遺伝子を・・・」
アヤを強化する為の物。
しかし、私は、それを使いたくなかった。
そうなれば、アヤはまた、戦場へ向かう。
また、今日のような敵に会えば、アヤは、死に至るかもしれない。
「駄目だ・・・!!其れを、お前に・・・」
「どうしたんだよ・・・親父は、最強の科学者だろ?」
ジェイルを呼ぶ言葉が変わる。
これは、本来、ちゃんとした形で要求を頼む時だ。
修復がてら、
「強化してくれよ・・・キメラになってさ・・・」
いつもの、人間であるのなら、此処でキメラの遺伝子を打ち込んでいるだろう。
しかし、何故、いつもの非常な私の姿は見られることは無い。
何故か、アヤに対して特別な感情を抱いてしまっていることは、やはり、親心なのだろうと、自分で自覚していた。
「あいつらを・・・消滅させるためなら、おれは、なんだって…やってやるさ。」
覚悟は、アヤ・スカリエッティは決めている。
しかし、何をそこまで、拒否する必要があるというのか。
私は、その覚悟を決められずにいた。
親心・・・愛しているからだ。
修復、強化、改造など、私ならすぐにそれを行うはずだ。
しかし、修復だけ。
強化以前に、改良さえされることはなかった。
アヤ自身とて、それを不審に思う。
なぜ、何故なのか。
「あんた!!ジェイル・スカリエッティだろ・・・!!親父の願うことを叶えるために!!俺は、動いているんだ!!」
「暫く・・・考えさせてくれ・・・」
私のためではないのだ。
アヤ、お前の為なのだ。
アヤ・・・誰にも見せぬ、弱気な私にアヤは、少し俯いた。
「頼むよ・・・親父・・・」
それでも、私を信じようとした。
今は、まだ。
「すまない・・・」
信じられる事など、そこには出来ず、アヤ自身も、この自分に対する私の、態度は解らない。
唯一、アヤにのみ見せるその笑顔。
いつもの、狂気を含んだような笑みをアヤの前では、見せる事は無い。
「失うのか・・・」キ
メラとなる事によって、アヤの力は相当な力を身に付けることができる。
そして、元よりテスタメントのクローンであるこのアヤならば、
「キメラの遺伝子を打ち込めば・・・俺は!!」
「まだだ!!私が、其れを判断する・・・」
「わかった・・・」
不満では有るだろう。
私の陣営の中で、最強に相応しい、私の息子は、神を目の前にして、完全に敗北し、今の状態に至るのだから、強化してでも、奴等に勝たなければ、アヤの中にあるプライドは、ずたずたになったままだった。
そして、私も、科学者として、最強の物を作ったつもりだった。
いや、科学者のプライドよりも、子供を、此処までさせなければならない環境に追いやった事、そして、傷つけたことを許さなかった。
しかし、アヤの中で、確かにこれは正しい選択の一つなのだと言う事も解っていた。
「ドクター・・・?何を・・・そんなに・・・」
誰もが、私らしくないと思うだろう。
本当に、目の前にいる人間が、私がジェイル・スカリエッティなのかと思ってしまうほどだ。
アヤと接する前までは、必ず違う、いつもとは180度違った性格となり、誰もが錯覚を覚えてしまうほどだった。
アヤ・スカリエッティ。
スカリエッティの名を持ちながら、父と慕う私とは、全く違う存在である。
それでも、親心以前に、子供の欲望、私達が生き残る事、夢のことを考えて、私はアヤを強化をしてしまった。
我々が、生き残る為だった。
予想以上に、強い敵が、目の前にいるのだ。
我慢しなければ、なるまい。
勝つためにだ。
目の前にいる敵に、勝利する為に、アヤを強化しなければならなかった。
そして、私は、彼に魔力刀と言う名のデバイスを与えた。
それでも、二度目の戦闘は、引き分けだった。
「ほらほら!!速くしろー・・・止めるなら、今のうちのほうがいいぞ。」
向かって来るモブとも呼べる魔導師達を簡単に殺す。
「なんセ・・・俺は、中に入って・・・お偉いさん方を殺さなきゃいけないからなぁ。」
「お前はぁぁぁぁぁ!!」
「後ろから狙うか。ま、卑怯じゃないよな。立派な戦略!」
刀身を限界に伸ばし、届く所は魔導師の心臓。
そこから、突き刺すだけで、アヤは簡単に殺す。
行く先々で、喧嘩を売られるというのは、こういうことだろうか。
アヤに勝負を仕掛ける魔導師は、大抵殺される。
辺り一面が、屍の山と化していた。
何故だ。
何故、これほどにまで魔導師が集まっているのに、アヤという一人の存在は、神に勝利する事がてない。
「そんな!?」
「おい・・・これで、世界護ろうって言うんだから・・・お笑いだよな。」
アヤが、突破口のような物になった。
他のガーディアンは、全て、突如現れたガジェットの排除に当たっている。
「もっと、骨のある奴は、いないのか。一斉に、機動六課の人間達も動いている頃だろう?」
強い人間
「月村燈也、月村すずか、ティアナ・ランスターは強いね・・・」
ティアナ・ランスターと引き分けた。
管理局の開発した、二足歩行兵器など、興味は湧かない。
ソレより、アヤの方がポテンシャルの方が高く、そして、不完全な機能でありながらも、真のテスタメントと張り合えるほどの力を有していた。
「アヤ・・・もう、戦うな。」
戦いに行くたびに、誰かと戦い、傷つき、そして、帰ってくる。
今回だって、そうだ。
何れ、殺される、私の前から、いなくなるような感覚が、私を支配し、襲う。
「でもさ・・・いかないと・・・親父は、死ぬ。」
実質、テスタメントはアヤ一人で抑えているような物だ。
テスタメントが、三人も揃っている。
そんな連中を敵に回すのは、愚かな人間のする事だ。
しかし、対抗策が無い。
今回の私のすべき事は、失敗だったのだろうか。
「行くな・・・!!」
「どうしてだよ・・・改造する時だって・・・躊躇っただろ・・・?どうしてだよ・・・」
「私は、科学者である前に・・・お前の父親だ!!」
初めて、父親として、アヤに叱った瞬間だった。
しかし、
「父親か・・・だったら、俺より下の子供達を・・・」
「アヤ・・・」
「子供ってさ、小さくてさ・・・自由を許される存在なんだよ?でも・・・親父は!!自由を奪ってるじゃん!!」
「アヤ・・・私を許せとはいわない・・・しかし、全ては・・・夢のためだ・・・別れとはいわない。今、此処で・・・お前が出て行くというのなら・・・」
「考えすぎだよ・・・ここは、俺の家だよ・・・?皆を、裏切りたくない・・・」
戦場に、子供を出すことに、計画に子供を使う事を、否定していた。
聖王の器だって、そうだ。
アヤは反対していた。
しかし、それでも、私に従ってくれる。
このとばっちりを、私は受けてしまったのだろうか。
苦悩
本来、アヤを死なないようにすることが、私のする事なのかもしれない。
この後、アヤに全てを話した。
強制的にテスタメントとしての力を覚醒させる、オーバードライヴ・・・そこから、最後の戦いが始り、私は、最後の処置として、アヤと痛みを共有するようにした。
あの子の痛みを、私自身が体感する為であり、それを、私はあの子の不快な事に対する償いだと、思っていた。
あの子が、起きないうちに。
戦いが始る中、アヤの痛みが、私の体に刻まれていく。
オーバードライヴを発動させて、超越的な力を手に入れたのも、痛みで、私は解った。
倒され、捕まるナンバーズのメンバー。
増えつづける痛み。
ティアナ・ランスターを倒したと見て、一人でナンバーズ以上の動きと、力を見せた。
高町なのは、フェイト・テスタロッサ、闇の書のプログラムである、ヴィータを三人相手にしても、それ以上の働きを、見せていた。
さらには、その内の一人は戦線離脱。
アヤの実力は、本物だ。
アンゲルスノイドを、完全に支配したアヤは、強かった。
異様なまでの姿で、最強の天使が、ミッドチルダに降臨し、ありとあらゆる魔導師達を砕き、破壊し、全てを打ち壊す。
アンゲルスノイドの威力が、あれほどのものとは思わなかった。
12枚の翼を持つ、美しき神の天使。
このとき、最も、アヤを信頼していたが、一瞬、アヤを私は疑ってしまうほどだった。
この世で、最悪の敵を生み出してしまったのではないのだろうかと。
「親父!?このまま、護衛につく!!この中に入った・・・燈也と決着をつける!!その後は、晴れて俺たちの世界だ!!」
「油断・・・するなよ・・・・・・?」
「当たり前だ・・・誰の息子だと思ってる・・・ジェイル・スカリエッティ・・・天才の息子だ!!」
私のために、絶大な力を手に入れたと言うのに、迷いと言う物を持っていなかった。
迷いの無い笑顔を私達に向けた、アヤは、揺り篭の中にいる、最大の敵と対峙する。
「アヤじゃないみたい・・・」
「いや、ああしなければ・・・アヤは、私達の為に、望んで、あの姿になった。」
さらに、この戦いで、ファントムが降りてきた事によって、私達に時は傾いたと思った。
さらに、続く戦いの中で、
「うぉっ!?」
揺れる、揺り篭の中。
メイン動力炉が外部から破壊された。
さらに、テスタメントとして完全に力を使用した、月村すずかによって、持てる戦力の7割は消滅した。
さらに、傷が深くなり、ゆりかごの中に侵入した、管理局の人間達。
敗北は、必須だったと言えるだろう。
まだ、残る量産型戦闘機人達を動かす為に、私はクアットロに、全てを任せ、別室に向かう時だった。
二つの光が、揺り篭に落ちる。
それは、私の真上に落ち、さらに、量産型戦闘機人の全てを破壊した。
あぁ、失ったのだ。
私も、ここで、命を終わらせる。
これは、罰なのか。
命を弄んだ結果が、今の私の姿なのだろうか。
辛うじて、まだ、私は生きていた。
死ぬほど、いや、極限までに、死に近い、辛い痛みを、私は体感していたのだ。
たった、一つの、歩く音・・・その足音と共に、何か、液体が落ちるような音がした。
何が、ある。
何が、あった。
いや、此処に残っている人間は、後・・・
一人
「ア・・・ヤ・・・・・・?」
「ん?」
現れたのは、全身が、血液で赤く染まっているジェイル・スカリエッティだった。
何故、
「オヤジ・・・?なんだよ・・・?ソレ・・・」
その、格好に、驚かずに入られなかった。
自分の父親が、何故、
「私は・・・お前の父親だ・・・この痛みくらい、耐えないでどうする・・・」
息子の痛みを共有する。
「何で・・・何でだ・・・何で、俺に・・・そこまでする?」
アヤの隣に、プレシアがいたような気がした。
あぁ、プレシア・テスタロッサの息子である、燈也だと、このとき、確証を持った。
プレシアに、よく、似ていたのだ。
「ソレについては、僕も聞きたい・・・何故、貴方は、アヤに対しては、異様なまでの保護欲が見えた。アヤと戦っている中で・・・何故・・・」
簡単な質問だった。
応えなど、そんなものは私にとっては、愚かしい事だ。
しかし、目の前にいる人間に問いかけは、確かに、自然な事であるかもしれない。
私自身さえ、今の私は、どこか、違うような気がしてならない。
それでも、私は、私だ。
「ふふ・・・簡単な答えだよ・・・」
それは、
「アヤは覚えていないだろう・・・・・・お前が、心・・・いや、人格を形成し始めた時・・・お前は、私を初めて「パパ」と・・・・・・呼んだ・・・」
「まさか・・・それで、お前に施されているプログラムが破壊されたというのか・・・?無限なる欲望である貴方に、親心が生まれたとでも言うのか・・・?!」
「そのとおりだよ・・・単純な言葉で・・・壊れる物だ・・・」
「ありえない・・・」
「その言葉こそ、ありえないものだよ。私は、人間なのだからね・・・」
だが
「私は怖かった・・・自分が、壊れるような感触が・・・」
アヤは、黙ってそれを聞く。
「覚えてる・・・」
ふと、アヤがそう、呟いたような気がした。
この言葉を聞いたとき、私の瞳から、涙が流れそうになった。
そして、泣くと言う感覚を、私は始めて・・・知ったのだった。
「お前を見るときだけは、いつもと違う自分でいられるような気がした・・・」
ソレを実感し始めたときに、事実上の恐怖。
まだ、完全なる調整が終わっていなかったアヤを眠らせ、全てが解決した後に、迎えに行くつれていこうとした。
その間にも、色々と調整し、人間と同じような知識を持ち、支障が無いようになったとき、六課の情報を知り
「君がいた・・・」
月村燈也
「燈也という人間が、管理局にいた事はしっていたさ・・・」
全てはクロノによって、燈也がガフを使い、自分を隠蔽していた事。
そこにいたのは、
「プレシア・・・君は、プレシアに良く似ている。アヤは、君のクローンだよ・・・」
「やはり・・・」
アヤも、ソレを知っている。
本来、訪れるべきだった、運命を、私は、燈也に話した。
「君は・・・17の歳に死ぬ筈だった!!!」
全て、消える筈だった。
異常なまでの魔力消費によって、あのままなら、九歳の時に、消えて、死ぬ筈だった。
生きていたとしても、ありえない方式で生まれたのだ。
遺伝子に異常が出て、死ぬのは必須だと、私は思っていた。
「ん・・・?」
何故、生きている。
「君には・・・男性染色体が、無かった!!」
ソレは、
「君は、プレシアの遺伝子だけで、構成されている・・・単相生命体だ・・・」
普通なら、どれだけ長くても、17で死ぬ。
しかし、19まで、燈也は生きた。
プレシアのリンカーコアから出来た代用の男性染色体であろうともだ。
「何か・・・変わることがあったはずだ・・・」
「虚数空間に・・・落ちたときか・・・其れか、僕がテスタメントだからか・・・」
「なるほど・・・それで、変わったわけだな・・・僕は・・・」
虚数空間、落ちてみたいものだ。
だから、アヤを燈也の遺伝子のみで作り出すことは出来なかった。
「ずっと、傍にいて欲しくて・・・私は、アヤの細胞を強化した・・・しかし、終了と同時に、燈也が入り込んできた。」
「あんたは、俺を愛したから・・・」
「キメラにするのも・・・あの形態にさせる事も・・・反対したんだ・・・」
スカリエッティは、立てなくなり、アヤの横に倒れた。
「アヤ・・・いっしょに・・・」
アヤと生きる事ができると言うのであれば、それで良いと思った。
「バーカ・・・親父は、生きろよ。俺は、確実に死ぬ・・・まだ、親父は、生きる事ができるじゃん・・・燈也・・・俺の手を・・・さ、オヤジに・・・」
言われた通り、燈也はアヤの腕を私に触れさせた。
スカリエッティに触れ、徐々に、傷が癒え始めた。
アンゲルスノイドの再生能力を、私のために使う。
いや、アンゲルスノイドの力ではなく、元より、アヤのナノマシンを私に移植していると言う事か?
「なんだよ・・・心配してくれてたんだ・・・」
「当たり前だ。父として・・・」
あぁ、そうか。
そういうことなのか。
そこまで、私を生かしたいと言う事か。
心配していると言う事なのか。
「そーかい・・・じゃ、親不孝な俺を・・・許してくれよ・・・」
「アヤ・・・!?」
薄れていく、アヤの言葉。
「俺に・・・」
「おい・・・」
傷は癒えて。
「とっては・・・さ・・・・・・・」
ジェイルは、アヤに触れ、体を揺らした。
まだ、まだ、
「消えるな!!アヤ!!アヤ・・・!!」
「最高の・・・・・・」
まだ、
「私は・・・お前に、父親らしいことを、何一つしてはいない・・・!!!」
「オヤジ・・・・・・だっ・・・た、なんて、言うか…馬鹿・・・よけいなこと・・・しやがって!!!るーちゃんに、謝ってもいないだろうが・・・」
言葉は、途切れる。
最後に聞いた言葉は私を叱っていた。
アヤ・・・余計な事・・・
私は・・・
最後の言葉の意味が解らなかった。
「アヤ・・・?冗談はよせ・・・」
瞼が、自然と閉じる。
アヤの瞼が、閉じ始め、体が、徐々に、灰になり始める。
アンゲルスノイドの遺伝子が、死んだ人間の体を腐食していた。
「アヤ・・・アヤ!!」
「もう、やめろ・・・アヤは、死んだよ。」
死んだ。
アヤは、私の前で、消えてしまった。
今でも、私の中では、アヤのナノマシンが、私の中で蠢き、共に生きている。
アヤは、私や、アヤの愛した人達の血や肉となり、生きていると、燈也が言っていたな。
これは、そう言うことだったのか。
そのご、私は、逮捕され、軌道拘置所にいる。
許されない罪の中で、私は、ただ、一人の希望だった、アヤを思い浮かべている。
私の中にアヤがいると思えば、此処の生活も悪くない物だ。
しかし、私以上に愛していただろう、クアットロは、まだ、そこから、抜け出す事が出来ていない。
精神的に、彼女が回復するのは、相当な時間がかかる。
私達の、アヤの行っていた、罪を払拭できると言うのなら、私は喜んで、それを受け入れた。
まぁ、子供を欲しがっていたくらいだから、仕方が無いといえるが、私も、その子供の顔は、見てみたかった物だ。
そうだ、最後に言っていた
「アヤの余計な事・・・君にはわかるか?」
「いえ・・・わかりません。」
「君は、行くのか?」
「はい。」
「これを・・・もって行ってくれないか・・・?」
結局、余計な事とはなんだったのだろう。
私には、それが、よく解らなかった。
私の書いた、この手紙を誰かに呼んでいて欲しくて、私が、選んだのは、彼を慕っていてくれた、女の子だった。
「ルーテシア・アルピーノ・・・」
「何か?」
「息子を慕ってくれて・・・ありがとう・・・」
「いえ・・・」
軌道拘置所から、海上拘置所に出ることとなった、ルーテシア・アルピーノ。
燈也の尽力によって、彼女の釈放は思いのほか、速くすむ事になった。
彼女の母親であるメガーヌ・アルピーノも、どうやら、目覚めたようだ。
どうやら、一人の少女の事など、今の管理局の再建に比べれば、大した事は無いようだ。
私が、彼女に手紙を与えた理由だが、彼女の思い出はアヤと共にあった。
精神的に、喋る事をしようとしない、クアットロより、今は、彼女の方が、アヤの生きた記憶を持っていって欲しかった。
「いえ・・・」
私が、今、一瞬でも、外の空気を据えるのは、月村燈也のお陰でもある。
私は、彼女に、この手紙を渡し、再び、軌道拘置所に戻される事となった。
そして、この日・・・武神・・・いや、破壊神スサノオが、目覚めた。
そして、戦いは始った。
「さぁ・・・ジェイル・スカリエッティ!!僕に、手を貸せ!!」
「断る!!此処で、また、貴様に手を貸せば・・・アヤが悲しむ!!」
何より、
「アヤが、私にそのような事をする事を・・・望んではいない!!」
軌道拘置所に、どうやって入ったかは解らないが、一人の男がいる。
黒い影の、ヴォイスチェンジャーを使い、マスクを何十にも被り、黒いタキシードを来た男が、私の目の前に、存在している。
私に、テロをしろと、持ちかけてきた。
「ふ抜け目・・・」
「どう言われ様が・・・アヤが望まない事を、私はする気は無い。子供を殺すような事は、もう、する気は無い。」
目の前にいる男は、液体の入ったカプセルを取り出した。
「それは・・・ふっ・・・ソレくらい、お前にくれてやる。」
「なら、好きにさせてもらうさ。」
男は、此処から、消えた。
この、今の世界、私は・・・何を見る。
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